『ワイルド・スピードX2』:2003、アメリカ

フロリダ州マイアミ。テジが仕切るストリート・レースの会場に、レーサーのスキやオレンジやスラップ・ジャック、それに大勢の観客が集まった。メンバーが1人足りないので、テジはブライアン・オコナーを呼んだ。かつてロサンゼルス市警の潜入捜査官だったブライアンは、犯罪者集団の頭領ドミニクを逃がしたことで職を失い、ストリート・レーサーとなっていた。
ブライアンはレースで勝利を収め、自分を見つめていた観客の女性に近付く。だが、そこに何台ものパトカーが押し寄せ、逃げ遅れたブライアンは捕まってしまう。ブライアンの前に、FBIのビルキンズ捜査官とマーカム捜査官が現れた。ビルキンズは、ブライアンがドミニクを逃がした事件を担当していた捜査官だ。彼らはブライアンに対し、犯罪組織の大物カーター・ヴェローンを逮捕するために協力すれば、前科記録は全て抹消すると言ってきた。
ブライアンはカーターの組織に潜入することは承諾したが、マーカムが用意したダン捜査官と組むことは拒否した。ブライアンは潜入捜査のパートナーとして、旧友のローマンを選んだ。しかしローマンは、ブライアンが警官になった2ヵ月後のガサ入れで逮捕された過去があり、そのことで今も恨んでいた。ローマンは前科記録の抹消と引き換えに、協力を承諾した。
ブライアンとローマンは、カーターの愛人として既に潜入している捜査官モニカと引き合わされた。モニカは、ブライアンがレース場で見掛けた女性だった。ブライアンとローマンは採用試験に合格し、カーターの専属ドライヴァーとなった。FBIが用意した車に発信機が取り付けられていることを知ったブライアンとローマンは、ストリート・レースで2台の車を手に入れた。
ブライアンとローマンは、カーターがホィットワース刑事を脅して子飼いにしていることを知った。カーターはブライアン達に、麻薬取引で得た大金を運ぶ仕事を命じた。ブライアンのクルーザーにモニカが現れ、仕事が終わればカーターに始末されると告げる。カーターはブライアン達を怪しみ、手下のエンリケとロベルトを車に同乗させると決めた。身の危険を感じるブライアンとローマンだが、潜入捜査を降りれば刑務所行きだ。仕事の当日、車に金を積んだ2人は、警察に追われながらも必死に逃亡する・・・。

監督はジョン・シングルトン、キャラクター創作はゲイリー・スコット・トンプソン、原案はマイケル・ブラント&デレク・ハース&ゲイリー・スコット・トンプソン、脚本はマイケル・ブラント&デレク・ハース、製作はニール・H・モリッツ、共同製作はヘザー・リーバーマン、製作総指揮はマイケル・フォトレル&リー・R・メイズ、撮影はマシュー・F・レオネッティー、編集はブルース・キャノン&ダラス・プエット、美術はキース・ブライアン・バーンズ、衣装はサーニャ・ミルコヴィック・ヘイズ、音楽はデヴィッド・アーノルド。
出演はポール・ウォーカー、タイリース、エヴァ・メンデス、コール・ハウザー、クリス・“ルダクリス”・ブリッジス、ジェームズ・レマー、トム・バリー、デヴォン青木、アマウリー・ノラスコ、マイケル・イーリー、ジン・オーヤン、エドワード・フィンレイ、マーク・ブーン・ジュニア、マット・ガリーニ、ロベルト・“サンズ”・サンチェス、エリック・エチェバリ他。


2001年の作品『ワイルド・スピード』の続編。
前作から引き続き出演しているのは、ブライアン役のポール・ウォーカーとビルキンズ役のトム・バリーだけ。ローマンをタイリース、モニカをエヴァ・メンデス、カーターをコール・ハウザー、テジをルダクリス、マーカムをジェームズ・レマー、スキ(なんだよ、その名前は)をデヴォン青木が演じている。

断言してもいいが、1作目の表向きの主役はポール・ウォーカーでも、実質的な主役はドミニク役のヴィン・ディーゼルだった。で、そのヴィン・ディーゼルが降板(ギャラで揉めたという噂も耳にしたが)したことによって、前作の主役が続投しているにも関わらず、まるで飛車角金銀落ちのような印象を与えられることになった(実際は1枚欠けただけなんだが)。
ヴィン・ディーゼルの代わりをタイリースを務めていることになるが、明らかに役者不足。というかキャラクターとしても、ドミニクが貫禄十分の犯罪者集団の親分だったのに対し、ローマンはチンピラなので全く違う。もちろん最初から、ドミニクと類似したキャラクターにしようという気はさらさら無かっただろうけど。

主役が続投しているのに、まるでタイトルだけ借りただけで何の繋がりも無い続編のようにさえ感じられる。
どうせポール・ウォーカーにしても、「契約で縛られていたから仕方なく」だったことを認めているように完全に「お仕事」としてやっているわけだし、ブライアンの性格もなんか前作と違うし、いっそ全員総取っ替えでも大して印象は変わらなかったんじゃないかな。

既に後半に入っているのに、「ブライアンのクルーザーにモニカが来ている所へエンリケ達が現れて見つかりそうになる」という展開によってサスペンスを作り出そうとするぐらいで、それだけ取っても、いかに話が苦しいか分かろうというものだ。しかも、そこまでしてブライアンとモニカを接近させた割に、そこのロマンスには深入りしないし。

『ワイルド・スピード』は、とても話の薄い作品だった。ドラマを充実させて観客の御機嫌を伺おうという意識は最初から無く、「物語はどうでもいいからMTV的演出によるカー・アクションだけ見てくれ」と主張しているかのような仕上がりだった。
そのスピリットは、今回もキッチリと受け継がれている。
今回も、見事なぐらいに脳味噌すっからかんな仕上がりだ。

前作は、それでも『ハートブルー』を模した人間関係の描写や、ドミニクと仲間達が『ドラゴン ブルース・リー物語』を見ているといった生活風景の描写があった。この2作目では、前作にも増して開き直りが激しくなり、そういうことさえも完全に取っ払っている。前作以上に、カーアクションに特化するという意識が強くなっているようだ。

前作について私は、「ロブ・コーエン(1作目の監督)はジェリー・ブラッカイマーとコンビを組むにふさわしいことを証明したと思う」という感想を持った。
しかし今回のジョン・シングルトンは、ジェリー・ブラッカイマーとコンビを組むには値しないだろう。もし非黒人アクション映画を今後も撮るのであれば、お似合いなのはスティーヴン・セガール主演作辺りだろうか。


第24回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低リメイク・続編賞
ノミネート:映画とは名ばかりの最悪のモノ賞

 

*ポンコツ映画愛護協会