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GS冥子?

サクラ咲く?(後編)


投稿者名:案山子師
投稿日時:06/ 6/25

 周囲は熱気に包まれていた。
 会場のほとんどが注目する二次試験最大のカード“横島忠夫”の試合がいま始まろうとしている。
 中学三年。六道家所属。式神使いの能力としては中の上。
 だが、それだけなら誰も彼に注目することは無かっただろう。
“文珠”今まで人類が誰一人使うことが出来なかった能力。言霊をこめればそれは万能の力を発揮する最高の代物。市場にもほとんど出回っておらずその値段は精霊石よりもはるかに高い。
 その力を持つ少年が注目を集めるのは当然のことであった。
 そして、その対戦相手は、彼が所属する六道家の跡取り。この試合には会場すべての興味が注がれていた。


 「まさか二回戦で冥子さんと当たるとはなぁ〜・・・・・・しかし、これはもしやチャンスなのではっ!」
 (試合中に何が起こっても事故、そう事故なのだ!! たとえば、あ〜んなことや、こ〜んなことが、いやッ! もしかしたらこんなことも―――――――)
 やはり横島は、どこまでいっても横島だった。
 
 
 「え〜〜横島君と戦うなんて冥子どうしよ〜〜〜」
 「冥子さんこれはGSになるための試練なんです。俺もつらいですが、全力で戦います。だから冥子さんも全力でかかってきてくださいっ!」
 横島の言葉に心打たれ、
 「横島クン――――――分かったわ〜〜〜っ! 冥子も〜〜全力でいくわ〜〜〜」
 「そうです冥子さんっ!! GSになる(あんなことや、こんなことの)ためにっ!! 恨みっこなしですよっ(何が起こっても事故ですよっ)!!」

 ちょっぴし感動的なシーンなのだが、横島の考えが見えては台無しである。


 「それでは試合開始っ!!」

 「横島いきま――――――ぐぼっ!!」
試合開始の合図とともに勢いよく飛び出していった横島だが、冥子の影から飛び出してきたサンチラ、アンチラのカウンターを受けて背後の結界まで引き飛ばされる。
 「よっ、横島クン〜・・・・・・大丈夫〜〜〜?」
 
 「横島選手盛大に吹き飛ばされましたが大丈夫でしょうか? 並のものならこれでダウンも考えられるでしょうが」
 
 「なんの〜〜〜こんなことで終われるか〜〜〜〜ッ!!」
 出会い頭に式神の体当たりを受け背後の結界に叩きつけられたにもかかわらずほとんど無傷なところが恐ろしい。
 
 二人の試合が始まった数分後、会場には彼らの試合を見ようと息を切らせながら到着した人物たちがいた。
 「もお〜〜早くしないと試験が終わっちゃうじゃないの〜〜〜」
 そういったのは、この時代に十二単を着た少女・・・・・・いや、十二単を着た幽霊の少女だった。
 「――――はあ、はあ、はあ、そういわれましても冥夜さま」
 「―――ぜえ、ぜえ、元はといえば、冥夜様がいつまでも寝ているから」
 息を切らせながらやってきたのは、昨日から横島と冥子の応援に行くと言ったのに、まったく起きる様子の無い冥夜を起こして、全力で会場目で走ってきた日光と月光の二人だった。
 「も〜〜男の子でしょ〜〜、私はこんなに元気なのに〜〜、しっかりしなさいよ〜〜〜っ!!」
 自分のことを棚にあげて膨れる冥夜だが、
 「「幽霊と一緒にしないでくださいッ!!」」
 「我々がだって必死にココまで来たのですッ!!」
 「普通の人間なら絶対に追いつけませんよッ!」
 二人の言う通り冥夜は、壁抜け、浮遊、ありとあらゆる力を使ってここまでやってきたのだ。普通の道しか歩けない二人とは違って早いに決まっている。
 「そんなことより〜〜、横島くんどこにいるかなぁ〜〜〜」
 すでに二人のことなど眼中に無いようで、横島の姿を探し始める。
 「そっ、そんなことって・・・・・・」
 「あ〜〜〜いた〜〜〜っ!! 横島くん〜〜〜がんばって〜〜〜〜」
 どこから、ともなくメガホンを取り出してはしゃぎまくる。
 
 
 (やっぱり式神を何とかしないことには・・・・・・)
 「ヤタっ!! いくぞ」
 横島自信も式神を呼び出して、冥子の式神を迎え撃つ。
 アンチラが鋭い耳を振りかざしながらヤタに向かって飛び掛る。そして、術者が無防備になったところを狙ってサンチラの雷が横島を襲う!
 「いくぜっ!! 横島必殺トルネードアタックッ!!」
 掛け声とともにヤタはアンチラの攻撃を体をひねってかわし、その勢いで体を回転させながらサンチラの雷と横島の間に割って入るように飛び込む。
 ギュゥウウウウウウウウウウウウウウウ
 回転の勢いで雷を無理やり弾き飛ばしながらサンチラめがけて一直線に飛来するっ!!
 ギャァアアアアア―――――――
 鋭いくちばしの一撃を受けてサンチラは冥子の影に逃げ込む。
 「サンチラ〜〜っ!!」
 その一瞬、アンチラへの制御が緩んだ。
 「いくぜっ!! アンチラっ!! 横島忠夫バーニングファイアーパーンチっ!!」
 月光、日光の異常な特訓の成果か、式神を完璧にコントロールする横島は、式神が影に戻る瞬間の制御が緩む一瞬を狙って、霊力を込めたこぶしをアンチラめがけて放つ! だが、アンチラは拳が当たるよりも早くに危険を察知すると余裕でその攻撃を回避し、さらに空中で待機していたヤタに向かって再び鋭い耳を振るう。
 ぎゅう!?
 「くッ!! やばいヤタ急速上昇ッ!」
 はらりとヤタの羽が会場に舞う。アンチラの耳がわずかにヤタの翼の先を切り裂さいた・・・・・・が、致命傷を避けたヤタは、上空高くへと浮かび上がる。
 「うう〜〜〜、横島君強いわ〜〜〜どうすればいいの〜〜〜〜」
 ちょっと弱気になる冥子だが、会場の応援席から思わぬ激が飛ぶ。

 「あっそうだ〜〜〜冥子ちゃんに現当主から伝言があったんだ〜〜。冥子ちゃ〜〜ん〜〜」
 いま思い出したといわんばかりに手をたたいてから、冥子に呼びかける。

 その声に反応して二人は、応援席の冥夜の存在に気がつく。
 「冥夜さ〜〜〜んっ!! 応援にきてくれたんですねぇ〜〜〜〜」
 「冥夜ちゃ〜〜ん〜〜〜っ!! 」
 試合を中断して応戦席に振り返る二人に、
 「冥子ちゃん〜〜もしも合格できなかったら〜〜〜、現当主からあれが待ってるって〜〜〜〜っ♪」
 冥夜の一言に、冥子の顔が青ざめていく。
 「あれって一体?」
 そう呟く横島の前で、冥子はハイラと、アジラを召喚する。
 「横島クン〜〜〜ごめんなさい〜〜〜っ! 冥子負けられなくなっちゃったの〜〜〜っ!!」
 「めっ、冥子さん・・・・・・!?」
 今までと違って冥子の表情が、追い詰められたように変わる。
 「ハイラ〜〜っ! アジラ〜〜っ! アンチラ〜〜っ! おねが〜〜い〜〜〜っ!!」
 ハイラは自分の体毛を針のように飛ばし! それに続いてアジラの炎が吐き出されえるっ!
 「ヤバイッ!!」
 それを回避しようと、右に向かってジャンプするが、着地場所を狙ってアンチラが飛び掛ってくる。
 (くっ・・・・・・このままじゃ、冥子さんをどうこうする以前に殺されてしまうっ!!)
 「ヤタッ!! 来いっ!!」
 間一髪! ヤタの足につかまって会場高くに舞い上がりアンチラの攻撃をかわすが、
 「シンダラちゃ〜〜ん〜〜〜っ!」
 上空でほとんど身動きのできない横島に向かって、シンダラが一直線に突っこんで来た。
 「冥子さ〜〜〜〜んっ! 本当に手加減なしなんですか〜〜〜〜〜ッ!!」
 (ごめんね横島クン〜〜、アレだけは〜〜〜いやなの〜〜〜〜〜っ!!)
 「ヤバイ〜〜〜ッ!! こうなったら最終手段ッ!!」
 横島は、急いでポケットの中からビー玉のようなものを取り出す。

 「お〜〜〜とっ!! 横島選手ココでついに文珠を取り出しましたッ!! その力の程に私も興味を持つしだいですっ!!」
 ココで、横島が文珠を取り出したことで会場全体の目が、横島に注目される。
 「シンダラ悪いッ!」
 向かってくるシンダラにかざされた文珠には、『檻』と書かれていた。
 !?
 シンダラの体全体を包むように霊力の檻が現れるっ! 横島は檻でシンダラの攻撃を阻みながら、ヤタの足をつかんでいた手を放し重力にしたがって一気に落下する。
 「これでどうだ〜〜〜〜ッ!?」
 地面にぶつかる瞬間、横島は文珠から手を放し、それを狙っていたかのようにやってきたヤタの足につかまって無事に地面へと着地に成功する。
 
 「すっ、すごいわこれが文珠の力なの」
 「まさか、六道家の式神を一気に四体も封じるなんてッ!」
 自分の試合をいち早く終わらせた美神、エミも、文珠の力に驚きを隠せないようだ。

 「こっ! これはすごい!! 横島選手ッ!! 六道家につたわる式神を文珠を使って四体も封じてしまったっ!!」

 審判長の言ったとおり横島の文珠によって現れた檻はその場にいた四体の式神たちを捕らえていた。
 
 「よし! 今のうち・・・・・・なにッ!!」
 冥子の中から残ったすべての式神がいっせいに横島めがけて飛び掛ってきた!
 「やっ!! ヤバイっ!! もうひとつ文珠をッ!!」
 横島は現在文珠をひとつ作るのに一週間前後かかる。しかし試合で使える道具は一つだけ。ならばと、横島は一週間前からちょうどこの日に文珠が作られるように準備していたのだ。
これなら最初に持ち込んだ文珠に加えてもうひとつ文珠が使えることとなる。
 これが、横島の切り札だったのだが・・・・・・
 「がぁあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
 文珠が出来上がるよりも早く、仲間が囚われたことに危険を感じたのか、残った式神達の容赦ない攻撃が横島を襲う。
 「みっ、みんなそのくらいで〜〜〜」
 ガッキ〜ン!! 冥子がとめようとしたとき、檻に閉じ込められていた式神の力が文珠の檻をぶち破って飛び出してきた。
 12体すべての式神が横島を襲う。
ヤタも12神将すべてを相手にできるわけではないので、被害が及ばないように上空でその様子を見下ろしていた。

 「しょっ・・・・・・勝者、六道冥子ッ!!」
 すべてが終わった後には、もはやなんとも表現しがたい姿にまでぼろぼろになった横島が、会場の床に埋まっていた・・・・・・その手の中には、ぎりぎりで出来上がっていた文珠がむなしく握られていた。

 「よっ・・・・・・横島クンごめんなさい〜〜〜〜ッ!! ショウトラちゃん急いでヒーリングを〜〜〜」
 ようやく式神の暴走? がとまった冥子は急いで横島の元へ駆け寄った。

 「めっ・・・冥子さん・・・・・・俺はもうだめです・・・コレを・・・・・・(ガクッ)」
 震える手でそっと冥子の手に何かを握らせる横島・・・・・・
 「そんな〜〜〜ッ!? 横島クン〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!?」

 「・・・・・・あんたら、終わったんなら早く外に出るワケ」
 「そんな〜〜、ひどいわエミちゃん〜〜〜〜ッ!」
 「それだけできれば大丈夫よ」
 スリスリスリ
 「「・・・・・・」」
 「早く医務室に行ってくるワケ―――――――ッ!!」
バチコ―――――――――――――ンッ!!



 医務室にて。
 「横島クン〜〜大丈夫〜〜」
 ショウトラになめられながらベットに寝かされる横島のもとに、冥夜、月光、日光が入ってきた。
 「惜しかったな横島」
 「だが、なかなかの戦いだったぞ」
 「でも〜〜、横島君かっこよかったわよ〜〜」
 「冥夜さ〜〜んッ」
 月光、日光など眼中に無いかのように冥夜めがけて飛び掛ろうとして・・・・・・ベットから転げ落ちた。

 ドッシ〜〜〜ン

 「横島君〜〜大丈夫〜〜〜?」
 「はっ、はっ、はっ、大丈夫ですよ・・・・・・」
 「まったく、その怪我でよくやるはねぇ〜」
 いつの間にやら、医務室の中には、
 「あなたは確か唐巣神父の―――――」
 「あの美神美智恵の娘―――――」
 「美神さ〜〜んッ!! 俺のことを心配して未に来てくれたんですかッ!?」
 喜び勇む横島を前に、とてもにこやかに言った。
 「ねぇ〜〜横島君〜〜。この試験が終わったら私のアシスタントにならない〜〜」
 「みっ、美神さんの助手にっ!?」
 「そっ! 私もはれてGS資格手に入れたし、来年から本格的に活動する予定なの」
 驚く横島の前に、月光、日光が立ちふさがる。
 「それは困るな!」
 「彼はすでに、六道家と契約している!」
 だが、そんな二人をすり抜けて横島は、
 「この横島忠夫でよけれッ「ダメよ〜〜」」
 即答で承諾しようとした横島に抱きつきながら冥夜が否定する。
 「横島君〜〜、私を捨てる気〜〜〜。そんなことしたら私〜〜、祟っちゃうかもよ〜〜」
 後ろからものすごくドロドロした不のオーラが伝わってくる。
 「冥・夜・さ・ん」
 恐る恐る振り返ると、令子と同じくらい満面の笑みで笑う冥夜がいた。だが、その笑み中に隠されたオーラによって、横島の体からは滝のような汗が流れ出る。
 「美神サン・・・・・・ヤッパリ俺、無理デス」
 ロボットのようにカチコリになりながら横島、それだけ言った。
 「残念ねぇ〜〜今なら奮発して時給700円で雇ったのに」
 「「「「700円・・・・・・」」」」
 はっきり言ってGSのアシスタントで700円とは異常なほど安い。六道家での特訓中に一通りのオカルト知識を覚えさせられた横島にもそれは分かる。
 GSの仕事は、コンビニや、ラーメン屋のバイトとは違うのだ。命の危険がある以上普通のバイトよりも破格の賃金になるのが普通である。
全員が言葉を失った中で美神は、
 「まあ、今回はこの辺にしとくは」
じゃあねと手を振りながら部屋から出て行った。

 (・・・・あの人のところ行かなくて正解だったのかも)
 
 そして、試験会場へ。

横島が、会場から去った後も試合は進み、とうとう準決勝までやってきた。

 「それでは準決勝、六道冥子選手vs小笠原エミ選手の試合を開始しますっ!!」

 「冥子さ〜んっ! エミさ〜んっ! がんばってくださ〜〜いっ!!」
 「「冥子様〜〜がんばってくださ〜〜い!」」
 「冥子ちゃ〜〜ん! 負けたらあれだからねぇ〜〜〜!」
 二回戦で敗退した横島は、応援団として復活していた。

 「冥子、本気でいくから覚悟するワケ」
 「うっ・・・・・・エミちゃん目が怖いの〜〜〜!!」
 エミは懐から人形のようなものを取り出して、
 「冥子〜これがなんだか分かる〜〜」
 人形を握る反対側の手には、短い一本の髪の毛が握れていた。
 冥子がハテナマークを浮かべていると、
 「その式神はとっても厄介なワケ、正面から戦ったらまず私には勝ち目ないから」
 髪の毛がわら人形の中に埋め込まれ、
 「うっ! 動けないの〜〜〜ッ!?」
 「ふふふッ! あんたの式神はものすごく厄介だからあんたの体と一緒に封じさせてもらったワケ・・・・・・でも、これだけの霊力はいつまでも抑えられないワケ、だからすぐに勝負を決めさせてもらうわよッ!」
 「エッ、エミちゃんまって〜〜〜ッ!!」
 霊力と動きを封じられた冥子にエミの攻撃が迫るッ!

 キィイイイ―――――――――――――――――――ンッ!!

 「なっ! これはッ!!」
後一歩といったところまで近づいたとき。壁のようなものが出現してエミ自身を阻む。
 「うっ! うぁああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
そのまま、向かってきた反対方向のベクトルの力を受けて吹き飛ばされる。

 「あれ〜〜? うごけるの〜〜〜〜!?」
 「なっ!? 一体どうッ!! 動けないッ!!」
動けるようになった冥子は、懐から光り輝く文珠を取り出した。
書かれていた文字は『戻』。先ほど横島が渡した文珠が、冥子の危機に発動したのだ。正確には、冥子の恐怖によって垂れ流された霊力に反応したのだが。文珠は、エミの攻撃を返すと同時に今まで自分にかかっていた呪いも術者へと押し戻した。

 「あのエミの呪いを簡単にはね返すなんて・・・・・・すごいわッ!!」
 一足早くに決勝戦の切符を決めていた美神が目を輝かせながらその試合を見つめていた。

 「ありがと〜横島クン〜、天国からも私を見守ってくれているのね〜〜〜( 注:横島は生きています)」
 「くっ、卑怯よ、冥子ッ!! 文珠を持っているなんて聞いてないワケッ!!」
 「えっ〜〜〜」
 「冥子〜〜ッ! なにやってるの〜〜ッ! 今のうちにやっちゃいなさいッ!!」
 近くで見ていた令子が、笑いながら叫ぶ。
 「ちょっとッ令子ッ!! なにいっているワケッ!」
 「え〜〜と〜〜〜、エミちゃんごめんね〜〜〜〜」
 影の中からサンチラが飛び出してきて、
 「ぎゃぁあああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 サンチラの雷によってエミダウン。

 「勝者六道冥子ッ!! 決勝進出ッ!!」
 審判が高らかに勝利を宣言する。
 
 「おおっ!! 冥子様が勝ったぞ―――――ッ!!」
 「やった―――――――ッ!!」
 観客席で大喜びする月光と、日光。
 「冥子さんが決勝ということはッ、相手は」

 「それではこれよりGS資格決勝戦を開始いたしますッ!! 今回最終ラウンドまで残ったのはッ! GS五本の指に入る唐巣神父の教えを受けた美神玲子ッ!! そして、六道家に伝わりし十二の式神を従えるは六道冥子ッ!! さあ、今年度最強の新人の称号はどちらのものにッ!! それでは決勝戦開始ですッ!!」

 「こうなったら冥子ッ!! あんた絶対令子に勝ちなさい――――ッ!?」
包帯でぐるぐる巻きになったエミが冥子に叫ぶ!

 高らかにゴングが鳴り響き、開始の合図と同時に令子が神通棍を持って飛び出したッ!
 「先手必勝ッ!!」
令子の神通棍が冥子に向かって振り下ろされる。
 「くっ! やっぱりそう簡単にはいかないか」
冥子の危機を察知して影から出てきたアンチラが、神通棍を受け止め反撃を狙う。突如出現した式神に一瞬動揺する令子だが、そこは冷静に一歩下がって攻撃を受け流す。
アンチラと、令子の間に戦慄が走る。
そして令子は口を開いた。
 「ねぇ〜冥子、賭けをしない?」
 「賭け〜〜〜?」
なにを言い出すのかと思うと令子は、
 「私が勝ったら横島君(文珠)ちょうだい」
 「え〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!? それは、ダメなの〜〜〜」
 「いいじゃない〜〜ッ!!」
話しながらも目の前のアンチラに対する警戒を緩めてはいない。
 「でも〜〜、でも〜〜」
 「約束だからねっ!」
美神は、アンチラめがけて霊力を放ち目くらましにして一気に勝負をかける。だが、アンチラは鋭い耳で神通棍を受け止めると、美神めがけて襲い掛かった。 
 アンチラと美神の攻防が続く、
 「このままじゃちょっと分が悪いわね」
 そして令子は、式神の隙を突いて冥子めがけて走り出した。
 一直線に向かってくる令子に向かって、サンチラ、マコラが迎え撃とうと出てくるが、
 「パターン丸分かりなのよッ!!」
 今までの試合から令子は、冥子の式神を完全にコントロールしていないことに気づいていたのだ。
 マコラとサンチラの攻撃を右にかわして一気に距離を詰める。
 「これで終わりよ〜〜〜ッ!!」
 「ひぃいいい〜〜〜〜〜〜〜〜いっ!! 令子ちゃ〜〜んっ!!」
  必死に令子の攻撃をかわそうとするが、完全によけきるのは不可能であり、神通棍は冥子の頬を掠める。
 「あ〜〜〜っ!?」
 「くっ、はずしたッ!? でも、この距離なら!?」
 再度攻撃しようとした令子だが、冥子の異変に気づく。
 「なにっ、これは!?」
 冥子の中から霊力が溢れかえり、式神たちがざわめき始める。
 「ふ・・・ふえ・・・ふえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
 冥子の影からすべての式神が飛び出して暴走を始めるッ!!
 「しまったっ! きゃぁ〜〜〜〜〜!!」
 
 「六道選手ッ!! すべての式神を呼び出しましたッ! これは一見暴走しているようにも見えますが、どうなんでしょう」
 (はい。暴走してます)

 「めっ、冥子落ち着きなさいッ〜〜〜ああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
会場の結界がギシギシと悲鳴を上げている。結界が式神の暴走をぎりぎり抑えているから応援席に被害は無いが、中にいる令子にはたまったもんじゃなかった。

それから一通り式神が暴れ周り、叫び声が消えると。結果内の様子があらわになる。
そこには、二回戦の横島と同じように地面に埋まりこんだ令子がいた・・・・・・

 「今年度GS試験優勝は、“六道冥子”さんですっ!!」

 「やったの〜〜〜〜〜っ!」
 「よしッ! よくやったワケ、冥子っ!! これで令子と私の実力は分からないワケッ!」
  


 会場内にはちきれんばかりの拍手が鳴り響く。
 こうして今年のGS試験は、いくつものドラマを生んで幕を閉じたのだった。


 
 「冥子〜〜よくやったわ〜〜」
 試験が終わったその日は、宴会だった。
 冥子さんの優勝を祝って、六道家は盛大に盛り上がった。
 「でも〜〜横島君は残念だったの〜〜〜」
 冥夜の言葉に、
 「まあ〜短期間でここまでできればすごいものよ〜〜、来年こそは合格ね〜〜〜」
 「お〜〜しッ! 来年こそは〜〜〜ッ!」
 


 この日を境に俺は、高校進学のための勉強に入った。両親が、日本に残る条件として高卒を出してきたからだ。
 中学の成績があまりよろしくなかった俺だが、冥子さんたちのおかげで何とか地元の高校に入ることができた。
 そしてこれから、高校入学と共にGSアシスタントとしての俺の物語が始まる。
 


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