※この作品は、『tragic selection』(作者:堂旬さん)の三次創作です。
16話からの分岐となりますので、16話まで事前に読んでおいて下さい。
私が意識を取り戻した時、横島くんが目の前に立っていた。
「蛍!!」
横島くんは私に駆け寄ると、裸の私に着ていたGジャンをかけてくれた。
「おわっ! ……蛍?」
私の体が薄く光を発し、やがて徐々に透き通っていった。
もうダメなのかな? でも、これでいいのかもしれない。
「蛍!! 嘘だろ!? なんでだ! 消えんなよ!! 蛍ッ!!!!」
私が死ねば、化け物は出てこなくなる。
私のせいで人が死ぬこともなくなる。
だから、きっとこれでいいんだ。
「ヨコシマクン………」
「嫌だ…ほたる…頼むよ…消えんなよぉ……!」
ごめんね、横島くん。最後まで迷惑かけて。
「アリガトウ」
私の意識は、そこで途切れた。
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『ふたりの蛍』 第一話 −そして、新たな出会い−
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サーーッ
涼しい風が、蛍の頬をなでていった。
「…………ここは?」
蛍が周りを見渡すと、堤防の内側の芝生の上で横になっていた。
あれほど激しかった戦いの痕跡は、どこにも見当たらない。
蛍の周囲は、ただ静けさに包まれていた。
「やだ。私、裸だわ」
幸いなことに、周囲に人影は見えない。
「横島くん?」
もちろん、横島の姿も見当たらなかった。
「どうしよう……?」
とりあえず上半身を起こすと、胸を腕で隠した。
大声で助けを呼ぼうかと思ったが、裸を人には見られたくない。
「困ったなぁ……」
その時、堤防の上を人が近づいてくるのが見えた。
「いいお風呂だったね、お兄ちゃん」
堤防の上を一組の男女が歩いていた。どうやら兄妹のようである。
「本当に、銭湯が好きなんだなあ」
「だって、大きいお風呂の方が気持ちいいじゃない」
「ん……あれは?」
男性が、堤防の内側の坂に視線を向けた。
闇夜の中に、白い何かが見える。
「人……かな?」
男性が、そっと近づこうとする。
「待って、お兄ちゃん!」
「なんだ?」
「女の人かもしれない。私が様子を見てくるわ」
「暗いのに、よくわかるなあ」
男性が苦笑した。
「女のカンよ」
女性はそう言い放つと、そっと坂を下りていった。
「あの……どうかなされました?」
声をかけられた女性──牧之瀬 蛍──が、背後を振り向いた。
「すみません。何か着る物を貸してくれませんか?」
「とりあえず、これを──」
女性は抱えていた風呂桶からバスタオルを取り出した。
バスタオルを受け取ろうとした蛍は、近づいてきた女性の顔を見て驚愕する。
「えっ──」
ボブカットのヘア、つややかな黒髪、そして端整な顔立ち。
彼女の容姿すべてが、牧之瀬蛍にうりふたつであった。
近づいてきた女性の方も、蛍の顔をみてビックリしている。
「おーい、蛍。大丈夫かー?」
「ちょっと待って、お兄ちゃん。女の人がいるけど、服を着てないのよ」
「……この声は!」
蛍はガバッと起き上がると、借りたバスタオルで胸とお腹を隠して、堤防の上に駆け上がった。
「やっぱり、横島くんだ!」
「おい。どうして裸なんだよ、蛍?」
「どうしてはこっちのセリフよ。いったいあの後どうなったの?
私、死んだと思ったのに、どうして生きてるのよ?」
そこに、もう一人の女性が坂を上ってきた。
「ちょっと、お兄ちゃん。その人誰?」
「えっ!? どうして蛍が二人いるんだ??」
額にバンダナを締め、片手に風呂桶を抱えた男性──横島忠夫──が、目を丸くして立っていた。
「あなたこそ誰? なんでお兄ちゃんにそんなに慣れなれしいの?」
「私の名は、牧之瀬蛍。あなたこそ、誰? 横島くんに兄弟はいないはずだけど……」
「私は、横島蛍。間違いなく、お兄ちゃんの妹よ」
「ちょっと、横島くん。いったいどういうこと? 説明してよ」
バスタオルを片手で押さえながら、牧之瀬蛍は横島に詰め寄った。
「ごめん。牧之瀬って名前の知り合いはいないんだ。何かの勘違いじゃないかな?」
横島は申し訳なさそうな顔をしながら、牧之瀬蛍の顔を見つめていた。
(続く)
コメントを書きましたが、堂旬さんの了解が取れたので書いてみました。
事前に予告したとおり、拙作『妹 〜ほたる〜』とのクロスです。
やや悲劇調の終わり方だった元ネタとは異なり、ハッピーエンドを目指します。
更新速度の方は、作品の雰囲気と同様、かなりのんびり・まったりとした感じになりそうです。(;^^)
そういえば、『妹〜』もしばらく更新していませんね。(汗)
『君ともう一度〜』が、予想を裏切りなかなか完結しないので(滝汗)、そろそろ『妹〜』
の更新にも手をつけようかと考えています。 (湖畔のスナフキン)
先が読めねえ!!
どうも、堂旬です。
自分の作品の三次創作を見るのはなんとも新鮮で、嬉し恥ずかしな感じです。
どのような展開を迎えるのか、楽しみにしております。 (堂旬)
予想では平行世界かと思いましたがどうなんでしょう (綾香)
裸にほぼ無反応というはやっぱり横島の行動としては寂しいです。
妹蛍がいるから原作よりそういうのに慣れてる、というのはわかるんですけどね。
話そのものの続きには期待するものはあるのですが、正直、自分で自分の首を絞めている姿が思い浮かぶというか。……まぁあまり無理をされないように。 (はくはく)
たしかに冷静すぎるとおもいますけど(内心はもっとドキッとしてたのかもw) (Syla)
舞台はあの世ですか?
続きを楽しみに待ってます。 (邪魅羅)
連載作品を沢山抱えてらっしゃるようで・・・どのお話も楽しみにしているので
頑張ってください (純米酒)
何人かの方から指摘がありましたが、牧之瀬の裸を見た横島が、ちょっと冷静すぎましたね。
いちおう妹と勘違いしていたという理由もあるのですが、少し弱いので次の話の冒頭でフォロー
することにしました。
・Y.A.Rさん
>『妹 〜ほたる〜』も読ませてもらったので、楽しみにしてます。
ありがとうございます。『妹〜』の方も、ぼちぼち頑張ります。
・堂旬さん
>自分の作品の三次創作を見るのはなんとも新鮮で、嬉し恥ずかしな感じです。
三次捜索って、元ネタの作者の方から見ると、けっこうこそばゆいみたいですね。
しばらくは説明ばかりが続きますが、読者の予想をいい方向で裏切れるように努力します。
・綾香さん
>予想では平行世界かと思いましたがどうなんでしょう
ぶっちゃけ、そのとおりなんですが、詳しい説明は数話かけて少しずつしていく予定です。
・はくはくさん
>話そのものの続きには期待するものはあるのですが、正直、自分で自分の首を絞めて
>いる姿が思い浮かぶというか
作者自身の首は、確実に締まっているようです。(苦笑)
ま、無理をせずに、ぼちぼちと行きたいと思います。
・Sylaさん
>最初に裸の蛍を見たときは妹のほうだと思ったからですし、普通は妹の裸に驚く以上の
>反応はしないでしょうからこんなものじゃないかなと思います。
ちょっと横島の反応が弱かったのは事実かと思いましたので、次話の冒頭でフォローを入れる
ことにしました。
・邪魅羅さん
>蛍が二人とは、この先の展開が楽しみです。舞台はあの世ですか?
あの世ではなくて、別世界というかパラレルワールドが舞台ですね。
細かい説明は、数話かけて説明していきたいと考えています。
・純米酒さん
>これは「蛍(牧之瀬)と蛍(妹)による血みどろの横島争奪戦」と解釈してよろしい
>のでしょうか?いや、そうに決まってる!そうじゃないと嫌です!!
実は迷ってまして、10話前後の中編で切り上げる場合、あまり横島と牧之瀬をラブラブ
にはできないんですよね。
長編にしてしまうと、蛍(牧之瀬)vs蛍(妹)の本格バトル(ヲイ)に持ちこむことも
可能かと思います。
何話か書きながら、方向性を決めたいと思っています。
>連載作品を沢山抱えてらっしゃるようで・・・どのお話も楽しみにしているので
>頑張ってください
了解しました……と言いたいのですが、こうも執筆作品を増やしてしまうとかなり苦しい
のが現実です。
まあ、自業自得といえば、それまでなんですけどね(苦笑)。
現在の自分の中での優先順位は、
1.『君ともう一度〜』、『交差する〜』
2.『ふたりの蛍』、『妹 〜ほたる〜』
といった感じなのですが、正直、予定は未定といったところです。(;^^) (湖畔のスナフキン)