『乱気流/タービュランス』:1997、アメリカ

ライアン・ウィーバーは連続婦女暴行容疑で逮捕された。彼を追い続けていたハインズ刑事は逮捕時に過剰な暴力を振るったことで、ライアンを護送する任務から外された。ライアンは銀行強盗犯スタッブスと共に、飛行機でロスに護送されることになった。
彼らが乗せられるのは、トランス・コンチネンタル47便。一般客も同乗しているが、クリスマス・イブということもあってか数名だけだった。フライト・アテンダントのテリー・ハロランは護送グループの担当になり、ライアンから親しげに話し掛けられる。
順調にフライトを続けていた47便だが、トイレに行ったスタッブスが連邦保安官を殺害して銃を奪い、発砲する。銃撃によって窓ガラスが破れ、気圧が低下した。スタッブスはテリーを人質に取るが、ライアンによって救われる。
スタッブスが死亡したことで事件は収束するが、銃撃戦と機体の激しい揺れにより、連邦保安官、機長と副操縦士が死亡してしまった。テリーは地上からの指示を仰ぎながら47便の操縦に挑むが、ライアンは市街地に機体を墜落させようと企んでいた…。

監督はロバート・バトラー、脚本はジョナサン・ブレット、製作はマーティン・ランソホフ&デヴィッド・ヴァルデス、製作総指揮はキース・サンプルズ、撮影はロイド・アハーン二世、編集はジョン・ダフィ、美術はメイリン・チェン、衣装はロバート・タートゥライス、視覚効果監修はマーク・ヴァーゴ、音楽はシャーリー・ウォーカー。
出演はレイ・リオッタ、ローレン・ホリー、ヘクター・エリゾンド、ブレンダン・グリーソン、ベン・クロス、レイチェル・ティコティン、ジェフリー・デマン、ジョン・フィン、キャサリン・ヒックス、ケネス・キャンベル、ジェームズ・マクドナルド、ゴーディ・オウエンズ、キャリー・トーン、ヘイディ・クリング、グランド・L・ブッシュ他。


ローレン・ホリー演じるフライト・アテンダントが、レイ・リオッタ演じる凶悪犯と対決しながら飛行機も操縦するという映画。もはやローレン・ホリーを主演にした時点でB級宣言をしたようなものだが、中身もその通りになっている。

クレジットではローレン・ホリーではなく、レイ・リオッタが最初に来る。で、彼が演じるライアンが悪辣な刑事に不当逮捕された無実の善人ではないかと最初に見せておいて、「やっぱり悪人でした」という展開を用意している。一応は。
しかし、ライアンが悪人だというのは、行動からバレバレである。しかも本性を見せるのが前半の内なので、ドンデン返しとしての効果は非常に薄い。

テリーはヒステリックに泣き叫びながらトラブルに対処するが、どうにもヒロインの魅力に欠ける。戦う女の強さを感じさせるわけでもないし。中途半端な形でテリーのプライベートを説明したりもするが、スピード感を失わせる効果しか生んでいない。

開始から30分辺りで窓ガラスの破損によって飛行機が暴れるが、なぜかノンビリしたムードが漂う。ノコノコと銃撃戦の中に顔を出して射殺されるマヌケな機長。副操縦士も機体が揺れて頭をぶつけて死んでしまうというマヌケっぷり。

スケボー男や老夫婦などの乗客が意味ありげに出てくるが、彼らの活躍するシーンは全く無い。テリーの同僚スチュワーデスも含め、飛行機に乗っていた人物達は「ただ乗っていた」という以外の意味が全く感じられない。

主要キャラクターの中で唯一、ライアンと接点があるのはハインズ刑事だが、彼を飛行機に搭乗させなかったのは失敗だろう。ハインズは地上にいるので、管制センターで成り行きを見守ることしか出来ず、何の役目も果たさない。テリーとライアンの2人だけで最後までストーリーを引っ張るのは、あまりにもキツイ。

レイ・リオッタは得意とする(?)イカれた悪人役を演じているのだが、今一つの印象だ。それは、ライアンの「飛行機を墜落させる」という行動理由が薄いからだろう。自分も死ぬことになるわけで、どうも犯罪者としての“ワルっぷり”に欠けている。

ライアンだけではなく、テリーも、ハインズも、管制センターの連中も、行動がデタラメ。タイトルとなっている乱気流は、見せ場を作る役目をほとんど果たさない。
出来映えとしては、“エアポート”シリーズよりはマシかもしれない。
いや、同じ程度かな。


第18回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演女優賞[ローレン・ホリー]
<*『スマイル・ライク・ユアーズ/緊急! 子づくり宣言』『乱気流/タービュランス』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低人命&公共物軽視賞


第20回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演女優】部門[ローレン・ホリー]

 

*ポンコツ映画愛護協会