『ロンゲスト・ヤード』:2005、アメリカ

アメフトのスター選手だったポール・クルーは八百長疑惑で起訴され、証拠不充分で執行猶予になった。現在、彼は金持ちであるレナのヒモ同然となり、酒浸りの日々を送っていた。パーティーでの接待を求められたポールは、レナをクローゼットに閉じ込めた。彼はレナの車を勝手に使い、街に出た。レナは警察に通報し、ポールは車の盗難と飲酒運転で警官に逮捕されそうになる。ポールはパトカーを壊して逃亡を図るが、カーチェイスの末に捕まった。
ポールはシトラス刑務所に収監され、クノール看守長から「俺はマイアミ大学でフットボールをやってた。看守リーグもある。所長はお前に協力を頼むだろう」と聞かされる。クノールはポールを暴行し、所長に協力しないよう脅しを掛けた。所長のヘイゼンはポールを呼んで、政治顧問のエロール・ダンドリッジを紹介し、知事選への出馬を勧められていることを話す。彼はポールを収容するため手を回したことを明かし、看守チームへのアドバイスを求めた。ポールが断ると、途端にヘイゼンは不機嫌な態度になった。彼はクノールに、所長室へ残るよう命じた。しばらくして外に出て来たクノールは、ポールを暴行した。
ポールが食堂へ行くと、多くの囚人たちが露骨に嫌悪感を示した。ケアテイカーと呼ばれる囚人はポールに声を掛け、八百長試合が酷く嫌われる行為だと教えた。「肝心なのはナメられないことだ」と助言されたポールは、最初に自分を追い払った囚人のボブを殴り付けた。そこから乱闘が勃発すると、看守たちは炸裂弾を使って制圧した。ポールはクナールに反抗的な態度を取り、懲罰房に収容された。1週間が経過すると、ポールは懲罰房から出された。
ヘイゼンはポールにチーム練習を見せ、初戦が昨年の優勝チームであることを明かした。彼が改めて助言を求めると、ポールは調整試合の実施を提案した。するとヘイゼンは囚人でチームを結成し、QBを務めるよう指示する。ポールは断ろうとするが、刑期が長くなるという脅しを受けたので仕方なく承諾した。ただし彼は引き受ける条件として、クノールのイジメをやめさせるよう要求した。ヘイゼンは承知し、4週間でチームを作ること、その間は作業を免除することを告げた。
ケアテイカーがトライアウトのチラシを作成して貼り出すと、囚人のブルーシーたちが興味を示した。ディーコンは「奴は仲間を裏切った男だ」と言い、チラシを丸めて捨てた。トライアウトには十数名の囚人が参加するが、経験者は皆無だった。ポールが能力テストを行うと、使えそうなのは巨漢で怪力のスウィトウスキーぐらいだった。オクラホマ大学でハイズマン賞を獲得したネイト・スカーボローがコーチとして売り込んで来たので、ポールは手伝ってもらうことにした。
ネイトは囚人のスティッチーから、地下に資料室があることを教えてもらった。彼は資料を調べ、凶暴性の高い囚人をピックアップした。ポールは死刑判決を3回も受けて特別房に収容されているタリーをスカウトに行くが、威嚇されて退散した。それでも彼はトレスとバトルのスカウトに成功するが、俊足の選手が必要だと考える。ケアテイカーの助言を受けた彼は、ディーコンが率いる黒人グループの元へ行く。彼はディーコンに1オン1の勝負を提案し、自分が勝てばチームに入るよう要求した。ディーコンは反則を連発し、都合良くルールを適用して勝利した。しかしポールの戦いぶりに心を打たれたメゲットが、チームに加わることを申し出た。
ヘイゼンはエロールからテレビ局が中継したがっていることを知らされ、有権者へのアピールになると考えて受けることにした。ポールは改めてタリーのスカウトに行き、OKを貰った。看守チームのスパイである囚人のアンガーは、メゲットが一番の脅威だとクノールたちに報告した。看守たちはメゲットに嫌がらせをして怒らせ、懲罰房送りにしようと目論んだ。しかしメゲットは挑発に負けず、穏やかに対応した。それを見ていたディーコンは、仲間のエディーたちを率いてチームに参加することを決めた。
ポールはアンガーが看守チームのスパイだと分かっており、ヘイゼンに彼を封じるよう要請した。ヘイゼンに「勝つ気じゃないだろうな」と確認された彼は、「目的通り、こてんぱんに負けますよ」と告げた。翌朝、ポールたちが練習を始めようとすると、グラウンドが水浸しになっていた。ポールはヘイゼンの嫌がらせだと確信し、「所長は俺たちを恐れてる。それは正しい、なぜなら俺たちは勝つからだ」と口にした。選手たちはグラウンドに飛び出し、泥だらけになって走り回った。
囚人たちは嫌がらせへの仕返しを考え、看守の骨折記録を盗んだり、イングルハート看守が摂取しているステロイドを女性ホルモンと摩り替えたりする。ポールは所長秘書のミズ・タッカーに協力してもらい、昨シーズンの看守チームの映像を入手した。囚人たちは密かに映像を見るが、それを知ったアンガーが看守のランバートたちに報告した。ランバートは彼に、ポールの始末を命じた。アンガーはポールの独房に爆破装置を仕掛け、プレゼントを置くために入ったケアテイカーが爆死した。
ポールたちはケアテイカーを弔い、試合に臨んだ。試合が始まると、囚人たちは看守を痛め付けることばかりに意識を向けた。その結果、何人かの看守に怪我を負わせたものの、わずか1分半で2トライを奪われた。ポールは囚人たちを集め、勝つためにプレーするよう説いた。囚人たちは気持ちを入れ替え、トライを目指してプレーを始めた。主審が看守の反則をまったく取らないので、彼らは苛立った。ポールはパスを投げるフリをして股間にボールを投げ付け、主審を脅して公正なジャッジを約束させた…。

監督はピーター・シーガル、原案はアルバート・S・ラディー、オリジナル脚本はトレイシー・キーナン・ウィン、脚本はシェルドン・ターナー、製作はジャック・ジャラプト、製作総指揮はアダム・サンドラー&ヴァン・トフラー&デヴィッド・ゲイル&バリー・ベルナルディー&アレン・コヴァート&ティム・ハーリヒー&マイケル・ユーイング&アルバート・S・ラディー、製作協力はマーク・S・ガニス&ケヴィン・グラディー、撮影はディーン・セムラー、美術はペリー・アンデリン・ブレイク、編集はジェフ・ゴーソン、衣装はエレン・ラッター、音楽はテディー・カステルッチ、音楽監修はマイケル・ディルベック。
出演はアダム・サンドラー、クリス・ロック、バート・レイノルズ、ジェームズ・クロムウェル、ネリー、ウィリアム・フィクナー、デヴィッド・パトリック・ケリー、トレイシー・モーガン、クロリス・リーチマン、マイケル・アーヴィン、ビル・ロマノウスキー、ブライアン・ボズワース、テリー・クルーズ、ニコラス・タトゥーロ、ビル・ゴールドバーグ、ケビン・ナッシュ、スティーブ・オースチン、ボブ・サップ、スティーブ・リーヴィス、ロボ・セバスティアン、ダリップ・シン他。


1974年の同名映画をリメイクした作品。
監督は『N.Y.式ハッピーセラピー』『50回目のファーストキス』のピーター・シーガル。
脚本のシェルドン・ターナーは、これがデビュー作。
ポールをアダム・サンドラー、ケアテイカーをクリス・ロック、ヘイズンをジェームズ・クロムウェル、メゲットをネリー、クノールをウィリアム・フィクナー、アンガーをデヴィッド・パトリック・ケリー、ミズ・タッカーをトレイシー・モーガン、リネットをクロリス・リーチマンが演じている。

他に、ディーコンをマイケル・アーヴィン、ランバート看守をビル・ロマノウスキー、ガーナー看守をブライアン・ボズワース、エディーをテリー・クルーズ、ブルーシーをニコラス・タトゥーロ、バトルをビル・ゴールドバーグ、イングルハート看守をケビン・ナッシュ、ダンハム看守をスティーブ・オースチン、スウィトウスキーをボブ・サップ、ボブをスティーブ・リーヴィス、トレスをロボ・セバスティアン、タリーをダリップ・シンが演じている。
顔触れを見て気付く人もいるだろうが、プロレスラーや格闘家が多く起用されている。
1974年版でポールを演じていたバート・レイノルズがスカーボロー役、アンクレジットだがレナ役でコートニー・コックスが出演している。

大まかなストーリー展開は、ほぼ忠実にオリジナル版をなぞっている。その一方、監督がピーター・シーガルで主演がアダム・サンドラーなので、コメディー色が強くなっている。ただ、徹底してコメディーに振り切っているわけではなく、基本的には熱血スポーツ感動路線を進む筋書きになっている。
ただ、もちろん最終的に「囚人チームが看守チームに勝利する」というカタルシスで観客を気持ち良くさせる話なんだけど、どうしても「八百長は事実」ってのが引っ掛かるんだよなあ。
そこは「実は無実」とか「のっぴきならない事情があって」みたいな事情でもあるのかと思ったら、「借金で首が回らず八百長に手を出した」ってことだからね。
しかも、それを反省している様子も見せていないし、ダメじゃねえか。

序盤、クノールはポールを暴行してヘイゼンの要求を断るよう脅し、「所長は飾りで実権は俺が握っている」と言う。
でも、「自分が実権を握っているからヘイゼンに協力するな」という理屈が良く分からない。
ポールがヘイゼンに助言することで、クノールが何の不利益を被るのかが良く分からないのだ。
で、ポールがヘイゼンの依頼を断っても暴力を振るうぐらいクノールはドイヒーな奴だったのに、その後は何も手を出さず、しばらくは存在が消えている。そこは「急におとなしくなったな」と違和感が強い。

「ポールからイジメをやめさせるよう頼まれたヘイゼンが承諾する」という手順があるので、それでクノールが手出ししなくなったってことなんだろう。
ただ、それで納得できるモノではないんだよね。
どういう理屈か分からないけど、クノールからするとポールがヘイゼンのために囚人チームを作るのは望ましくないんでしょ。だったら、本人がポールに直接的な暴力を行使しなくても、チーム作りを妨害する方法は幾らでもありそうでしょ。
なのにメゲットへの嫌がらせシーンまでは、何もせずに放置しているんだよね。

トライアウトの結果にポールが困っていると、夕暮れの中でネイトが歩いて来る。このシーンは、まるで「真打ち登場」のような演出で、バート・レイノルズに敬意を払っている。
ただし皮肉なことに、そうやって特別扱いしたことによって、「元スター選手はネイトだけでも良くないか」と思ってしまう。
「ポールが元スター選手」という設定を排除して、「ネイトの指導によってダメダメなチームが急激に成長する」という話で良くないかと。
何しろバート・レイノルズなんだし。

あと、そんな風に思ってしまうのは、アダム・サンドラーがポールを演じているってのも大きく影響している。MVPを獲得したこともある元NFLのQBには、まるで見えないのだ。
オリジナル版が公開された当時のバート・レイノルズは、バリバリの肉体派アクション俳優として大活躍していた。
それに比べると、言わずもがなだろうが、アダム・サンドラーは決してそういうタイプじゃないからね。
では知力で肉体的なハンデを補っていたタイプに見えるかというと、それも違うし。

ただ、「真打ち登場」の印象で登場したネイトが、ほとんど何もしていないという問題もあるんだよね。
凶暴な囚人を調べるシーンでは自らパソコンを操作しているけど、それはコーチとしての仕事じゃないし。メンバーが揃った後には、黒板にフォーメーションを書いたりタックルを教えたりする様子がチラッとあるけど、その程度。
なので逆に、「そんな無意味な扱いなら要らなくないか」と言いたくなってしまう。
バート・レイノルズを登場させるにしても、1シーンの特別出演みたいな形でも良くないかと。

タリーやトレス、バトルをスカウトするシーンは、ただ「ガタイが良くて凶暴な奴」という基準だけで選んでいる。
アメフト選手としての素質は完全に無視しており、スカウトのシーンで能力がアピールされることも無い。
そこは軽く片付けている一方で、ポールがディーコンと1オン1で対決するシーンは分割画面を使うなどして5分ぐらい費やしている。
でも、そこでディーコンのアメフト選手としての才能がアピールされるわけじゃないのよね。

ポールはヘイゼンに「勝つ気じゃないだろうな」と問われた時、「目的通り、こてんぱんに負けますよ」と告げた。でも、調整試合は提案していたけど、「わざと負けるために囚人チームを作る」とは約束していなかった。
なので、最初から負ける約束でチームを作っていたような発言は、ちょっとギクシャク感を覚える。
で、「こてんぱんに負けますよ」とポールが約束したのにヘイゼンがグラウンドを水浸しにするのだが、今さらその程度の嫌がらせに何の意味があるのかと。
「ポールは負ける約束を守る気が無い」と感じたのなら、脅しでも掛ければいいだけであって。

試合が始まると、先に反則を仕掛けるのは囚人チームだ。プレーを無視して暴力行為を繰り返し、カイザーナックルで殴ったりもしている。それは囚人たちからすれば、「普段から抱いていた看守への怒りをぶつけた」ってことなんだろう。
ただ、普段の刑務所生活の中で看守が囚人を酷い目に遭わせている様子なんて、ほとんど描かれていないのよ。
だから、囚人たちが試合を無視して看守に襲い掛かる様子を描かれても、そこにカタルシスは無い。スポーツマンシップ皆無の乱暴な連中だと思うだけだ。
しかも、その反則の大半を主審が取っていないからね。なので、その後で看守の反則を見逃す主審に囚人たちが激怒しても、「どの口が言うのか」と指摘したくなる。

(観賞日:2022年8月24日)


第26回ゴールデン・ラズベリー賞(2005年)

ノミネート:最低助演男優賞[バート・レイノルズ]
<*『デュークス・オブ・ハザード』『ロンゲスト・ヤード』の2作でのノミネート>


第28回スティンカーズ最悪映画賞(2005年)

ノミネート:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門
ノミネート:【最悪のリメイク】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会