椎名作品二次創作小説投稿広場


GS冥子?

友達


投稿者名:案山子師
投稿日時:06/ 5/ 9

 「・・・・・・・」
 「月光、どうやら気がついたみたいだ」
 「俺は一体どうしたんだ・・・?」
 「貴公は、自分の中に眠っていた霊力引き出した」
 「だが、霊力のコントロールをできない貴公は、全ての霊力を出しきって気絶していたんだ」
 ギュウ!
 いつのまに木陰に寝かされていた俺の横で、一本足のカラスが首をかしげながらこっちを見ていた。
 「その式神は、君のものだ」
 「式神を出している間は常に霊力を放出し続けなければならないが、修行にはちょうどいいだろう」
 (そうか・・・・あれから俺・・・・・!?)
 「じゃあ! 俺も今日から霊能力者なんだな!?」
 「その通りだ」
 「おめでとう」
 「「第一段階はクリアだ!!」」
 「へえ・・・・・ッ!? 修行ってこれで終わりじゃないのか!!?」
 「何を言っている。今までのことは貴公の霊力を目覚めさせるためのものだ」
 「これから、悪霊との戦闘訓練に入るからな!」
 「「今の比じゃないぞ!!」」
 (おっ・・・俺は、本当にこの道を選んでよかったんだろうか・・・・・!?)



 「それでは、貴公が口を利ける間に行っておくことがある」
 「ちょいまて!? 口がきけるウチってどういうことじゃ――――っ!!」
 「気にするな万が一のためだ」
 「そうとも保険だと思えばやすいものだ」
 「保険とかそういう問題じゃないだろう!?」
 必死に叫ぶ横島だが、二人は特に気にした様子もなく話しを続ける。
 「文珠とは霊力を凝縮したビー玉のようなものでありそこに念、すなわち思いをこめることでさまざまな効果をもたらすことが出来る」
 「だが、我らも詳しいことは分からん。我らに出来るのは貴公の才能の開花を手助けすることだけだ」
 「その修行の一環としてこれをやってもらう」
 「霊力を一箇所に集中して集め固める修行だ」
 そう言って月光は、懐からレポート用紙みたいなものと、ハサミを取り出した。
 「・・・・・・これで一体どないせいと?」
 「これはだな、こうして。ああして。ココを切り落として―――――よし! 出来た」
 バサリと切り落とされた紙は、見事に猫の形になっていた。
 「だから何だって!?」
 「よく見てみろ!」
 そういわれてひらひらと落ちていく紙を見てみると、
 ミィ〜〜〜〜
 「なッ!? ただの紙切れが―――ッ!? 猫になった!?」
 「これは、式神ケント紙といって六道女学院で150枚、230円で売っている」
 「式神をイメージしやすい姿に切り抜いて霊力を与えることで式神を作ることが出来る」
 「このケント紙で式神を作る練習をすれば、霊力の凝縮に役立つはずだ」
 「せっかくだ一度やってみるといい」
 そういわれて気合を入れてはさみを使って自分も猫の形にケント紙を切ってみる。
 「おっし! これを猫の形に・・・・・・・・」
 チョキ チョキ
 「形は出来る限り正確に切ったほうがイメージしやすい」
 チョッキン
 「切りながら霊力を込めるのをわすれるな」
 チョキ
 「・・・・・・・・」
 「「・・・・・・」」
 「出来た!?」
 ちょっと不恰好だが、猫に見えないこともないように出来ていた。
 チョキッ!
 ひらひらと落ちながら霊力を放ちながらそして――――――!?
 「なぜだ―――――――――ッ!?」
 地面に落ちたに式神ケント紙は、激しい霊波を放っていたが直に何の力もなくただの紙切れに戻ってしまった。
 「霊力が上手く凝縮されていなかったな」
 「漏れが大きすぎたのだ。内部に集める感じでやらないと」
 「くそっ!? もう一回だ!!」
 「何か自分がイメージしやすいものを作るほうがやりやすいかもしれない」
 「!? イメージしやすいもの?」
 月光の言葉にピックと反応を示す。
 「そうだ。式神は術者のイメージによってその姿を変える」
 「簡単に言うと猫や犬と一くくりに言ってもその種類や姿はさまざまだ」
 「自分が昔飼っていたものなどが居ればイメージしやすいかもしれない」
 (イメージしやすいもの・・イメージしやすい者、好きなもの・・・“お姉ちゃん”)
 「おお!! 今度はなかなか上手く霊力がこめられているなぁ」
 「彼はなかなか優秀だな!」
 (お姉ちゃん! お姉ちゃん! お姉ちゃん! お姉ちゃん! お姉ちゃん! お姉ちゃん!)
 横島をほめる二人だが、その頭の中を知ることが出来ないのは良かったかもしれない。
 「よっしゃあ!!」
チョキンと人の形に切り落とされたケント紙は、霊力を纏いながらその姿を変えていく。
女性のようなフォルムが出来上がってきて、輪郭が明らかになっていく。髪は短い。ショートカットのようだ。
 「おっ、おっ、俺って結構すごい・・・!?」
だが、成功するかと思えた式神も完全には具現化することが出来ずに輪郭で相手の容姿がかすかに分かるくらいだった。
 (触覚!?)
その姿は、確かに女性の姿であったが人間にはあるはずのない部分が一つ存在していた。
 『・・・・・・し・・・だお』
横島は、何かを訴えかけようとする式神に取り付かれたかのようにじっとそれを見つめている。
 (俺は・・・コイツを・・知っている・・・・・)
 「おい? 横島どうした?」
突然硬直したように動かなくなった俺に訝しげに聞いてくが、その言葉は俺に届いてはいなかった。
 (だれだ? 俺は、確かコイツを・・・・・・)
 「ウッ!?」
 「どうした!? 横島!?」
じっと自分の作り出した式神を見つめていたかと思うといきなり頭を抱え込む。
 「誰だ!? 誰だ!? 誰だ!? 誰だ!?」
 (あいつは!? ―――ラ―ル――オ―・・・ダメだ! 思いだせない、絶対に知っているはずだ! どうして!?)
 「おっ、おい!? 日光どうしたらいいのだ!?」
 「分からん・・・が、これは尋常じゃないぞ!?」
あまりの出来事にどうしていいのか分からずにいる二人。


 「横島クン〜〜〜」

 その状況を一変するように気の抜ける声があたりに響いた。

 !? 

 その場に居た全員がその声に反応すると、霊力が切れたのか女の姿をした式神は揺らめいて元の紙の姿へと戻ってしまった。
 「「めっ、冥子様!?」」
 「冥子・・・さん」
 「こんにちは〜〜〜。横島クン〜〜〜がんばってる〜〜〜・・・・・・・どうしたの〜〜〜顔色がわるそうなの〜〜〜」
 いつも通りのほほんとした口調で話し掛けてくれる冥子さんの顔がさっきの式神と重なるが、
 (違う・・・・・・)
あの式神は冥子さんではない。
だが、その顔を見ると少しだけ心が和んでいった。

落ち着いたら落ち着いたで今度は、目の前の現実に驚くことになったのだが、
 「冥子さん!? なんなんですか! そいつらは!?」
 冥子さんは角の生えたウマのようなものに乗っていた。その周囲には、他にも犬やトラのような生き物がいる。冥子さんの肩には目玉に尻尾が生えたような意味不明な生き物まで居た。
 「私のお友達なの〜〜〜みんな〜〜〜横島クンにご挨拶して〜〜〜」 
ぐぎゃぁああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!
 「あっ、ああ、よろしく」
挨拶しているらしいが何を言っているのかぜんぜん分からん。
 「そんなことより冥子様!?」
 「どうしてココに!? 」
 「横島クンが〜〜〜ココで式神の特訓しているっていうから〜〜〜応援にきたの〜〜〜」
 (冥子さんが俺を気遣ってわざわざ見にきてくれるなんて―――感激だ! 感激なんだがっ!)
 「あっ、あれって・・・」
 「右からバサラ、メキラ、アンチラ、アジラ、サンチラ、シンダラ、ハイラ、ビカラ、インダラ、マコラ、ショウトラ、そして冥子様の肩に乗っているのがクビラだ」
 「あれぞまさしく六道家に伝わる十二匹の式神」
 「あれだけ強力な式神を一度に扱えるところはすごいのだがな・・・・・」
 (おい、日光)
 (ああ月光そうだな、そうしよう)
 「じゃ、じゃあ、後は若い二人に任せて我らは退散するとしようか。なあ月光」
 「そっ、そうとも。すぐに退室するとしよう日光」
 「「それじゃあ横島。生きていたら明日会おう」」
額に汗を浮かべながら足早に駆け出す二人。そのセリフにとても疑問をもつところだが、今の横島はまったく気づいていなかった。
彼は知らなかった。彼女と式神たちが彼らに何をもたらしたのかを。



二人が去った後、残された横島は冥子の式神たちになつかれて? じゃれつかれて? いた。
 「めっ、冥子さんコイツらは・・・・・」
 「みんな楽しそうなの〜〜〜きっと横島クンのこと気に入ったのね〜〜〜」
(本当にコイツラ俺を気にいってるのか? えさと間違っているんとちゃうやろな?)
 「でも〜〜〜横島クン顔色が悪いの〜〜〜修行〜〜そんなに難しかったの〜〜〜?」
 「難しいというかなんというか、九死に一生スペシャルを一人で番組埋められる感じ」
 疲れた表情の横島に対して冥子は、式神に埋もれている横島をのほほんと見ていた。
 「そうだ〜〜! ねぇ横島クンいいところに連れて行ってあげるの〜〜!? シンダラちゃんお願い〜〜〜!」
 そう言ってトリのような式神を残して残りを影の中にしまい、その式神に乗り込み俺に向かって手を差し伸べる。
 いま、なぜか一人で居るのはつらかった。



 シンダラによる空中散歩を楽しみながら俺たちは東京タワーの最上階までやってきた。
 「ココから見える夕日がとっても綺麗なの〜〜〜横島くんと〜〜最初に会ったのもここだったわね〜〜〜」
 沈みかける夕日は赤く、空をオレンジ色に染めていた。
 「確かにきれいだ」
 いつも見る地上からの夕日よりも何倍も綺麗に見える。
 「私も〜〜気分が沈んだときに〜〜よくココに来るって言ったんだけど覚えてる〜〜〜?」
 確かにココで誰かと会話していた記憶が残っている。そして、何度でもココの夕日を見ようと約束した。
 「俺・・・誰かとココで夕日を見ようって約束していたんだ」
 たった一つそのことだけを思い出すことが出来た。まだ、それが誰だったかは思い出せずにいるが、
 「つらいことがあったら〜〜〜それを分かち会えるお友達が居るといいと思うの〜〜〜。冥子お友達子の子達しか居ないから〜〜〜ずっとそう思ってたの〜〜〜」
 「何を言ってるんですか!? 俺がいるじゃないですか!?」
 一瞬きょとんとした表情になる冥子だが、
 「横島クンは〜〜〜私のお友達になってくれるの〜〜〜〜?」
 「もちろんッスよ!! 何ならそれ以上の関係でも・・・・ぎゃぁ〜〜〜!?」
 嬉々した表情の冥子さんの影から式神たちも喜んだ様子で飛び掛ってきた!
 「ごめんね〜〜横島クン〜〜〜私興奮すると式神のコントロールができないのよ〜〜〜」
 「ハッ、ハッ、ハッ、ダイジョウブデスヨ、コノクライ」
 「横島クンは〜〜私の大事なお友達ね〜〜〜」
 すっと右手を差し出してくる冥子さんに俺は自分の手を重ねた。
 
 

 夕日に照らされる東京タワーの最上階で、体に巻きつく式神達さえいなければもっと感動的なんだけどなと一人心に思う横島であった。
 
 
 
 確かに失った記憶は大切なものだ、思い出せはしないがそう直感できる。
しかし、今日ココで冥子さんと夕日を見たこともそれと同じくらい大切なものだと感じた。


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