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GS美神 アルカナ大作戦!! 〜Endless Expiation〜

Chapter1.MAGICIAN 『襲撃>>反撃』


投稿者名:詠夢
投稿日時:05/ 1/22

「失礼しましたー。」

氷室キヌは、礼儀正しく挨拶をしてから職員室を後にする。

廊下では、級友の一文字魔理と弓かおりが待っていた。


「おキヌちゃん。先生、何だって?」

「うん。美神さんから連絡。学校終わったら、霊災本部まで来なさいって。」


魔理らに向けて微笑みながら、おキヌは答えた。

弓かおりが軽く眉をあげる。


「あら。それじゃあ、今日は午前だけですし、これからすぐ?」

「ええ…あ、私これから中等部にも行ってこないと。」

「ああ、『シロタマ』か。おキヌちゃんも大変だねぇ。」


現在、六道女学園中等部には、すでに名物となってしまった二人組みがいる。

人狼の少女、犬塚シロ。そして、九尾の狐、タマモ。

ともに美神除霊事務所の居候ズは、同じく居候のおキヌが面倒を見ることになっている。


「そんな…二人ともいい子だから、大変なんかじゃないですよ。」

「そうかしら…? 聞いたところでは、所構わず張り合って問題ばかり起こしてるそうですけど。」


弓の言葉に、おキヌの頬に汗が浮かぶ。

それは目の前の友人二人にも言えることなのだが、おキヌはとりあえず言わないでおく。


「そ、それじゃあ、私ちょっと行って来ますね。」

「うん。またね、おキヌちゃん!」

「ごきげんよう。」


級友たちに手を振り、おキヌは廊下を小走りで駆けていった。






          ◆◇◆





美神達は苦戦していた。

複数の敵に対して、戦闘力のないヒャクメと眠り続ける少年を守りながらの戦い。

だが、不利な条件下の中で、彼らはそれでも持ちこたえていた。


「くそっ! キリがない!!」


一体の敵を斬り伏せながら、西条が悪態をつく。

ギィギィと耳障りな声をあげ、周囲を取り囲む異形の者たちを睨みつける。

緑色の体に、不釣合いなほど大きなスプーンを持った子悪魔たち。

そのスプーンの先には、炎が燈されている。

その群れが二つに分かれ、その後ろにいたものが進み出てくる。


「むぅ…やはり『ウコバク』程度ではどうにもなりませんか。」


鎧甲冑とマントに身を包み、手には長槍。

黒馬に跨ったその姿は、さながら中世の騎士の如く。


「何者ッ、目的を言いなさい!!」


美知恵が、敵の火炎攻撃を防ぐための火炎封じの呪符を構えながら叫ぶ。

それを馬上から見下ろしながら、騎士は答えた。


「私は堕天使『エリゴール』。目的はそこの少年だ。引き渡していただこう。」

「残念だけど、いきなり襲ってくるような相手に、そう簡単に渡すわけにはいかないわね。」


すかさず言い返したのは美神だ。

負けん気の強い彼女らしい物言いで、即座に相手の要求を突っぱねる。

西条も美知恵も何も言わないが、気持ちは同じだ。

エリゴールは、やれやれと頭を振る。


「大人しく引き渡していただければ、危害を加えるつもりはなかったのだが……致し方ない。」


ブン、と長槍を美神に振り向ける。

次の瞬間、業火が穂先より迸る。

寸でのところで、美知恵の呪符が間に合い、それは弾かれる。

だが、それを意に介した様子もなく、騎士は高らかに告げた。


「ならば、お相手願おう!!」


その声を合図に、周囲の堕天使『ウコバク』どもが炎を撒き散らしながら踊りかかった。



          ◆◇◆



「何だ、コレ…ッ!!」


横島はその場に足を踏み入れたとき、思わず息を呑んだ。

いくつもの鳥居が立ち並ぶ本部施設前。

その光景に変わったところはないように見えるが、よく見れば結界がボロボロなのだ。

そして、その奥にある本部からは、異様な気配が溢れ出している。


「感じるヒホー!! 凄く強いアクマが、この中で暴れているホー!!」


自分の顔の横に浮かぶ雪ダルマが叫ぶ。

あの後、ノースと名乗ったこの雪ダルマは、なんと横島について行くと言い出した。

最初はもちろん断ったのだが、どうしてもと言って聞かないので、仕方なく連れてきたわけだ。

しかし、こうなると事情を知ってるらしいこいつがいるのは、幾分心強い。

横島は緊張を漂わせる表情でうなずく。


「急ごう! 美神さんが危ない!!」

「おいらも戦うヒホ!! ヨコシマはおいらの仲魔。仲魔の仲間を助けるのは当然ヒホ!!」


二人は、本部に向かって駆け出した。




          ◆◇◆




金属のぶつかり合う音ともに、火花が舞い散る。

突きこまれた槍をかわしながら振り下ろした神通鞭は、驚異的な速さで引き戻された槍に弾かれた。


「くっ!!」

「人間にしてはなかなか…。だが、いかんせん力も早さも、わずかに足りない。」


悔しそうに歯噛みする美神と、まだまだ余力のあるエリゴール。

戦局は、依然変わらず不利であった。

ウコバクたちは、西条が縦横無尽に剣を振り回し、美知恵が炎撃を防ぐことで足止めしている。

いや、こちらが足止めをされているのか。

美神と対峙するエリゴールは、どこかこの状況を楽しんでさえいる。


「さあ、どうした!! やはり、人間風情ではこれが限界なのか!?」

「や、やばっ…!」


さらなる猛攻に、美神がさらされそうになった、そのとき。


「美神さーん!! 確か、エリゴールは隠された財宝を持ってた可能性があるのねー!!」

「…ぃよっしゃぁあぁーッ!!」


ベッドの脇に避難していたヒャクメの声援により、美神復活。

気合一発、神通鞭が唸りをあげて、次々と連撃をくりだす。


「むおッ!? きゅ、急に威力が上がったッ…!?」

「ほらほらほらほらァァーッ!!」


凄まじい欲望…もとい闘志で一気に立場は逆転し、美神の猛攻にエリゴールも圧倒される。

さすが、と言って良いものかどうか。


「このまま一気に決めてやる…!!」

「ちょ…調子に、乗るなァァァーッ!!」


怒声とともに槍が横一文字に振るわれ、衝撃波が生まれる。

まともに喰らった美神は、そのまま吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。


「かは…ッ!」

「消し炭にしてくれる!!」


槍の穂先に業火の火炎球が生じ、それが美神へと放たれた。

娘の危機に、美知恵が飛び出そうとするも、ウコバクに阻まれそれも叶わない。


やばい…横島く…!


真紅に染まる美神の脳裏に、とある少年の姿がよぎり─。





「ブフーラ!!」




そんな子供の声が聞こえたかと思うと、美神の眼前に突如、巨大な氷塊が出現する。

火炎球はそれに防がれ、互いに相殺しあって消失した。


「何者だッ!?」


エリゴールの誰何の声に、美神がそちらを見れば、エリゴールと睨み合う雪ダルマの姿と。

先ほど脳裏をよぎった、自分の大切な…。


「お前、結構凄かったんだな…怒らせんようにしよう。」

「横島君!!」


横島は美神を見て、とりあえず大事はなかったようだと、ほっとした表情を見せる。


「大丈夫ですか、美神さ…。」

「遅い!! もっと早く来なさいよ、このバカッ!!」


間髪いれずに飛んだ罵声に、横島はコケた。


「たまには『ありがとう』の一言くらい言えんのか、アンタはッ!?」

「それに、あの雪ダルマは何なのよ!?」

「俺の意見は無視かい…!」


自分の抗議を完全にスルーした美神に、横島は引き攣った笑いを浮かべて拳を振るわせる。

そのまま二人でぎゃあぎゃあと言い争う。

しかし、何はともあれ横島が来たことで、美神は完全に調子を取り戻したようだ。

あの態度が照れ隠しだと気付いている美知恵たちが、にやにやと笑いながら二人を眺めていた。

西条だけは苦虫を噛み潰したような顔だったが。


「マハブフ!!」


先ほどの声が響き、横島と美神の背後から迫っていたウコバクが数体、まとめて凍りついた。

先ほどよりも小さいが、複数の氷塊が生まれ、ウコバクどもを貫いたのだ。

それを放った雪ダルマが叫ぶ。


「ヨコシマ、何やってるヒホ!?」

「た、助かった…! 悪い、ノース。」


続けて冷気を放って牽制しているノースに謝ると、横島も霊波刀を構える。

準備は万全と、美神もエリゴールに向き直り、不敵な笑みを浮かべて言い放つ。


「さーて…第二ラウンドといきましょうか。」


美神の言葉に応えるように、神通鞭が翻った。


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