「不二子さん、おきているのを見るなんて久しぶりかもしれないね」
さらりと流れる白い髪を私は見る。
黒い髪の記憶が心によぎる。私は声の主に向かって不機嫌な返答を返す。
「どうしてここにきたの?」
「夢を見たから」
懐かしい夢を見たから、会いたくなった。と京介が言う。
懐かしい夢を見た。それは私も同じだった。
だから今日は戦いあうのはやめよう。と思う。
臨戦態勢に入りかけた己をおさめた。
「不二子さん」
「なあに?」
「どうしてここにいつも残ると……」
「不二子、いえ私はね、ノーマルとエスパーは共存できると思うの。だからパンドラのような組織にはいることは絶対にないの」
懐かしい夢を見るたびに、全てを投げ出したくなる。
あの時のように抱きつきたい衝動に駆られる。
その温かい腕に抱かれて、そしてその唇に……。
柔らかい笑みで京介は私を見た。
私はベッドから身を起こす。
そしてベッドの横にたつ京介を見た。
まっすぐに、ただ見た。
「不二子さん、僕たちは……」
「私達は敵同士よ」
でも不二子さんがこちらに来れば……。
「私は信じてる、あの子達を」
「女王たちはパンドラに来る運命だよ」
「違うわ、未来予知は変えられる」
私たちはいつも平行線をたどる。
私達は理解しあえない。ずっとずっとずっと。
優しい瞳で京介が私を見る。
そのたびに思いだすあの懐かしい昔を。
「不二子さん」
「お願いだから呼ばないで、私の名前を」
名前を呼ばれるたびに揺らぐ心。
どうしてもどうしてもどうしても……ゆらゆらと揺らぐ。
ゆらゆらゆらとどうしても揺らいでしまう。
私たちはただ見つめあう。
そして私は深い吐息を一つついた。