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横島争奪チキチキバトル鬼ごっこ

哀愁の追跡者!!


投稿者名:詠夢
投稿日時:04/ 4/21


「鬼道さん、しっかり!!」

「ふぇ〜ん! まーくん、ごめんね〜! ショウトラちゃ〜ん、お願〜い!!」


今現在、隣の救護室(仮)では、勇敢にも冥子のプッツンを止めにいった鬼道が峠を迎えていた。

魔鈴と冥子が必死に看護しているが、大丈夫であろうか…?


「ロキさんも手伝ってください!!」

『よし来た!』


………相当、やばいらしい。



          ◆



「鬼道の奴…大丈夫かな〜…。」


相手が死の縁にいることも知らず、横島は心より心配する。


「……それにしても疲れた。ちょっと休憩しよう。え〜と……よし、ここなら…!」


きょろきょろと見回してみて、とある部屋を見つけてそこへと向かう横島。

扉の隙間から、そっと中をうかがう。


「…よし。誰もいないな…?」


気配を慎重に確認してから中に入る。

しばらくここに隠れて体力の回復を待つことにする。

どっかと腰を下ろして、ひとり毒づく。


「まったく…少しは休ませろっての! なんぼなんでも、そんな体力が続くか!」

「─それは甘いぞ、横島くん。」

「なッ!?」


独り言のつもりだった愚痴に返答され、横島は慌てて立ち上がって辺りを見回す。

すると、部屋の陰になってるところから、一人の男がすっと歩み出てきた。


「さ、西条!!」

「やっと追いついたよ。さっきは、まんまとしてやられたからね…。」


平静を装うとする西条だが、頬がひくついている。

見れば、タキシードの上着はどこかに脱ぎ捨て、蝶ネクタイも外して襟元を緩めている。

よほど悔しかったのか、全力で走り回ったようだ。


「しつこい奴め…! 男にストーカーされるいわれはないぞ!!」

「もちろん、僕だってストーキングの趣味はない。相手が君なら尚更だ。」

「……確かにこの部屋に気配はなかったはずだぞ?」


でなければ、のこのこ入ったりはしない。


「フッ。まだ君には負けない。君に気付かれないよう、微弱な結界を張ってたのさ。」

「そこまでするか!?」

「当然だ!! 君を令子ちゃんに近づけさせないためなら、どんな労力だろうと僕はいとわない!」


きっぱり言い切る西条の姿は、素晴らしく輝いていた。


「…ったく、本当にしつこいな! そんなだから、美神さんに袖にされるんだよ!」


横島がそういうと、ゴリッ! という音が聞こえて、西条の動きが止まる。

どうやら禁句だったらしく、小さく震えていた。

やがてそれは小刻みな笑いに変わる。


「フ…フフフフフ……ッ! 逝きたまえッ、横島くんッ!!」

「どわぁぁ─ッ!?」


神速の勢いで放たれた霊刀を、これまた神速の逃げ足でかわす横島。


「ぎゃ、逆ギレかよ…!!(自覚…あんのかなー)」

「今日という今日は…死んでもらう!!」


あかん。目がマジだ。


「ざけんなッ! 何が悲しゅーて誕生日に死ななあかんのじゃ!!」

「いいじゃないか、命日が覚えやすくてなッ!!」


ふたたび斬りかかる西条。

だが、横島は逃げるどころか不敵な笑みを浮かべて動かない。


「…俺が何の考えもなしに、この部屋に逃げ込んだと思うか?」

「何ッ?」

「ほら、しっかり受け止めろよッ!!」


横島は、叫ぶとともに文珠を隣にあった小瓶に投げる。

倒と刻まれた文字が輝き、小瓶はゆっくりと西条に向けて倒れていく。


「こんなもの…よけてしまえば…ッ!!」


だが、そこへ人工幽霊壱号の切羽詰った声が響く。


《いけません、西条さん!! それは美神オーナーのオカルトコレクションの一つです!! 受け止めてください!!》

「な、何ィッ!?」


反射的に手を伸ばして受け止める西条だったが、なにせ大きさが大きさ。

支えるのが精一杯で、まったく身動きが取れなくなってしまった。

必死にこらえる西条に、にやにやと笑いを浮かべた横島が歩み寄っていく。


「ここは美神さんの、いわゆる宝物庫なんだよ。さすがにここでバトルは出来ないからな。」

「き、君という奴は〜…ッ!!」

「最初に言ったろ? 体力がもたねーって。だから、手っ取り早く終わらせてもらう。悪く思うなよ。」


ぽんぽん、とからかうように西条の肩を叩く横島。


「この…ッ!!」

《ああっ、西条さん!! 離してはいけません!!》

「クッ…!!」


横島に殴りかかろうとした西条だったが、すぐに人工幽霊壱号に止められ、ふたたびつっかえ棒となる西条。

その様子がよっぽど楽しかったのか、横島は鼻歌混じりに出て行く。


「じゃーな、西条! できれば、ずっとそうしててくれ♪」

「…〜ッ許さん!! 絶対に許さん!! 君は必ず、僕が叩き斬ってやる─!!」



          ◆



一方、司会者部屋では─。


「ああっ、脈がどんどん弱く…!!」

「ま、まーくん…死んじゃうの〜……?」

『うわわっ!! 落ち着いて、六道くん!! きっと大丈夫だから!!』


今まさに、鬼道の命の灯火は消えようとしていた。

そのせいで、ついでに魔鈴とロキの生命も危機に陥っていた。


「え〜ん!! まーくん、死んじゃイヤ〜!!」

「こらえて冥子さんッ!!プッツンはしないでくださいっ!!」

『お、おい鬼道くんが…!!』

「う…うん……? め、冥子…はん…?」


鬼道、奇跡の蘇生。

たちまち、冥子の表情が輝き、ついでにプッツンをまぬがれた魔鈴とロキの表情もゆるむ。


「ま、まーくん!! ふぇ〜ん、よかった〜!!」

「ちょっ…冥子はん! …って、いたたたたた…ッ!」

『ふう…なんとか大丈夫みたいだね。』

「よかった…本当によかったです…!」


今、ひとりの男の命が助かった。

その感動のひとコマに、画面内でわめく西条は見向きもされなかったという。


《西条さん…おいたわしい…。》


ただ人工幽霊壱号だけが、不憫と嘆いたらしい。


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