『・・・留守か』
美神の事務所まで自ら足を運んだデミアンだったが、そこには、人間もいなけりゃワルキューレもいない。
実際には、誰もいないわけではなく、人工幽霊が留守番をしていた。だが、結界を破って部屋に入って来るような魔族相手に、しゃしゃり出るつもりはなかった。人工幽霊は、その存在を潜めていたのだった。
『・・・どうしたものかな?』
つぶやきながら事務所を出たデミアンのもとへ、蠅の大群が飛んできた。
『ベルゼブル!? 何しに来た!
おまえのようなヘボには用はないぞ!』
『おまえの助手につけたクローン一匹が殺られたろう。
俺としても「蠅の王」のメンツがあるんでな。
このままにはしておけないのさ』
『ケッ!
あさましいハエめ・・・!
それでクローンをまたこんなに・・・』
吐き捨てるように言うデミアンを、ベルゼブルは余裕で受け流す。
『調べものには便利だぞ・・・。
奴らの行き先、知りたくないか!?』
『・・・!!
知ってるなら早く言え!!』
『俺の分身を殺した奴だからな、人間の分際で・・・。
俺が一人で行って、思い知らせてやってもいいのだが・・・』
デミアンとしては、ベルゼブルが美神を始末してくれるのであれば、それでもよかった。だが、そこまでベルゼブルの力を信用出来ない。これ以上失敗されては厄介なのだ。
『もったいぶらずに私にも教えろ。
ちゃんと復讐できるよう、アイデアを貸してやる!』
『相変わらず生意気だな・・・。
まあいい、奴らは妙神山に向かっている。
急げば、おまえでも追いつくぞ!?』
ベルゼブルの言葉は、デミアンに一つのプランを想起させた。
『・・・いや、行かせてやれ』
『何・・・!?』
『ボスに対して、いいみやげになるじゃないか』
デミアンは、
(やっぱりコイツ、頭悪いな)
と思いながら、説明する。
『あそこで神魔が争えば、デタントの流れも水の泡だ。
そうなりゃあ、魔族の勢力分布はどうなる?
我々のような武闘派が、魔界の主流となろう。
ただ殺すより、そのほうが面白くないか!?』
『なるほど・・・。
だが、あの中に入り込まれたら、
いくら俺たちでも簡単には手が出せまい?』
ベルゼブルも、デミアンの意見には心を動かされたらしい。現実的な問題点を煮詰め始めた。
『・・・ああ、そうだ。
だからタイミングが重要だな』
だが、それが面白い。
デミアンは、そう思っていた。
『奴らが妙神山に着いたところを襲撃だ!
門前で大暴れしてやろう。
くっくっくっ・・・』
第二十一話 神は自ら助くる者を助く
「美神さん!!
雪之丞さんも!?
よくぞ無事で・・・!!」
妙神山についた美神たち三人を、小竜姫が出迎えた。例によって、門の外まで出てきてしまっている。
「そちらがワルキューレ・・・さんですか!?」
小竜姫は、雪之丞に背負われた人影に、いぶかしげな視線を向けた。
「そうよ。
魔族だけど、敵ではないみたい。
・・・今はね」
と説明したところで、美神は気が付いた。
「・・・あれ!? なんで知ってるの!?」
考えてみれば、最初の『よくぞ無事で・・・!!』という挨拶も、事情を知る者の言葉だ。
小竜姫が答えるよりも早く、美神は、門のかげからこちらを覗く人影に気が付いた。
「あっ! 横島クン・・・!!
こんなところにいたのね!?」
「『こんなところ』って言い方は、
ちょっとマズイぞ、おい」
後ろで雪之丞がささやいているが、美神の言葉は、すでに小竜姫に聞こえてしまっていた。
「まあ、美神さんですから・・・」
苦笑するだけで、軽く受け流す小竜姫である。特に今は、些細な点にこだわっている場合ではないのだ。
「えーっと・・・。
美神さんといっしょに来てるってことは、
もう事情を隠さなくてもいいんスよね!?」
横島が、顔だけ出してワルキューレに問いかけた。同時に、
『姉上・・・!!』
横島を突き飛ばす勢いで、ジークフリートが外へ出てきた。
雪之丞が背中のワルキューレをジークフリートに受け渡す横で、
「・・・ちゃんと説明してもらいましょうか!?」
美神は、横島に向かって足を進めていた。
勝手にズカズカと中へ入るつもりだったのだが、
『そこまでだ・・・!!』
『バカな奴だ!
魔族が神族の出張所で騒ぎを起こしても、
困るのは私じゃないよ・・・』
空から飛来した声が、美神を止めた。
ベルゼブルとデミアンだった。
___________
「ハエ野郎!!
生きていたのか・・・!!
・・・で、あの中のどれが本物だ?」
ベルゼブルは大群で来ているのだ。知らない者が見れば、一匹が本物で他はニセモノと思っても仕方がない。
『いや・・・。
あれは全部クローンにすぎない。
奴の本体は魔界にいるんだ』
雪之丞の言葉を聞いて、ワルキューレが説明した。
わざわざ人間たちに告げる必要はないかもしれない。だが、今は、ここにいる全員に少しでも情報を伝えるべきだと判断したのだ。
『・・・そして、
子供の姿をしているのがデミアンだと思います。
有名な武闘派勢力の殺し屋です』
ジークフリートも、小竜姫たちに相手の正体を知らせた。
『おや・・・ワルキューレ。
単独任務のはずだろう?
助っ人とはずるいよ・・・』
口ではそう言うデミアンだったが、その顔は、面白がっている表情だ。ワルキューレレベルの魔族が何人来ようと、デミアンとしては、決して負けない自信があったのだ。
「美神さん!!
早く中へ・・・!!
ここは私たちが引き受けますから!!」
と叫ぶ小竜姫だったが、
『ならん!!』
小竜姫の上司が、彼女を止めるためにやってきた。猿の姿をしているが、
『おい、あれは・・・』
『斉天大聖老師までお出ましか。
ずいぶん豪華な受付だね』
ベルゼブルもデミアンも、斉天大聖のことは聞き知っていた。
美神に目を向けてみると、彼女はジッとしている。美神が動き出したらすぐに攻撃を仕掛けるつもりだったが、この様子では、まだ神族をからかう余裕があるようだ。
そうした気持ちを、彼らは顔に出していた。
この挑発を、斉天大聖も受けてたつ。
『かなりの大部隊だな』
と、大勢のベルゼブルを見ながら、つぶやいた。
デミアンも含めて、その数は、全部で三十弱であろうか。
『・・・とはいっても
妙神山全体を攻撃するには少なすぎる。
おまえたちだけで
ここを落とそうというわけでもあるまい!?』
『もちろん・・・。
我々の目的は、そこの人間だ。
渡してくれれば、素直に退くが・・・!?』
デミアンの言葉を聞いて、斉天大聖は、美神に目を向けた。
『つけられたようじゃの・・・。
厄介な・・・』
妙神山の所在地は、別に秘密だったわけでもない。だが、つい、そうつぶやいてしまった。
「人間を守るのも神族の役目です!!
美神さんの抹殺が目的だというなら・・・」
『たるんどるぞ、小竜姫!!
よく考えろ!!
武闘派の魔族の挑発にのれば
情勢の悪化はまぬがれん!
我々は人間界に駐留している神族の代表なのじゃ!
自重せい!』
「しかし・・・!」
斉天大聖と小竜姫の会話の間に、ワルキューレとジークは、少しずつ美神に近づいていた。いざという時に美神をかばうためだ。
だが、人間の美神と雪之丞は、動くことが出来なかった。この場の神魔のレベルを感じ取っていたからだ。すぐに戦いたがる雪之丞でさえも、迂闊に動いてはマズイと判断していた。
『・・・しかし、
人間が人間を助けるのは、全く問題ないぞ』
と言いながら、斉天大聖がチラリと後ろを振り返る。
それを合図にしたかのように、門が大きく開き・・・。
「ウォオーン!!」
辺り一面を薙ぎ払うかのような、広大で強力なエネルギー波が飛び出してきた。
それは、一直線に空へ向かっていく。
目標は、ベルゼブルとデミアンだ。
『ギャアアアアッ!!』
『うわーっ!!』
エネルギー波の範囲は、魔族ですら予想できないほど広域であった。なめてかかっていたせいもあって、逃げる暇もなかった。
ベルゼブルの大群は全てその光に呑まれて消滅し、デミアンも、左脚一本を残して消え去っていた。
「す・・・凄い!!」
「・・・なんだ、今のは!?」
美神と雪之丞が唖然とする中、
「拙者の新技、シロ・メガ・キャノン砲でござる!!」
シロが走ってきた。
後ろからは横島がついてきており、
「最初は俺も驚きましたよ。
・・・マップ兵器みたいなものっスね!!」
と笑っている。
どうやら、仮想空間でやっていたゲームは、格闘ゲームだけではなかったらしい。
___________
「はあ・・・!?」
美神には、横島の言葉の意味は分からなかったが、
「でも、一気に大量の霊力を消費するのが欠点でござる。
フワァ・・・」
あくびをしながら座り込んでしまったシロを見て、技の本質に気が付いた。
誰でもあくびをする時には口を大きく開けるので、それがヒントになったのだ。
(そうか、口から出したのね!!)
GSは人間ばかりではない。美神の知りあいの中にはGS犬もいる。優秀なGS犬のマーロウは、口から退魔の力をこめた吠え声を発することができた。
(その応用みたいなものね。それに・・・)
シロは、もともと口に霊力を集めることができた。人間形態のときは手から霊波刀を出しているが、狼の姿のときは、口から出していたのだ。
(その二つをミックスさせた感じね。
それにしても、凄い威力だわ・・・)
美神がシロの能力について考察している横で、雪之丞もまた、横島と新技についての話をしていた。
「スゲーな・・・。
いったい、どんな修業をしたら、
あんなのが身に付くんだ!?」
「ハハハ・・・。
俺たち、ここの最難関コースをクリアしたからな!!」
「・・・『俺たち』!?
まさか、おまえも・・・!!」
雪之丞に胸ぐらをつかまれた横島は、
「・・・いや、俺は、あんな凄いもんじゃない。
これさ・・・!!」
そう言って、いくつかの玉を見せた。
「なんだ、これは・・・?
ビー玉にしか見えんが・・・」
「俺にもわからん・・・」
横島自身、どこかで同じものを見たような気もするのだが、ハッキリとは思い出せなかった。
せめてヒントになるかと思い、出現状況を説明する。
「ハンズ・オブ・グローリーから変化したから、
霊力が凝縮したものだと思うんだけど・・・」
この時、ジークフリートは姉に肩を貸しており、ワルキューレは何となく横島たちを眺めていた。だが、『霊力が凝縮』という言葉を耳にして、彼女の顔色が変わった。
『それは・・・!!
文珠かッ・・・!?』
ようやく説明がもらえると横島が期待する中、
『・・・そういえば聞いたことがある』
「知っているのか、ジークフリート!?」
ジークフリートまで口を開いた。
だが、横島の質問には首を横に振り、
『その言葉を聞いたことがある程度です。
姉上のほうが詳しいでしょう』
と、ワルキューレに再びトスした。
『その玉を一つ握りながら、
何かイメージしろ!!』
「イメージ・・・!?」
『何でもいい!!
ただし、ひと文字で示せる念だけだ。
意識をひと文字にこめて集中しろ!!』
ワルキューレに指導されるがまま、横島は、一同を見渡した。
(色々と大変だったけど・・・。
とりあえず、美神さんが無事でよかった)
その思いをこめて、視線を玉を向けた。
(美神さんが無事でよかった。
美神さんが無事で・・・。
美神さんが・・・。
美神さんが・・・。
美神さんのナイスバディが・・・)
横島が見つめる中、
「・・・あれ!?」
手の中の玉には、『裸』という文字が浮かんでいた。
『やっぱり・・・文珠だな』
「やっぱり・・・横島だな」
ワルキューレと雪之丞が別々の意味で納得する中、
「横島・・・。
あんた、いったい何をイメージしたの!?」
ちょっと怖い表情で、美神が近づいてくる。
「うわあ・・・!!
違うんです、これは!!
美神さんが無事でよかった、って思ってたら、つい・・・」
「どういう意味じゃあ!!」
詰め寄る美神に対して、否定するかのように手を振る横島。
その手から『裸』の文珠がすっぽ抜けて、美神に向かって飛んでいく。
キィン!!
文珠が光ると同時に、
「あっ・・・!!」
「えっ・・・!?」
「ぶっ・・・!!」
美神の衣類が消滅した。
「何よこれ・・・!?」
両腕で自分の裸体を抱き隠すようにして、美神がその場にしゃがみ込む。
『横島!!
今度は「服」をイメージしろ!!』
「え・・・?
わ、わかった!!」
ワルキューレに言われて、別の玉に『服』と入れる。
水着やレースクイーン・コスチュームなどをイメージしないように努力して・・・。
『服』という字が浮かんだ文珠を美神に投げつけると、美神の姿は、いつものボディコンに戻っていた。
『・・・これでわかったと思うが、
文珠というのは、霊力を凝縮し
キーワードで一定の特製を持たせて解凍する技だ!
今のは具体例が悪かったが・・・。
使いようによっては
どんな魔族も神族も倒すことができる・・・!』
ワルキューレの解説を聞いて、
「・・・なんか今、
凄くもったいない使い方をしたんじゃねーか?」
と嘆きながら、雪之丞が横島を眺める。
視線の先では、その男が、美神に追いかけられて走り回っていた。
___________
「・・・まあ使い方はともかくとして。
あいつがスゲー技を身につけたのは確かだな」
雪之丞は、小竜姫と斉天大聖のところに歩み寄った。
「・・・あいつはライバルなんでな。
急に差をつけられたら、たまらん。
俺にも同じ修業、頼むぜ!」
いつのまにか、美神も近くに来ており、
「私にもお願いできる?
後輩にぬけがけで追いぬかれちゃ
たまんないしね!」
と言い出した。
その『後輩』二人は、一人は座り込んだまま眠ってしまっており、もう一人は美神にシバカレて倒れている。
「・・・雪之丞さんは構いませんが、
美神さんはダメです!!」
「どうしてよ!?」
「あなたの能力は成長期を過ぎています・・・!
危険だわ!」
小竜姫と美神が押し問答を始めそうになったが、
『・・・まずは中に入らんか?』
と、斉天大聖が仲裁に入った。
『奴も、いつまでも休んでいるわけじゃなかろう!?』
斉天大聖は、文珠騒動の間も、残されたデミアンの左脚を凝視していた。
その言葉を合図とするかのように、
『なんだ・・・。
知っていたのかい!?
人が悪いなあ・・・。
いや「猿が悪い」とでも言うべきかな・・・』
左脚からモコモコと肉が盛り上がり、デミアンの全身が復活した。
___________
先ほどのシロの一撃は、デミアンとしても危なかった。
デミアンの少年の姿は、ただの肉の塊にすぎない。その中に隠された小さなカプセルが、彼の本体だった。
その秘密を知られない限り負けることはないと自負していたのだが、保護している肉塊ごと本体を消滅させられては、終わりである。肉体全体で逃げる余裕はなかったが、とっさに本体の核だけを、光線の範囲外である足先へ移動させることができた。だから助かったのだが、かなりギリギリのタイミングだった。
そして、このまま死んだフリをしようかと考えているところで、声をかけられてしまったのだ。
(さっきの光線を放った奴は、寝ているようだな)
これは、デミアンとしては好都合だった。しかし、
(文珠・・・。
ウワサにはきいたことがある・・・!
これを使える人間か・・・!?)
敵は、文珠という恐ろしい技を編み出していた。
(まだ使いこなせないようだが・・・。
それならば、今のうちに殺るしかないか)
そう考えて、デミアンは、体を復活させたのだった。
___________
『ここは若いもんにまかせて、
と言いたいところじゃが・・・』
斉天大聖は、シロの方にチラリと視線を向けた。
『犬の娘は、まだ寝ているようじゃのう』
シロの新技は、破壊力もその範囲もバツグンだ。ただし、一度発射してしまうとしばらくエネルギー切れになるという欠点があった。
『・・・ならば、今度は小僧のターンだな』
斉天大聖の眼光が、横島を射すくめた。
「・・・え!? 俺っスか!?」
オロオロしてしまう横島であったが、美神に叩かれたダメージは既に消えていた。横島本人が、スキンシップ程度と認識しているせいかもしれない。
『僕も加勢しますよ。
ここでも魔族同士のこぜりあいなら、
大した問題になりませんから』
『・・・もともと私の任務なんでな』
ジークフリートとワルキューレが立ち上がり、横島をサポートするかのように近寄った。
『・・・そういうことじゃ。
文珠もあることだし、何とかなるだろうよ。
ほれ、行くぞ、小竜姫!!』
そう言って、斉天大聖は、シロを抱えて引っ込んでしまう。
(横島さん・・・!!)
小竜姫も、意味ありげに横島を一瞥してから、斉天大聖に従った。
「あっ、待って!!」
「おい、修業・・・」
美神と雪之丞も、中に入っていく。
『させるか・・・!!』
美神の背を貫こうとして、デミアンが腕を槍のように伸ばした。だが、そこにワルキューレが立ちはだかった。
ドスッ!!
槍手が、美神の代わりにワルキューレの体へと突き刺さる。
それを見て、
『姉上・・・!!』
ジークフリートが叫ぶが、ワルキューレ本人は冷静だ。
『痛くないと言っては嘘になるが・・・。
私は大丈夫だ。
それより、あいつをよく観察しろ!
あれだけ体が吹き飛んでおきながら再生したんだ、
何か秘密があるはずだ!!』
こうして、三対一の戦いが始まった。
___________
「それじゃ雪之丞さん、ここに座ってください」
雪之丞は、椅子が三つある小部屋に連れてこられていた。
それは、仮想空間へ瞬間移動するための場所だった。
ジークフリートは門前で戦っているため、今回は、小竜姫が案内役を務めている。
「ここに座れば霊力が一瞬で加速されるのね?」
部屋の入り口には、美神も立っている。
結局、自分も同じ修業を受けたいという願いは却下された。だが、せめてシステムを見学したいと言い張って、ここまで連れてきてもらったのだ。
「ええ。
でも、座るのは私と雪之丞さんだけですよ!?
あなたはダメですからね!?
絶対にダメですからね!!」
小竜姫が釘をさす横で、
「おいおい・・・」
雪之丞が、呆れたように笑っていた。
「何です?」
「小竜姫さんよ、あんた、
まだわかってないのかい!?」
そう言って、雪之丞が視線を向けた先では・・・。
「あっ!! いつの間に!?」
小竜姫が気付くよりも早く、美神がすでに椅子に座っていた。
「案内役なんだろ?
あんたも早く座らないと・・・!」
と小竜姫に声をかけて、雪之丞も椅子に座った。
「もうっ!! 美神さんったら!!
ダメだって言ったのに・・・!!
もうっ・・・!! 」
あきらめた小竜姫も、残った椅子に座った。
そして、三人は、斉天大聖の作った空間へとジャンプする・・・。
___________
『・・・なんだい、この攻撃は・・・?
マジメにやれよ!』
門の外では、ジークフリートとワルキューレが、魔族正規軍のピストルでデミアンを攻撃していた。しかし、
『精霊石弾が効かない・・・!?』
『チッ・・・!
やはり普通じゃないな・・・』
デミアンの体に穴はあくのだが、全くこたえていないようだった。銃弾が穿った穴も、すぐに中から肉が盛り上がってきて、塞がってしまう。
二人に挟まれる形の横島は、
「あの・・・。
俺は、どうしたら・・・。
なんて文字を入れたらいいのでしょうか・・・?」
とワルキューレに尋ねるが、
『バカ者!!
自分で考えろ!!』
と一喝されてしまった。
(そうだよな・・・)
横島自身も、ワルキューレの言葉に納得する。
どういう文字を込めるか、それを考えることも、文珠を使う上でのトレーニングなのだ。
説明された通りであるなら、これは、確かに応用範囲の広いシロモノだ。だが、使いこなせなければ、宝の持ち腐れである。
(『裸』と『服』しか出せないようじゃ・・・。
セクハラには役立つだろうが、
GSの武器にはならないよな・・・)
入れるべき文字を瞬時に実戦で思いついてこそ、有意義なのだ。
(今、この場合は・・・)
横島は、真剣に考えていた。
___________
「いくら文珠があるとはいえ・・・。
横島さん大丈夫かしら・・・!」
お茶をつぎながら、小竜姫がつぶやいた。
「安心して・・・!
ああ見えても、結構あいつ頼りになるから。
それに、一秒とたたずに外へ戻れるんでしょ?
私がドーンとパワーアップして、
助太刀してやるわ!!」
その横に来て腰をおろす美神。少し前までゲーム猿の相手をしていたのだが、今は、雪之丞が代わっている。
「雪之丞さんだけなら、そうですが・・・。
あなたもいますから!!」
「・・・え?」
「あなたの場合霊的成長期のピークを過ぎてます!
パワーはあるけど彼らほどの柔軟さは失われてるんです」
美神が来てしまったので、ここに適応して外に出るまでの時間も変わる。中で経過する時間は同じでも、外に戻るには数分はかかるだろう。
小竜姫の説明を聞いて、
「・・・何それ!?
話が違うじゃない!!」
美神が表情を変えるが、怒りたいのは小竜姫のほうだ。
「何言ってるんですか!!
だから来ちゃいけませんって言ったのに!!
勝手についてきたのは美神さんじゃないですか!!」
二人がケンカ口調なのを耳にして、ゲーム中の雪之丞が、言葉だけを二人に投げかけた。
「おーい!!
自業自得って言葉知ってるか?
今回は美神の大将が悪いだろうよ。
・・・な!?」
口は悪いが、雪之丞なりの仲裁であった。
___________
『・・・なにブツブツ言ってるのさ?
来ないならこっちから行くぜ!』
その言葉と共に、デミアンの正中線が割れた。そこから肉が吹き出してきて、大きな口をもつモンスターを形成する。獣のようにも竜のようにも見える顔をしていた。
「げっ!? 変身・・・した!?」
横島が驚いている横で、
『姉上、今だ!!』
ジークフリートが、強力な魔力弾をぶつけた。
飛び上がっていたワルキューレが、その隙に、
『うおらああッ!!』
空から強力な一撃をバケモノの頭に叩き込んだ。
落下する勢いに加えて、全体重をこめたエルボーである。見事、頭部を破壊したのだが・・・。
『甘いんだよ!!』
ワルキューレの背後で、デミアンの肉の一部が盛り上がり、再び少年の体を形成した。しかも、今度は胸の部分に光る球体を用意しており、そこから強力なエネルギー波を発射する。
「ワルキューレ!?」
『姉上えぇーっ!?』
横島とジークフリートが叫ぶ中、ワルキューレは背中から腹部を貫かれ、地面に倒れ込んだ。残った一枚の翼も、今の攻撃で、もげてしまっていた。
『私にダメージを与えられる者などおらん!
相手が悪かったな、ワルキューレ・・・』
デミアンがワルキューレを見下ろす。
それを見た横島が、
「そうだな・・・。
ダメージを与えても再生してしまうというなら・・・」
何かを思いついたかのように、つぶやいた。
文珠に入れるべき文字が決まったのだ。
(だが・・・。
本当にそんなことが出来るんだとしたら、
ちょっと極悪すぎるぜ・・・)
横島の顔には、悪役のような笑顔が浮かんでいた。
___________
「魔族はもう時間能力者を追ってない・・・!?
それって・・・」
「能力者を追っていたのは
あなたを見つけだす口実だったのではないでしょうか。
美神さんが連中のリストに載って以来
魔族はその動きをとめました」
美神と小竜姫は、今、外の景色を眺めながら話をしていた。
まだ仮想空間の中なので、ここでは長い時間が経っている。ケンカしかけた二人だったが、とっくに仲直りしたのだろう。
「時間移動はもともとそんな大した力ではないんです。
過去も未来も変えられることしか変えられない・・・。
時間の復元力は
人や神の力よりずっと強いのですよ」
そう言われても、美神としてはピンとこない。
「死んだ横島クンを
生きかえらせたこともあるけど・・・?」
「それは多分
そのままでも蘇生可能だったんでしょう」
美神は、中世ヨーロッパでの事件を思い出してみた。
(完全に死んでいた横島クン・・・。
あれが『そのままでも蘇生可能だった』というの・・・?)
ここで、美神は、その時の様子を詳しく説明するべきだった。
あのケースでは、いわゆる時間移動とは状況が違っていたのだ。少し前の過去へ飛んだのではなく、少し前の自分に成り代わっていた。自分でも『時間を逆行したんだわ』と叫んだように、むしろ時間逆行という概念で説明される現象だったのだが・・・。
残念ながら、今の美神は、その相違点を失念していた。だから、小竜姫の言葉をとりあえず受け入れることにして、
「じゃ、なんで私なの!?」
と、話を続けてしまった。
「わかりません・・・。
神族の上層部も知っているかどうか・・・。
とにかく外の魔族が片づいたら
すぐに上層部へ報告します。
事がこれほど重大ならすぐに神族も
アクションを起こすことになるでしょう。
くれぐれも慎重に行動してください」
___________
門前では、まだ戦いが続いていた。だが・・・。
「これで終わりだ!!」
横島が、デミアンに向けて文珠を投げつけた。
『今度は何だ・・・!?』
文珠の効能は知っているデミアンだが、この人間には使いこなせないと思っていた。
何しろ、生まれて初めての文珠に『裸』と入れた男なのだ。いくら人間が低級とはいえ、そんな馬鹿、聞いたことがない。
『フン、どうせ・・・』
全く安心しているわけではないが、それでも軽蔑する態度をとった。人間の馬鹿一人に怯えたとあっては、魔族の尊厳に関わるからだ。
そんなデミアンの目の前で、文珠が光る。
『なにーっ!?』
その光の中に呑まれるかのように・・・。
ドシュウウウ!!
デミアンの姿が、消えてしまった。
『おい・・・』
『な・・・何をしたんだ・・・!?』
ジークフリートとワルキューレも、その予想以上の効果に唖然としている。
「へへへ・・・。
丸ごと消滅させたんスよ!!」
横島が、サラリと言ってのけた。
「『消』って入れて、
もし透明になるだけだったら困るから、
ちゃんと『滅』のほうを入れましたよ?」
ちょっと自慢げな横島である。
あれだけ時間をかけて考えた結果にしては、ひねりも何もないのだが、それでも本人は満足しているようだ。
(そんなバカな・・・!!
いくら霊力を凝縮したとはいえ・・・。
人間ごときが扱う文珠で、
あのデミアンを消滅させることができるのか!?)
ワルキューレとしては、信じがたい話だった。
文珠が反則的な技だというのは知っていた。しかし、それは上手く応用してこそなのだ。
消滅というイメージで『滅』と入れただけで、デミアンクラスの魔族まで消し去ることが出来るなんて!
これでは、いくらなんでも『反則』の度が過ぎるであろう。
今の話が本当であるならば、正面から自分が戦っても、一瞬で消されてしまうかもしれない。
(横島・・・恐ろしい子!)
ワルキューレは、彼を脅威とすら思い始めていた。
デミアンからのダメージは深く、ワルキューレはかなりの重傷だ。魔界に帰って養生すればすぐに回復するだろうが、今この瞬間は、ケガのせいで弱気になっているのかもしれない。だが、もしそうだとしても、人間に恐怖するなど、あってはならないことだった。
横島の話を否定したいワルキューレだったが、彼が嘘をつく理由もない。それに、目にした事実を無視するわけにもいかなかった。
___________
しかし・・・。
実は、デミアンは滅んではいなかった。
横島が『デミアン』だと思っていたのは、デミアン本体が操っていた肉の塊にすぎない。だから、横島のイメージ通りに消滅したのは、デミアンの『肉塊』だけだったのだ。
守っていた塊が消えたことで、デミアン本体のカプセルは、カランと音を立てて地面に落ちていた。
ただし、戦勝気分に浮かれていた横島たちは、それに気付かなかった・・・。
___________
「ここまでよくやったわ、横島クン!!
トドメは私が・・・」
美神が門から飛び出してきた。だが、
「・・・あれ!?」
そこにデミアンはいないので、拍子抜けしてしまう。
「・・・どうやら終わっちまったよーだな」
美神の後ろから、雪之丞も出てきた。
「あれ!?
おまえ、その姿・・・」
「そうだ。
これが新しい魔装術の装甲だ」
横島が指摘したとおり、雪之丞の外見は、従来とは異なっていた。
甲殻類を想起させるような突起はなくなり、滑らかな装甲になっている。今度の魔装術では、顔の部分は完全に覆われていた。頭の後ろに鞭のように伸びていた二本の角も洗練されて、アンテナのような形になっている。全体として、かつての魔装術ではモンスターのイメージだったのに対し、むしろ、特撮ヒーローを連想させる姿に変わったのだ。
「外見はともかくとして、どれほど強くなったのか、
実戦で試してみたかったんだが・・・」
雪之丞は、何だか悔しそうだ。
(これだから、バトルマニアは・・・)
苦笑する美神だったが、今回に限っては、その気持ちも分からないでもない。そんな美神に、
「美神さんも・・・
パワーアップしたんですか!?」
と、横島が声をかけた。
「まあね・・・。
あんたたちほど劇的な変化じゃないけど、
純粋に『パワーアップ』ね」
美神は、神通棍を取り出して、霊力を込めてみせた。普通ならば棍が伸びて棒状になるのだが、伸びた部分が美神の念の出力に負けて、グニャリと変形している。
それは、もはや『神通棍』ではなくて『神通鞭』だった。
「ム・・・ムチかあ・・・。
ますます女王さまっスね・・・」
横島に言われて調子に乗った美神は、
「ホーホッホッホッ!!」
と高笑いを上げながら、何度か地面を叩いてみせる。
実のところ、単に調子に乗っているわけではなく、そうやって鞭を振るうことで、攻撃範囲などを確かめているのだ。今後、神通棍を『神通鞭』として使うのであれば、それがどこまで届くのか、また、どのように手首を捻ればどこへ鞭が飛ぶのか、そうしたことを理解しておかなければならない。
そのための素振りでもあった。
「信じられない・・・!
彼女の成長期は
もう過ぎてるはずなのに・・・!」
門のかげから美神を見ていた小竜姫は、素直に驚いていた。
その横で、斉天大聖が声をかける。
『あの小娘、人間の中でも
そうとうな変わりダネじゃ。
わしゃおどろかんよ』
「ま・・・まーたしかに
いろいろ非常識な人ではありますが・・・」
小竜姫が苦笑しているが、彼が言ったのは、そういう意味ではなかった。
斉天大聖は、仮想空間で魂に負荷を与える際、霊波をシンクロさせている。だから、美神の前世の秘密に気が付いたのだった。横島の魂にも何か混じっていたようだが、それは微量に過ぎない。美神の前世のほうが、遥かに面白かった。
『それだけではないぞ。
あの様子では、面白いことが起こりそうじゃ。
まあ、見ておれ』
ニヤリと笑う斉天大聖。
彼は、美神の鞭の先を見ていた。
___________
(納得いかん・・・!!
私はどんな魔族にも神にも
こんな目にあわされたことはないぞ・・・!!)
今、デミアンは、肉の塊を全て失い、丸裸のカプセルとして地面に転がっていた。
(それを・・・。
あんなボンクラなヤツに・・・!?)
いくら文珠使いとはいえ、あいつは、どう見ても馬鹿だ。その馬鹿に、ここまで追いつめられてしまったのだ。
しかも、誰も自分の存在には気付いていないはずなのに、先ほどから、近くの地面を何度も鞭で叩いている奴までいる。
(もう終わったと思ってるんじゃないのか!?
だったら早く帰れ・・・!!
いつまでも遊んでいるとは・・・)
本当に、人間の考えることは、よくわからない。
(非常識だー!!
納得いかーん!!)
だが、それが、デミアンの最後の思考となった。
美神の鞭が、デミアンのカプセルに当たってしまったのだから・・・。
___________
グシャン!!
何かが潰れるような音がした。
「あれ・・・!?」
神通鞭を振るっていた美神は、思わず、その手をとめた。
「今、何かを叩き割ったみたいなんだけど・・・?」
とつぶやく美神に、斉天大聖が声をかけた。
『それがデミアンの本体じゃよ』
「・・・えっ!?」
「デミアンの本体!?」
その場の全ての視線が、いっせいに斉天大聖へと向いた。
『なんじゃ、誰も気付かなかったのか!?
情けないのう・・・』
斉天大聖は、ここで、デミアンの正体を解説してみせた。そして、
『口出ししてはならんと思って、
敢えて言わなかったがな。
言われんでも、戦っているうちに
わかりそうなものじゃが・・・』
と締めくくった。
『そうか・・・。
やはり、横島の文珠では
デミアンは倒せていなかったのだな』
ジークフリートに抱えられたワルキューレが、納得している。
(文珠はそこまで凶悪ではなかったのだな。
・・・よかった。
それならば、あいつは普通の戦士だ・・・)
と安心している横で、
「・・・じゃあ、
私があのバケモノにトドメをさしたってこと!?」
「運よくムチが当たっただけじゃないですか。
狙ってたわけじゃないくせに・・・」
「運も実力のうちって言うでしょ?」
美神と横島が陽気に会話している。
それを見て、ワルキューレは、
(やはり『悪運の強さは筋金入り』なのだな・・・)
と、美神を評していた。
___________
「・・・横島クン」
事務所に戻った美神は、横島を自室に呼び出した。
彼の前で、一つのケースを開けてみせる。精霊石を保管しているのと同型だが、このケースは空っぽだった。
「・・・なんです?」
意味が分からない横島が、眉をひそめた。しかし、美神は冷静に宣告する。
「・・・今持っている文珠を、
全部この中にしまいなさい。
今後、あなたの文珠は全て私が管理します」
別に、横島の文珠を全て巻き上げてしまおうというわけではない。『横島を単なる文珠生成工場にして、使うのは自分』などと思っているわけではないのだ。そこまで横暴な美神ではなかった。
あくまでも、文珠を使うのは原則として横島なのだが、ただ、その使用を自分の管理下に制限しておきたいのだった。
それでも、
「・・・いっ!?
そりゃないっスよ!?」
と抗議する横島である。だが、美神はそれをはねつけた。
「あれは精霊石以上の切り札になるのよ!?
・・・特に強力な魔族相手だったら!!
でも、あんたに持たせておいたら、
痴漢やセクハラの道具にしちゃうでしょ!?」
「何言ってるんスか!!
そんなに俺が信用できないんですか!?」
「当たり前だあ!!
今までの行動、胸に手をあてて考えてみろ!!」
これを否定する言葉は、横島にはなかった。
だが、シュンとなってしまった横島を見て、美神の口調が柔らかくなる。
「・・・まったく信用してないわけじゃないけど、
ほら、最初の文珠が『裸』だったでしょ?
あれがね・・・」
顔を上げた横島に、美神は笑顔を見せた。
そして、少し条件を緩やかにする。
「横島クン、まだ十八歳未満なのよ!?
それで『裸』は、いくらなんでもマズイわけ。
・・・だから、十八歳の誕生日まで、
ってことにしましょ!?
それまで私が管理するということで、どう?」
「・・・そういうことなら、それでいいっス。
だけど、俺が十八歳になるまでに
文珠を全部使い切っちゃった、
なんてオチやめてくださいよ?」
横島の口調が軽くなった。
美神も、彼の表情に合わせて言葉を返す。
「私だって、無駄遣いする気ないわよ?
でも文珠しか通用しないような魔族が攻めてきたら、
その時は、ねえ・・・?
だから、
そんなに消費するほどの敵が出てこないよう、
祈ってなさい!!」
「ちょっと、美神さん!!」
朗らかに笑い合う二人である。
だが、しかし。
美神も横島も気付いていなかったのだが・・・。
この作品の中では、原作漫画同様、登場人物の年齢は変わらない。だから、いつまで経っても、横島に十八歳の誕生日は来ないのであった。
(第二十二話「前世の私にこんにちは」に続く)
原作ではデミアンが事務所に襲撃した時、ワルキューレや美神と一戦交えますが、あれもワルキューレがいればこそ。
第二十話で書いたように、この作品では、雪之丞がいたために、
「ワルキューレを残していく」
という原作のイベントが解消しています。そのため、デミアンが来たときには、すでに皆が出発した後になりました。
え? ベルゼブルの群れが来るのが早い?
確かに、原作ではもう少し後に妙神山に出没していますが、直接来たのか、あるいは、
「あの人間の女はどこだ?」
と人間界を探しまわってから来たのかは明記されていません。後者はかなり強引な解釈ですが、そういうことにしておいてください。
原作ではデミアンは、ワルキューレの中に残った自分の肉片をもとにして妙神山へ行くのですが、ここではそれがないために、
「どうしよう・・・?」
と考えた末・・・。
妙神山へ行く理由として、ベルゼブルに活躍してもらったわけです。
この展開ならば、ついでに、
「頭のいい(というより、頭でっかちな?)デミアン」
「頭脳派ではないベルゼブル」
という対比も書けるので。
こうして原作よりチョットだけ早く妙神山へ行った美神たちですが、(前編で書いたように)横島の妙神山行きも原作より早かったので(それも『チョット』どころではなかったので)、美神が着いた頃には、横島の修業は終わっていました。ゲーム猿さんとの修業は短時間で終わるはずなので、これは無理がない展開だと思ったのですが、どうでしょうか。
シロの新技に関しては、作中で美神の思考として説明させたもの(『マーロウ』と『口から霊波刀』)が、私の発想のキッカケそのものです。これを思いついたことで、原作とは違うベルゼブル戦も描くことが出来ました。
ネタ的には、シロの頭(それも前部)に前髪という『赤い塊』があることを利用して、そこから発射したほうが良かったのかもしれません。でも、そうしたギミックを正当化する理屈は思いつきませんでしたし、そこまでネタに走ることもないと思い、作中のような設定になりました。
デミアン戦は、横島の活躍を抑えたかったため、また、美神の悪運を表現したかったため、
「最後は美神が知らずにカプセルを壊してしまう」
という点を最初に決めていました。そこに至るまでは、すぐには思いつかなかったのですが、書いているうちに、あんな感じになりました。
『裸』文珠の騒動も、当初は全く想定していなかったのですが、書いているうちに何となくあんな感じになりました。初文珠が『裸』になってしまい、書いている私自身、驚いています。
この作品の横島は、「生まれて初めての文珠に『裸』と入れた男」になってしまいました。
しかし・・・。戦闘が終わってホッとしているときに文珠のレクチャーを受けたのですから、こういう展開も起こり得ると思います。読者の皆様のイメージでは、どうでしょうか?
また、そんな展開にしたために、美神が横島の文珠を管理するということになりました。私自身当初は考えていなかった設定ですが、実はこれ、今後の展開には有意義なのです。なお、この文珠管理が強引なオチになっていますが、これがなければ、今回はオチは無しになるところでした。
さて、次回からは平安編です。前編・中編・後編と三回に分けています。下手に展開をいじくるとタイムパラドックスが生じるエピソードなのですが・・・。
ご期待ください。
なお、今回の話を書くにあたって、『今、そこにある危機!!』の他に、『犬には向かない職業!!』『ジャッジメント・デイ!!』を参考にしました。 (あらすじキミヒコ)
最強でも無敵でも無いけど一発逆転の可能性を秘めた最高の霊能。
使い所が難しいでしょうが出来れば大いに活躍して欲しい所です。
ベルゼブル、リアルではアシュと同格の魔王ですがGSでは単なる中級魔族級ではないでしょうか。
本体が魔界にいて分霊(親クローン)を人界に送っていると言うのは二次創作設定だと思ったんですが。
シロ・メガ・キャノン砲、今回のパワーアップでは何気に見た目が一番凄そうな気がします。
『裸』と『服』の文珠は効果が大きすぎな気がします。
『裸』で服が透明になって『服』で元に戻るなら兎も角、消失した服を復元と言うのは問題な気がします。
原作でも文珠で何処まで出来るかはきちんと決まってない様ですが無から何かを生み出すのは出来ないのではないかと思います。
横島のヌル編での復活は宇宙意志の所為だとしか言いようなない気がします。
老師が横島の中のルシオラの霊基構造を微量と判断してますが自分としてはかなりな量が入ってる気がしますがどうでしょう。
ルシが消滅する寸前まで魂を間引いたんですからその量はかなりなものと思えるんですが。
それと老師が美神の前世記憶よりも記憶封印に気付かないと言うのはどうでしょう、強力な封印だからそっちの方が目立つ気がするんですが。
『滅』の文珠、効果が微妙ですね、確かに文珠の効果を考えるとデミの本体が残る可能性も有るのでしょう。
原作でも『護』の文珠でデミ本体を除いて結界を張ると言う効果が有ったので、それを考えると丸ごと消えそうなんですが。
美神の文珠管理はやり過ぎな気がします。
除霊の現場は危険です、霊能と言うのはGSの身を守る力です。
それを一時的とはいえ取り上げると言うのは極端に言えば死ねと言うのと同じ気がします。
原作でも美神が文珠を使った描写は「ストレンジャー・ザン・パラダイス」の『忘』と「甘い生活」の『雨』程度だった筈です。
美神の事だから原作の裏で取り上げてた可能性は有るのですがどんなもんでしょう。 (白川正)
今まで読んでいて、記憶が封印された状態で老師の魂の同期修行ではどうなるんだろうと思いながら読んでいましたが、その答えが何も無く、強烈な違和感がおきました。初めての感想が批評的なものになってしまい申し訳ありませんが、美神さんも横島クンも、物語の中では事務所に帰っちゃいましたので書き込みします。
今までは、作者様が解説されたとおりに見れば、「ああ確かにこんな風になるかな?」と思い、自己完結されていると思いましたので設定についてはスルーしていたんですけど、さすがに文珠を扱う道真公より上位の神である斉天大聖老師の魂の同期修行で、横島クンと美神さんの記憶封印が気付かれる描写が無かったのは、不自然の極みに思えました。
あえて書かないとしているとしたら、それは読者には優しくないです。彼らの記憶を封印していると再三にわたって読者に提示しておきながら、それに気付く存在が居るのに無視するというのは作者様のご都合主義と取られてしまいます。
あえて老師は横島クン達の試みに気付かない振りをするとしたとしても、その説得力ある説明を盛り込むべきです。なぜなら、横島クン達の試みは、ある意味神族・魔族の上層部が嫌う時空の混乱を招く恐れがある為です。しかもヒャクメですらプロテクトを解くのに苦労した美神さんの魂の記憶を老師は面白い前世を持っていると断じているのです。
原作ではこの後出てくるであろうヒャクメに、あえて詳細を教えなかった老師の意図は面白がるという意味で推し量れますが、さてそれは未来の記憶を知らない老師ならばという前提条件が付くのです。
魂の記憶に不自然な封印が為されている修行者が来た。普通の霊能者にこういう事が出来るのだろうか? 肉体である脳の記憶封印ならともかく、魂に対して人間で出来るものだろうかと考えるのではないでしょうか? しかも立て続けに二人も来る可能性にまで考えが及ぶはずです。だって、これはデタントを崩壊に導く過激派の策かもしれないのですから。
まぁ、それ以前にほんの少し封印が綻びかけている横島の封印された魂の記憶に老師が全く気付かなかったというのが、私には一番の違和感となっています。
後はまぁ、文珠を搾取する美神さんは、ちゃんと横島クンを指導する描写が入るならありかなーとは思います。横島クンの煩悩を利用した修行風景とかあれば、最高です(笑) (月夜)
>ベルゼブル、リアルではアシュと同格の魔王ですがGSでは単なる中級魔族級ではないでしょうか。
白川正さんのおっしゃる『リアル』というのは、神話や伝承などを示しているのだと思いますが、確かにGSでは、そうした一般の認識よりは低く描かれていますね。
それでも作品中では『蠅の王』を自称しているので、それらを踏まえた上で、第二十話の中で
>魔族の中には、王や魔王を自称する者はたくさんいる。
という表現を入れておきました。
>本体が魔界にいて分霊(親クローン)を人界に送っていると言うのは二次創作設定だと思ったんですが。
デミアンのベルゼブルへの文句として、原作中にハッキリと
『魔界に戻ったら奴の本体をしめ殺してやる・・・!』
と書かれています。
この発言は、ここで出てきたベルゼブルたちが全滅した後のセリフです。
したがって、この時点で、攻めてきた大群とは別に、魔界に本体がいることは確定だと思っていました。
月編のベルゼブルに関しては定かではないとしても、少なくとも妙神山修業編のベルゼブルに関しては疑問の余地はないように見えるのですが・・・?
>『裸』と『服』の文珠は効果が大きすぎな気がします。
>『裸』で服が透明になって『服』で元に戻るなら兎も角、消失した服を復元と言うのは問題な気がします。
これに関しては、おっしゃる通りですね。
『裸』で服が透明になって『服』で元に戻るというのは、とても合理的なアイデアであり、脱帽です。
せっかく「消滅」のときに透明云々にまで考えが至っていたのに、肝心の『裸』でそれを思いつかないとは・・・。痛恨です。
>横島のヌル編での復活は宇宙意志の所為だとしか言いようなない気がします。
それに関しては、この第二十一話の作中で一つの解釈を仄めかしましたので、それを読み取っていただけたら幸いです。
こうした『仄めかし』、どこまでオブラートに包んで、どこまでハッキリ記述するか、匙加減が難しいところです。もし全く伝わってないようでしたら、またの機会に強調しないといけないので・・・。
>老師が横島の中のルシオラの霊基構造を微量と判断してますが
この『微量』というのは、第四話や第十二話で書いた点を再び強調するために書いたものです。
詳しくは、第二十話のコメントのレスで書いているので、そちらを参照してください。それが、そのまま、
>自分としてはかなりな量が入ってる気がしますがどうでしょう。
>ルシが消滅する寸前まで魂を間引いたんですからその量はかなりなものと思えるんですが。
に対する返答にもなるはずです。
>それと老師が美神の前世記憶よりも記憶封印に気付かないと言うのはどうでしょう、強力な封印だからそっちの方が目立つ気がするんですが。
原作の老師のセリフは、
『あの仮想空間でわしら四人は魂でつながっておったのだよ』
『霊波をシンクロさせてわかったことがある』
となっています。そこから、
「霊波をシンクロさせたことで魂をつなげて、そこで魂の異物感に気が付いたのだ」
と解釈しました。仮想空間に入った修行者の記憶そのものを具体的に見ているのではないし、記憶を視覚化しているわけでもないと思うのです。
しかも、前世の正体まで気付いたかのようなセリフもありますので、そうなれば魔族という前世を重視するだろうと考えました。
>美神の文珠管理はやり過ぎな気がします。
>除霊の現場は危険です、霊能と言うのはGSの身を守る力です。
>それを一時的とはいえ取り上げると言うのは極端に言えば死ねと言うのと同じ気がします。
誤解のないようにお願いします!
美神は文珠を取り上げてはいません!
自分で書いたものを何度も読み返すうちに、
「誤解されるかもしれない」
と心配になって、
> 別に、横島の文珠を全て巻き上げてしまおう
>というわけではない。
>『横島を単なる文珠生成工場にして、
>使うのは自分』などと思っているわけではないのだ。
>そこまで横暴な美神ではなかった。
> あくまでも、文珠を使うのは原則として
>横島なのだが、ただ、その使用を
>自分の管理下に制限しておきたいのだった。
と書き加えたのですが、それでも意図が伝わらなかったようで、残念です。
いっしょに除霊仕事に行く際には、もちろん横島に使わせるつもりで、横島に持参させますし、また、横島単独で仕事に行かせる際には、美神が必要と判断した数だけ持たせることになるでしょう(横島は見習いで美神は師匠なのですから、美神がそのような『判断』をするのは適切だと思います)。
それに、横島には、たとえ文珠がなくても、霊波刀やサイキック・ソーサーがありますよね?
例えるならば、美神が見習い時代に、師匠の唐巣から
「精霊石はね、いざというときの切り札になるけど、決して無駄遣いしていいものではない。日頃から持ち歩くのは、やめなさい。日頃から持ち歩くのは、破魔札と神通棍だけにしておきなさい。いざ仕事の際に、私が、必要な数だけ精霊石を持たせてあげよう」
と言われるようなものです。
・・・と書いても伝わらないでしょうか?
あるいは、この唐巣と美神の例を出せば始めて伝わるというのであれば・・・。反省するしかありません。作中でも、それを例示させるべきでした。
>原作でも美神が文珠を使った描写は「ストレンジャー・ザン・パラダイス」の『忘』と「甘い生活」の『雨』程度だった筈です。
一口に『原作での美神の使用』と言っても、美神自身が文字入れするのと、文字がすでに入っているのを美神が使うのとでは、レベルが違う気がします。
後者の意味では、次の平安編で早速出てきますし、『覗』のようにおキヌが使う(弓に使わせる)例もあります。
そのように横島以外が使うケースもあるので、ここでも、
>文珠を使うのは原則として横島なのだが、
というように、『原則として』という言葉を入れておきました。
以上、私の表現が至らぬところも色々あって、すいませんでした。
それでも、今後もよろしくお願いします。 (あらすじキミヒコ)
>初めての感想が批評的なものになってしまい申し訳ありませんが
いいえ、大変ありがたいです。
なにしろ、御指摘の部分は、些末な部分ではなく、話の根幹に関わり得る点だからです。
実は、月夜さんからコメントをいただいたのは、ちょうど白川さんのコメントへのレスを入力していた最中でした。
そのレスが、月夜さんへの返答の一部を兼ねる可能性もありますが、答えとして十分かどうか分かりません。ですので、出来る限りまっさらな状態でレスさせていただきます(たった今、前話の白川さんへのレスで書いたことも、出来る限り別の言葉でもう一度表現しようと思います。重複するかもしれませんが、ご容赦下さい)。
>今まで読んでいて、記憶が封印された状態で老師の魂の同期修行ではどうなるんだろうと思いながら読んでいましたが
このコメントを見て、非常に大きな衝撃を受けました。
自分でも最初それに関して自問自答したにも関わらず、自己解決した時点で、『自問自答したという経験』そのものを忘れていたからです。
昔のメモを引っ張り出してみました。
この作品を書き始める際の、
「記憶が封印されていることは、どこで明らかになるのか?」
という試行錯誤が書かれていました。
『この設定だと、横島の中にルシオラの魂が混じってるからハヌマンにはバレるよな?』
『いや、僕の考えている『逆行』の概念だと魂は移動していないから大丈夫』
『でもハヌマンは気付けなくても、ヒャクメは気付くよな』
という自問自答が、そこにはありました。
自問自答したということは、自分でも一瞬疑問に思ったということです。それならば、同じ疑問を読者も持つという可能性を考えるべきでした。それを忘れてしまうとは・・・。
特に問題は、「僕の考えている『逆行』の概念だと」という言葉です。この時点では、まだ
「ひとくちに『逆行』といっても、色々な概念があり、それに応じて、影響も変わってくる」
「自分の考えている『逆行』の概念が、必ずしも皆の考える『逆行』の概念と一致するとは限らない」
と気付いていたはずなのに、今ではそれをスッカリ失念していたのです。なんと独りよがりな・・・。
私の考えていた『逆行』の概念は、『記憶のみの逆行』であって『魂の逆行』ではありません。
『魂の逆行』と言われると、その人の本質がゴッソリ逆行するような気がします。
『精神力の強い人』とか『腕力の強い人』とか『霊力の強い人』の場合、その強い精神力なり腕力なり霊力なりが、その人を形成する本質の一部であり、そうした強い力も(ある程度は)『魂の逆行』の場合にいっしょに逆行し得るかもしれません。
しかし、『記憶のみの逆行』というのは、いわば突然若返るようなもの。逆行する前の知識や経験が記憶されているために、『技』は保つことが出来ても、『力』そのものは保てません。ましてや、『魂』という『物っぽいもの』は置いてきています(霊基構造云々と表現されているので、この世界では『魂』はかなり物質的なものだと私は認識しています)。
まずは、こうした立場を序盤でハッキリ示すべきでした。特に、紛らわしいことに、
「そうした『記憶』の逆行にも関わらず、ルシオラの霊基構造という『魂』の一部が付随しきている」
という状況なので、せめて、
「『記憶』の逆行の物語なのに、ルシオラの霊基構造という『魂』の一部までわずかながら逆行してきていた。これは、なぜなのだろうか。その謎は、おいおい明かされるであろう・・・」
ということくらいは書いておくべきでした。
これは、本日、前話の白川さんのコメントを読んでいて後悔した点でもあります。
そして、第二の問題は、私が『魂』を物質的なものとして捉えている点です。『記憶』は(一部視覚化されることはあっても、基本的には)精神的なものだと思っており、その意味で、『魂』と『記憶』をスッパリわけて考えていました。
この考え方が、
『でもハヌマンは気付けなくても、ヒャクメは気付くよな』
の根拠になっています。
しかし、月夜さんのコメントを読んでいて、
「『魂』と『記憶』をわけて考える事自体、一般的ではないのかもしれない」
と思い始めました。コメントの中に、
>魂の記憶
という言葉が何度も見受けられたからです。
>しかもヒャクメですらプロテクトを解くのに苦労した美神さんの魂の記憶を老師は面白い前世を持っていると断じているのです。
という文章や、
>肉体である脳の記憶封印ならともかく、魂に対して人間で出来るものだろうか
という文章などから判断すると、月夜さんの『魂の記憶』という概念が私の思うところの『魂』に、月夜さんの『脳の記憶』という概念が私の思うところの『記憶』に、相当するような気がします。
そうなると、上述の
「『記憶のみの逆行』であって『魂の逆行』ではない」
という話も、
「魂そのものや魂に付随する記憶が逆行してきたわけではなく、脳が持っていた記憶(知識や意識や経験のようなもの)が逆行してきた」
と、やや言葉を補って説明する必要がありそうです。
「彼らの脳の中には、未来からきたという記憶が眠っている。でも、それは魂の中にあるのではなく、脳の中にあったので、老師にも気付くことは出来なかった」
というのが、補足すべきだった説明ということになります。
・・・こうした説明であっても、まだ違和感を解消する助けにはならないでしょうか?
三たび繰り返すことになってしまいますが、
『でもハヌマンは気付けなくても、ヒャクメは気付くよな』
というのが、作品全体を書き始めるときに思っていたことです。
つまり、平安編でヒャクメが登場した際に、
「作品全体を書き始める際に想定していたイベントの一つ」
が発生するのです。
しかし、下手な書き方をすると・・・。
ヒャクメは(親しみをこめて?)役立たずあつかいされるキャラなので、
「ハヌマンが気付かないほどのことを、ヒャクメが気付くなんておかしい!」
と思われる可能性もあります。
月夜さんが書かれたように、
>しかもヒャクメですらプロテクトを解くのに苦労した美神さんの魂の記憶を老師は面白い前世を持っていると断じているのです。
私も、老師はすでに美神の前世の正体に勘づいていると思います。
その意味では、ヒャクメより老師が勝っている部分もあります。当然です。
ただし、私は上述のように『魂』と『記憶』を認識しているので、
「ヒャクメは老師と違って魂そのものを同調させることはできないので、前世の魂の中身までは見れなかった。だが、しかし、記憶方面から探ることで、老師すら気付かなかった『封印』に気付くのだ」
と考えています。
さいわい、ヒャクメが登場するのは次の二十二話です。ヒャクメと老師のアプローチの違い、見えることの違いを表記するには、絶好の機会でしょう。
そこで何らかの説明を書くことで、(この作品では)『魂』と『記憶』は違うということ、だから老師は気付かなかったということを、(遅ればせながら)少しはフォローできるかと思います。
コメントをいただいたのが、二十二話をアップする前で良かったです。
私が住んでいる国では月曜日が祝日だったので(しかも知らずに朝職場に行ってしまい、祝日と知って慌てて帰ってきたという状況なので、一日儲けた気分でした)、週末にかなり筆が進みました。
原稿はすでに二十三話まで一通り書き終わっており、二十四話も半分以上書けています。
今は、二十二話と二十三話に、書き加えることはないか、自分でもおかしいと思う表現はないか、そのチェックの最中でした。老師の件など全く触れていなかったので、これから時間をかけて加筆修正します。
すっかり長くなってしまいましたが。
エピソード単体ではなく、全体のストーリーに関わる点を指摘していただき、本当に本当にありがとうございます。
また冒頭で『衝撃』という言葉を使いましたが、これは
「忘れていた大事なことを思い出させられた」
という場合に受ける衝撃でした。
現実世界で、それを体感する機会は多くないですが、でも、おかげさまで、
「きっと、この作品中で登場人物が『記憶開封』されたときも、(程度はもちろんもっと激しいが)似たような衝撃をうけるんだろうな」
と実感することができました。後々の『記憶開封』場面の描写に活かせるよう、この感覚を忘れないようにします。
今後もよろしくお願いします。 (あらすじキミヒコ)
素早い回答ありがとうございます。おかげで貴作品の違和感がほぼ無くなりました。
脳内記憶のみの逆行という事で、今まで物語内の横島クンや美神さんへの逆行前の未来での彼らの意思が見受けられなかった事が納得できました。
老師も、個人の記憶を読むなどはしないでしょうし。逆にヒャクメは、本当に要注意人物ですね(笑)美神さん達が自覚していないだけに、彼女の好奇心は回避しようもありませんけど。
ただ一点だけ、おキヌちゃんだけが特殊な逆行をしているんだなと推測しました。
なぜなら、この物語が始まった時点ではおキヌちゃんは幽霊であって、肉体は持っていないからです。
しかも原作中おキヌちゃんは老師の修行を受けていない事から、彼女だけにはかなり詳しい記憶を持たせた魂魄の「魄」だけをコピーして逆行させていたと推測しました。
だから彼女だけ、逆行した記憶のプロテクトが甘かったのも納得です。多分に、肉体の方にも美神さん達の様に逆行させてもいるんでしょう。
ある特定条件や状況になると脳内記憶のプロテクトが外れる外部記憶素子を、過去に送っているんだと私は解釈しました。
私はNight Talker様でアフタ−物を投稿しているのですが、自身の作品が魂の記憶を扱った物でしたので、今回の事が気になった次第です。
日本人である私でさえ文章が多々おかしくなる事があるのに、作者様の文章は読み易く誤字・脱字が無い事に感服しております。
次のお話も楽しみ待っています。
追伸:「生まれて初めての文珠に「裸」と入れた男」という後書きには爆笑してしまいました(笑) (月夜)
>おかげで貴作品の違和感がほぼ無くなりました。
優しい言葉を頂き、安心しました。
しかし、作品中の違和感をコメントレスでフォローしているようでは、私は書き手として情けないですね。
それでも、おかげさまで、逆行に関してどのように説明するべきだったか、分かりました。
この逆行の概念の相違を、あとは作品の中でも解説させないといけないのですが・・・。
『魂』と『記憶』の違いに関して二十二話で説明する際に、逆行に関してまで書いてしまうのは、(三人が逆行してきたことはある程度示しつつも、その詳細は敢えて隠しているという作品の形態上)やや抵抗があります。
どういう経緯で逆行してきたのか。
後々、それを解明する機会があるので、その際、『魂の逆行』『記憶の逆行』に触れて、
「なぜ『魂の逆行』ではなく『記憶の逆行』になったのか」
まで説明する予定です。
そのつもりで、数時間前に、『最終七話のための構想ファイルメモ』に色々と書き込んだばかりでした。
二十二話では「今はこれで十分なはず」と思う説明を書きますが、私の判断力のバランスが正しくなくて、それでも「これだけでは読者には優しくない」と思われてしまうかもしれません。
また二十二話でコメントをいただけるようならば、幸いです。
>ただ一点だけ、おキヌちゃんだけが特殊な逆行をしているんだなと推測しました。
おキヌに関して、ここで具体的に推測されてしまうと、後々の展開が・・・(笑)。
しかし、これも、
「作品とコメントレスの説明で、どう思われてしまうか」
を知る一端になります。
おかげさまで、『最終七話のための構想ファイルメモ』への書き込みが、またまた増えました。
>私はNight Talker様でアフタ?物を投稿しているのですが、自身の作品が魂の記憶を扱った物でしたので、今回の事が気になった次第です。
コメントとしていただいた文章からだけでも、月夜さんの書くものに興味を持ちました。ぜひ読んでみたいです。
しかし、今読むと色々と影響されてしまいそうなので、この作品完結後の楽しみにとっておくかもしれません。
「自分が書き手に回ってしまうと(特に終わりの部分のアイデアがガッシリ固まっている長編を書いていると)、読むのが難しくなる」
とは、思ってもみませんでした。再読は出来ても、未読の作品を読めなくなるなんて・・・。
>日本人である私でさえ文章が多々おかしくなる事があるのに、
迂闊なことを書いて誤解させたようで、申しわけありません。『私が住んでいる国では』と書いてしまいましたが、(現住所はともかくとして)私も日本人です。
確かに日本語を話したり聞いたりすることは一ヶ月以上無いこともありますが、少なくとも読み書きは(ネットがあるので)毎日しています。低い文章力の言いわけには出来ません。
>作者様の文章は読み易く誤字・脱字が無い事に感服しております。
これは過分の御言葉です。
文章が下手なことは自覚していますし、誤字もなくなりません。かつて指摘された『吸引』以外に、自分で掲載後に気付く恥ずかしいものもありました(例えば、最初は『霊気構造』と書いてしまいましたし、風水盤も全部『原始風水盤』になっていました・・・)。
月夜さんはコメントの中でも
>美神さんも横島クンも、物語の中では事務所に帰っちゃいましたので書き込みします。
というような味のある文を書かれているくらいです。
こういう好例を見せられてしまうと、文章表現の奥の深さを思い知らされます。
>「生まれて初めての文珠に「裸」と入れた男」という後書きには爆笑してしまいました(笑)
自分でも気にいったフレーズなので、賛同していただけて嬉しいです。
この言葉、作中ではデミアンの内心吐露の形で使ってしまったので、少し後悔しています。美神たちが耳にする形で使っていれば、この作品での横島の新ニックネームに出来たのに(笑)。
(これは、最初のレスで書くべきでしたが)本当に色々ありがとうございました。
作者の私以上に作品の本質を理解して読んでくださっている、そういう読者の存在を知らされることは、とても励みになります。
コメントを書かれないだけで他にも同様の方々が大勢いると信じて、最後まで頑張ります。
今後もよろしくお願いします。 (あらすじキミヒコ)