『蘭の女』:1990、アメリカ
語学堪能なエミリー・オーティスは、ニューヨークに出て法律事務所の面接に合格した。彼女は早速、弁護士クラウディアに同行してブラジルのリオ・デジャネイロに向かう。エリオット・コスタが所有するホテルを買収し、リゾート地を入手するのが目的だ。
エリオットがアルゼンチンのブエノスアイレスに行ってしまったため、クラウディアはすぐに追い掛けることになった。そこでエミリーは彼女の代わりに、約束していた相手と会うことになった。指定された場所に出向いたエミリーは、ジェームズ・ウィーラーと出会う。彼は誘拐された経験があり、2人の屈強なボディガードが付いていた。
ウィーラーは倦怠期を迎えたオットーとハンナという夫婦に声を掛け、エミリーも連れて遊びに出掛ける。そしてウィーラーはケンカを始めたオットーとハンナを言葉巧みにその気にさせ、車の中でセックスを始めさせる。そして、その様子をエミリーに見せ付ける。
ミステリアスで大胆な行動を取るウィーラーに、エミリーは惹かれるようになる。だが、ウィーラーは体に触れられることを極端に嫌がった。エミリーはウィーラーから要求され、誘いを掛けたアメリカ人弁護士ジェロームとのセックスを彼に見せた。
エミリーはクラウディアから、ウィーラーがカリフォルニアの孤児で若い頃は口が聞けなかったこと、彼女もウィーラーに惹かれていることを聞いた。ウィーラーがホテルを購入したと知り、エミリーとクラウディアは彼を激しくなじる。買収の事実を隠して中国人クライアントと契約を済ませたエミリーとクラウディアの前に、ウィーラーが現れる…。監督はザルマン・キング、脚本はパトリシア・ルイジアナ・ノップ&ザルマン・キング、
製作はマーク・デイモン&トニー・アンソニー、共同製作はハワード・ワース、製作協力はロバート・H・レマー&エイミー・カステンス、製作総指揮はデヴィッド・サウンダース&ジェームズ・ダイヤー、撮影はゲイル・タッターサル、編集はマーク・グロスマン&グレン・A・モーガン、美術はカルロス・コンティ、音楽はジェフ・マコーマック&サイモン・ゴールデンバーグ。
出演はミッキー・ローク、ジャクリーン・ビセット、キャリー・オーティス、アサンプタ・セルナ、ブルース・グリーンウッド、イェンス・ピーター、オレグ・ヴィドフ、ミルトン・ゴンカルヴェス、ポール・ランド、アントニオ・マリオ・シルヴァ・ダ・シルヴァ、マイケル・ヴィレラ、ベルナルド・ヤブロンスキー、ルイス・ロボ、レスター・バーマン、スティーヴン・カミンスキー、ホリスター・ホイットワース他。
『ナインハーフ』の脚本家パトリシア・ルイジアナ・ノップとザルマン・キングがシナリオを書き、ザルマン・キングが監督も務めた作品。
ウィーラーをミッキー・ローク、クラウディアをジャクリーン・ビセット、エミリーをキャリー・オーティスが演じている。モデル出身のキャリー・オーティスはこれが映画初出演で、後にミッキー・ロークと結婚した。『ナインハーフ』が作られた時、ザルマン・キングは思ったのかもしれない。
「こんなエロだけで引っ張るような作品なら、別にオレが監督しても大して変わらないんじゃないのか」と。
それで、そんな映画のメガホンを執ってみたんじゃないだろうか。キレイな表現をすれば、この映画に描かれているのは「官能的な愛」とか、「情熱のエロス」とか、「欲情への誘惑」ってな感じだ。
でも、ぶっちゃけて言うと、ここにあるのはエロだ。スケベな妄想をたくましくして、それを映像化したようなシロモノだ。これは、ポルノ映画館で上映されない程度の、フツーの映画の皮を被ったソフトなポルノ映画だ。
内容は、遠く離れた異国の地で、エキゾチックなムードに酔いしれたヒロインがエロに溺れていくという筋書きになっている。
日本人に分かりやすく、大雑把な言い方をすれば、ザルマン・キング版の『エマニエル夫人』といったところだろうか。気だるい雰囲気の中、性格の歪んだヘンタイ男に会って、ヒロインの体が火照るという話だ。
ミッキー・ロークは、おそらくナチュラルであろうと思われるスケコマシっぷりを見せる。
キャリー・オーティスは、おそらくナチュラルであろうと思われるスッポンポンを見せる。しかし、いったい何を考えたのか、どういう遠慮をしたのかは分からないが、それほどエロが多くないのだ。
キャリー・オーティスはバンバン脱がないとヒロインとしての存在意義など無いのに、なぜか脱ぎ惜しみ、もしくは監督が脱がせ惜しみをしてしまう。
勿体ぶっているつもりなのかもしれないが、勿体ぶるほどのことも無い。焦らした分だけ、後の楽しみが大きくなるわけでもないし。
エロを最大の売りにした(というよりエロ以外に売りは無い)作品で、そのエロが少ないとなると、さて、どうすりゃいいのやら。それにしても、ヒロインのキャリー・オーティスに匹敵するほど、いや、ヘタをすると超えるぐらいのセクシーな匂いを感じさせるジャクリーン・ビセットといったら。
全く脱がないというのに、なんとも色っぽい。
まあ、これは個人的な嗜好もあるだろうが。
第11回ゴールデン・ラズベリー賞
ノミネート:最低主演男優賞[ミッキー・ローク]
<*『逃亡者』『蘭の女』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低新人賞キャリー・オーティス]