『レイズ・ザ・タイタニック』:1980、アメリカ&イギリス

北極圏に近いソ連領のスバルドルフ島で、アメリカ人の鉱山技術者が行方不明となった。予定を4日過ぎても収容地点に現れなかったのだ。鉱山技術者はシシリー計画のために派遣された男だった。シシリー計画とは、最新のレーザー技術を使った究極の防衛構想である。NUMA(国立海中海洋機関)のジェームス・サンデッカー提督や大統領補佐官のジーン・シーグラム博士たちによって、その計画は進められている。発電所から空に向けてレーザー光線を発射し、見えない防衛幕を作ってミサイルを防ごうという目論見だ。
ただし計画を成功させるには、大きなエネルギー源の確保が必要となる。特殊な金属元素のビザニウムを調査させるため、彼らは鉱山技術者を派遣したのだ。海軍のケンパー提督やバズビー将軍たちに、サンデッカーとシーグラムは鉱山技術者の救出を依頼した。鉱山技術者はソ連の兵士に攻撃されるが、フリーのエージェントであるダーク・ピットが助け出した。ワシントンのソ連大使館にはシシリー計画の情報が入り、大使のアントノフが対策に動き出した。
サンデッカーはシーグラムに、ピットのことを「海軍のOBで、他の者に出来ない仕事は引き受けるが、そうでなければ断る」と説明した。飛行機で帰国したピットは、重傷の鉱山技術者を病院へ搬送するよう指示した。彼はサンデッカーとシーグラムに、「ビザニウムがあったのは確かだそうだ。500キロ近く掘り出している。ソ連ではなくアメリカ人だ。コロラド製の機材と1911年のロッキー新聞があったそうだ。凍死体と誰かが書いた墓標もあったらしい。墓標には“米国陸軍軍曹ジェイク・ホバート、1912年2月10日凍死”とあった」と話す。サンデッカーが「70年前に陸軍が兵員を送ってたと言うのか?」と確認すると、ピットは「彼がそう言った」と告げた。
シーグラムは恋人である新聞記者ダナを訪ね、約束の時間に遅刻したことを詫びた。「ダーク・ピットという男を知ってるかい?」と彼が訊くと、ダナは「誰?知らないわ」と告げた。しかしシーグラムと湖へ出掛けたダナは、「嘘をついた。ダーク・ピットと会ったことがあるわ。彼が海軍情報部にいた時」と明かす。なぜ隠したのかと問われ、ダナは「急に訊かれたからかな」と言う。「デートした?」とシーグラムが尋ねると、ダナは「そんなんじゃないの。近寄り難い人なのよ」と述べた。
ピットはサンデッカーとシーグラムに、「記録にブルースターという男が出てる。両方の意味で山師だ。ビザニウムを発見して米陸軍に売り込んだ。軍も利用価値を認めて彼に金と人員を与え、捕鯨船を雇って島へ送り込んだ。鉱石を掘って持ち帰る計画だった。捕鯨船には積んだが、ロシアの軍艦に追われて捕まりそうになった。彼らはスコットランドの東北岸に上陸。陸路サウサンプトンまで鉱石を運ぶことにした。ロシアのスパイがこれを追った。銃撃戦を交えながら逃げてブルースターは生き延びた」と語った。
さらにピットは、「サウスビーという男も一緒だった。ブルースターの最終報告は、サウスビーは助かったという内容だ。彼は鉱石を商船に積んだ。その船は1912年4月10日にサウサンプトンを出航し、ニューヨークへ向かった。タイタニック号だ」と話す。ビザニウムの在処は分かったが、3800メートルの深海だ。そこでピットは、タイタニック号の引き揚げを提案した。前例は無いが、ピットはケンパーたちに「海軍の協力があれば可能です」と告げた。
ピットは町で偶然にもダナを見つけ、声を掛けた。2人は笑顔を浮かべ、軽く会話を交わした。サンデッカーはピットとシーグラムに、大統領の承認が下りたことを伝えた。ピットは海軍基地を訪れ、旧知の間柄であるバーク艦長やウォーカー兵曹長にシーグラムを紹介した。ピットはシーグラムに、「言っておくが、バークは優秀な軍人だ。君の助力は要るまい。俺はサルベージを独断専行でやる。口出しは無用だよ」と告げた。
作戦会議が開かれ、ピットは「まずタイタニックの位置確認が重要」と告げる。最後の無線が発信された地点と救助船が報告した位置を結び、その中心点から捜索を開始する計画を彼は説明した。サンデッカーはピットに、タイタニック号の建造資料は構造設計から全て保存されていること、乗組員リストも残されていること、貨物担当の3等航海士だったビガロウがコーンウォールにいることを教えた。
ピットはビガロウと会い、9番船倉のDデッキ左舷に目当ての荷物があったことを聞き出した。ビガロウは「持ち主の船客も印象深かった。髭もじゃで狐のような目。救命艇を下ろした時には銃まで出しおった」と話す。ビガロウは「男は彼に銃を突き付け、9番船倉へ連れて行くよう脅した。行ってみたら、9番船倉はまだ水に漬かっていなかった。彼は自分の荷物を確認して喜んだ。彼はそこに残って箱の上に登り、『サウスビーは助かった』と何度も呟いていた」と語った。
“ディープ・クエスト号、タートル号、スターフィッシュ号という3隻の潜航艇が、深海の探索を開始した。ピットとバークは、捜索海域にソ連の海洋調査艦が来たのを確認する。3800メートル地点にソナー反応を感知したスターフィッシュ号は調査許可を要請するが、「貴艇は3600メートルが限界だ」と却下される。深海3600メートルの限度で調査を指示されたスターフィッシュ号は、艇内が浸水してしまう。タートル号が救助に近付くが、スターフィッシュ号は押し潰されて乗員3名が死亡した。
シーグラムはピットに、模型を使った沈没実験の結果を説明する。煙突の有無によって沈む位置が大きく異なることを、彼は語った。その実験結果を受けて、現在地から南東16キロの海域に作業地点を移すことになった。やがて金属探知機が反応し、コルネットが発見された。コルネットには「グラハム・ファーレー殿 スター汽船」という文字が刻まれていた。シーグラムはサンデッカーとピットに、ファーレーがタイタニック号の楽団で演奏していたことを告げる。
シークリフ号の金属探知機が反応し、ディープ・クエスト号で潜航したピットはタイタニック号を発見した。ソ連大使館のプレヴロフ将校は彼らの動きを嗅ぎ付け、タイタニック引き揚げやビザニウムの情報を新聞社に流した。テレビでもシシリー計画のことが報じられ、ダナも記事にした。彼女はシーグラムに「情報源が僕だと思われるじゃないか。誰に聞いた?」と問われるが、情報源は明かさなかった。
「情報源はピットか?」とシーグラムが苛立った様子で言うと、ダナは「それで分かったわ。彼のことで怒ったのね」と告げた。否定するシーグラムだが、ダナは当て付けるように「気になるんでしょ?ハッキリ言っとくわ。私は彼と2年間同棲したわよ」と話す。「結構なことだね。どうして別れたんだ?」というシーグラムの言葉に、彼女は「後悔してるわ」と告げる。シーグラムが黙って立ち去ると、ダナは追い掛けて詫びる。しかしシーグラムは戻らなかった。
サンデッカーは記者会見を開き、タイタニックの引き揚げ計画について詳しく説明する。しかしシシリー計画やビザニウムについては、ノーコメントを貫いた。ピットやバークたちは、軍艦から外部に向けて電波が発信されていることを掴んだ。サンデッカーの報告により、マーカーという乗員の記録が改ざんされていることが明らかとなった。ベトナムで捕虜になって収容所に2年間入った後、釈放されて日本の女性と結婚したことになっていたが、実際はベトナム軍情報部員の妹と結婚していたのだ。
シーグラムは初めてディープ・クエスト号に乗り込み、タイタニック引き揚げのための作業を見学する。タートル号のピットは問題の発生を受け、ディープ・クエスト号に応援を要請した。しかしディープ・クエスト号の作業アームがタイタニック号に引っ掛かり、身動きが取れなくなってしまう。艇内の電力は落ち、酸が漏れ出した。空気は6時間しか残っておらず、ピットはタイタニック号と一緒に浮上させることを提案した。100ポンド爆弾80個を船底に仕掛けて順番に爆発させ、泥にハマった車を揺する要領で浮上させるというのが彼のアイデアだ。危険ではあるが他に乗員を救う方法が無いため、ピットたちは爆弾を設置する…。

監督はジェリー・ジェームソン、原作はクライヴ・カッスラー、脚本はアダム・ケネディー、脚色はエリック・ヒューズ、製作はウィリアム・フライ、製作総指揮はマーティン・スターガー、撮影はマシュー・F・レオネッティー、編集はJ・テリー・ウィリアムズ&ロバート・F・シュグリュー、美術はジョン・F・デキュアー、音楽はジョン・バリー。
出演はジェイソン・ロバーズ、リチャード・ジョーダン、アレック・ギネス、デヴィッド・セルビー、アン・アーチャー、ボー・ブランディン、M・エメット・ウォルシュ、J・D・キャノン、ノーマン・バートールド、エリヤ・バスキン、ダーク・ブロッカー、ロバート・ブロイルズ、ポール・カー、マイケル・C・グウィン、ハーヴェイ・ルイス、チャールズ・マコーレイ、スチュワート・モス、マイケル・パタキ、マーヴィン・シルバーシャー、マーク・L・テイラー他。


クライヴ・カッスラーの小説『タイタニックを引き揚げろ』を基にした作品。
監督は『エアポート'77/バミューダからの脱出』のジェリー・ジェームソン、脚本は『ダブ』『ドミノ・ターゲット』のアダム・ケネディー。
サンデッカーをジェイソン・ロバーズ、ピットをリチャード・ジョーダン、ビガロウをアレック・ギネス、シーグラムをデヴィッド・セルビー、ダナをアン・アーチャー、プレヴロフをボー・ブランディン、ウォーカーをM・エメット・ウォルシュ、バークをJ・D・キャノンが演じている。

そもそも監督が『エアポート'77/バミューダからの脱出』のジェリー・ジェームソンという時点で「なぜ彼を選んだのか」と言いたくなってしまうが、しかし実は演出よりも脚本の方が遥かにポンコツな映画である(っていうか大抵の映画で何より重要なのは脚本だ)。
私は未読だが、どうやら原作の重要な要素を色々と省いたことで全く別物のような内容になってしまったらしく、クライヴ・カッスラーも原作ファンも大いに不満だったようだ。
この映画に怒りを覚えたカッスラーは、自作の映画化をしばらく拒み続けた。
2005年の『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』で久々に承諾したのだが、あれもポンコツな映画だったんだよなあ。

私は原作ファンではないので、ダーク・ピットの風貌が全く違っているとか、主要キャラのアル・ジョルディーノが登場しないとか、その辺りに関しての不満は抱かない。
しかし、原作と比較しなくても、この映画のシナリオに問題が多いことは明らかだ。
まず、(出演者の表記順では2番目だが)主人公であるはずのダーク・ピットの初登場シーンが、あまりにも地味。
そもそも、彼がダーク・ピットであることが分からない。何しろ、サンデッカーたちが海軍に救出要請をした後、画面が切り替わると鉱山技術者がソ連兵に銃撃されており、そこに男が駆け付けてソ連兵を銃殺するのだ。
だから当然、そいつが誰なのかは分からない。
そこはダークが登場する前に、「ダークを派遣しよう」と誰かに言わせ、彼が何者なのかを軽く説明しておけばいいだろうに。

細かいことになるかもしれんけど、ダナが最初にシーグラムからダークのことを問われて「知らない」と答え、湖へ出掛けたところで嘘をついていたことを明かすという手順は、「その手間は何のために掛けているのか」と言いたくなる。
最初に訊かれた時点で、「ダークが海軍情報部にいた頃に会ったことがある」と言わせれば1つのシーンを削ることが出来るでしょ。
そこに2つのシーンを費やす必要性や意味が無い。嘘をついてから事実を明かすまでに間隔を置くならともかく、直後のシーンで打ち明けているんだから。
2人で釣りをするシーンなんて入れなくても、シーグラムとダナが付き合っていることは分かるし。

っていうか根本的な問題として、ダナの存在意義が著しく薄い。
「ダーク・ピットの元恋人で、今はシーグラムの恋人」というキャラ設定なので、恋愛劇を盛り込むのであれば重要な存在と言える。しかし、この映画に恋愛劇は全く溶け込んでおらず、余計な要素として浮き上がっている。
そうなってしまった原因は、ダナの職業設定が大きい。
記者という立場だと、引き揚げ作戦の中枢部分に位置することが出来ない。部外者の立場なので、捜索が開始されると完全に話から消えてしまう。情報が洩れてから再登場するが、シーグラムと痴話喧嘩して、また消える。
その程度の存在なら、まるで要らんわ。本筋に全くと言っていいほど影響を及ぼさないんだから。ダナのことでピットとシーグラムが不穏な関係になるとか、それで計画に問題が生じるとか、そういう影響は全く無いんだから。

ピットがビガロウと話すシーンは、「荷物の持ち主は『サウスビーは助かった』と何度も呟いていた」という情報を聞いたところで目的は終わっているはず。
ところが、そこからパブへ移動し、ビガロウがタイタニック号のコレクションを見せたり、「お国の摩天楼のようにそびえ立って、長さは球場の2倍。内装は貴族の屋敷に負けなかった。絶対沈まんと言われたが、2時間で消えちまった。1500人を道連れにな」と語ったり、沈む前に外した旗を渡して「もし引き揚げられたら元の所へ戻してやってくれ」と頼んだりする様子が描かれる。
それ、要らんでしょ。
ただ無駄に時間を使っているようにしか思えない。

序盤に鉱山技術者が凍死体と墓標を発見したり、シシリー計画やビザニウムに関する説明が入ったりするけど、ようするに「タイタニックを引き揚げる」という行動に向かうためのお膳立てでしか無く、その設定が後の展開に効果的な絡み方をしていない。
そもそも、1911年という時代にアメリカ陸軍がビザニウムを掘り出した後、どのように使用したのか。そっちのビザニウムの行方が気になってしまうぞ。
「タイタニック号を引き揚げる」という計画に対して、自分でも不思議に思ってしまうぐらい、ワクワクする気持ちが全く沸き上がって来ない。タイタニックが発見されても、引き揚げに成功しても、そこに高揚感が全く無い。
そういう意識を喚起させるためのドラマや物語が、この映画には欠け落ちている。
登場人物の「タイタニックを引き揚げよう」ということに対する熱量が足りないのと、「ビザニウムなる架空の物質を入手して防衛構想に使う」という引き揚げの目的に対して興味が湧かないのと、その辺りが大きな原因かな。

海洋アドベンチャーとしてのワクワク感が得られないだけでなく、サスペンス・アクションとしての高揚感も味わえない。
まず、テンポがゆったりしすぎているというのが、そうなっている一因だ。淡々と進む時間帯が長く、話のメリハリに欠けるってのも大きい。何か波乱が起きたりピンチになったりしても、何となく起伏に欠けている印象を受ける。
っていうか、そもそも波乱やピンチが少ない。金属探知機の大暴れからタイタニック発見までに時間を掛けているが、もう「そこにタイタニックがある」ってのは明白なので、さっさと発見しろと言いたくなる。
発見するまでに時間を掛けて、そこに何かトラブルやピンチが待ち受けているわけではなく、ただ淡々と静かに時間が過ぎ去って行くだけなのだ。
それで探知機の反応から発見までに5分以上も費やすって、どんだけノンビリしてんのかと。

かなり早い段階でソ連大使館がシシリー計画を嗅ぎ付けているのだが、ソ連の軍隊が攻撃を仕掛けて来るとか、米ソのスパイ戦が展開されるとか、そういうのは全く無い。
後半に入り、プレヴロフが脅しを掛けるシーンはあるが、それだけでオシマイだ。
米軍が攻撃態勢を整えると、あっさりと退散してしまう。そして、もうソ連の妨害工作は二度と実行されない。
そんな淡白な扱いなら、もはやソ連を絡める必要性さえ無いんじゃないかと思ってしまうぞ。

アメリカ政府がビザニウムを入手したらソ連は戦略的に苦しくなるんだから、プレヴロフはもっと必死になれよ。それを横取りするのが無理なら、タイタニックを再び沈めてアメリカが入手することを阻止する第二次計画でも用意しておけよ。
あと、アメリカ側がビザニウムをソ連に渡すのを拒否するのは当然だけど、だからって潜水艦と戦闘機で脅すのはどうなのよ。
もしもソ連の巡洋艦を攻撃したら、それこそ大変なことになっちゃうんだぞ。
で、それを考えると、プレヴロフがあっさり引き下がるのも簡単すぎだろ。

スターフィッシュ号が押し潰されて乗員3名が死亡するが、大した出来事じゃないかのように軽く処理されている。
「この辺りで何か波乱を起こしておかないと退屈が続くから」というだけで盛り込まれたようなモノで、その事故によって計画が大きく狂ってしまうとか、人間ドラマに繋がるとか、そんなことは無い。
っていうか、そもそも人間ドラマなんて皆無に等しいから、繋がりようもないけどさ。
あと、そもそも3800メートルの深海に沈むタイタニック号を捜索して引き揚げようという計画なのに、3600メートルが限界の潜航艇を使っている時点でどうなのかと思ってしまうぞ。

スターフィッシュ号の事故の後、シーグラムが「データを調べ直した。煙突の有無によって沈む位置が違う。正確な縮尺模型を作って実験してみた。200回の沈没実験でも、煙突付きなら捜索中の場所へ行く。しかし煙突が無いと全く別の場所へ行く」と言うが、そういう実験は探索を開始する前にやっておけよ。
なんで事故が発生してから、ようやく実験してるんだよ。
3人も死んでるのに、そのことに対する沈痛な思いや罪の意識も全く無さそうだし。まあ、どうせ名前も分からんような雑魚キャラしか死んでいないけど。
そこは「スポットを当てておいた奴が犠牲になり、ピットたちが沈痛な思いになる」というところへ繋げれば、物語に起伏が生じるだろうに。

タイタニック号の引き揚げ計画について、サンデッカーは「浮力を付けるために合成樹脂フォームを詰める。潜航艇が注入ポンプを設置する。中の海水を押し出せば2万2千トンの浮力が生じる。さらに補助タンクを使い、高圧ヒドロジン・ガスを詰めて船体に固定する。
最後に周囲で火薬を爆発させ、船体を海底から引き離すようにすれば浮上すると思います」と説明する。
しかし、潜航艇が押し潰されるほど水圧の強い状況下で、果たして合成樹脂フォームや補助タンクが機能するのか。
それを考えると、大いに疑問が残る。

ともかく、設置した爆弾が爆発して、しばらくするとタイタニック号は浮上する。ゆっくりではなく、かなりの勢いで。
3800メートルの深海に沈んでいたのに、浮上開始から海上に姿を現すまでに1分30秒ぐらいしか掛からない。
「科学考証って何?」と言わんばかりのトンデモ描写である。
しかも、そんなスピードで浮上しているのに、船体は全く損傷しない。
そもそも、発見された段階で、煙突が1つ壊れているだけで他は全て無事ってのも違和感ありまくり。

そんで、猛スピードで浮上する一方、タイタニック号の浮上が完了するまでには、たっぷりと5分ほど使っている。
この映画においてタイタニック号が浮上するシーンは何よりの見せ場なので、そこに時間を掛けようってことなんだろう。
でも、時間を掛けたから観客を引き付ける見せ場になっているのかというと、そんなことはない。
そりゃそうだろ、ただ単に船が浮き上がるだけなんだからさ。

サンデッカーたちがタイタニック号を調べると、船倉にあるのは砂利だけ。「ビザニウムはありませんでした」という結果。
サンデッカーは「ビザニウムが防衛目的だけに使用されるとは思えない」と言い出すが、何のフォローにもならない。
そこに来て目的の物が無いってことになると、そこまでの話は何だったのかと言いたくなる。
タイタニックを浮上させたのは、ただの骨折り損ってことになる。

莫大な資金が投入され、犠牲者まで出したタイタニック号の引き上げが無駄骨に終わった後、ピットが船内で見つけたブルースターの葉書をシーグラムに渡し、サウスビーに荷物が持ち込まれていることを教える。
で、サウスビーの墓でガイガー・カウンターが激しく反応し、そこにビザニウムが埋められていることが明らかになるが、シーグラムは掘り出さずに立ち去る。
いやいや、軍事利用を危惧して政府に渡さないのはいいとしても、そんな場所に放射性物質を放置したままでいいのか。
あと、なぜビザニウムをタイタニックに積み込んだと見せ掛けて別の場所に埋めていたのか、その謎が残されたままになってるぞ。
残されたままっていうか、それを謎として受け止めている奴は誰もいないんだけど。

(観賞日:2014年9月2日)


第1回ゴールデン・ラズベリー賞(1980年)

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低助演男優賞[デヴィッド・セルビー]

 

*ポンコツ映画愛護協会