「鬼道さん、しっかり!!」
「ふぇ〜ん! まーくん、ごめんね〜! ショウトラちゃ〜ん、お願〜い!!」
今現在、隣の救護室(仮)では、勇敢にも冥子のプッツンを止めにいった鬼道が峠を迎えていた。
魔鈴と冥子が必死に看護しているが、大丈夫であろうか…?
「ロキさんも手伝ってください!!」
『よし来た!』
………相当、やばいらしい。
◆
「鬼道の奴…大丈夫かな〜…。」
相手が死の縁にいることも知らず、横島は心より心配する。
「……それにしても疲れた。ちょっと休憩しよう。え〜と……よし、ここなら…!」
きょろきょろと見回してみて、とある部屋を見つけてそこへと向かう横島。
扉の隙間から、そっと中をうかがう。
「…よし。誰もいないな…?」
気配を慎重に確認してから中に入る。
しばらくここに隠れて体力の回復を待つことにする。
どっかと腰を下ろして、ひとり毒づく。
「まったく…少しは休ませろっての! なんぼなんでも、そんな体力が続くか!」
「─それは甘いぞ、横島くん。」
「なッ!?」
独り言のつもりだった愚痴に返答され、横島は慌てて立ち上がって辺りを見回す。
すると、部屋の陰になってるところから、一人の男がすっと歩み出てきた。
「さ、西条!!」
「やっと追いついたよ。さっきは、まんまとしてやられたからね…。」
平静を装うとする西条だが、頬がひくついている。
見れば、タキシードの上着はどこかに脱ぎ捨て、蝶ネクタイも外して襟元を緩めている。
よほど悔しかったのか、全力で走り回ったようだ。
「しつこい奴め…! 男にストーカーされるいわれはないぞ!!」
「もちろん、僕だってストーキングの趣味はない。相手が君なら尚更だ。」
「……確かにこの部屋に気配はなかったはずだぞ?」
でなければ、のこのこ入ったりはしない。
「フッ。まだ君には負けない。君に気付かれないよう、微弱な結界を張ってたのさ。」
「そこまでするか!?」
「当然だ!! 君を令子ちゃんに近づけさせないためなら、どんな労力だろうと僕はいとわない!」
きっぱり言い切る西条の姿は、素晴らしく輝いていた。
「…ったく、本当にしつこいな! そんなだから、美神さんに袖にされるんだよ!」
横島がそういうと、ゴリッ! という音が聞こえて、西条の動きが止まる。
どうやら禁句だったらしく、小さく震えていた。
やがてそれは小刻みな笑いに変わる。
「フ…フフフフフ……ッ! 逝きたまえッ、横島くんッ!!」
「どわぁぁ─ッ!?」
神速の勢いで放たれた霊刀を、これまた神速の逃げ足でかわす横島。
「ぎゃ、逆ギレかよ…!!(自覚…あんのかなー)」
「今日という今日は…死んでもらう!!」
あかん。目がマジだ。
「ざけんなッ! 何が悲しゅーて誕生日に死ななあかんのじゃ!!」
「いいじゃないか、命日が覚えやすくてなッ!!」
ふたたび斬りかかる西条。
だが、横島は逃げるどころか不敵な笑みを浮かべて動かない。
「…俺が何の考えもなしに、この部屋に逃げ込んだと思うか?」
「何ッ?」
「ほら、しっかり受け止めろよッ!!」
横島は、叫ぶとともに文珠を隣にあった小瓶に投げる。
倒と刻まれた文字が輝き、小瓶はゆっくりと西条に向けて倒れていく。
「こんなもの…よけてしまえば…ッ!!」
だが、そこへ人工幽霊壱号の切羽詰った声が響く。
《いけません、西条さん!! それは美神オーナーのオカルトコレクションの一つです!! 受け止めてください!!》
「な、何ィッ!?」
反射的に手を伸ばして受け止める西条だったが、なにせ大きさが大きさ。
支えるのが精一杯で、まったく身動きが取れなくなってしまった。
必死にこらえる西条に、にやにやと笑いを浮かべた横島が歩み寄っていく。
「ここは美神さんの、いわゆる宝物庫なんだよ。さすがにここでバトルは出来ないからな。」
「き、君という奴は〜…ッ!!」
「最初に言ったろ? 体力がもたねーって。だから、手っ取り早く終わらせてもらう。悪く思うなよ。」
ぽんぽん、とからかうように西条の肩を叩く横島。
「この…ッ!!」
《ああっ、西条さん!! 離してはいけません!!》
「クッ…!!」
横島に殴りかかろうとした西条だったが、すぐに人工幽霊壱号に止められ、ふたたびつっかえ棒となる西条。
その様子がよっぽど楽しかったのか、横島は鼻歌混じりに出て行く。
「じゃーな、西条! できれば、ずっとそうしててくれ♪」
「…〜ッ許さん!! 絶対に許さん!! 君は必ず、僕が叩き斬ってやる─!!」
◆
一方、司会者部屋では─。
「ああっ、脈がどんどん弱く…!!」
「ま、まーくん…死んじゃうの〜……?」
『うわわっ!! 落ち着いて、六道くん!! きっと大丈夫だから!!』
今まさに、鬼道の命の灯火は消えようとしていた。
そのせいで、ついでに魔鈴とロキの生命も危機に陥っていた。
「え〜ん!! まーくん、死んじゃイヤ〜!!」
「こらえて冥子さんッ!!プッツンはしないでくださいっ!!」
『お、おい鬼道くんが…!!』
「う…うん……? め、冥子…はん…?」
鬼道、奇跡の蘇生。
たちまち、冥子の表情が輝き、ついでにプッツンをまぬがれた魔鈴とロキの表情もゆるむ。
「ま、まーくん!! ふぇ〜ん、よかった〜!!」
「ちょっ…冥子はん! …って、いたたたたた…ッ!」
『ふう…なんとか大丈夫みたいだね。』
「よかった…本当によかったです…!」
今、ひとりの男の命が助かった。
その感動のひとコマに、画面内でわめく西条は見向きもされなかったという。
《西条さん…おいたわしい…。》
ただ人工幽霊壱号だけが、不憫と嘆いたらしい。
その西条氏からのクレームです。どうぞ。
「鬼道くんはあんなに格好いい扱いで、僕はコレか!? 同じ二枚目キャラだというのに酷くないかっ!? 異議ありッ!! オブジェクショーン!!」
作者よりの返答です。どうぞ。
「いや〜、ぶっちゃけ西条よりも、鬼道のほうが好きなんで。」
………(汗)以上です。 (詠夢)
西条はとことん横島君に遊ばれてますねぇ〜♪ (紅蓮)
生きてて良かったー(喜)やはり一般人には式神のプッツンは効くんですねー
横島が異常なんでしょう(笑)そして西条はいと哀れ、せめて正面から
勝負したれよ♪ (R/Y)
作者の中の西条イメージは、そんなキャラなので…(苦笑)
ヘンに真面目だから、いいようにされてしまう。そんな役柄(笑)
R/Yさまへ:
正面からぶつかってはいませんけど、実は今までで文珠を使ったのは西条だけなんです。
それなりに横島くんも、西条を評価してるみたいです。
コメント、ありがとうございます!!
…ちなみに鬼道については、あのままだと死んでしまいそうな勢いだったのでフォローしてみたところ、西条のヘタレ度をアップさせるスパイスになってしまいました(笑) (詠夢)