『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>』:2016、アメリカ

タートルズのミケランジェロ、ドナテロ、レオナルド、ラファエロはシュレッダーを退治し、ニューヨークをフット団から守った。しかし彼らは素性を人間に明かせないことため、その手柄をチャンネル6のカメラマンであるヴァーン・フェンウィックに譲った。ヴァーンはNBAの試合会場に特別ゲストとして招かれ、ヒーローとして観客たちの喝采を浴びた。ヴァーンが得意げにコメントする様子を天井裏から見ていたタートルズは、彼に豆粒を放って悪戯した。
その頃、チャンネル6のリポーターであるエイプリル・オニールはドナテロの作った腕時計を装着し、バクスター・ストックマン博士をレストランで張り込んでいた。彼女はバクスターがフット団の協力者だと疑い、密かに調査しているのだ。ドナテロの作った腕時計にはパソコンのデータをハッキングする機能があったが、対象に接近する必要があった。エイプリルはファンを装ってバクスターに近付くが、フット団のトレヴァーがパソコンを持ち去ってしまった。
トレヴァーの後を追ったエイプリルは服を着替えてギャルたちを巻き込み、巧妙にハッキングを成功させた。しかし自動消去プログラムのため、すぐに全てのデータが無くなってしまう。それでもエイプリルは、刑務所へ移送されるシュレッダーの奪還計画に触れたメールを確認していた。シュレッダーは囚人のロックステディーやビーバップと共に護送車へ乗せられ、警官のケイシー・ジョーンズが移送を担当した。タートルズは地下の隠れ家へ戻り、シュレッダーの奪還計画があることを師匠のスプリンターに報告した。彼らはゴミ収集車を改造したタルタルーガに乗り込み、隠れ家を出発した。
バクスターはフット団幹部のカライが待つ研究所へ行き、監視モニターで護送車の様子を確認した。フット団が護送車を襲撃し、ケイシーはショットガンで応戦しようとする。そこへタートルズが駆け付け、フット団と戦う。バクスターは転送装置を使ってシュレッダーを消すが、どこへ移動したのかは分からなかった。シュレッダーはクランゲという宇宙生命体に捕まり、かつて地球へ送ったアーク蓄電器が転送装置に使われていることを聞かされた。
アーク蓄電器は大気圏へ突入する際、3つに分離して故障していた。1つはバクスターが手に入れ、残り2つはニューヨーク自然史博物館とブラジルの熱帯雨林にあるとクランゲは話す。3つを集めてバクスターに修理させれば、軍事兵器のテクノドロームを作って地球を支配することが出来る。クランゲが協力を持ち掛けて共に地球を支配しようと提案すると、シュレッダーは快諾した。クランゲはシュレッダーにタートルズを倒すための液体を渡し、地球へ転送した。
翌朝、捜査主任のレベッカ・ヴィンセントが現場を訪れ、ケイシーの証言を聞いた。ケイシーは目撃した出来事を話すが、まるで信じてもらえなかった。ケイシーは捜査協力を申し出るが、レベッカは相手にしなかった。ケイシーはロックステディーとビーバップが馴染みのバーに現れると推測し、捜査を開始した。彼が睨んだ通り、ロックステディーたちはバーを訪れていた。そこへシュレッダーがカライたちを連れて現れ、2人をフット団に引き入れた。
フット団が去った後、ケイシーがバーに現れた。店主が協力を拒むと、彼は店を荒らした。バーテンダーは観念し、ロックステディーたちが持っている携帯電話を追跡するためのGPSを渡した。研究所に戻ったシュレッダーは、クランゲと手を組んだことをバクスターに話す。バクスターは液体を装置で調合し、特殊な銃に装填した。シュレッダーに撃たれたロックステディーとビーバップがサイとイノシシの怪物に変貌する様子を、研究所に潜入したエイプリルが密かに観察していた。バクスターはシュレッダーに、クランゲの液体が人体に眠る動物の遺伝子を呼び覚ましたのだと説明した。
エイプリルは液体の入った2本の容器を盗んで逃亡を図るが、フット団に追い詰められる。そこへホッケーマスクを被ったケイシーが駆け付け、ホッケースティックでフット団と戦う。エイプリルは落ちた1本の容器を拾おうとするが、パトカーが来たので逃げ出す。ケイシーはエイプリルを追って来たフット団員を退治し、彼女に自己紹介した。そこへタートルズが現れるとケイシーは動揺するが、エイプリルが友人だと説明した。彼女はタートルズに事情を説明し、残った容器を見せた。
タートルズはエイプリルとケイシーを連れて隠れ家へ戻り、液体を解析して敵の居場所を突き止めようと考える。ケイシーはタルタルーガを見つけ、タートルズが自分を助けてくれた面々だと知った。ドナテロは液体を解析し、自分たちが人間の姿になれると気付く。ドナテロから報告を受けたレオナルドは、変わる必要は無いと告げる。レオナルドは誰にも喋らないよう指示するが、ミケランジェロが、物陰から会話を聞いていた。
同じ頃、シュレッダーは自然史博物館に侵入してアーク蓄電器の断片を入手していた。ミケランジェロから液体のことを聞いたラファエロは、レオナルドに抗議する。レオナルドは自分の指示に従うよう要求し、ラファエロと対立する。ドナテロが自然史博物館の異変を報告すると、レオナルドはミケランジェロとラファエロに残るよう命じた。レオナルドとドナテロが出掛けた後、ラファエロはミケランジェロに液体を液体を手に入れようと持ち掛けた。
レオナルドとドナテロは自然史博物館を訪れ、盗まれた物質が別次元への扉を開く鍵になることを知る。ラファエロはエイプリルと会い、捜査のために警察署で保管されている液体が必要だと嘘をつく。彼はエイプリルとケイシーに、警察署へ侵入する計画を話す。ヴァーンはカーメロ・アンソニーと遭遇して挨拶し、恋人のアレッサンドラ・アンブロジオを紹介した。しかしエイプリルが来て同行を要求したので、仕方なく付いて行く。エイプリルはヴァーンに計画を明かし、協力を強要した。
ヴァーンが受付の警官たちを引き付けている間に、エイプリルたちは署内へ潜入した。しかし先にフット団が忍び込み、液体を奪っていた。レオナルドとドナテロは連絡を受けて現場に駆け付け、タートルズは容器を手に入れる。警官隊はタートルズを敵だと誤解し、拳銃を突き付けて降伏させる。エイプリルとケイシーが割って入り、タートルズを逃がして拘束された。タートルズはロックステディーたちの動きを突き止め、一味を追ってブラジルへ向かうことにした。
エイプリルとケイシーはシュレッダーやバクスターが悪人だと説明するが、レベッカは信じようとしなかった。バクスターが監視カメラの映像を編集し、エイプリルが盗みに入ったように偽装工作していたのだ。ロックステディーとビーバップはマナウスのジャングルに入り、アーク蓄電器の断片を発見した。タートルズは飛行機でブラジルへ向かうが、ロックステディーたちがニューヨークへ向かっていることを知る。タートルズは敵の飛行機に降下し、フット団を蹴散らしてアーク蓄電器の断片を見つけた。タートルズはロックステディーたちと戦うが、飛行機が川へ墜落する。タートルズは急流を下りながら断片を奪おうとするが、失敗して逃げられた。
ケイシーは取調室を去るレベッカの隙を見て、密かにスマホを盗み取った。エイプリルはヴァーンに電話を掛け、監視カメラの映像を手に入れるよう頼んだ。ヴァーンは研究所へ行き、監視カメラの映像を密かに持ち出した。バクスターはアーク蓄電器を修理し、異次元の扉を開いた。ヴァーンが映像を警察署へ持ち込み、エイプリルとケイシーは釈放された。その直後、ニューヨークの上空に巨大な穴が開き、テクノドロームの部品が送られて来る。タートルズはクランゲの野望を阻止するため、レベッカやマスコミの前に姿を見せる。彼らは警察と協力し、地球を救うための戦いに挑む…。

出演はミーガン・フォックス、ウィル・アーネット、ローラ・リニー、スティーヴン・アメル、タイラー・ペリー、ノエル・フィッシャー、ジェレミー・ハワード、ピート・プロゼック、アラン・リッチソン、ブライアン・ティー、シェイマス、ゲイリー・アンソニー・ウィリアムズ、ピーター・D・バダレメンティー、オパル・アラディン、ブリタニー・イシバシ、コニー・フォックス、アレッサンドラ・アンブロージオ、スタン・デミドフ、ジル・マーティン、グレッグ・ヒルドレス、ディーン・ウィンタース、アントワネット・カラジ、アリス・キャラハン、ジェイド・ウー他。
声の出演はトニー・シャルーブ、ブラッド・ギャレット。


ミラージュ・スタジオから出版されているアメコミ『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』を基にした2014年の映画『ミュータント・タートルズ』の続編。
脚本のジョシュ・アッペルバウム&アンドレ・ネメックは、前作からの続投。監督はジョナサン・リーベスマンから『アース・トゥ・エコー』のデイヴ・グリーンに交代。
エイプリル役のミーガン・フォックス、ヴァーン役のウィル・アーネット、ミケランジェロ役のノエル・フィッシャー、ドナテロ役のジェレミー・ハワード、レオナルド役のピート・プロゼック、ラファエロ役のアラン・リッチソンは、前作からの続投。レベッカをローラ・リニー、ケイシーをスティーヴン・アメル、バクスターをタイラー・ペリーが演じている。
シュレッダーやスプリンター、カライの演者は別の役者に交代。また、前作ではレオナルドの声をジョニー・ノックスヴィルが担当していたが、今回はピート・プロゼック自身が務めている。

今回はオープニングでタートルズが登場した時に、略称と簡単な紹介の文字が出る。
レオナルドは「Leo」と「The Leader」、ラファエロは「Raph」と「The Muscle」、ドナテロは「Donnie」と「The Brains」、ミケランジェロは「Mikey」と「Pizza Lover」だ。
シリーズ化を見越して、「愛称をアピールした方が人気が出るんじゃないか」と考えたんだろうか。
簡単な紹介の方は、ほぼ「Pizza Lover」のオチだけのためにあるようなモンだな。まあピザが好きなのは全員だし、全くオチてないけどさ。

前述したように、シュレッダーやカライを演じる役者は前作から交代している。
だから前作を良く覚えている人からすると、彼らが登場した時に「お前は誰だよ」という感想になってしまう可能性もある。似ている人を起用しているわけでないしね。
ただ、そんな細かいことは気にしちゃいけない。っていうか、西洋人からすると、東洋系の顔は一緒に見えちゃうかもしれないしね。
そもそも前作を見ていても、シュレッダーやカライの顔なんて記憶に残っていないかもしれないし。

前作から監督が交代しているが、演出のテイストには全く変化が感じられない。
っていうか1作目にしろ2作目にしろ、プロデューサーのマイケル・ベイが実質的な監督なんじゃないかと思うぐらい、彼の色が強く感じられる。
「派手さはあるが大雑把」「話はパッパラパー、中身はスッカラカン」「登場キャラクターがスピーディーに動くけど、ゴチャゴチャしていて何が何やら分かりにくい」ってのは、まさにマイケル・ベイ監督作品の特色だ。
『トランスフォーマー』シリーズと似たような特徴が、この映画にも見受けられる。

そもそもティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのキャラクターや世界観の設定がバカバカしさに満ちているので、決してシリアスに描けと言いたいわけではない。クリストファー・ノーランやザック・スナイダーみたいな勘違いした感覚で、重厚&陰気な内容に仕上げられたら、たまったモノではない。
かつての東映時代劇ではないが、明るく楽しく陽気な話にすることには大賛成だ。見終わった後、何も残らないようなポップコーン・ムービーでも一向に構わない。
そういう意味では、マイケル・ベイがチャネリングしたかのような演出になっているのは、そんなに大きく間違っちゃいないのだ。
それにしても浮かれポンチでオツムの悪い内容だが、それも「いかにもマイケル・ベイっぽい」と言えるかもしれない。脚本はマイケル・ベイが書いているわけじゃないけど、たぶん彼が好きなタイプの話だったんだろう。
「バスケの試合を見ていたら誤ってピザを落としてしまい、慌てて逃げる」とか、「バスケ会場を出たらハロウィンのパレードがいたので、ミケランジェロがノリノリで参加する」とか、序盤から能天気でバカ満開だ。

ロックステディーとビーバップは凶悪な犯罪者であるシュレッダーと護送されているのに、ノリノリで自己紹介している。
フット団が襲撃して来たのに、ケイシーのショットガンには弾が入っていない。
バクスターは転送装置を使ってシュレッダーを消すが、どこへ行ったのか分からないというマヌケっぷり。
ケイシーはシュレッダーに逃げられているのに全く責任や罪悪感を抱いておらず、レベッカに目撃した出来事を話す時は無責任な野次馬のように興奮している。
ロックステディーとビーバップは怪物に変貌しても全くショックを受けず、陽気に喜んでいる。

この映画におけるケイシーは「囚人を護送する警官」として登場し、最初の内は「真面目に職務を遂行しようとする男」として動かされている。
だから、そういう設定で通すのかと思っていたら、レベッカに目撃証言するシーンでは前述したように少しキャラが変化している。そしてエイプリルを助けるシーンでは、車のトランクに積んであったホッケーマスクを被り、ノリノリで暴れている。
本来のケイシーのキャラからすれば、それが正解だ。ただ、だったら最初から、そういうキャラで登場させればいいわけでね。掴みの部分で路線を間違えて、慌てて軌道修正したような描き方になっているのよね。
ただし、その後もタートルズの前で妙に腰が引けたような態度を取ったりすることがあり、どうにも一貫性が無くてブレブレになっている。

序盤に「フット団がシュレッダーを奪還しようとする」という展開があるのだから、今回も前作と同じくシュレッダーとフット団が敵として立ちはだかるのかと思っていた。
ところがシュレッダーが転送されると、いきなりクランゲというモンスターが登場する。
1作目でも手下にモンスターはいたが、シュレッダーもフット団も人間だった。
しかし今回は、のっけから非人間キャラクターが敵のサイドに登場する。そこは前作と大きく異なるポイントだ。

クランゲの登場により、もう1つ前作と大きく異なるポイントが生まれている。
シュレッダーはクランゲの目的を遂行するため、協力することになる。つまり前作のラスボスだったシュレッダーは、あっさりと子分格に成り下がるのだ。
「協力すると見せ掛けて最終的には自分だけが利益を得ようと目論む」とか、「シュレッダーの側が上の立場で計画を進める」とか、そういうことではないのだ。前作のラスボスを、2作目にして簡単に矮小化しているのだ。
それを「話のスケールが大きくなった」と捉えるか、「原作でもラスボスのシュレッダーを雑に扱い過ぎている」と捉えるかは、貴方次第である。

シュレッダーを子分に格下げした分、クランゲが「圧倒的な力を誇るラスボス」としての脅威や存在感を披露しているのかというと、そうでもない。登場シーンから既に、「自分を掴んでいるロボットがバカなので、腹に収納する時にパンチを食わされる」というマヌケなトコを見せている。
ラスボスであるクランゲさえも、おバカで軽薄なノリに参加させているのだ。
ちなみに、どうでもいいことかもしれないが、クランゲは脳味噌の怪物みたいな造形になっている。
『宇宙家族カールビンソン』に登場するターくんの頭部だけを取ったようなキャラってことだね(その例えは分かりにくいぞ)。

1作目の時は、過去の3部作に比べてシリアス度数が上がっており、それがタートルズの荒唐無稽な設定と全く噛み合っていないという大きな問題があった。
それに比べると、今回は「おバカなノリ」がグンと増している。まるで開き直ったかのように、おバカなテイストへ振り切ろうという意識が感じられる。
軽妙どころか軽薄で、子供受けするってことじゃなくて単に幼稚だ。
でも、「そういう映画だから」と受け入れればいい。

フット団はアーク蓄電器を集めるために動き出すが、「タートルズがそれを阻止しようとする」という筋書きには移行しない。
そこに目的があるはずなのに、なぜか液体を奪い合う話になる。
「液体で人間になれるかも」という情報が出ると、タートルズは2つのグループに分離し、エイプリルたちは液体を手に入れるために動き出す。
それを手に入れてもフット団の目的を阻止することには全く繋がらないので、ザックリ言っちゃうと「ただの道草」である。

警察署でのエピソードが終了すると、ようやく本来の目的が思い出される。
ところが、タートルズがブラジルへ向かおうとすると、もうロックステディーとビーバップはアーク蓄電器を手に入れてニューヨークへ戻ろうとしている。
ここでようやく、アーク蓄電器を巡っての戦いが勃発する。
3つ目にして、初めての戦いだ。しかも、そこにシュレッダーやカライは参加していない。
クライマックスを迎える前にシュレッダーはクランゲによって監禁されるので、なんと今回は「タートルズがシュレッダーと戦う」というシーンは1度も訪れないまま映画が終わってしまうのであった。

クライマックスではタートルズがクランゲと上空のテクノドロームで戦うが、地上にはロックステディーやビーバップやカライがいる。そっちの方まで、タートルズが面倒を見ることは出来ない。
ただ、既にシュレッダーが「クランゲによって簡単に監禁される子分」の扱いになっており、そんな彼の子分の中でも使い走りのロックステディーやビーバップは、もはやタートルズがクライマックスで戦う敵ではない。
そこでケイシーが相手を務めることになり、エイプリルはカライと戦う。人間キャラにも見せ場を用意しなきゃいけないので、戦いを2つに分けているのだ。
それでクライマックスが2倍の面白さや盛り上がりになるのかというと、そんなことは無いけどね。
っていうか、フット団にしろクランゲにしろ、そんなに歯応えのある敵じゃないので、意外にあっさりと敗北するし。

(観賞日:2018年1月25日)


第37回ゴールデン・ラズベリー賞(2016年)

ノミネート:最低主演女優賞[ミーガン・フォックス]
ノミネート:最低序章&リメイク&盗作&続編賞

 

*ポンコツ映画愛護協会