奇跡の犬・リクちゃん 3

ライバル

家の中では 随分強くなった前足を使って歩き回れるまでになった。後足も立たせると 以前に比べ長く立てるようになった。定期健診の時「ひょっとしたら 歩けるようになるかもしれないね」と先生に言っていただけるほど 回復してきた。「そうなってくれると良いね。」と話し掛けながら 今日もリハビリにせいを出す。しかし、リクのお尻が小さくなってきていることが気になる。これもリハビリで何とかならないかと頑張るが リクはリハビリが煩くなってきたのか 右足の屈伸をしていると左向きになり 左足を屈伸すると右向きになったり ジッとしなくなってきた。

明日は土用、暑さも一段と厳しくなり 朝早くから蝉の合唱が始まる。リクの食欲もあまりなく、好きだったものもあまり食べない。次々違った物を与えてみるが長くは同じ物を食べてくれない。こんな時「ヤン兄ちゃんにあげるよ」というと食べる。

お父さんやお母さんに自分を一番大切にしてもらいたいらしい。ヤンが庭に出ようとすると 負けじと出たがる。「ヤンくん可愛いね」というと中に割って入ってくるそれでも、2匹は仲良く眠ったり、庭では並んでお散歩をし 猫が家に入れば同じように入る。ヤンの眠っている横をリクが通ると手を伸ばしてチョッカイを出す。そんな時の猫のしぐさは可愛い。ヤンはもう14年も我が家に暮らしているのに 来客や新しい仲間が苦手なのか 2階や場合によっては納戸やベットの下に隠れる。リクにさえ遠慮しているのか 私たちに甘えるのも犬の居ない所でである。そんなヤンなのに リクにとっては一番のライバルである。
ヤンはいつも 夜中に誰かが階下に降りると 暫くして心配そうに見に来る。何時だったか お父さんが夜中にトイレへ行った時 出てくるのが遅いと態々2階で寝ていた私を起こしにきた事があった。夜中に何かあっても 一度眠ると目の覚めない私もこの子がいる限り大丈夫だ。
 唯、困るのは夜中でもお腹が空くと「にゃ〜にゃ〜」と煩い、寝ている人の顔を掻いて起こすのである。

諦めないで!

最近のリクは 生活にも慣れ家の中を動き回り 外へ出るときは車椅子で移動し 「おしっこしよう」と言うとゴロンと横になり神妙な顔つきになる。聞き分けもよく こんな生活が当たり前のようになってきた。でも、私はこれで良いとは思っていない。後足で立ち4つの足で歩いて欲しい。友達とじゃれ合うまでは無理でも ゆっくりで良い、ヘンな歩き方でも良い、自分の足で歩かせたい。焦らず時間を掛けてお母さんと一緒に頑張ろう!リクちゃん。


試行錯誤

やっと暑かった夏も過ぎ 夕方の散歩が楽しみになってきた。家の前で待っていると トシちゃんハルちゃんの兄弟が、ラッキーくんが、大好きな女の子フーちゃんやハナちゃんが通ってくれる。鼻を突き合わせてご挨拶をしたり ちょっとほたえてみたり 長い間待っていた割にはアッサリ右左に行動を別にすることもあるが 嬉しい時間のようだ。
みんなと同じでないコンプレックスは強く ちょっとしたことに怒り出すこともある。出来るだけ皆に近いように 車椅子に工夫を重ねる。部分的にネットをはってみたら 歩いているうちに足がはみ出す、ネットを外して靴を作ってみたが、すぐ脱げてしまうので 市販の靴にすると足の甲を引き摺る為 裏が硬すぎる。今度は靴下を履かせて 脱げそうになると引っ張り上げながら歩かせてみた。走り出すと 後足を引き摺るので怪我をしないかとヒヤヒヤするが 何時でもネットを広げられるようにして 暫くこれでやってみようかと思う。
広くネットを張ってみる ネットを巻き上げ靴下を履かせる 足の裏より甲が汚れる 孫の靴下のようで可愛い!
 

上 達

あれから もう8ヶ月。やっと8ヶ月というべきか?少しづつ快方に向かっている。車椅子のネットも外し、靴や靴下も止め 素足で歩かせてから活発に動くようになった。足を交互に運び 足の甲で引き摺るのも少なくなり 上手に歩いているかに見える。唯 車椅子を外すと立てる時間は以前より短くなったような気がする。足の筋肉が衰えてきたのか?一進一退である。でも、お尻を持ち上げるように移動している事があり「その調子!頑張れ リク!」って心の中で祈ってしまう。焦らず歩ける日を待とう。
快眠、快食、快便である。身体のあちこちに湿疹が
出るのが気になる他、おしっこを取っている時 フーッとため息を付く。やっぱり辛いのかな?つい不憫になって甘やかしてしまう。これで良いのかな?

自分の足で歩きたい

我が家では 主人と私は別行動である。仲が悪いから(?)ではなく出来るだけリクを一匹にしないようにと主人が気にするからである。今日は珍しく一緒にウオーキングに出ることになり 仕度を始めると 感の良いリクは「僕も行く!」とばかりに玄関まで先回りをしている。7キロのリクを抱っこして歩くのは大変だけど連れて行くことにした。下三橋遺跡の発掘現場辺りまではリクにとっては 初めての場所である。キョロキョロされると重さが倍増する。それでも無事家の近くまで帰ってくると もう知ってる!って感じで 今度は降ろして欲しいという。後足を支えながら歩かせると 嬉しいのか生き生きと歩き出した。自分の4本の足で歩くのだったら 良いが後ろで支えながら這いずり回るように付いて行く私はヘトヘトだ。通りかかった人が 車椅子なしで歩けるようになったのですかと 訊ねられるほど 早く歩く。こんな日が何時か来ると信じて・・・

歩いた?!

2005年も過ぎ 新しい年になった。リクは相変わらず 湿疹が出来、最近は痒いらしく自分の後足で掻くことが出来ないので辛そうである。何が原因か判らず、以前与えていなかった薬が原因だろうかと思ったり、食事も入院中食べなかった時の贅沢が身についてしまったのが悪いのか あれやこれや考えてみるが又しても湿疹は出来る。
そんなリクも 少しづつ足がしっかりしてきたように思う。猫を追っかける時 後足を上げるようにして移動出来るようになったし、尻尾もよく振るようになった。 これが リクの歩き方なのだろうか?「歩いた!」という大感激の場面を想像していたけれど、そんなに変化なく こんな調子で何となく歩いたような そうでないようなものなのだろうか?それでも、日に日にそんな歩きをすることが多くなった。
昨日はお天気も良く
 買い物から帰ると待ってましたとばかりに「僕も行きたい!」と飛び(?)ついてくる。丁度リクの友達トシちゃん宅へ行く用事があったので、自転車の前籠に乗せて連れて行くことにした。大好きなトシちゃんのおばちゃんを見るなり 嬉しくて飛びついた。その時お漏らしまでしてしまった。おばちゃんにいつも抱っこされている弟のハルちゃんはちょっと嫉妬しているようだったが お兄ちゃんのトシちゃんはお父さんの所へ行って「リクが来たよ!」って報告に行ったようだ。

お正月前後は 私の仕事が休みで 四六時中傍にベッタリだったリクは 久しぶりに外出先から帰宅すると もう離れない。首元にしがみついて以前にも増して甘えん坊になってしまった。

あれから もうすぐ10ヶ月になる。

5才になりました

1月31日から2月16日まで 東京から2匹の仲間が来宅。
2才のアイアイと3才のモモは元気いっぱい 庭をおもいっきり走り回ります。リクも負けてはいられません。車椅子で走ったり、ハーネスで植え込みの中まで入っていったり、お母さんに後足を持ち上げて貰って走り回ったり 毎日が楽しい日々でした。
リクは25日が誕生日ですが みんなが居る間にお誕生会をしました。リクは食べない割には太りやすく 8キロもあります。甘えん坊でお母さんにしょっちゅう抱っこされていますので 重労働なのです。それに足に負担が掛かるのは良くないので太らないようにしなければなりません。丁度バレンタインデーでもあり ハート型のチョコレートケーキになってしまいました。お祝いといっても写真を写すのが目的みたいなものでリクはチョコレートは好きではないし 犬には良くないのは判っているのです。モモとアイアイは人の目を盗んでちょっと甞めてみたのです。それでも預かっている間に太らす事は厳禁だったので
 ほんの少ししか貰えませんでした。

そんな日々も 何時までも続けられないのです。お迎えに来た2匹のママに連れられて 又新幹線に乗って帰ってしまいました。乗り物にも段々慣れてモモはゲージの中で眠り、アイアイはお膝で眠りながら無事東京のマンションへ帰りつき「ヤッパリ家が一番良い!」なんて思っているのかな?ご苦労さんでした。


リクは 又元気を取り戻し足も少しずつしっかりしてきたようです。

 リクちゃん お誕生日おめでとう
  5本のローソクとケーキ


車椅子のマロンちゃん

リクがこんな状態になって すがる思いであっちこっちのHPを検索してみたのに気が付かず 今頃になってひょんなことから以外に近くに同じ先生の世話になったマロンちゃんのHPが見つかった。早速メールを出したら、励ましやアドバイスをいただき HPにリクを載せていただいたり リンクまでしていただいた。心強い限りである。
         


その後のリク

モモ アイアイが帰ってからのリクは 思った通り元の黙阿弥。食事も散歩も2匹につられて行動していただけだった我が儘な食べ方しか出来ないし あんなに歩き回っていたのに・・・多頭飼いしなければダメなのか?猫ではモモたちの代わりにはならないのか?
朝から 雨が降り続いてリクも中々外に出してやれない。家の用事をしていると何か訴えに来る。「又おやつ?」あまりご飯を食べずおやつばかりねだりに来る。何度も来るのに ハッとお昼のおしっこを取っていないのに気が付いた。「ごめんごめん!おしっこやったね!」というと 何時ものお座布団に横になって取って貰う体制になる。人の言葉をよく理解する。その割には こっちの方が鈍感だ。何もかもマヒしている訳ではない。ずっと彼の傍に居てやらねば・・・反省の日でした。


あれから 1年

リクが こんなことになって今日15日で丁度一年になりました。過ぎ去ってみれば随分長い道のりだったような気もするし、あっという間だったようにも思う。しかし、あの日のことは鮮やかに思い出す。一生忘れられないのだろうか?あの日一日傍で様子を見ていてやれれば こんな事にならなかったのではないかと思うと 今日は出かけたくない気分である。いっぱい心配もしたけれど、この子のお蔭で知り得たこともたくさんあった。それに何より 快方に向かっていることは大きい。まだ、歩けるようになったとは言えないけれど、お水を飲む時や ネコを追っかける時 立っている、歩いているのに近い格好であると思う。車椅子では後足を引き摺ることが少なくなり交互に運んでいる。今朝は 大好きなトシちゃんが散歩に出て来た。 遥か向こうの公園辺りに居るのを 察知して 家の近くに来てくれるのを待った。久しぶりにちょっと不自由なじゃれ合い方ではあったが 遊ぶ事が出来た。きっと奇跡は起こると信じて、これからも一緒に頑張りたい。

アレルギー

たった3日間だったけれど モモとアイアイは里帰りをし 又元気をもらったようだった。
しかし、アレルギー症状が酷くなり夜中も痒がるようになったので 血液検査をすることになった。健康保険に加入していないリクは ちょっとタイヘンだったし 食事制限が多くなるとは云われていたが樂になればと検査をお願いした。結果が判るまでも痒みが軽減されるように 内臓の検査もし薬も処方してもらった。抗生剤、消炎剤で 大分樂になったらしく夜はよく眠れるようになった。
10日ほどで血液検査の結果が出て思った通り「鶏肉、大豆、米、小麦、玄米、トマトのしぼりかす」などに陽性反応が出た。今までのドッグフードはダメになり 何種類かのサンプルを頂いた。
又 ハウスダスト、ダニ、カビもダメ、何故かコットンにも反応が出た。この辺りは防ぐのが難しいけれど 出来るだけ掃除をしなさいと言うことだろうし、お米やパンがダメでも人間と違い ドッグフードがあるから 人の子に出るよりは気が楽である。でも、今まで我々の食事時 側で一緒に食べていたものが 急に貰えないことを理解できないだろう。
主人は 自分が食事制限されたように落ち込んでいる。
こんな風になってから 益々愛おしいという気持が大きくなり リクに接していると自分の気持が優しくなるような気がしていた。先日TVを見ていると 認知症になった奥さんの介護をされている方が どんどん自分の気持が優しくなるのを感じるとおっしゃっていた。妙に共感を覚えた。

暑かった夏もようやく盛りを過ぎ猫のヤンと遊んだり叱られたり 鼻で転がしたボールを拾いに行ったりよく遊ぶようになった。
餌は特別療養食・皮膚アシストを食べ、アトピカという高い薬を飲んでいる。
最近、ウンチを知らせたりすることも多くなったので獣医さんのアドバイスもあり お昼間のオシッコもカテーテルで抜かず庭でさせるようにしている。
ウンチやおしっこが判るようになりつつあるかな?シッポもよく振るようになったし、随分進歩している。
この調子が続けば良いんだが・・・
もうすぐ
1年半になる。

2007年が明け リクも元気に新年を迎えた。
あまり好きでないマッサージやお風呂での運動も頑張り少しずつ歩けるようになった。その様子を見ていただきたいとカメラを向けると動かないが 調子のよい時はもう少し上手く歩ける。 

       Movie.wmv へのリンク
       クリックしていただくと リクの歩く姿が見られます。

あれから2年

早かったか長かったか ちょっぴり複雑な気持ちではあるが、3月15日 丸2年を迎える。
あの時、先生には「このまま眠らせますか?」と言われたけれど この2年にリクから教えられたことが一杯あった。何より頑張れば 楽しいこともたくさんあることを教えてくれた。確かに経済的には大変だったけれど それ以上に喜びもあった。
今日は 雲ひとつない快晴である。猫のヤンも外へ出たがり、同じようにして欲しいリクも 家の前の緑地へ出すと お友達のピーチちゃんが通りかかった。吠えるピーチを散歩させるお姉ちゃんは帰ろうとする。リクは必死に追いかけた。
走った!とっても早い!こんなに走って大丈夫かと 心配になるほど。
「奇跡の犬」なんて題名を付けて 如何なのかと思ったこともあったが、やっぱり奇跡は起った。
こんな日が続いてくれることを願って このページも一応締めくくりたいと思う。お読みいただいた皆さんに感謝して。2007/3/1

                                           
                                      (おわり)

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