筆の製造工程

1、選毛 

 筆の太細、柔剛、長短、優劣等に応じて、
 必要な原毛を選別する。

                        2、煮沸

                         消毒、および毛癖や油気を除去するため、
                         煮沸して矯正する。

  3、毛抜き

 原毛中の綿毛、雑毛、薄皮などを金櫛で抜除する。

                         4、毛揉み

                          抜き取った毛に、籾殻灰を振り掛け、揉み皮で、
                          癖や油気を除去する。

 5、毛寄せ

  癖の直った毛を少量あて寄せ金の上に乗せ、
  小板で打って毛先を揃える。

                         6、平目

                          揃えた毛を水に浸し平たく整える。

 7、寸切り

  毛先の揃った中から、逆毛を除去し、平たくした
  毛に分板(ぶいた・定規)を当て、毛の根元を
  必要な寸法に切る。(命毛)

 8、形造り

  命毛に喉毛、腰毛を各々寸法に切り、段々に
  組み合わせ、形を整える。(試作)

                         9、練り混ぜ

                          重ね合わせた毛をムラのないよう入念に練り
                          混ぜ、先の悪い毛を除去する。

                        10、芯立て

                          練り混ぜた芯毛に糊を加え、一本の量に分割し、
                          「コマ」に挿入、不良毛を取り、一定の太さに作り
                          自然乾燥する。

                        11、上毛着せ

                          乾燥した筆芯に、白、茶色などの馬毛、羊毛、
                          栗鼠毛狸毛等の化粧毛を丁寧に巻き付ける。

     
12、お締め

  充分に乾燥した穂首の根元を、麻糸で縛り、
  焼鏝で焼き強く締め括る。

                        13、繰り込み

                          軸の内部を小刀でえぐり切り、接着剤で、筆管に
                          穂首を固く取り付ける。

  
  14、仕上げ

  筆軸に取り付けた穂先を、糊で固め、形を整
  えて乾燥する。

                        15、筆銘

                          仕上がった筆軸に、刻字、焼印、または印刷
                          ラベル等で、筆銘を書き入れる。

「奈良筆」の特質

各種の原毛を混ぜ合わせる場合、通常「盆混ぜ」製法(数種の獣毛の分量や寸法を決
め、盆の上で一度に混成してしまう)であるが、奈良筆は「練り混ぜ法」で、各種の原毛を
個別に平目(毛先を揃え水に浸して固める)を行い、毛質に応じて慎重にその配分と寸法
を決めて混ぜ合わせるため、高度の技術を要し、その工程は煩雑となるが、造筆の極め
手と言われる毛組みにおいて、充分な手間を掛けるため、穂先の仕上がりに絶妙の味が
生まれる。

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