「どうしたんです?」
「なんでもないわ」
彼の姿を見るたびに、私は希望を信じたくなる。
絶対に救ってくると思うから。
「中学生になって、あの子達はどう?」
「どうとは?」
「欲情したりしないの?」
ぶっとのみかけのお茶を噴出す皆本クンを見た。
どうしても彼をからかうと楽しい。
昔の京介、いや兵部を思い出すから。
「兵部はちょっかいかけたりはしてきてない?」
「今のところは大丈夫です。管理官」
私は目を閉じる。すると見えてくるのは幸せの未来。
きっと皆本クンは救ってくれる。
私は彼と差し向かいでお茶を飲んでいる。
例の別荘に私たちはいた。
「多分、兵部はあの海に現れるわ」
「……あの海?」
「……遠い昔の思い出の場所よ」
管理官、それがわかっているならどうしてみんなに言わないんですか? どうして僕にだけ? と立て続けに皆本クンは尋ねる。
「……わかってほしいのよ」
「何をですか?」
「……兵部に貴方のよさをね」
頼りないところもあるけどこの子はいい子だ。
それをわかってくれれば、多分幸せの未来を信じてくれると思う。
「……神様はとても残酷だと不二子は思うわ」
「神様?」
「……不二子たちは六十年以上も理解しあえないでいるの」
「兵部とですか?」
私は小さくうなずく。差し向かいでお茶を飲んでいる私達は、今二人きりだった。
そういえばこうして京介ともお茶を飲んだなと思う。
そうお茶を飲んだその後、私たちは……。
このお茶美味しいでしょ? と私が訪ねると、ええと皆本クンが頷く。
思い出すのは遠い昔の記憶の残滓。
振り払う為に私は今現在の思考をつむぐ為に目を瞑った。
遠い過去の残滓は消さなければ。
でも……わかりあえるかもしれないという希望が私にはまだ残ってる。
どうしても平行線をたどってしまうけど。
わかりあえるかもしれないという希望が、私をまだ動かす。