『リッチー・リッチ』:1994、アメリカ

世界一の資産家リッチ家の息子リッチーは、両親や執事のキャドベリー、キーンビーン教授らに囲まれ、大豪邸で何不自由無く暮らしている。ある時、彼は父の代理で工場再建の歓迎式典に出席し、工場職員ダイアンの娘グロリア達が近くで草野球をしているのを見た。その時、リッチーは同年代の友達が欲しいと感じた。
後日、リッチーはスケジュールを変更させ、グロリア達の草野球に混ぜてもらった。だが、リッチーはグロリアから「2度と来ないで」と言われてしまう。落ち込んだリッチーを見たキャドベリーは、彼を英国へ連れて行こうとする両親に「息抜きが必要」と進言した。リッチーはキャドベリーが招いたグロリア達と豪邸で遊び、仲良くなった。
リッチーの両親は、自家用機で英国へと向かった。会社の乗っ取りを企むリッチ産業の重役ヴァンドーは、飛行機に爆弾を仕掛けていた。飛行機は墜落し、ヴァンドーはリッチ夫妻が死んだと思い込むが、2人は海上に不時着して助かっていた。
ヴァンドーは部下のファーガソンと共に、会社の実験を握ろうとする。しかし、飛行機にリッチーが乗っていなかったのは、ヴァンドーにとって誤算だった。リッチーはキャドベリーやグロリア達の協力を得て、社長代行として会社を運営していく。だが、ヴァンドーはキャドベリーをリッチ夫妻殺害犯に仕立て上げ、刑務所に送ってしまう…。

監督はドナルド・ペトリー、原案はニール・トルキン、脚本はトム・S・パーカー&ジム・ジェニウェイン、製作はジョエル・シルヴァー&ジョン・デイヴィス、共同製作はジェフリー・A・モンゴメリー&ジャクリーン・ジョージ、製作協力はウェンディー・ワンダーマン、製作総指揮はダン・コルスラッド&ジョン・シャピロ&ジョー・ビレラ、撮影はドン・バージェス、編集はマルコム・キャンベル、美術はジェームズ・スペンサー、衣装はリサ・ジェンセン、音楽はアラン・シルヴェストリ。
出演はマコーレー・カルキン、ジョン・ラロクエット、エドワード・ハーマン、ジョナサン・ハイド、クリスティン・エバーソール、ステフィー・ラインバーグ、マイケル・マクシェイン、マリアンジェラ・ピノ、チェルシー・ロス、マイケル・マッカローネ、ジョエル・ロビンソン、ジョナサン・ヒラリオ、レジー・ジャクソン、クラウディア・シファー、ワンダ・クリスティン、ステイシー・ローガン他。


ハーヴェイ・コミックスの漫画を基にした作品。
リッチーをマコーレー・カルキン、ヴァンドーをジョン・ラロクエット、キャドベリーをジョナサン・ハイド、リッチ夫妻をエドワード・ハーマン&クリスティン・エバーソール、グロリアをステフィー・ラインバーグが演じている。

マコーレー・カルキンは、『ホーム・アローン』『ホーム・アローン2』で人気者となった。
彼は、役者としての存在感を賞賛されたのでもなく、芝居のセンスを高く評価されたのでもない。
「かわいい」「キュートだ」ということで、アイドルとしての人気を得たのだ。
この映画は、マコーレーがアイドルであることを理解し、アイドルとして使いこなそうとする。
アイドルというのは、日本語に訳せば“偶像”だ。だから、難しいことはしなくていい。極端な話、ただ単に、そこに立っているだけでもいい。何しろ、偶像なのだから。

この映画では、もちろん主人公なので、まずマコーレーを中心に配置する。そして、その周囲に多くのキャラクターを並べて、それを演じる俳優達に芝居をさせる。ギャグが提示されたり、話が処理されたりする中で、それを動かすのは基本的に周囲の人々だ。
学校の生徒達がビジネスの授業で大人びた態度を取るとか、様々な発明品を見せるとか、なるべくマコーレーが関わらない部分で笑いを取りに行ったり話を広げたりする。レジー・ジャクソンやクラウディア・シファーといった有名人で、目を惹き付けたりもする。

そもそも、「リッチーの豪快な金持ちっぷりを見せる」というのが基本線であり、そこにはマコーレーの芝居など全く必要が無い。庭にあるジェットコースターを見せたり、家の中にマクドナルドを用意したりと、周囲を大げさに飾り付ければ、それでOKなのだ。
後半に入ると、マコーレーは社長代理となって会社を動かすことになる。だが、そうなっても、やはり映画は彼だけにスポットを当てることはやらない。両親の様子や、刑務所に入れられたキャドベリーの様子を挿入し、そちらで笑いを取りに行く。

中心に位置するマコーレーには、ほとんど芝居らしい芝居は要求していない。
基本的には、デクノボーのように突っ立っているだけでいいという扱いだ。
何しろアイドルだから、そこにいるだけでいいのだ。
というか、あまり動かれると邪魔なのだ。

しかし、たぶんマコーレーは、自分がアイドル扱いされることにウンザリしていたに違いない。
彼は今作品で、喜怒哀楽を大きく表現することは無い。特に笑顔が冴えないのは、アイドルとしてはマイナスだ。アイドルは、何よりも笑顔が要求される存在だ。
表情が冴えないのは、きっとアイドル扱いされることに対する、マコーレーなりの抵抗だったに違いない。
「家庭の問題で疲弊していたじゃないの?」とか「やる気が無かっただけじゃないの?」という意見は、無理矢理にでも却下させていただく。


第15回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[マコーレー・カルキン]
<*『ゲッティング・イーブン』『ページマスター』『リッチー・リッチ』の3作での受賞>


第17回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の男優】部門[マコーレー・カルキン]
<*『ゲッティング・イーブン』『ページマスター』『リッチー・リッチ』の3作での受賞>

 

*ポンコツ映画愛護協会