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横島争奪チキチキバトル鬼ごっこ

逃亡者!!


投稿者名:詠夢
投稿日時:04/ 4/10

『彼も賢くなったもんだね。これで、また一つプレイボーイの心得を学んだわけだ。』

「…女性にとっては失礼ですよ。」


パピリオを必死で撒く横島を見ながらロキは満足気に、魔鈴は不満げに呟く。


『そういえば、君はいいのかい? 叶えてもらいたい願いとか…。』

「私はいまのところ充分満足してますから。…それに恋愛のことだったら自分の魔法でも…フフッ…。」

『…そ、そう。……やっぱり女性は怖いね。』



          ◆



「はっ!! なんだ、今の得体の知れない悪寒は…!!」


ぞくりとしたものを感じ、西条は慌てて辺りを見回した。

するといきなり、彼がいた部屋に獲物の方から飛び込んできた。


「よ、横島く…!!」

「しっ!!」


横島の迫力に押され、思わず口をつぐむ西条。

そのとき。


「どこ行ったでちゅかー!! ポチーッ!!」


パピリオとその眷属たちが、暴走族さながらに部屋の前を通り過ぎていった。

それを確認して胸をなでおろす横島。


「ふう…助かった。」

「─ってオイ。僕がいることを忘れてないか?」


引きつった笑みを浮かべながら、西条が愛剣ジャスティスを抜く。


「ん? おお、西条! いや、忘れてたわけじゃねーよ。……ただ、お前なら適当にあしらえるからな。」

「…ほう。言ったね? ならば、それが口先だけじゃないことを確かめさせてもらおうか。」


抜き放った霊剣同様、西条の眼差しが真剣味をおびて鋭くなる。

対する横島も霊波刀を出現させて構える。

二人はゆっくりと移動しながら、じりじりと間合いをつめていく。


「僕が勝ったら、君には令子ちゃんの事務所から出て行ってもらうとしようか!!」


西条が高らかに宣言する。

そんな事をすれば事務所の面々に、さぞ憎まれるだろうことに気付いていないのか。


「奇遇だな。俺もてめーに勝ったら、二度と事務所に近寄らせないようにしようと思ってたんだ。」


二人の間の空間に、不可視の火花が飛ぶ。

やがて、二人は裂帛の気合とともに飛び出した。


「はぁぁぁッ!!」

「うぉぉぉッ!!」


だが、二人の剣がぶつかりあう瞬間、横島の霊波刀がかき消える。


「な、何ッ!?」


思わずバランスを崩した西条が慌てて振り返ると、そこには画像が揺れる横島が。

その足元には光を放つ文珠─影。

睨み合いから飛び出したのは、このホログラムのような身代わりだったのだろう。

しかし、いつの間に入れ替わったのか。


「君は忍者かッ!?」


まさに早業である。

廊下を駆けながら横島は、そんな西条の声を聞きながら含み笑いをしていた。


「バーカ。お前と無駄にする体力はねーんだよ。」


宣言どおり、軽くあしらわれてしまった西条であった。



          ◆



「西条先輩を手玉にとるなんて、横島さんって本当に悪知恵が働くんですねぇ。」

《美神オーナーから、しっかりと仕込まれてますから。》

「師弟揃ってろくでもないですね〜。」


悪意も何もなく笑顔で毒舌を吐く魔鈴と、なぜか自慢げな人工幽霊壱号に、さすがのロキも笑顔が引きつる。


『…ひどい言われようだね。ちょっと同情しちゃうなぁ…。』



          ◆



「さーて、これからどうすっかな…?」

「なに、どうもせんでいい。ただワシと来るだけでな。」

「へっ? って、うわぁッ!?」


ぼやいた横島に唐突に声がかけられ、ついでに銃弾も浴びせかけられた。

慌てて飛び上がった横島の目に映るのは、大柄なマントを羽織ったジジイとその隣の美少女アンドロイド。


「てめぇ、ドクター・カオス!!」

「ほっ! よく避けたのう。」

「当たりまえじゃー!! 死んだらどーすんだっ!?」

「お主なら死なんと思うがの。」


カオスは本気か冗談かわからないことを言って進みでる。


「まあ、とにかくワシと来てもらおうか。」

「……アンタの望みってのは、家賃がどーとかって例のやつか?」

「話が早いの。」

「そんなしょーもないもんのために捕まってたまるかっ!!」


横島は全力で拒否した。

何が悲しくてじーさんのピンチを救うために、自分の夢(ハーレム)を差し出さねばならんのだ。


「まあ、それだけではない。ワシの望み以外にもマリアの願いもあるしの。」

「マリアの? …っていいのか!?」


捕まえた人しか望みを言えないのなら、カオスかマリアかどちらかしか言えないはず。


「そのことなら運営委員長に許可をもらった。」

『許可したよ〜♪』


能天気なロキのアナウンスに、横島はげんなりする。


「…で、何なんだよ、マリアの望みって?」

「さあの。じゃが、忠実なマリアのこと。きっとワシの役に立つことじゃろうて。のう、マリア?」

「………。」


マリアは何も応えない。

それが横島には何故か、他の奴らからも感じた鬼気のようにも思えた。

と、いきなりマリアが腕を向ける。


「横島さん・覚悟・してください! ロケットアーム!!」

「ひ、ひぃぃぃッ!!」


ドン!! と大砲のような音がして、マリアの腕が横島に伸びる。

それを間一髪で避ける横島だが、つづいてマリアの機関銃が追撃をしかける。

それを霊波刀で弾いて防ぐ。

だが、いつまでも続くものではない。


(くっ…やばいかも…!!)


横島が焦り始めたそのとき、再び天は彼に微笑んだ。

やってきたのは漆黒の羽根の堕天使だったが。


「横島は渡さんッ!!!」

「わ、ワルキューレッ!?」


お前もか!! と叫びそうになった横島だが、どちらにしろ助けてもらえるのはありがたい。

ワルキューレの雄叫びとともに、嵐のような勢いで精霊石弾が飛来する。

それらは、狙いあやまたずマリアとカオスに向かって襲い掛かった。

マリアも負けじと応戦するが、たまったもんじゃないのは巻き込まれるカオス。


「のわァァァッ!?」


アレでは恐らく、リタイアだろう。年だから。

硝煙と銃撃が吹き荒れる中、横島はチャンスとばかりに逃げ出した。


「成仏しろよ、カオス…ッ!!」


逃亡者は目にしらじらしい涙を光らせ、ふたたび駆け出した。

彼の楽園(ハーレム)に向かってひたすらに─。


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