『ロードハウス/孤独の街』:1989、アメリカ

フランク・ティルマンはデイトンのクラブを訪れ、用心棒のジェームズ・ダルトンが仕事をする様子を観察した。店で男が暴れ、店員たちが取り押さえた。ダルトンが店から去るよう促すと、男は隙を見て左肩に切り付けた。ダルトンは全く動じず、外に出るよう要求した。男が外に出て喧嘩を始めようとすると、ダルトンは店内に戻った。男が罵っても彼は無視し、部下たちに入り口を守らせた。ティルマンはダルトンと会い、「ダブル・デュース」というクラブを経営していることを明かした。彼は店がゴロツキの溜まり場になったことを説明し、用心棒としてスカウトした。「ギャレットが一番だ」とダルトンが言うと、ティルマンは「奴は年だ。君に頼む」と告げる。ダルトンが報酬を提示して「店は自分が仕切る」と条件を出すと、ティルマンは承諾した。
ダルトンはダブル・デュースへ行き、店内の様子を観察した。店では喧嘩を始める男たちや、ドラッグを売る女がいた。用心棒のモーガンは、態度の悪い男性客を殴り付けて追い払った。ダルトンはバンドでギターを弾きながら歌う旧友のコーディーを見つけ、声を掛けた。コーディーはダルトンに、「ここはデイトンより酷いぜ」と忠告した。店では大規模な乱闘騒ぎが起きるが、ダルトンは傍観を決め込んだ。モーガンから「手伝わないのか」と問われた彼は、「いずれな」と答えた。
翌日、ダルトンは中古車を購入し、エメットという老人が経営する牧場で下宿させてもらうことにした。低空飛行のヘリコプターが馬たちを怖がらせると、エメットは「ブラッドの仕業だ。わざとやってるんだ」と憤慨した。ブラッドは大物実業家で、川を挟んだ牧場の向かいに住んでいた。夜、ティルマンは従業員たちに、ダルトンを紹介した。タルトンはモーガンにクビを宣告し、「お前には務まらん」と言う。さらに彼は、ドラッグを売っていた女にも出て行くよう要求した。
ダルトンは「これは仕事だ、喧嘩じゃない」と従業員たちに言い、客に優しく接するよう説いた。最悪の場合を除けば店で騒ぎを起こさず、丁寧に外へ連れ出すよう要求した。営業が始まると、ダルトンは店員と客の様子をじっくりと観察した。ハンクはタチの悪い男性客から殴られるが、ダルトンの指示を守って手は出さなかった。男がナイフで襲い掛かろうとすると、ダルトンが来て制圧した。ダルトンは仕事をサボって女とセックスしていた店員のスティーヴと、レジの金や酒を盗んでいたバーテンダーのパットをクビにした。
仕事を終えたダルトンが店を出ると、車のガラスとアンテナが壊され、タイヤはパンクさせられていた。牧場へ戻った彼は、ブラッドが大勢の女性たちを集めて夜中まで騒ぐ様子を目にした。翌朝、キャリーが牧場に来て、ダルトンを起こした。彼女はパットを解雇した件について、「後悔しなきゃいいけど」と告げた。ダルトンはレッドの自動車パーツ店へ行き、アンテナを買った。そこへブラッドが来たので、ダルトンは軽く挨拶して去った。
夜になってダルトンが店に行くと、パットが手下のオコーナーとティンカーを引き連れてティルマンと会っていた。パットはブラッドの甥で、ダブル・デュースが酒を仕入れていたのはブラッドのおかげだった。パットはダルトンを挑発し、ナイフを振りかざした。ダルトンはパットと仲間たちを叩きのめすが、脇腹を刺されて怪我を負った。彼は病院へ行き、女医のクレイに治療してもらった。ブラッドは戻ったオコーナーを暴行し、「つまみ出せ」と手下たちに命じた。
ダルトンがレッドの店へ行くと、ブラッドの手下たちが激しく荒らして去るところだった。レッドはダルトンに「毎週だ」と言い、町中の店が売り上げの10%をブラッドに巻き上げられていることを明かした。ダルトンはギャレットに電話を掛け、ブラッドについて知っているか尋ねる。ギャレットは「聞いたことが無い」と答え、顔を出すと約束した。夜、ダルトンは女性客のデニースに誘惑されるが、冷たくあしらった。ブラッドの手下たちが店に来て暴れようとすると、ダルトンは店員たちと共に外へ連れ出して戦った。
ダルトンたちが一味を撃退すると、クレイがやって来た。ダルトンはクレイに誘われ、カフェへ出掛けた。「強いのね。負けたことは?」と問われた彼は、「無いよ。面倒を起こす奴は見ていれば分かる。先手を打てばいい」と告げる。クレイは「住む世界が違うわ」と言うが、ダルトンとキスを交わした。翌朝、ダルトンはブラッドに呼ばれ、彼の邸宅を訪れた。ブラッドは「シカゴで苦労し、ここへ来て商店街を作った」と語り、もっと金持ちになる考えを語った。
ブラッドはダルトンがメンフィスで起こした殺人事件を知っており、「正当防衛になっているが、実際は違う」と指摘した。「酒場の掃除を要求したら、幾らでやってくれる?」と彼が問い掛けると、ダルトンは「金じやないさ」と告げて去った。夜、バーテンダーのアーニーはティルマンに、酒が足りなくなったことを訴えた。どこも酒を配達してくれないことを聞いたダルトンは、ティルマンに「任せてくれ」と言って電話を掛けた。
ダルトンが店を出ると、クレイが待っていた。張り込んでいたブラッドの手下たちは2人が去る様子を見ると、「ブラッドに殺されるぞ」と不敵な笑みを浮かべた。ダルトンは牧場へクレイを連れて行き、自分の部屋に招き入れた。クレイはレッドの姪であること、両親が死去して彼に育てられたこと、離婚して帰郷したことを話した。ダルトンはクレイと抱き合い、肉体関係を持った。2人の様子を、ブラッドが密かに観察していた。
次の日、ダルトンはコーディーから、ブラッドがクレイに惚れていることを聞かされた。酒を積んだトラックが店に到着すると、ブラッドの手下たちが妨害に出た。ダルトンは戦うが、捕まって暴行される。店に来ていたギャレットが駆け付け、ダルトンを救った。ダルトンは彼にクレイを紹介し、3人で朝まで飲んだ。ダルトンはギャレットから「まだ過去に生きてるのか。メンフィスは遠い」と言われ、「もう関係ない」と否定する。ギャレットは「信じられるものか」と告げ、「いつまで引きずってる。大人になれ」と説いた。彼はダルトンに、「あの時、あの女は結婚してるなんて言わなかった。銃を突き付けられたら、殺すか殺されるかだ」と述べた。
その夜、ダルトンがダブル・デュースで仕事をしていると、レッドの店が火事になったという知らせが届いた。ダルトンが外へ出て様子を見ていると、レッドの店は大爆発を起こした。ブラッドはジミーたちを引き連れてダブル・デュースを訪れ、「あの男だけ町の振興に金を払わなかった」と嘲笑った。ブラッドは用心棒のジミーを暴れさせ、店を去った。彼はレッドに手を貸そうとしたストラウデンマイアの自動車販売店へ乗り込み、展示されていた車を手下に破壊させた。さらに彼は牧場の小屋に火を放ち、エメットを殺害した…。

監督はローディー・ヘリントン、原案はデヴィッド・リー・ヘンリー、脚本はデヴィッド・リー・ヘンリー&ヒラリー・ヘンキン、製作はジョエル・シルヴァー、製作総指揮はスティーヴ・ペリー&ティム・ムーア、撮影はディーン・カンディー、編集はフランク・J・ユリオステ&ジョン・リンク、art director美術はウィリアム・J・ダーレルJr.、衣装はマリン・ヴァンス=ストライカー、音楽はマイケル・ケイメン。
主演はパトリック・スウェイジ、共演はベン・ギャザラ、サム・エリオット、ケリー・リンチ、ケヴィン・タイ、キース・デヴィッド、キャスリーン・ウィルホイト、“サンシャイン”・パーカー、レッド・ウエスト、ジュリー・マイケルズ、マーシャル・ティーグ、ジェフ・ヒーリー、ジョン・ドー、トラヴィス・マッケンナ、ロジャー・ヒューレット、カート・ジェームズ・ステフカ、ゲイリー・ハドソン、テリー・ファンク、マイケル・ライダー、ジョン・ヤング、アンソニー・デロンギス、ジョー・アンガー、ティニー・ロン、シーラ・カーン、ジョン・ポール・ジョーンズ他。


『若き勇者たち』や『ダーティ・ダンシング』で人気となったパトリック・スウェイジが主演した作品。
ビデオ化の際は『ロードハウス/誓いのカクテル』という邦題が付けられた。
監督は『殺しのナイフ/ジャック・ザ・リッパー』のローディー・ヘリントン。
脚本は『800万の死にざま』のデヴィッド・リー・ヘンリーと『危険な天使』のヒラリー・ヘンキンによる共同。
ダルトンをパトリック・スウェイジ、ブラッドをベン・ギャザラ、ウェイドをサム・エリオット、クレイをケリー・リンチ、ティルマンをケヴィン・タイ、アーニーをキース・デヴィッド、キャリーをキャスリーン・ウィルホイト、エメットを“サンシャイン”・パーカー、レッドをレッド・ウエスト、デニースをジュリー・マイケルズが演じている。

徹底したプロフェッショナルとして、クールに仕事をするイカした男を描いた作品である。
ダルトンは初めて訪れる店でも知られているほど有名な凄腕の用心棒だが、何でもかんでも暴力で解決するわけではない。むしろ、出来るだけ穏便に済ませようとする男だ。
デイトンの店では、男が暴れても最初は出て行くよう促すだけだ。男が隙を見て切り付けても反撃せず、外へ出るよう要求するだけ。相手は喧嘩を始めようとするが、ダルトンは無視して店に戻る。
基本的には、暴力に頼らず問題を解決しようとする。
彼は喧嘩をしたいわけではなく、仕事として用心棒をやっているだけだ。

ダブル・デュースで仕事を始めることになったダルトンは、客に対して優しく接するよう要求する。ハンクが客に殴られても、手を出さずに説得して追い払うよう指示する。
ただしハンクがナイフで襲われそうになると、すぐに駆け付けて客を制圧する。
いざとなれば、武器を持った相手にも怯まずに立ち向かう覚悟と勇気を持った男だ。そして単に覚悟と勇気があるだけでなく、実際に相手を制圧できる戦闘能力も持ち合わせている男だ。
そんな男が「客には優しく接しろ」と命じるからこそ、説得力があるのだ。

ジミーたちが店に来た時、ダルトンは最初から戦闘態勢に入っている。それは、ジミーのブーツに刃が仕込んであるのを見たからだ。
店で遊ぶつもりが皆無で最初から攻撃してくるのが明白な場合は、相手が客じゃないので暴力を行使して排除する。
ダルトンは序盤でスカウトされ、報酬や条件を提示して即座に店を移るが、決して金だけで動く男ではない。だからブラッドから勧誘された時は、その場で断っている。
プロとして報酬や条件は提示するが、それよりも大事なのは「プロとしての矜持」なのだ。

ダルトンの行動には一貫性があり、全くブレることが無い。話は破綻していないし、整合性が取れない箇所も無い。演出面でも、妙なことをやらかすことは無い。
凝ったことをやろうとして空回りしたり、変に捻ろうとして無駄にゴチャゴチャしたりすることも無い。とても分かりやすく、シンプルな勧善懲悪の話になっている。
悪党が改心し、主人公の味方になることは無い。逆に、善玉として登場したキャラが主人公を裏切るようなことも無い。話の奥行きや深みは無いが、頭を使わず気楽に観賞できるという利点はある。
そんなわけで、前半に関しては特に大きな問題があるわけではない。
ただ単に、ちっとも面白くないというだけだ。

後半に入ると、分かりやすいボロが次々に出てくる。
ダルトンがコーディーから「ブラッドがクレイに惚れているらしい」と聞かされるシーンがあるが、そんな設定があるのなら、もっと早い段階から匂わせておいた方がいい。
牧場でイチャイチャしているダルトンとクレイをブラッドが眺めるシーンまで、ブラッドがクレイに惚れていることを示すための描写は皆無だった。
明確に示さなくても、せめて伏線は張っておいた方がいいはずだ。

ダルトンは酒が配達されないことを知ると、「任せてくれ」と電話を掛ける。でも、どこに掛けたのかはサッパリ分からない。
そして翌朝になると、酒の配達トラックがダブル・デュースに来る。
だが、ティルマンが頼んでも誰も配達してくれなかったのに、なぜダルトンが電話を掛けたらトラックが来るのか。そのトラックで配達してくれた相手は、どうしてブラッドの妨害がある中でもダルトンに協力してくれるのか。
そこはサッパリ分からない。

ダルトンはトラックの酒を捨てようとするジミーたちと戦うが、捕まってピンチに陥る。
だけどダルトンのキャラ設定を考えると、そこで捕まって暴行される展開は避けた方がいい。クレイから「負けたことはあるのか」と問われた時も、自信満々で「先手を打てばいいから絶対に負けない」と断言しているぐらいだしね。
幾ら多勢に無勢であっても、それを言い訳にしない方がいい。
せっかくギャレットが加勢に来るんだから、例えば「ダルトンが戦っていたら、ギャレットが駆け付けて加勢する」という形にしておけばいい。ピンチになる前にギャレットを加勢させても、特に問題は無いはずだ。

ブラッドがメンフィスの出来事について触れるシーンがあるが、この段階では何のことかサッパリ分からない。
ダルトンは苛立つ様子を見せるが、そこをブラッドが深く突っ込むことは無いし、ダルトンの回想シーンを挟むことも無い。
ギャレットがダルトンに「メンフィスを引きずっているのか」と話すシーンで、そこの問題に再び触れる。
でも、ダルトンが過去を引きずっている気配なんて、まるで無いのよ。そういう設定があるのなら、前半から伏線は張っておくべきでしょ。

終盤、ブラッドはレッドの店に放火するが、警察は彼の味方ってことで全く動かない。さらにブラッドは公衆の面前でストラウデンマイアの店を荒らし、牧場に火を放ってエメットを始末する。
でも、「何をやっても警察は動かない」ってことなら、「最初からそういう方法を取っていれば良かったじゃねえか」と言いたくなる。
レッドが金を払わないのなら、殺して店を奪えばいい。ダルトンが邪魔なら、殺して排除すればいい。脅したり店を荒らしたりと、余計な時間や手間を掛ける必要が無いでしょ。
あと、ブラッドはダブル・デュースでジミーを暴れさせる前にデニースをステージに上げてストリップさせるんだけど、これに関しては「何の意味が?」と言いたくなるぞ。

映画のラスト、ブラッドはギャレットを殺されて怒りに燃え、ブラッドの屋敷へ乗り込む。敵が銃で武装しているのは分かり切っているはずなのに、なぜか彼は何の武器も持たずに乗り込む。
彼は手下たちを倒してブラッドを追い詰めるが、なぜか殺すことは躊躇する。
でも手下は平気で殺していたのに、なんでブラッドの時だけ躊躇するんだよ。
そのせいで殺されそうになると駆け付けたティルマンやレッドたちがブラッドを撃ち殺すけど、そこだけ他人に譲っても何の意味も無いだろうに。

(観賞日:2021年5月18日)


第10回ゴールデン・ラズベリー賞(1989年)

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ローディー・ヘリントン]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演男優賞[パトリック・スウェイジ]
<*『復讐は我が胸に』『ロードハウス/孤独の街』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低助演男優賞[ベン・ギャザラ]

 

*ポンコツ映画愛護協会