『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』:1999、アメリカ

ビリー・チャペルは、幼少の頃からピッチャーとしての才能を発揮し、騒がれる存在であった。やがて成長した彼は、デトロイト・タイガースに入団し、ワールドシリーズにも出場した。だが、そんな彼も40歳になり、肉体の衰えや痛みを感じていた。
その日、ビリーはヤンキースタジアムでの試合に先発することになっていた。相手のニューヨーク・ヤンキースは、その試合に優勝が懸かっている。試合の朝、ビリーはファッション誌の記者をしている恋人ジェーンから、仕事でロンドンに行くことを聞かされる。彼女は、「あなたは野球さえあれば、私なんかいらない」と、別れを告げた。
球場に出向いたビリーは、オーナーからトレードを通告された。試合が始まり、ビリーは1回の裏を3人で仕留めてみせた。彼は、ジェーンとの過去を思い出す。5年前、2人はニューヨークで出会った。車が故障したジェーンを、ビリーが助けたのが初めての出会いだった。2人は、ビリーがニューヨークに遠征した時だけデートする関係になった。
ある時、ビリーはジェーンを遠征先のフロリダに呼んだ。だが、ジェーンが行ってみると、ビリーの部屋には別の女がいた。しかし、それで2人の関係が終わるということは無く、ジェーンの娘ヘザーが家出した時には、ビリーが連れ戻しに行った。
ビリーは電動ノコギリで腕に大怪我を負い、復帰は絶望的とさえ言われた。ビリーは焦りからジェーンに当たり散らし、彼女を追い払ってしまった。5ヶ月後、リハビリを終えたビリーはジェーンと再会するが、彼女は他の男と付き合っていた。
試合はタイガースが1点をリードし、ビリーには完全試合を達成する可能性が出てきた。そんな様子を、空港のテレビでジェーンが観戦していた。肩の痛みを覚えるビリーは、捕手のガスに励まされる。そして試合は、いよいよ終盤へと突入する…。

監督はサム・ライミ、原作はマイケル・シャーラ、脚本はダナ・スティーヴンス、製作はアーミアン・バーンスタイン&エイミー・ロビンソン、製作総指揮はマーク・エイブラハム&ロナルド・M・ボズマン、撮影はジョン・ベイリー、編集はエリック・L・ビーソン&アーサー・コバーン、美術はニール・スピザック、衣装はジュディアナ・マコフスキー、音楽はベイジル・ポールドゥリス。
主演はケヴィン・コスナー、共演はケリー・プレストン、ジョン・C・ライリー、ジェナ・マローン、ブライアン・コックス、J・K・シモンズ、ヴィン・スカリー、スティーヴ・ライオンズ、カーマイン・ジョヴィナッツォ、ビル・E・ロジャース、ヒュー・ロス、ドメニク・ロンバルドッツィー、アーネティア・ウォーカー、ラリー・ジョシュア、グリーア・バーンズ、スコット・ブリーム、ホセ・モタ、アール・ジョンソン他。


『さよならゲーム』『フィールド・オブ・ドリームス』で野球選手を演じているケヴィン・コスナーが、またも野球選手を演じた作品。ビリーをケヴィン・コスナー、ジェーンをケリー・プレストン、ガスをジョン・C・ライリー、ヘザーをジェナ・マローンが演じている。

ビリーは、小さい頃からスポーツ・エリートとして脚光を浴び続けて来た選手だ。
それを演じるケヴィン・コスナーは登場した時からカッコイイ男である。
そして、最初から最後まで、カッコイイ男であり続ける。
正直、鼻に付く所が無いわけではない。
しかし、そうであっても、恋愛よりも野球のシーンの方に、遥かに興味を惹かれる。
そこには、相手選手との駆け引き、自分自身の衰えとの戦い、仲間との関係などがある。ただ、残念なことに、それらはあくまでも、その場だけのモノなのだ。

回想シーンの大半が恋愛に割かれており、ビリーの野球人生は、ほとんど見せてもらえない。
回想シーンでは、強敵や元同僚、仲間やコーチのことは、ほとんど描かれていない。
で、ビリーの喋りで処理するから、薄いドラマになってしまう。
そこまでして、主人公を圧倒的に映さないとダメなのか。
それがケヴィン・コスナー主演作の掟なのか。

ガスとの友情の絆や、元同僚との対決など、かなり感動的に盛り上げられる要素は、ビリーの野球生活の中に幾らでも転がっている。
だが、恋愛を描くことに気を取られすぎて、最後の試合までの伏線が無い。
以前にマヌケなミスを犯した選手のファインプレーなども、恋愛の割合の大きさですっかり埋もれてしまう。

現在のシーンでは野球を描き、回想シーンでは恋愛が描かれる。
野球と恋愛は、完全に別々に独立した形で存在している。
恋愛がビリーの野球生活に影響を与えるようなことは、ほとんど無い。
仕事と私生活という風に、分断されている状態だ。
ビリーが復帰絶望と言われる大怪我を負ってリハビリに励む辺りは、回想シーンの中では数少ない「野球と恋愛が関わる」という部分だ。
だが、それまで恋愛ばかりを描いておいて、そこで急にビリーに野球への情熱を訴えられても、重みに欠ける。

ハッキリ言って、恋愛に比重を置きすぎだ。
正直、「惚れた腫れたなんてどうでもいいから、もっと野球のシーンを見せろ」と言いたくなった。
大体、回想シーンの大半が恋愛に関する内容ってことはさ、お前は大事な試合の最中に、バッターを打ち取ることよりも、試合に勝つことよりも、女のことばっかり考えているのかと思ってしまうよ。


第18回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[ケヴィン・コスナー]
<*『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』『メッセージ・イン・ア・ボトル』の2作でのノミネート>


第20回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演男優】部門[ケヴィン・コスナー]
<*『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』『メッセージ・イン・ア・ボトル』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会