オークションの歴史は紀元前の古代バビロンにまで遡れるらしく、最古の文献として、ヘロドトスの『歴史』にそれは見られる。
なんでも紀元前500年頃の古代バビロニアでは、結婚相手を得るためのオークションがすでに開かれていたとか。
…なんてことをぼんやりと考えながら、横島は現実からの逃避を試みていた。
だが、どんなに頑張ったところで、自分を拘束する縛めも、目の前で繰り広げられる狂乱も消えたりはしない。
今の自分、すなわち『競売品』には目を逸らす自由さえ認められてはいないのだ。
自分の目頭が熱く、頬を冷たいものが流れていくような感覚は、気のせいではないだろう。
逃避を諦め、今の境遇を哀しくも受け止めた横島は、この数分間を噛み締めるように思い出すのであった。
…では、ここからは横島の口から語ってもらおう。
【ケース1.氷室キヌの場合】
おキヌちゃんかぁ〜…。
いや、前々から思ってたんだけど、ときどき信じられない無茶すんだよな〜、あの子。
今回もそうだったよ…。
そうさ。
オークションが始まって最初に声を上げたのが、おキヌちゃんだったんだよ。
「5千円!!」
おキヌちゃんの声に、皆最初は固まってたっけ。
俺だってそうさ。
あの大人しいおキヌちゃんが、こんな馬鹿げたイベントに真っ先にのってきたんだぜ?
言い出した美神さんさえ驚いて、とっさには答えられなかったんだ。
それを勘違いしたのか、おキヌちゃんはさらにこう言ったんだ。
「そ、それで足りなかったら、来月も、再来月も、その次も…お給料は要りません!! だから、だから…!!」
「ちょ、ちょっとおキヌちゃん! そんなに慌てなくても…!」
基本的にオークションのルールが分かってなさそうなおキヌちゃんの様子に、美神さんが慌てて声をかけたけど。
よく考えれば、おキヌちゃんだけじゃない。
シロやタマモ、パピリオなんかが理解できているのか怪しいもんだったはずだ。
美神さんには呆れたよ、ホント。
……でも、このとき俺は、呆れるにはちょっと早かったんだと、続くやり取りで思い知らされた。
さらに、おキヌちゃんは叫んだ。
「じゃ、じゃあ、隊長さんから預かっている『令子にお仕置き♪没収貸し金庫』の鍵もつけますから!!」
全員がコケたね、あれは。
なんじゃい、そらァッ! て突っ込みたかったよ。
会場の端で隊長が、「おキヌちゃん! それは秘密にしとく約束だったでしょ!?」って叫んでたっけ。
まあ、名前からして、隊長が美神さんの多すぎる資産の一部を没収してたってところだろうけど…。
「う…ッ! それは…かなり心動かされるかも…!」
ぼそりと呟かれたその一言は、美神さんらしいんだけど…ね…。
俺の生殺与奪権(?)が今まさにこの人の手にあるんだと思い知らされた一言だった…。
そして、その直後さ。
半ば放心状態だった皆が我も我もと、声を上げていったのは…。
【ケース2.シロ&タマモの場合】
あ〜…次はあいつらね。
確か、シロがこう叫んでたな。
「あッ、ハイハイ!! 拙者は肉断ち三ヶ月…いや半年でもいいでござる!!」
で、タマモはこうだ。
「ちょ…ッ、ずるいわよ! だったら私は油揚げ断ち半年…ううん、一年でもいいわ!!」
……まあ、こんな感じ。
そこで一言。
食いもんと同レベルかい、俺は!!
いや、あいつらにとって肉や油揚げがどれほどの価値があるのかは知らんが。
しかし…自分の価値が食いもんと同じってのは…ちょっと悲しい。
お前らにとって俺って何だ!?
歯ごたえが命か!?
それともダシがしみててナンボか!?
「…まあ、あんたらの食費って結構すんのよねぇ。それを押さえてくれるなら、エンゲル係数もかなり下がりそう…。」
美神さん的にはOKらしい。
その後も、シロとタマモは張り合うように…いや、実際に張り合いながら条件を提示していた。
…お前ら、そんなことしてたら一生肉抜き、一生油揚げ抜きになっちまうぞ?
【休息】
まあ、こんな感じにオークションは進んでいったわけだ。
もちろん、俺の言い分なんか最初からない。
別にさるぐつわを噛ませられてたわけじゃないが、何も言えなかったよ。
なんでかって?
そうだなぁ…あの雰囲気というか、気迫かな。
もちろん有無を言わせぬ迫力はあったさ。
でもそうじゃなくて、何ていうか…三人とも真剣だった。
そんな真剣さが伝わってくるようで、どうしてか何も言えなくなったんだよ。
不本意ながらな。
え?
もう行数がないから、続きは次回?
そんな制限ないだろ?
…全部書いてたら長くなりすぎるからNG?
仕方ねーな。
それじゃ、続きは次回でな。
今回は、何だか趣向を変えまして、横島くんの語り口調にしてみました。
ちょっと、冒険心でやってみたことなので、評価がどうなるか期待半分、怖さ半分です。
ケースごとに話していく形ですが、それらを上手く絡ませられればと思っています。
話の内容からわかるように、このオークションは金額を基準値にしてません。
展開上そうなってしまったわけですが、書いていく順番を気にしなくてよくなりました。
ので、あまり順番は関係ありません。
では次回もお楽しみに。
補足:
『令子にお仕置き♪没収貸し金庫』の♪は、ハートだったのですが文字化けを考慮して音符にしました。 (詠夢)
横島もシロとタマモにかかっては
食い物レベルってのがいいですね(笑)
続きをまってま〜す。 (ミネルヴァ)
シロタマにとっては命の次に大切な生命線を賭けるのですから、横島君も彼女らの本気度を理解してあげてほしいものですね^^
続きが楽しみです。神族や魔族がどんな提案をしてくるか^^ (綾香)
タマモの必死さは萌え〜♪ですw
既に横島の懐古系になってるので、結果は決まってるのですかね?
他のメンバーの暴走ップリも楽しみにしています(^^) (R/Y)
横島君と自分の一生を賭けての一世一代のオークション・・・
口火を切ったのは以外とおキヌちゃんでしたか・・・
うん、横島の為にあっさり秘密をバラすおキヌちゃんがとっても可愛いですなぁw (純米酒)
<なんでも紀元前500年頃の古代バビロニアでは、結婚相手を得るためのオーク ションがすでに開かれていたとか。
横島くんが、歴史の知識を持っている!?・・・・もしかして偽者??
いやなんか、横島くんは歴史の知識を持っていなさそうなんで・・・ (ノーフェイス)
それにしても横島君は意外と頭いいんですね・・・。
ちょっとした雑学持ってるんですね。
オークションの口火を切ったのがおキヌちゃんとは驚きました。
何時にも増して積極的なおキヌちゃん、何だか頑張れって言いたい。
それにしても素晴らしいです!!!面白いです!!!次が楽しみです!!!! (なお)
ありがとうございます!!
ミネルヴァさま:
あの二人の場合、そのくらいしか賭ける物がなかったとも(笑)
でも、タマモの場合は霊力源でもあるので、結構大切なものですけどね。
綾香さま:
一応、横島も真剣さはわかってるみたいですが、女心の機微にうといというか(笑)
予算オーバー…面白そうですね(爆)
すでに予算超えてるのに、さらに条件をつけていくとか…ルールもへったくれもありません。
神族や魔族なんかは、きっとスゴイお宝出してくるでしょうね。
(ハッ!! 美神さん、それが狙いか!?)
R/Yさま:
可愛いですよね、必死な二人ww
後先考えていない感じが、さらにGood!
一応回顧形ですが、まだ結果は出てません。
現実の時間で言えば、残り2、3分ってとこではないでしょうか。
純米酒さま:
やはり、ここはおキヌちゃんにいってもらおう!!
と、そんな感じで決めたわけですが、思ったとおり(以上に?)暴走してくれました。
お気づきでしょうが、タイトルの「怖いもの知らずの乙女」は、おキヌちゃんの称号です。
ノーフェイスさま:
あ、やはりそこに着目されましたか。
私も書いてて「これは…横島なんだろうか?」とか思ったわけですが、そのままいきました。
アシュタロスコピー時の知識とでも思っていただければよいかと…。
…なんだか、後付けくさい設定ですが。
なおさま:
おキヌちゃんでのスタートは、結構いい反応みたいで嬉しいです。
やはり、普段大人しい子なだけにインパクトがあったようで。
積極的な(というより暴走)おキヌちゃん、頑張りまくってます(笑) (詠夢)
やはり、皆と同じ、おキヌちゃんからのスタート、ベリィ ナイスです。
>…お給料は要りません!! だから、だから…!! ← マイファバリットです。はい。
私の希望落札者は、おキヌちゃんですが。。。そうには、ならなないですね、きっと。
「おいしんぼ」で、たいてい先に料理を出した方が負けるように。 (伊三郎)
お仕事中にまで読んでいただき、ありがとうございます!!
おキヌちゃんスタート、お気に召されてなによりですw (詠夢)
シロタマ必死ですね〜。(肉より油揚げの方が安いと思いますが)
おキヌちゃんにハンマープライスして欲しいですが、このオークションもうヒトヒネリありそう。。。。
次話、楽しみにしています。 (ん・ばぎ)
それぞれのキャラの絡みがとても面白く、大満足です。
ただ、今回のオークションには少し疑問が・・・
1.レイコは何故250の安値から始めるのか?
文殊の価値もなど含めて、無理と分かっていたとしても、
最初は億単位から始めるのでは?
2.何故横島は逃げないのか?自分の中のイメージでしかないのですが、
横島ならオークションの騒ぎに乗じて、何とか逃げ出そうとするのでは?
感情的には「面白いから全部OK」なんですが
次回も楽しみにしています (ルーリス)