『ラスト・アクション・ヒーロー』:1993、アメリカ

ニューヨークに住む11才の映画好き少年ダニー・マリガンは、毎日のようにタイムズ・スクエアの映画館“パンドラ”に入り浸っている。彼が大好きな映画は、ロス市警の超人刑事が活躍するアクション大作「ジャック・スレイター」のシリーズだ。
映写技師ニックからスレイター・シリーズの新作フィルムのチェックに誘われ、ダニーは夜中に映画館に向かった。そこでダニーは、ニックから一枚のチケットをプレゼントされる。それは魔法のチケットらしいのだが、ニックは怖くてその効果を一度も試していないらしい。
映画がスクリーンに映し出された。最新作「ジャック・スレイター4」は、マフィアのトニー・ビバルディがスレイターの従兄フランクを誘拐する場面で始まった。ビバルディは殺し屋ベネディクトを雇い、対立するグループの壊滅を企んでいる。
映画の中でスレイターが悪党とカーチェイスを繰り広げる中、ダニーのポケットにあるチケットが光を発し始めた。そんな中、悪党が投げたダイナマイトがスクリーンを通り越して映画館に落下し、館内が爆発に包まれた。
気が付くと、ダニーはスレイターが運転する車の後部座席に座っていた。チケットには本当に魔法の力があり、それによってダニーは映画の中に入り込んでしまったのだ。スレイターの活躍する映画の世界を体験できて、大喜びのダニー。
だが、ベネディクトはダニーが自分たちの秘密を知っていることを不審に思い、ダニーを捕まえようとする。ダニーはスレイターと協力してベネディクトに立ち向かうが、魔法のチケットを奪われてしまう。チケットの力を知ったベネディクトは、映画の中から現実世界へ飛び出していってしまう…。

監督はジョン・マクティアナン、原案はザック・ペン&アダム・レフ、脚本はシェーン・ブラック&デヴィッド・アーノット、製作は スティーヴ・ロス&ジョン・マクティアナン、共同製作はロバート・E・レリア&ニール・ノードリンガー、製作協力はロバート・H・レマー、製作総指揮はアーノルド・ シュワルツェネッガー、撮影はディーン・セムラー、編集はジョン・ライト、美術はユージニオ・サネッティー、衣装はグロリア・ グレシャム、視覚効果サンサルタントはリチャード・グリーンバーグ、音楽はマイケル・ケイメン。
主演はアーノルド・シュワルツェネッガー、共演はF・マーリー・エイブラハム、オースティン・オブライエン、アート・カーニー、 チャールズ・ダンス、フランク・マクレー、トム・ヌーナン、ロバート・プロスキー、アンソニー・クイン、マーセデス・ルール、 サー・イアン・マッケラン、プロフェッサー・トール・タナカ、ジョーン・プロウライト、ジェイソン・ケリー、ノア・エメリッヒ、 ティナ・ターナー、ビリー・ルーカス、ライアン・トッド、アポロ・デュカキス他。


どんな年齢層にも受け入れられるアクション大作を作ろうと考え、子供向けに過激なバイオレンス描写を抑えた結果、気の抜けた甘ったるいファンタジー・アクション映画が完成した。
夢があるのがファンタジーのはずだが、なぜか夢を台無しにする作品に仕上がっている。

ニックはチケットをマジシャンのフーディーニから貰ったと言う。もはやフーディーニの名が出た時点で白けてしまうが、見ず知らずの人間にそんな凄い力のあるチケットを渡すのも奇妙。で、ニックがチケットをダニーにプレゼントするのも奇妙。

後部座席に飛び込んできたダニーを、すぐに車から降ろせばいいのに、なぜか彼を乗せたままカーアクションを披露するスレイター。怪しい少年ダニーを、なぜかスレイターの相棒としてコンビを組ませるデッカー警部補。

余計なツッコミを入れたり、話の腰を折ったりして邪魔をするダニー。筋を先読みして生意気なセリフは吐くし、いちいち偉そうな態度も気になる。
どうも製作サイドは勘違いしているようだ。観客はガキの活躍を見たいのではなく、シュワルツェネッガーの活躍を見たいのだが。

コメディもアクションも詰め込んだ結果、完全に裏目に出てしまった。コメディがアクションを殺し、アクションがコメディを殺すという最悪の状況。
ターミネーター2のセルフ・パロディがあったり、シャロン・ストーンやジャン=クロード・ヴァン・ダムがカメオ出演していたり、そういうサービスも空回り。

御都合主義のストーリー展開を、「映画だからいいだろ」と言ってしまう。大体、「映画の中にいる」とか「これは映画なんだ」とか、そういうセリフを吐くのが違う。映画であるからこそ、現実を忘れて楽しみたいと思わせるべきだったのではないか。

シュワルツェネッガーの映画を見て興奮する少年の姿を、実際に映像で見せられても意味が無い。そんなことをしてしまったら、映画を見て興奮するはずの子供達が冷めてしまう。
観客のリアクションを横取りするのは勘弁してもらいたい。


第14回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ジョン・マクティアナン]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演男優賞[アーノルド・シュワルツェネッガー]
ノミネート:最低新人賞[オースティン・オブライエン]
ノミネート:最低オリジナル歌曲賞「Big Gun」


第16回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最悪の男優】部門[アーノルド・シュワルツェネッガー]

 

*ポンコツ映画愛護協会