『Uターン』:1997、アメリカ&フランス

ボビー・クーパーはマフィアの親分アルカジーに借金の1万3千ドルを返済するため、車でラスベガスへと向かっていた。しかし砂漠を走る途中、車が故障してしまう。ボビーは「Uターン可」という標識を掲げた町スペリアへ行き、ダレルという修理工に車の修理を頼んだ。町に足を向けたボビーは、ヴェトナムで失明したという男に声を掛けられ、自販機でサイダーを買ってくれと頼まれた。
ボビーは荷物を運んでいるグレースに目を留め、声を掛けた。グレースはボビーを車に乗せ、自宅へと連れて行く。ボビーはグレースに誘惑され、関係を持とうとする。しかし彼女の夫ジェイクが帰宅し、ボビーは殴られる。ボビーは立ち去るが、ジェイクは追い掛けて来て意外なことを言い出した。謝礼を払うから妻を殺してほしいというのだ。ボビーは断り、ジェイクと別れた。
ボビーはグロッサリー・ストアに立ち寄るが、そこに2人組の強盗が現れる。強盗はボビーに拳銃を突き付け、金の入った鞄を奪った。強盗は店の女経営者ジャミラによって射殺されたが、鞄に入っていた金は銃撃で散り散りになった。ボビーは女店員に金を渡し、「自分がいたことを保安官には話すな」と口止めして店から立ち去った。
ボビーはダレルから車を引き取って町を出ようとするが、金が無いために修理代が払えない。ボビーはアルカジーに電話を掛けて事情を説明するが、明日までに金を持って来いと脅される。ボビーはフローという女がウエイトレスをしているダイナーに入り、ジェニーという若い女から声を掛けられる。ジェニーの恋人トビーはケンカを吹っ掛けてきたが、保安官が来たので立ち去った。
ボビーはジェイクの営む不動産屋へ行き、彼から1万3千ドルの報酬でグレース殺害を引き受けた。ボビーはグレースを人気の無い場所へ連れ出すが、殺すことが出来ない。グレースはボビーに、母の恋人だったジェイクから何度もレイプされていたこと、彼が寝室に大金を隠していることを語った。
グレースは町から出たいと告げ、ジェイクを殺してほしいとボビーに頼んだ。その依頼を断ったボビーは、町へと戻った。彼はバス・ステーションへ行き、窓口係に懇願して切符を手に入れた。しかしトビーが現れてボビーにケンカを仕掛け、切符を食べてしまう。ボビーはジェイクの金を手に入れるため、グレースの依頼を引き受けることにした…。

監督はオリヴァー・ストーン、原作&脚本&製作総指揮はジョン・リドリー、製作はダン・ハルステッド&クレイトン・タウンゼント、共同製作はリチャード・ルトウスキー、製作協力はビル・ブラウン、撮影はロバート・リチャードソン、編集はハンク・コーウィン&トーマス・J・ノードバーグ、美術はヴィクター・ケンプスター、衣装はベアトリクス・アルナ・パスツォール、音楽はエンニオ・モリコーネ、エグゼクティヴ・ミュージック・プロデューサーはバド・カー。
出演はショーン・ペン、ニック・ノルティー、ジェニファー・ロペス、ジョン・ヴォイト、パワーズ・ブース、クレア・デーンズ、ホアキン・フェニックス、ビリー・ボブ・ソーントン、エイブラハム・ベンルービ、ジュリー・ハガーティー、ボー・ホプキンス、ヴァレリー・ニコラエフ、リヴ・タイラー、ブレント・ブリスコー、ローリー・メトカルフ、アイダ・リナレス、シェリー・フォスター他。


ジョン・リドリーの小説を基に、彼自身の脚本で映画化した作品。
ボビーをショーン・ペン、ジェイクをニック・ノルティー、グレースをジェニファー・ロペス、盲目の男をジョン・ヴォイト、保安官をパワーズ・ブース、ジェニーをクレア・デーンズ、トビーをホアキン・フェニックス、ダレルをビリー・ボブ・ソーントン、アルカジーをヴァレリー・ニコラエフが演じている。

この作品、低予算で作られているのだが、安いギャランティーで大勢の有名俳優が出演している。前述した面々の他にも、ジュリー・ハガーティーが勤めるダイナーでは、客としてボー・ホプキンスがいる。ボビーがバス・ステーションで窓口係のローリー・メトカルフと交渉していると、リヴ・タイラーが横を通り掛かる。

オリヴァー・ストーン監督は、古き時代のフィルム・ノワールを意識して今作品を撮ったらしい。フラッシュ・バックやイメージ・カットの挿入など、映像表現で凝ったことをやろうとしている意識は強く感じる。西部が舞台だから、というだけの理由でもないのだろうが、音楽にはエンニオ・モリコーネが起用され、マカロニの香りが漂うBGMを付けている。
前述したように、低予算なのに大物俳優が何人も出演している。そのことだけを抽出すれば、スゴいことなのかもしれない。さすがオリヴァー・ストーン監督、ということになるのかもしれない。
しかし、映画を見終わって思ったのは、「何人もののビッグ・ネームを揃えている割には、あまり強く印象に残らない作品だなあ」ということだ。

観賞している最中に、例えば「間延びしているなあ」とか、「展開がギクシャクしているなあ」とか、「繋がりが不自然だよなあ」とか、「やけに慌ただしいなあ」とか、そういった大きな不満を感じることは無かった。ただし、悪い意味での引っ掛かりが無かった一方で、良い意味での引っ掛かりも見当たらなかった。
極端なことを言えば、低予算なのだから、それこそ無名役者を多く揃えて作ったとしても、それほど大きく印象は変わらないんじゃないかとさえ感じてしまった。
ショーン・ペンだけは別格だが、スターの存在感で引っ張る映画ではない。むしろジョン・ヴォイトやビリー・ボブ・ソーントンなんかは、ボーッと見ていたら誰だか分からないかもしれない。
で、だったら安いギャラで、わざわざ大物俳優ばかりを出演させている意味は何なのかと、考えたり、考えなかったり。

多額の予算を使った大作映画を撮り続けてきたオリヴァー・ストーン監督が、低予算の小さなフィルムを手掛けたのは、どこかしら実験的な意味合いがあったのかもしれない。
そして実験の結果としてオリヴァー・ストーンが得たものは、大勢の人々からの「クエンティン・タランティーノ監督のタッチに似てねえ?」という意見だったりするわけだが。


第18回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低監督賞[オリヴァー・ストーン]
ノミネート:最低助演男優賞[ジョン・ヴォイト]
<*『クロスゲージ』『Uターン』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会