夜が明けても警戒は怠らなかったが、追跡者が追いついてきた様子は無かった。
男はようやくそのことに安堵し、全身の力を抜いた。
「やれやれ、ストーカーがストーカーに追われるとはね」
まったく、なんて世界に来てしまったのか。
そうして昨日のことを思い出した。
帰れないという事実に絶望し、長いこと呆けていたのだろう。
押し殺された殺気を感じた。誰か近付いてくる。
誰か来たことはありがたい。そのことで気持を切り替えることができた。
一人でいてはきっとつぶれてしまっただろうから。
状況を把握する。何者であろう?
こちらに来て半日とたっていないのに…相手の目的はおそらく自分だ。
一人か、いや二人か?
自身が張った結界が邪魔で、うまく気配を探ることができない。
対抗策を練る。幸いにしろまだ時間はある。
相手によるが一般人を装うことも考えた。
なにも知らないといえば、案外そのまま終るかもしれない。
いやいや、その考えを否定するように首を振った。
この結界には気づいているだろうし、ここで何かがあったことは霊力の残滓から推定できる。
この世界での自分の立場はきわめて微妙だ。
身分証の偽造などやらなかったから、おかしいと思われても証明できない。
結局怪しまれる可能性が高い。
だとすれば
結論に至った後の行動は早い。
今の霊力では戦うことなど覚束ない。待ち伏せて一撃を食らわせ、逃げるしかなかった。
霊力はほとんど回復していない。しかし微々たる霊力でも、なんとか目くらましにはなるだろう。
ただ、それだけでは足りない。
何か無いかと服を弄る。
指先に紙の感触がある。覚えはなかったが取り出してみた。
宛名を見た瞬間驚く。過去の彼女へとあてた手紙だった。
外側からでも球状のものが入っているのが分かる。自分の切り札が何故こんなところに?
躊躇いはあったが封を切った。素早く便箋に目を通す。
読み進めるうちに、泣きたい衝動に駆られた。
ポツリポツリと文字がにじんだ。
「いつまでも泣いてんじゃない!」
彼女がいればそう怒鳴られただろう。
けれどしかたがないではないか、この手紙は反則だ。
しばらくして、なんとか落ち着いた。
彼女には申し訳ないが、中身は有効に使わせてもらう。
何としてでももとの時間軸に戻るのだ。手紙を読んだことで多少の気力も湧いてきた。
自分だけでは無理だった。しかし第三者の協力があればなんとかなるかもしれない。
根拠も何も無いがそう思うしかなかった。
時間がすぎた。相手は結界に触れるか触れないかという位置に来ている。
自分がいることは気づかれていない。
そのまま引き付けて、タイミングを計る。
もう一息、というところで歩みが止まった。
相手は戸惑ったような動きをしている。
気づかれたか!?
躊躇している暇は無かった。
3,2,1、……!!
短くカウントを取り、一気に飛び出した。
星明りしかないが、なんとか相手の位置は分かる。どうやら二人組みらしい。
そのまま切り札を叩きつける。
直接的な威力は無いが、感覚はおかしくなったはずだ。
そのままの勢いで横をすり抜けようとしたが、相手は相当な実力者らしい。
自由が利かない状態で、うなりをあげる一撃を叩き込んできた。
それを受けて体が軋みをあげた。倒れるわけにはいかない。
なんとか踏みとどまり山道を駆け下りた。
それからどうやってここまで来たかは曖昧だった。
後ろから殺気が迫ったくる。小動物のように怯え、人ごみに紛れ込んだ。
気配が遠のいたときは安堵のあまり、通行人に支えられる始末。
神社の軒下に入り、やっと腰を落ち着けることができた。
ここにも結界が張られていたから、外からは見つけにくいはずだった。
そして考え出す。タバコをふかしながら呟いた。
「いかんせんどうすればいいかな?」
勢いに乗ってるときは筆の進みも良いのですが、内容を見返してみてもうちょっと練ればよかったと後悔しています。
一話完結という構想は断念しました。その点を深くお詫びします。
第三話といいながら、作中では一日も立っていません。こんなスローペースではいつになったら終るのか頭を抱えています。
予定では十話前後で終るはずだったんですが…。
第三話の長さはどうでしたか?
本来ならヒャクメサイドの部分があったのですが、そちらのほうがずいぶん長くなったので第四話に回しました。
一話あたりの行数に関しては試行錯誤を続けています。何かアドバイスがあれば、どうか教えてください
明日からしばらく出張することになりますので、四話を投稿するのはだいぶ後になるかと思います。
コメントに対する返信もできそうにないので、その点はご容赦ください。
この場を借りて第二話のコメントに対する返信をさせていただきます。
名無し@さんへ
メカクラッシュシーンをお見せできるかどうかは、今のところ未定です。
私は結構、小竜姫が好きなのですが…出なかったらごめんなさい。
期待させるようで恐縮のいたりです。
NAVAさんへ
いえいえ、B評価でも大変嬉しいです。これを投稿して、はじめて評価されたのがE評価と、評価不能でした。
そのときのショックといったらありません。怖くてこのサイトに入ることを躊躇いました。
仕事の合間に頑張って書きます! ……駄目社員ですね。
トンプソンさんへ
まず謝らせてください。ごめんなさい。
第三話ではまたしても説明が多くなってしまいました。読みにくいでしょうか?
喋ってるのもただの独り言で、会話の少なさがいっそう目立ってしまいました。
この世界では携帯は、ビジネスマンなどしか持っていません。
ヒャクメ登場時のノートPC? が結構大きかったことから、1990年代前半を想定しています。
モコスさんへ
最近は特定のキャラへの偏愛が目立つようなので、そこのところは意識して書くようにしています。
違いがあるとすればその辺でしょう。
期待してくださってありがとうございます。
ミネルヴァさんへ
原作にあった街に降りてきた小竜姫の反応と、ヒャクメの持っていた機械、妙神山に備わった加農砲などから、この世界では科学技術という
ものは各世界である程度共通していると考えました。
ヒャクメのように情報関係の職についている神族なら、最新の機器を取り扱っても不思議じゃあないと思っています。
続きにご期待ください。
みなさまの感想をお待ちしています。ありがとうございました。 (ちゅうじ)
話は非常に面白いと思います。原作とは完全に別物になるのですね。(手紙見ちゃった)
ただ、少し個人的に文章が分かりにくいところがありました。
キャラクター達が自分だけで納得しているというか・・・説明が足りないというのとも違うと思いますが。上手くいえないけどそんな印象を受けました。
でも凄く興味が引かれる話には違い無いので、続きを楽しみにお待ちします(笑)
しんばるでした。 (cymbal)
何となくわかりにくいです。
まあ、頑張って下さい。 (ミネルヴァ)
あるいは状況解説をもっとナレーション的に表現を変えるなど。
言ってる本人がそれほど文才がないので適切な例がだせませんが、主人公(?)の独白なのか、地文による説明なのかが判別し辛い為、「」での独り言以外が全て説明であるかの様に感じられます。
長さについてはメモ帳などでのファイルに保存した際のKBの程度で考える方法とお話として何処で区切るかで考える方法があると思います。
また、投稿間隔によっても適量が変わるでしょう。
短期に連続で(準日刊くらい)なら少々短めでもそれほど問題ないでしょうし、
月刊以上の間隔なら長めの文章で話の切りがよい所で切る方がよいかと。
鬼引き(戦闘シーンで主人公に敵が襲い掛かった!その時主人公は…とかで切る週刊誌によくある形)の後で何ヶ月も空くと…ねぇ?読者側の身勝手とは分かっていても早く続きを読ませろ〜〜!!状態になりますから。
(推理モノとかなら解答編まで間がある方がいい場合もあるでしょうけど。やはり個人差もあるでしょう)
個人的な意見として、本作の1,2話を考えますと両作とも5KB程度で適度な長さだと思います。が、内容で考えると併せたほうがより状況とかが理解しやすかったと思えます(切りもいいし)。約10KBは人によっては少し長い、だらだら文章といった印象もあるでしょうが内容が充実していればそういった印象も薄くなるかと。
もっとも、単純に「10KB近い文章は長くて途中でだれる」という人もおられるでしょうから一概にまとめて載せろともいえませんが。
くどいですが個人的意見をまとめますと1話につき4〜9KB程度で、内容的に切りがよい所で掲載する。区切りのいい所まで書いて仮に15KBくらいまでかかったならその中でまた切りのいい所(この場合は場面変換とかでもいいし、鬼引きを狙ってもよい)で前後編として6+9KBや8+7KBに分け、(内容や長さによっては3分割以上でもよいかと)短期間に連続投稿されるのが良いかと思います。 (pppp)
おっさん・・・神社の軒下なんてお約束ナ(笑)そのまま永住・・・何て事は、有ったりして(爆)
こんな感じの二言で逃亡 (名無し@)