椎名作品二次創作小説投稿広場


悲しみの代価

終わりと始まり


投稿者名:朱音
投稿日時:04/ 7/ 6

見渡す限り砂と土しかない、そんな黒い大地。
生命の息吹が感じられない、そんな大地。
黒い、黒い大地の上に一人の青年が立っていた。

艶やかな黒髪と、茶を帯びた黒い瞳。
美しいといって尊称はないだろう。

彼の立っている大地には、今現在生き物は四つしか居ない。
一つは言うもでもなく彼で、後の三つは現在は彼の足元にひざまづいている。

「時空の門が開く、三界はすでに『成長』を止めた」

青年の声は、心地よく大気を揺らした。
ただ不思議なのは、声質よりも幾分年月を感じさせる言葉。

「我が主よ。時は、いつでも一つであり、多重に結びついています。これもまた、定めでございましょう」
白い翼を閉じた、初老の男が言った。

「左様。ここの世界樹はすでに成長を止めています。遡るのは容易く、又、樹もそれを望んでいます」
青緑の鱗で、全身を包んだ女が言う。

「ならば、主よ貴方の望み叶えるか否か。答えはもう、出ていらっしゃるのでしょう?」
黒色に身を包んだ男が言う。

「・・・ああ、もうじきこの枝は枯れ始める。たどり着いた先がこれでは、私は彼らにわびる事もできぬよ」

出来ることがある。
しなければならないことがある。
やり遂げたいことがある。

「あの時へ、未だ己を知らず愚かであったあの頃に」

何も知らない、我が儘な頃へ。

「変えねばならない、新たな芽を、希望を枯らさぬために、私に力を貸してくれ」

愚かで傲慢な願いなのだろうけれども、それだけが今自分が生きる訳だから。

「「「我ら御主横島忠夫の願い、叶えて見せましょう」」」

声を揃えて言う彼らに、青年は笑った。


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