『リトル★ニッキー』:2000、アメリカ
夜、シングルマザーの着替えを木の上から覗いていた男は、彼女の子供に見つかってパチンコで攻撃される。木から落下した覗き魔は死亡し、地獄に落ちた。地獄の第三王子であるニッキーが自室にいると、悪魔のジミーが来た。父王のサタンが跡継ぎに関して話すため呼んでいることを知らされたニッキーは、「僕は選ばれないから行く必要はないよ」と嫌がる。ニッキーは兄のエイドリアンやカシウスと違って悪事が苦手だし、気品や風格にも欠けていることを自覚していた。彼は幼い頃にカシウスにシャベルで殴られて顔が歪み、普通に話せなくなっていた。
王になって1万年目を迎えたサタンは息子たちを集め、今後も地獄を統治すると宣言した。エイドリアンとカシウスは憤り、ニッキーは喜んだ。サタンは息子たちに、「王は善悪のバランスを保つ責任があるが、お前たちは誰も果たせない」と言う。エイドリアンはカシウスに、「地上に俺たちの地獄を築くんだ。大勢の人間を堕落させてから命を奪う」と告げた。2人は制止しようとする門番を突き飛ばして、地獄の業火に飛び込んで地上へ向かった。
慌てた門番はサタンの元へ行き、2人が地獄を出たせいで業火は凍り付いたことを報告した。地獄の門が壊れると魂が入って来なくなり、サタンは死を迎えることになる。サタンの体は消滅が始まっており、ニッキーはエイドリアンとカシウスを連れ戻すために地上へ行くよう指示される。ジミーは彼に、2人を同時に戻す必要があることを説明した。サタンは彼にボトルを手渡し、「一滴飲めば中に取り込める。2人を捕まえたら戻って来るんだ」と話す。ジミーはニッキーに、サタンの命が1週間も持たないことを告げた。
地上へ行ったニッキーは、地下鉄の構内で列車にひかれて地獄へ舞い戻った。再び地上に向かったニッキーは、ブルドックのビーフィーに案内されてニューヨークのグランド・セントラル駅に出た。ビーフィーはサタンの旧友で、ニッキーに世話を頼まれたことをニッキーに説明した。彼はニッキーに、エイドリアンはカシウスは人間に乗り移っているので見つけるのは難しいだろうと告げた。ニッキーは初めてフライドチキンを食べた直後、道路に飛び出してバスにひかれた。また地獄に逆戻りしてしまった彼は、地上へ向かった。
ビーフィーはサタンからアパートを借りるための金を預かったが、ストリップクラブで散財していた。彼はニッキーに嘘をつき、「手違いがあって別の住まいを用意した。ルームメイトが一緒だ」と告げた。ニッキーは俳優志望のトッドが暮らす部屋へ行き、家賃や条件を聞く。ニッキーのいびきが異常なので、トッドは恐怖を覚えた。エイドリアンとカシウスは枢機卿と市長に憑依し、大規模な集会で神の存在を全否定した。2人は集まった人々に、罪を犯すよう勧めた。
ニッキーは出会う人に片っ端からボトルを向けるが、もちろん兄ではないので何の反応も無い。それだけでなく、時には暴行を受けたり、命を失って地獄に落ちたりすることもあった。疲れたニッキーは公園で眠り込み、集まって来た人々はいびきを聞いて逃げ出した。露天商がボトルを盗んで逃亡し、それを目撃したピーター&ジョンという2人組はニッキーを起こす。ボトルを盗まれたと聞いたニッキーは炎を吐き、露天商の捜索に向かう。ヘヴィーメタルのファンであるピーターとジョンは、炎を吐いたニッキーを見て喜んだ。
露天商を見つけたニッキーはボトルを返すよう要求するが、荒っぽい態度で拒否される。ニッキーが地獄のパワーを使おうとしていると、様子を見ていたヴァレリーという女性が露天商に「返してあげたら?」と交渉する。近くに警官がいることを指摘された露天商は、渋々ながらボトルをニッキーに帰した。ニッキーはヴァレリーに礼を述べ、一緒にジェラートを食べた。ヴァレリーはニッキーの質問を受け、デザイン学校に通っていることを話す。ニッキーが奇怪な言動を見せてもヴァレリーは全く敬遠せず、笑顔で接した。
サタンの父のルシファーは、門番に「地獄を作ったのは私だが、本当の手柄は最初の妻がヒントになった」と話す。市長に化けたカシウスは、飲酒が法律で認められる年齢を10歳以上に引き下げた。子供たちが酒を飲んで嘔吐する様子を見たエイドリアンは、満足そうな笑みを浮かべる。彼はヴァレリーと歩いているニッキーに気付き、パワーを使う。ッキーはヴァレリーを侮辱する言葉を浴びせ、彼女の怒りを買ってしまう。彼はエイドリアンに体を操られ、大型トラックにひかれて地獄に落ちた。
地上へ戻ったニッキーだが、カシウスは市長として売春を推奨するなど善悪のバランスを壊し続ける。ビーフィーは悪のパワーを鍛えるようニッキーに説き、「秘められた悪を解き放て」と告げた。テレビでNBA中継を見たニッキーは、黒人選手に不利な判定を繰り返す主審がカシウスだと確信する。会場に飛び込んだ彼はハーフタイムショーに参加し、ロングシュートを決めようとする。カシウスに妨害される。彼はカシウスと対決し、豪快なダンクシュートを決めた。カシウスは何も知らずにボトルのジュースを飲み、吸い込まれた。その様子を客席で見ていたピーターとジョンはニッキーに歩み寄り、興奮して「俺たちはアンタのしもべだ」と告げた。
ニッキーはピーターとジョンを連れて、アパートへ戻る。トッドはビーフィーから事情を聞いており、ニッキーに確認を取った。ニッキーたちはピーターとジョンが大麻を入れたケーキを食べ、気持ち良くなった。ピーターとジョンからオジー・オブボーンのライブに誘われたニッキーだが、ヴァレリーのことが気になって遠慮した。ニッキーはデザイン学校の学生寮へ侵入し、ヴァレリーに謝罪する。ニッキーは詳細を説明して釈明し、ヴァレリーの手を取って一緒に夜の街を飛んだ。
翌朝、エイドリアンは警察署長に憑依し、ニッキーを凶悪殺人犯だと発表して5000万ドルの賞金を懸けた。賞金目当ての住民に追われたニッキーは、魔力を解き放って無数の蟻に変身した。彼はアパートに駆け込み、エイドリアンが犯行を捏造した映像をニュース番組で見る。ピーターとジョンが訪ねて来ると、ニッキーはグランド・セントラル駅で会う約束をする。彼はトッドに殺してもらい、地獄へ戻った。既に父の体は半分以上が消滅しており、サタンは「今夜10時が限界だ」と地上へ戻るようニッキーに指示した。
ピーターとジョンは署長に化けたエイドリアンの元へ行き、ニッキーの情報提供と引き換えに賞金を受け取った。エイドリアンは駅へ案内させ、部下たちに封鎖を命令した。エイドリアンがニッキーの出現を待っていると、ホームレスに化けたヴァレリーがピーターとジョンに絡む。ピーターたちは袋に隠したボトルを奪い取ってヴァレリを追い払い、美味しそうに飲むフリをする。興味を持ったエイドリアンはボトルを手にするが、ピーターとジョンの様子に不審を抱いた。
エイドリアンは策略に気付き、ジョンに憑依していたニッキーを魔力で引きずり出した。彼はヴァレリーを人質に取り、ニッキーにボトルのジュースを飲むよう命じる。そこへビーフィーが駆け付け、エイドリアンに矢を放った。エイドリアンは自分を噛んで逃げようとしたヴァレリーを抱え、ホームに飛び降りる。そこへ列車が走って来たため、ニッキーはホームに飛び込んでヴァレリーを助ける。ニッキーはエイドリアンと揉み合いになったまま、列車にひかれた。しかし地獄に戻ったのはエイドリアンだけで、ニッキーはヴァレリーを救う善行で天国へ召されていた。そこで天使のホーリーと出会ったニッキーは、彼女が自分の母親だと知らされる。一方、エイドリアンは消滅寸前の父から玉座を奪い、新しい魔王となった…。監督はスティーヴン・ブリル、脚本はティム・ハーリヒー&アダム・サンドラー&スティーヴン・ブリル、製作はロバート・シモンズ&ジャック・ジャラプト、製作総指揮はロバート・エンゲルマン&アダム・サンドラー&マイケル・デ・ルカ&ブライアン・ウィッテン、撮影はテオ・ヴァン・デ・サンデ、美術はペリー・アンデリン・ブレイク、編集はジェフ・ガーソン、衣装はエレン・ルッター、視覚効果監修はジョン・サリヴァン、音楽はテディー・カステルッチ、音楽監修はマイケル・ディルベック。
主演はアダム・サンドラー、共演はパトリシア・アークエット、ハーヴェイ・カイテル、リス・エヴァンス、ロドニー・デンジャーフィールド、アラン・コヴァート、トミー・“タイニー”・リスターJr.ケヴィン・ニーロン、ジョン・ロヴィッツ、マイケル・マッキーン、クエンティン・タランティーノ、ピーター・ダンテ、ジョナサン・ローラン、ブレイク・クラーク、ジョン・ウィザースプーン、ルイス・アークエット、ダナ・カーヴィー、エレン・クレッグホーン、ジョン・ファーレイ、クリント・ハワード、リア・ライル、ダン・マリーノ、オジー・オズボーン、レジス・フィルビン、ロブ・シュナイダー、フランク・シヴェロ、ジャッキー・ティトーン、ジョージ・ウォレス、ビル・ウォルトン、カール・ウェザース、ヘンリー・ウィンクラー、リース・ウィザースプーン、マニー・ジャクソン他。
声の出演はロバート・スミゲル。
主演のアダム・サンドラーが自身の創設したHappy Madison Productionsで製作した映画。
監督は『ヘビーウェイト/サマー・キャンプ奪還作戦』のスティーヴン・ブリル。脚本は『ウォーターボーイ』『ビッグ・ダディ』のティム・ハーリヒー、アダム・サンドラー、スティーヴン・ブリル監督による共同。
ニッキーをアダム・サンドラー、ヴァレリーをパトリシア・アークエット、サタンをハーヴェイ・カイテル、エイドリアンをリス・エヴァンス、ルシファーをロドニー・デンジャーフィールド、トッドをアラン・コヴァート、カシウスをトミー・“タイニー”・リスターJr.門番をケヴィン・ニーロン、覗き魔をジョン・ロヴィッツ、警察署長をマイケル・マッキーン、神父をクエンティン・タランティーノが演じている。
他に、ピーター役でピーター・ダンテ、ジョン役でジョナサン・ローラン、ジミー役でブレイク・クラーク、露天商役でジョン・ウィザースプーン、枢機卿役でルイス・アークエット、NFLの審判役でダナ・カーヴィー、市民役でロブ・シュナイダー、ニッキーの母役でリース・ウィザースプーンが出演している。
元NFL選手のダン・マリーノ、ヘヴィーメタル・ミュージシャンのオジー・オズボーン、テレビ司会者のレジス・フィルビン、元バスケットボール選手のビル・ウォルトン、俳優のヘンリー・ウィンクラーが、本人役で出演している。
ビーフィーの声を、ロバート・スミゲルが担当している。この映画には8500万ドルの製作費が投入されたが、アメリカの国内興行収入は約3950万ドルと完全にコケた。
8500万ドルという製作費は、コメディー映画としてはかなりの高額だ。
比較対象として同じ年に米国ボックスオフィスで1位になったコメディー映画の製作費を見ると、『隣のヒットマン』は約4100万ドル、『ミート・ザ・ペアレンツ』は約5500万ドル。
ちなみにアメコミ映画の『X−メン』は7500万ドルで製作されている。
なぜコメディー映画なのに高額の製作費が必要なのかというと、VFXを多く使っているからだ。なので、同じようにVFXたっぷりの『ナッティ・プロフェッサー2/クランプ家の面々』も、8400万ドルの製作費が使われている。この作品には、「基本はコメディーだけど感動的な要素もある」とか「笑えるけどメッセージ性もある」みたいな方向性は皆無だ。
最初から最後まで、徹底的にバカバカしい喜劇を貫いている。身になることなんて何も無いし、幼稚なギャグのオンパレードだ。
幾らアダム・サンドラーの主演作がヒットしていたにしても、こういう喜劇に8500万ドルもの大金を投入できるんだから、アメリカには度量の大きいスポンサーがいるんだねえ。日本だと絶対に無理だよね。
そもそも日本だと、コメディー映画の扱いが悪いしね。ニッキーは「幼い頃にシャベルで殴られた」という設定で、顎の辺りが歪んでおり、そのせいで上手く話せない状態になっている。
ほぼ出オチみたいなネタなのだが、そのまま最後まで「顔が歪んで上手く話せない」というキャラを貫く。
そこにある面白さなんて早い段階で完全に消滅してしまい、それが当たり前になってしまうので、ネタとしては弱い。
でも、たぶんアダム・サンドラーが面白いと思ったんだろう。監督や脚本家も彼の仲間なので、そんなアイデアが出たりアダム・サンドラーが顔を歪ませて変な喋り方をやったりした時に、ゲラゲラ笑ったんじゃないかなあ。それは想像に過ぎないけど、何となく「内輪受けの産物」というノリを感じるのは確かだ。
っていうか極端なことを言っちゃうと、この映画そのものが「ザ・内輪受け」ではあるんだけどね。この映画を端的に表現するなら、「大金を注ぎ込んで製作したハリウッド俳優たちのお楽しみ会」という感じだからね。
コメディーとして笑えるかと問われたら「全然」と即答するけど、楽しそうではあるよね。
だから出演者のファンだったら、好きな俳優がバカ映画で楽しそうにしている様子を見ているだけで満足できるかもしれない。本人役のダン・マリーノは、サタンに「引退生活は耐えられない。一度だけスーパーボウルで勝たせてほしい」と取引を持ち掛ける。
却下されると、彼は「ジョー・ネイマスならいいのか」と悪態をつく。
ハーヴェイ・カイテルは魔王のコスプレ姿で、失態を犯したケヴィン・ニーロンの頭にオッパイを付ける。
盲目の神父を演じるタランティーノは「私は生きたまま地獄の業火に焼かれる」などと喚き散らし、暴れて地下鉄の階段から転落したり柱に激突したりする。天国にいるカール・ウェザースは元プロゴルファーのダンスインストラクターとして登場し、マンボの腰付きを軽く披露する。
ヘンリー・ウィンクラーは地獄を地上に出現させたエイドリアンに招かれ、蜂の群れの餌食にされる。
ニッキーが最終決戦で切り札として母に貰った球を使うと、オジー・オズボーンが出現する。彼はコウモリに変身していたエイドリアンを捕まえて頭を食い千切り、ボトルに放り込む。
バカまっしぐらな物語だし、キャラクターも総じてバカだ。でも、そんな作品だと分かった上で、出演者はノリノリで芝居をしている。
なのでザックリ言うと、「大勢の著名人が楽しんでいる様子を見て、こっちも楽しい気分になろうよ」ってことだね。(観賞日:2020年12月24日)
第21回ゴールデン・ラズベリー賞(2000年)
ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[スティーヴン・ブリル]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演男優賞[アダム・サンドラー]
第23回スティンカーズ最悪映画賞(2000年)
受賞:【最も苛立たしいインチキな言葉づかい】部門[アダム・サンドラー]
ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最悪の主演男優】部門[アダム・サンドラー]
ノミネート:【最悪のカップル】部門[アダム・サンドラー&痛々しくて笑えないピットブル]
ノミネート:【最悪のヘアスタイル】部門[アダム・サンドラー]
ノミネート:【最も笑えないコメディー・リリーフ】部門[痛々しくて笑えない、喋るピットブル]
ノミネート:【最も苛立たしいプロダクト・プレイスメント】部門[ポパイズ・キッチン]