『ロード・オブ・クエスト 〜ドラゴンとユニコーンの剣〜』:2011、アメリカ
遥か昔、2つの月が重なる夜。魔術師のリザーは捕まえた処女を犯し、ドラゴンを誕生させる儀式を執り行おうとする。だが、そこへ黄金の騎士団が駆け付け、リザーと彼の母親3人衆を退治した。救われた女は、騎士団を率いる勇者に「祈りましょう。百年後、2つの月が出会う時、再び地上に偉大な勇者が現れるように」と述べた。それから百年後、モーン王国のサディアスはドワーフ王の第二王妃に猥褻行為で捕まり、共犯者である召使いのコートニーと共に処刑されそうになる。しかし絞首刑は失敗に終わり、サディアスはコートニーを連れて逃亡した。
帰国したサディアスは、父親であるタリアス国王から「我が国との亡命締結書にドワーフ王の署名を貰って来たのだろうな」と確認される。サディアスは全く悪びれず、「奴らは美女を使って誘惑して来た。俺は計略に引っ掛かっただけだ」と告げる。タリアスは彼を叱責し、兄が戻る前に体を洗って悪臭を落とすよう命じた。兄のファビアスはサディアスとは大違いで、数多くの偉業を成し遂げて来た勇敢な王子である。彼は国民からの人気も高く、喝采で迎えられた。
ファビアスは騎士団と共にリザーの手下であるサイクロプスを倒し、その首を持ち帰った。彼は褒め称える父や拍手を送る国民に対し、ベラドンナという女を婚約者として紹介した。彼女は会食の場で、幼少時からリザーに捕まって塔に閉じ込められていたこと、ファビアスに救われたことを話した。サディアスは不機嫌そうに話を中断させ、下品なジョークを口にした。執事のジュリーが兄の偉業を称賛すると、彼は侮辱的な態度を示した。するとジュリーは、サディアスが何の偉業も成し遂げていないことを馬鹿にした。
サディアスが拗ねた態度ばかり取っているので、ファビアスは「何を悩んでる?私はお前と喜びを分かち合いたい」と言う。サディアスが「どいつもこいつも兄上にペコペコしやがって。何しろ世継ぎだもんな。でも弟のことなんて誰も気にしない」と愚痴るので、ファビアスは「私は長男だ。王になるしかない。お前は好きな者になれる」と励ます。サディアスが「俺は王になりたい」と言うと、ファビアスは「では2人で王になろう」と持ち掛ける。しかしサディアスは「俺は一人で王になりたい」と拒絶した。
それでもファビアスは怒ったり突き放したりせず、サディアスに婚儀の付き添い人を依頼した。サディアスは断ろうとするが、「仕来たりでは花婿付き添い人は花嫁付き添い人とベッドを共にできる」と聞かされて承諾した。翌日、騎士団のボーモントは、付き添い人に自分が選ばれなかったことに不満を漏らす。ボーモントが自分を批判しているのを耳にしたサディアスは、結婚式になっても会場に現れなかった。すっかり不貞腐れた彼は、ドラッグを吸っていたのだ。
ファビアスはサディアスの到着を待とうとするが、父に命じられて仕方なく結婚式を始める。そこへリザーと3人の母たちが現れ、魔法を使って大暴れする。リザーはファビアスの動きを封じ、ベラドンナを奪って姿を消した。サディアスが城へ戻って来ると、ファビアスは「良かった。姿を見せないから殺されたのかと思った」と告げた。ファビアスはベラドンナを奪還してリザーを討伐するため、旅に出ることにした。サディアスはタリアスから同行を命じられ、即座に拒否する。しかし「兄や騎士団と共に旅に出るか、王国から追放されるか、どちらかを選べ」と迫られたので、仕方なく承諾した。
サディアスとコートニーを伴って討伐隊に参加するが、ハッパを吸ってラリっていればいいだろうと考えていた。一行が賢き魔法使いの家に到着しても、サディアスは馬車から降りようとしない。しかしファビアスは「お前の最初の任務の度だ。常に一緒に行動するんだ」と告げ、彼を連れ出した。魔法使いは2人に、「予知夢によれば、2つの月が交わる時、邪悪な魔法使いは乙女に自分の種を植え付けてドラゴンを産ませる」と告げた。
2つの月が重なるのは5日後の夜だが、リザーを倒すにはユニコーンの角で作られた魔法の剣が必要だと魔法使いは話す。それは複雑な迷宮の奥にあるのだが、その場所を示すコンパスを魔法使いはファビアスたちに与えた。騎士団が野営の準備をしている中、そこを離れたジュリーは魔術を使ってリザーと連絡を取る。ジュリーはリザーの手下だったのだ。リザーは彼に、ファビアスは生け捕りにして他の連中は始末しろと命じた。その様子を、立小便をしていたコートニーか密かに目撃した。
ファビアスがサディアスのテントを訪れて話していると、コートニーがジュリーのことを報告する。ファビアスはジュリーを捕まえてテントへ戻り、ボーモントに「こいつを縛れ」と命じる。しかしボーモントと騎士団もリザーに寝返っており、ファビアスに襲い掛かった。ファビアスはサディアスとコートニーを馬車に乗せて逃亡し、追って来る騎士団を撒いた。ファビアスが任務を続行しようとすると、サディアスは文句を言う。しかしファビアスはコンパスに従い、北へ向かうことを告げた。
3人が森を歩いていると、全裸の美女が現れた。彼女が誘惑する素振りを見せると、サディアスは兄の「罠かもしれない」という忠告を無視して追い掛ける。しかし、すぐにアマゾネス軍団に追われて舞い戻って来た。3人ともアマゾネス軍団に捕まり、闘技場へ連行された。そこはマーティーティーという男が首領を務める領地で、彼は闘技場に戦士を送り込む。ファビアスはサディアスに「私が死んだら、お前が任務を遂行しろ」と言い、戦いを引き受けた。
ファビアスが戦士を倒すと、マーティーティーは怪物を出現させる。強烈な毒を吐く怪物を相手にしても、ファビアスは勇敢に戦おうとする。しかし足を噛まれて動きを止められ、窮地に陥る。するとフードで顔を隠した戦士が剣を振るい、怪物を倒した。それは女戦士のイザベルだった。彼女は幼い頃に父を連れ去られて殺され、マーティーティーへの復讐に来たのだった。彼女は槍を投げ、たった一撃でマーティーティーを始末した。
マーティーティーの手下たちが襲い掛かる中、サディアスたちもイザベルも闘技場から逃げ出した。ファビアスが挨拶すると、イザベルは冷たい態度で「お喋りしている暇は無いの。まだ北にやるべきことがある」と言う。目的地が同じなので、ファビアスは「せめて町に着くまで一緒に旅をしてはどうだろう」と提案した。サディアスはイザベルの前で格好を付け、「この筋肉に懸けて君を守り抜く。俺たちの方が責任重大だ。男だからな」と言うが、呆れた視線を向けられた。
サディアスはイザベルの水浴びを覗き見ながら、やって来たファビアスに「あんなじゃじゃ馬を手懐けるには、どうすりゃいいんだ」と口にする。ファビアスは彼に、「ああいう女の好みは、誇り高く勇敢で剣の上手い男さ」と告げた。その夜、ファビアスは気を利かせて、コートニーを連れて薪拾いに出掛けた。イザベルと2人きりになったサディアスは、彼女を口説こうとする。しかしイザベルは冷たい態度で、サディアスの闘技場での怯えた態度を指摘した。
家族を殺された仇討ちのために行動しているイザベルに、サディアスは「今を精一杯生きるんだよ。焚き火の前でセックスしろ」と言う。一方、ファビアスはコートニーに、「サディアスが羨ましいよ。いつも人生を楽しんでる」と漏らす。するとコートニーは、「彼は良く貴方の鎧を着て、貴方の真似をしていた。そんなことをするのは、貴方を愛しているからだ。崇拝しているんですよ」と告げた。
ファビアスはイザベルに、「俺にも悲しい過去はある。母上を亡くしている。それに、この間、兄上が花嫁をリザーにさらわれた。だから兄上は、誇り高くて勇敢な俺に手伝うよう求めて来た」と話す。そして彼はコンパスを見せ、その能力を説明した。翌朝、サディアスたちが目を覚ますと、イザベルはコンパスを盗んで姿を消していた。サディアスが任務のことをイザベルに話したと知り、ファビアスは腹を立てる。サディアスは「俺が悪いんじゃない。あの女に惚れて、おかしくなってたんだ」と声を荒らげた。
ファビアスが「コンパス無しで、どうやって魔法の剣を見つけるんだ」と言うと、サディアスは「他の方法が見つかるかも」と口にする。「そんな甘いことを言っている間にベラドンナは殺される」とファビアスが述べると、サディアスは「俺が来ちゃいけなかったんだ。俺はこの旅で死ぬだろう」と言う。「お前の悪い噂は本当だったようだな」と兄に責められた彼は、「それは兄上のせいだ。兄上が優秀で目立つから、俺がマヌケに見えるんだ」と反論した。
ファビアスが「お前には優秀な戦士になれる素質があるのに、それに気付かず、勝手に失望して周囲の期待を裏切っている」と告げると、サディアスは「兄上に俺の気持ちは理解できない。兄上の弟なんて地獄だ。生まれ変われるなら他の奴の弟になりたい」と言い放った。ファビアスは怒りを堪え、出発の準備をするよう促した。町に到着したファビアスは、サデイアスに「お前とコートニーは好きなようにしろ。私は一人で剣を探す。これ以上は時間を無駄にできない」と告げて立ち去った。
サディアスは酒場でイザベルを見つけ、コンパスを返すよう要求した。「あのコンパスは役に立たない」と言われたサディアスは、「昼間しか使えない」と口を滑らせた。イザベルは彼に、自分が黄金の騎士団の一族であること、リザーと母親たちを倒すのが使命であることを話す。サディアスはイザベルから力ずくでコンパスを奪おうとするが、あえなく撃退される。だが、コートニーがイザベルからコンパスを盗み取った。一方、ファビアスはボーモントたちに襲われ、捕まってしまう…。監督はデヴィッド・ゴードン・グリーン、脚本はダニー・R・マクブライド&ベン・ベスト、製作はスコット・ステューバー、製作総指揮はダニー・マクブライド&アンドリュー・Z・デイヴィス&ジョナサン・モーン&マーク・ハッファム、共同製作はピーター・マカリース、撮影はティム・オアー、編集はクレイグ・アルパート、美術はマーク・ティルデスリー、衣装はヘイゼル・ウェッブ=クロージャー、クリーチャー&メイクアップ効果デザインはマイク・エリザルド、視覚効果監修はマイク・マギー、音楽はスティーヴ・ジャブロンスキー。
出演はダニー・マクブライド、ジェームズ・フランコ、ナタリー・ポートマン、ゾーイ・デシャネル、ジャスティン・セロー、トビー・ジョーンズ、チャールズ・ダンス、ダミアン・ルイス、ラスムス・ハーディカー、サイモン・ファーナビー、デオビア・オパレイ、B・J・ホッグ、マッティエロック・ギブス、アンジェラ・プレザンス、アンナ・バリー、アンバー・アンダーソン、スチュアート・ラヴァリッジ、ジョン・フリッカー、ルパート・デイヴィス、ジュリアン・リンド=タット、マリオ・トーレス、ノア・ハントリー、ベン・ライト他。
『スモーキング・ハイ』のデヴィッド・ゴードン・グリーン監督がダニー・マクブライドとジェームズ・フランコを再び起用した作品。
ダニー・マクブライドは初脚本も手掛けている。
彼と共同で脚本を担当したのは、俳優でもあるベン・ベスト。『The Foot Fist Way』に続く2作目の脚本となる。
サディアスをマクブライド、ファビアスをフランコ、イザベルをナタリー・ポートマン、ベラドンナをゾーイ・デシャネル、リザーをジャスティン・セロー、ジュリーをトビー・ジョーンズ、タリアスをチャールズ・ダンス、ボーモントをダミアン・ルイス、コートニーをラスムス・ハーディカーが演じている。下ネタ満載のコメディー映画で、「チンコ」とか、それと「チンコ」とか、他には「チンコ」とか言いまくっている。
「チンコしか言ってねえじゃん」と思うかもしれないが、下ネタの中でもチンコ関連のネタが相当に多いんだよな。
帰還したファビアスを迎える会食の席でサディアスが「コートニーの新しい髪型、チンコを思い出すだろ?」と言い出したり、ジュリーに対して彼がフェラしているようなポーズを取って「ネチャネチャ喋りながら俺のイチモツをしゃぶれるなんて凄いな」と嫌味を言ったりする。結婚式の騒ぎがあった後で現れたファビアスは、「誰も立たなくていい。立つのはチンコだけでいい」と言う。
リザーはベラドンナに、「ファビアスは噂によれば、手当たり次第に女と寝る。そのせいでチンコが病気で腐ってる。奴はお前が思っているようなチンコ、いや男ではないぞ」と告げる。
賢き魔法使いはファビアスとサディアスに、オナニーを手伝って自分のチンコをシコシコするよう要求する。ベラドンナはリザーを笑って「想像しちゃったの、貴方のチンコを。どんな形かって」と言う。
サディアスはファビアスと言い争いになり、「みんな兄上と寝たがってる。俺のチンコを吸いたがる奴はいない」と告げる。
イザベルはファビアスが剣を突き付けて「背中に何か感じるだろ」と言うと、「アンタのチンコ?」と冷たく告げる。
下ネタが多いからって、それで不快感を抱いたり目を背けたくなったりするほど、私は品行方正でガチガチの真面目人間ではない。むしろ、下ネタは大好きだ。
ただ、「それにしても、もうちょっと上手くやれなかったもんかなあ」とは思うぞ。あまりにも幼稚でストレートすぎやしないかと。ジュリーだけでなく騎士団が揃いも揃ってリザーの手下になっているという設定は、かなり無理があるぞ。
ボーモントは婚儀の付き添い人に選ばれずに恨み言を口にしていた時点で、裏切る可能性は大いに感じられた。ただ、だったらボーモントだけを寝返らせればいい。ジュリーを先に裏切り者として見せるのは邪魔だし、騎士団が全て裏切っていることに関しては「なんで?」と疑問しか沸かない。
っていうかボーモントにしても、付き添い人に選ばれなかったのは旅に出る前日だし、そんな短い期間で裏切っちゃうのは不自然。リザーが襲ってきた段階では寝返っていなかったはずで、いつの間に彼と接触し、裏切りを決めたのかと。
あと、そこでボーモントを無理して裏切らせるぐらいなら、むしろ「裏切り者がいることが明らかになり、いかにも裏切りそうに見えたボーモントだろうと思わせておいて、実はジュリー」というミスリードに使って、彼を「サディアスに不満や怒りを抱きつつも共に行動し、後半に入ると一緒になって戦う」という形で動かしてやった方が、むしろ面白いことになったんじゃないかという気もするんだけどね。
裏切り者はジュリーだけにしておいてさ。サディアスは森でアマゾネス軍団に捕まるのだが、カットが切り替わって闘技場へ連行される様子が写ると、他にも4人が一緒にいる。そいつらも、どこかで捕まったということなんだろう。
それは説明が無くても分かるけど、「カットが切り替わったら知らない奴らが4人も増えている」ってのは、編集が粗いわ。
それと、4人の内の1人はフードを被っていて、それがイザベルなんだけど、彼女が混じっているのは、シーンが闘技場に切り替わった段階では気付かなかったんだよな。何しろ、そんなに目立たないように立っていたので。
そこはイザベルが正体を現す前に、もっと存在をアピールしておくべきでしょ。出来ることなら、捕まるところから描写しておきたい。
そのためには、例えば「サディアスが捕まる時点で、既にイザベルは捕虜になっている」という形にでもすればいいんじゃないかな。編集の粗さが気になる箇所は、他にもある。それはイザベルが一行に加わって野営するシーン。
その夜、サディアスはイザベルとセックスしようと考えておりだからファビアスは2人きりにさせる。ところが、サディアスがコンパスのことをイザベルに話した後、リザーとベラドンナのシーンを挟むと、もう翌朝になっており、ファビアスがサディアスとコートニーを起こす。
つまり、「口説こうとした結果、どうなったのか」が描かれていないのだ。
もしも失敗したなら、サディアスは悔しがるはずでしょ。でも、そもそもコンパスのことを話した後、イザベルにセックスを迫る様子さえ描かれていないんだよな。
そこは雑だわ。この映画で何よりも厳しいと感じるのは、サディアスに主人公としての魅力が感じられないということだ。
彼が自堕落で不真面目な生活を送っており、周囲に対して生意気な態度や無礼な行動を取るのは、「優秀で何もかも持っている兄に対する強烈なコンプレックスがある」「みんなが兄ばかりを称賛し、比較される中で、ひん曲がった性格になった」というのが理由であることは分かる。
そういうキャラ造形であることは分かるのだが、それにしても不愉快度数が高くなりすぎている。リザーが結婚式を襲って犠牲が出ているのに、サディアスは我関せずといった態度だ。
ファビアスがリザー討伐の旅に出る際も、「勝手にやれば」という態度だ。
リザーが恐ろしい魔術師であることぐらいはサディアスも分かっているはずで、ってことは命を落とす可能性も充分に考えられるのだが、心配する素振りも無い。
「心配はあるけど、ひねくれているので冷たい態度を取る」ということなら分かるけど、本気で「勝手にやれば、俺は知らんよ」という感じだからね。ファビアスがベラドンナへの深い愛を語ると、サディアスは「もうリザーと寝ちまってるよ」「もしも俺たちが遅れたせいで、彼女の処女を奪ったら?」「もしも彼女がアナルセックスをしたら、それでも愛せる?」などと失礼なことを言いまくる。
それでもファビアスは全く怒らないのだが、そういうサディアスの言動は笑えないし、単純に不愉快なだけなんだよなあ。
兄にコンプレックスや嫉妬心を抱くのは構わないけど、愛が無さすぎるわ。ファビアスが怪物に足を噛まれ、毒を吸い出すよう頼んでも、サディアスは「自分で吸ってくれ」と拒否する。
もちろん、ファビアスの背中を押して自分で吸い出させようとする態度や、コートニーに「お前が吸え」と命じるのをコメディーとして見せようとしているのは理解できる。
ただ、下手すりゃ死ぬかもしれない状況なわけで、それでも毒を吸い出すことを拒絶するってのは、笑えないんだよなあ。
サディアスの動かし方やキャラ造形は、むしろ喜劇を邪魔している部分も多いんだよなあ。イザベルと2人きりになった時、サディアスは「そんなにピリピリと緊張していたら、一瞬も楽しめないだろ」と言う。
するとイザベルは、兄弟が惨殺された時のことを詳しく語り、仇討ちのために行動していることを話す。
それでもサディアスは口説きモードを改めず、軽い調子で「俺が忠告できるのは一つだけ。今を精一杯生きるんだよ。焚き火の前で精一杯、セックスしろ。それなら誰にでも出来る」と言う。
笑えないどころか、ただのクズにしか見えないぞ。そこは、ふざけちゃダメなシーンだろ。自分の愚かしい行動でコンパスを盗まれても、サディアスは反省せず、叱責したファビアスへの怒りを示す。「言い争いの時には感情的になって反抗したが、後になって反省し、兄のために行動しようとする」ということも無い。
イザベルを見つけた彼は、「コンパスを渡せば、きっと兄上は俺にした仕打ちを後悔するさ」と話す。
つまり、自分がミスを犯した、悪いことをしたという気持ちは無いのだ。
この映画ではジェームズ・フランコがラジー賞候補になったけど、むしろダニー・マクブライドの方が問題は大きいと思うぞ。そんなサディアスは終盤になって「たくましい勇者」に変貌するのだが、そこの心情変化を丁寧に描いていないから、ただ段取りを処理しただけの唐突な急変にしか見えない。
イザベルが彼に惹かれるのも無理がある。
コメディーとして今一つスウィングしていないのはサディアスのキャラクターが影響していることは確かだが、他にも問題があると思う。
引っ掛かるのはサディアスのキャラ造形だけじゃなくて、テンポやメリハリがイマイチだとか、ファンタジー・アクションとしての側面とコメディーとしての側面が上手く絡み合っていないとか、色々と原因はあって、全体として今一つ弾け切れていない印象になっている。(観賞日:2014年5月30日)
第32回ゴールデン・ラズベリー賞(2011年)
ノミネート:最低助演男優賞[ジェームズ・フランコ]