『ミュータント・タートルズ』:2014、アメリカ
チャンネル6のリポーターを務めるエイプリル・オニールは、大きな事件を扱うジャーナリストになりたいと望んでいる。しかし実際に与えられるのは生活情報を伝える仕事ばかりなので、彼女はカメラマンであるヴァーンに不満を漏らす。ヴァーンはエイプリルに好意を寄せているが、まるで相手にされていない。エイプリルは港で発生した化学物質を巡る事件に関心を抱き、独自で調査を進めようとする。深夜の港へ赴いた彼女は、フット団のカライと手下たちがコンテナから荷物を運び出す様子を目撃した。
エイプリルは撮影するため、フェンスを越えて接近しようとする。しかし謎の集団に攻撃を受けたフット団は、慌てて退散した。コンテナに残された「家門」という漢字を撮影したエイプリルは、アパートへ戻った。彼女は同居している親友のテイラーに「フット団と戦っている自警団がいる」と話すが、まるで信じてもらえなかった。出社したエイプリルは、上司のバーナデット・トンプソンと同僚に自警団のことを話す。彼女は特ダネとして取り上げるよう要請するが、トンプソンは相手にせず却下した。
カライはフット団の首領であるシュレッダーから、港での失敗を厳しく叱責される。カライが「自警団は人間ではなかった」と釈明すると、シュレッダーは人間を囮に使って自警団を捕まえろと命じた。ニューヨーク市警察はフット団に対抗するため、エリック・サックスが代表を務めるサックス社と提携することを発表した。かつてエリックは研究所をフット団に襲撃され、仲間を殺されていた。パーティーに出席したサックスはスピーチに立ち、必ず街を守ると宣言して参加者の拍手を浴びた。
エイプリルの父であるオニール博士は、かつてエリックと一緒に働き、そして命を落としていた。パーティー会場を訪れたエイプリルはエリックのスピーチに感銘を受け、彼に声を掛けた。ヴァーンの運転する車で移動していたエイプリルは、大勢の人々が地下鉄の駅から逃げて来る様子を目撃した。気になったエイプリルは詳細を調べるため、車を降りて地下鉄構内へ向かう。するとフット団が大勢の乗客を人質に取って爆弾を設置しており、エイプリルも捕まってしまった。
エイプリルは密かに写真を撮影するが、カライに気付かれて拳銃を向けられる。その時、急に構内が停電となり、謎の集団が駆け付けた。謎の集団はフット団を蹴散らし、人質は無事に逃げ出すことが出来た。地上へ出たエイプリルは、ビルの屋上で大声を出して盛り上がっている謎の集団を盗撮した。そこにいたのは亀のミュータント4人組、ティーンエイジ・ニンジャ・タートルズだった。盗撮に気付いたタートルズからカメラを渡すよう要求されたエイプリルは、気絶してしまった。エイプリルが意識を取り戻すとタートルズは撮影した写真を消去しており、誰にも話さないよう釘を刺して立ち去った。
エイプリルはタートルズが互いを「レオナルド」や「ラファエロ」と呼び合っていたことが気になり、マンションで保管していたテープを調べる。そこに記録されているのは、幼い頃のエイプリルが父の研究所を撮影した映像だ。エイプリルは父の研究所で、ミケランジェロ、ドナテロ、レオナルド、ラファエロと名付けた4匹の亀を飼っていた。すぐにエイプリルは、その亀たちがタートルズになったのだと確信した。地下へ戻ったタートルズは、命令に背いて勝手に地上へ出たことを師匠のスプリンターに叱責される。ネズミのミュータントであるスプリンターも、かつて研究所で飼育されていた実験台だった。
翌日、エイプリルはトンプソンに、自警団が父の研究所で作られた亀の変異だと説明する。しかし全く信じてもらえず、クビを通告された。スプリンターはタートルズから昨夜の出来事を聞き出し、エイプリルが危険だと考える。彼はタートルズに、エイプリルを見つけて隠れ家へ連れて来るよう命じた。エイプリルはヴァーンの車に乗せてもらい、エリックの邸宅を訪れた。エイプリルから父と共に進めていた計画を問われたエリックは、「火事で全ては失われた」と口にした。
エイプリルがタートルズの存在を教えて写真を見せると、エリックは驚いた。彼は過去の日本で発明された薬を再現しようとしていたこと、突然変異を起こす物質を亀に投与したが失敗したと思っていたことを説明した。火事で死んだはずの亀は、エイプリルによって救われていたのだ。エリックはエイプリルに名刺を渡し、協力することを約束した。ドナテロはエイプリルのパソコンをハッキングし、指定した場所へ1人で来るようメッセージを送った。エイプリルが出向くと、タートルズは彼女に目隠しをして隠れ家へ連れて行く。
サックスは師匠であるシュレッダーの元へ行き、実験用の亀が生きていて自警団になったことを教えた。エリックが「彼らを捕まえれば計画を実行できる」と言うと、シュレッダーは「フット団のパワーは無限大になり、お前は大金を手にする」と述べた。シュレッダーがタートルズの捜索を指示すると、エリックはエイプリルが導いてくれることを告げた。彼が渡した名刺には発信器が埋め込まれており、フット団はタートルズの隠れ家を突き止めた。
エイプリルはスプリンターから、これまでの経緯を聴かされる。エイプリルの父はシュレッダーの計画を阻止するため、研究所に火を放って命を落とした。エイプリルによって下水道に逃がされたスプリンターとタートルズは、突然変異を起こした。スプリンターは上の世界に興味を持ったタートルズが笑い者になることを懸念し、独学で古代の忍術を会得して彼らに練習を積ませたのだ。スプリンターはエイプリルがタートルズの存在をエリックに教えたことを知り、「彼は味方ではない。シュレッダーと繋がっている」と話した。
隠れ家がフット団に襲撃されたため、タートルズとスプリンターはエイプリルを隠れさせて戦う。そこへ特殊な鎧を装着したシュレッダーが現れ、スプリンターは弟子たちの手に負えないと考えて自分だけで立ち向かった。しかしシュレッダーのパワーに圧倒され、彼は深手を負わされる。ラファエロを除くタートルズの3人が駆け付けるが、スプリンターを人質に取ったシュレッダーに武器を捨てるよう脅される。3人は従わざるを得ず、フット団に拘束された。シュレッダーはラファエロが死んだと思い込み、タートルズの隠れ家を破壊するとミケランジェロたちを連行した。
ラファエロは瀕死のスプリンターを発見し、急いで処置に取り掛かろうとする。しかしスプリンターから「シュレッダーを止めろ」と指示され、兄弟の武器を拾う。エイプリルはヴァーンに連絡を入れ、車を用意してもらう。エイプリルとラファエロはドナテロの追跡装置を使い、サックス社の研究施設へ向かう。その頃、エリックとフット団は強力な毒素をニューヨーク全体に撒き散らし、タートルズの血液を使った解毒剤で大儲けする計画を進めようとしていた…。監督はジョナサン・リーベスマン、キャラクター創作はピーター・レアード&ケヴィン・イーストマン、脚本はジョシュ・アッペルバウム&アンドレ・ネメック&エヴァン・ドーハティー、製作はマイケル・ベイ&アンドリュー・フォーム&ブラッド・フラー&ゲイレン・ウォーカー&スコット・メドニック&イアン・ブライス、製作協力はベイジル・ブライアント・グリロ&ロリ・スカウリー、製作総指揮はデニス・L・スチュワート&エリック・クラウン&ナポレオン・スミス三世&ジェイソン・T・リード、撮影はルラ・カルヴァーリョ、美術はニール・スピサック、編集はジョエル・ネグロン&グレン・スキャントルベリー、衣装はサラ・エドワーズ、視覚効果監修はパブロ・ヘルマン、音楽はブライアン・タイラー。
出演はミーガン・フォックス、ウィル・アーネット、ウィリアム・フィクトナー、ダニー・ウッドバーン、アビー・エリオット、ノエル・フィッシャー、ジェレミー・ハワード、ピート・プロゼック、アラン・リッチソン、トオル・マサムネ、ウーピー・ゴールドバーグ、ミナエ・ノジ、マディソン・メイソン、タラン・キラム、K・トッド・フリーマン、ポール・フィッツジェラルド、マリーナ・ワイズマン、ヴェニダ・エヴァンス、ミカル・ヴェガ、ハーレー・パステルナーク他。
声の出演はジョニー・ノックスヴィル、トニー・シャルーブ。
ミラージュ・スタジオから出版されているアメコミ『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』を基にした作品。これまでに実写版やアニメ版の映画が製作されているが、それらとは無関係なリブート作品。
監督は『世界侵略:ロサンゼルス決戦』『タイタンの逆襲』のジョナサン・リーベスマン。脚本は『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のジョシュ・アッペルバウム&アンドレ・ネメックと『スノーホワイト』『キリングゲーム』のエヴァン・ドーハティーによる共同。
エイプリルをミーガン・フォックス、ヴァーンをウィル・アーネット、エリックをウィリアム・フィクトナー、スプリンターをダニー・ウッドバーン、テイラーをアビー・エリオット、ミケランジェロをノエル・フィッシャー、ドナテロをジェレミー・ハワード、レオナルドをピート・プロゼック、ラファエロをアラン・リッチソンが演じている。レオナルドの声をジョニー・ノックスヴィル、スプリンターの声をトニー・シャルーブが担当している。
他に、シュレッダーをトオル・マサムネ、トンプソンをウーピー・ゴールドバーグ、カライをミナエ・ノジが演じている。マニアックなトコロで言うと、リメイク版『13日の金曜日』のジェイソンや『プレデターズ』のクラシック・プレデターを演じていたデレク・ミアーズが、道場でシュレッダーに一蹴される手下役で出演している。原作や実写版3部作、TVアニメなどに登場する主要キャラクターの1人に、ケイシー・ジョーンズというタートルズの協力者がいる。しかし今回の映画では、彼が登場しない。
これは賢明な選択だったと言っていい。
ケイシーはフット団と戦いたがるようなキャラなので、「自警団」ってことでタートルズと役割が被ってしまう。
今回は「タートルズの登場篇」として徹底すべき1作目なので、フット団と戦う存在はタートルズ(&スプリンター)だけにしておくべきだからね。一方、TVアニメで初登場したキャラクターであり、実写版3部作には登場しなかったカライは姿を見せている。
ただ、そもそもの設定ではシュレッダーの娘だったはずだが、今回は幹部のポジションというだけだ。それだけでなく、これといった見せ場も無いまま、淡白に退場してしまう。
そんな雑な扱いで終わらせるぐらいなら、「単なるフット団の幹部」ってだけでいいでしょ。
わざわざ「カライ」という名前を使うからには、もうちょっと丁寧に扱ってあげるべきだわ。『ポルターガイスト』の時のスティーヴン・スピルバーグみたいに、実はマイケル・ベイがプロデューサーの立場を越えて演出にも深く関与していたんじゃないかと思うぐらい、「マイケル・ベイっぽさ」に満ち溢れた仕上がりとなっている。
なので、もしも貴方がマイケル・ベイの大ファンであれば、絶対に楽しめることは保証する。
逆に、マイケル・ベイの監督作に良い印象を持っていないのであれば、この作品も不向きなので避けた方が賢明だ。
分かりやすい所で言えば、『トランスフォーマー』シリーズを好きかどうかってのが、この映画に向いているかどうかの基準になるだろう。ストーリーは雑でスカスカ、勢いだけで強引に突っ切ろうとする。おバカな登場人物が軽薄に行動し、ドラマの深みや厚みなんて徹底的に無視。アクションに次ぐアクションと、VFXを駆使した派手な映像演出で、観客をアトラクションの世界へ引き込もうとする。
何から何まで、マイケル・ベイ作品の特徴が出まくっている。
『トランスフォーマー』シリーズに比べると上映時間は遥かに短いが、基本的な要素は全く一緒だ。
まあトランスフォームすることは無いから、映像のゴチャゴチャっぷりは、こっちの方が薄いかな。ターゲットの年齢層は、かなり低めになっている。良くも悪くも、そこは『トランスフォーマー』シリーズより徹底されている。
最初から子供向け映画やファミリー映画として製作しているのなら、それは決して悪いことではない。
そもそも主人公であるタートルズたちが「ティーンエイジ」という設定なんだから(そんな風には全く見えないけど)、ティーンエイジ向け映画になるのは当然とも言える。過去に作られた実写版3部作も徹底して「お子様向け」に作られていたので、それを踏襲したのだと考えれば理解できるしね。
ただ、何しろマイケル・ベイ印の映画なので、「子供向け」と言うよりも「ただ幼稚なだけ」になっているんだよね。雑で適当なシナリオとしての具体例を幾つか挙げると、例えばエイプリルが初めてタートルズの姿を認識するシーン。
ビルの屋上にいる4人が亀のミュータントだと知ったエイプリルは、気絶してしまう。
それなら「目を覚ますとタートルズは姿を消していた」とか、あるいは「タートルズが心配して隠れ家に運び込む」とか、そういう展開になるのかと思いきや、「タートルズが様子を見ている中で、エイプリルが意識を取り戻す。彼女の質問を受けたタートルズは、自分たちがティーンエイジでミュータントでニンジャで亀であることを説明する」という手順になる。
だったら、エイプリルが気絶する手順って全く必要が無いよね。スプリンターが今までの経緯を説明するシーンでは「エイプリルの父が研究所に火を放った」という回想の映像が挿入される。
だけど、シュレッダーの計画を阻止するにしても、いきなり研究所に火を放つ必要は無いんじゃないかと。おまけに、テメエは研究所に残って命を落としているし、すんげえバカに見えるぞ。
あと、エイプリルがスプリンターとタートルズを逃がしたことになっているけど、その時に父親はどうなっていたんだよ。まだ研究所に父親はいたはずなのに、そっちよりネズミと亀を逃がすことを優先したのか。
終盤に入って「実はエリックがエイプリルの父を殺した」という真相が判明するけど、ってことはエイプリルは父を火の中に残したままネズミと亀を逃がしに行ったのかよ。スプリンターとタートルズは実験材料にされたのに、なぜか「スプリンターはエイプリルの父に愛されていたと感じたので、タートルズに同じことをしてやろうと考えた」という設定になっている。
まるでワケが分からない。
「上の世界に興味を持ったタートルズが笑い者にならないようにするため、たまたま地下で拾った古代の忍術書を参考にしてスプリンターが独学で忍術を会得し、タートルズに教えた」という設定も、何をどうツッコんでいいのか分からないぐらいデタラメだ。最初はタートルズの正体を隠したまま進め、ある程度の時間が経過してから「その正体は」と明かす構成にしてあるのは、気持ちとしては理解できる。
ただ、そのせいで、港と地下鉄のアクションシーンは「何が起きているのかサッパリ分からない」という状態になっている。何しろ暗闇だし、タートルズの姿をハッキリと写し出せないので、そういう形になってしまうのだ。これは大きなデメリットだ。
一方で、「しばらく正体を隠したまま進める」という部分のメリットは、そんなに大きいとは思えない。
どうせ観客はタートルズの存在を知った上で鑑賞しているはずなので、もう最初のアクションから姿を見せちゃってもいいんじゃないかなと。ただし、タートルズの正体を明らかにした後のアクションシーンも、そんなに見せ場としての力を持っているわけではないのよね。
彼らは「カラテの技を使うニンジャ」という設定なのだから、本来なら格闘アクションの面白さが発揮されるべきなのに、そういうのは全くと言っていいほど感じられない。何しろマイケル・ベイ印なので、やたらとカメラはガチャガチャ動きまくり、やたらと映像を飾り立てる。
そもそも「格闘アクションの醍醐味を大切にしよう」なんて意識は皆無なので、そういうのが発揮されるわけもない。
なので、それぞれに異なる武器を持っているけど、その特徴が活かされることも無い。何をどう頑張ったところで、「タートルズの設定が荒唐無稽」というのは絶対に変えられない。
「ティーンエイジの亀のミュータントで、なぜかニンジャでカラテの技を使い、でも中国武術の武器であるサイや棍棒を使う奴もいる。
ニューヨークで住んでいるのに、なぜか日本の要素が取り込まれている。しかも微妙に間違えている」ってのは、誰が考えてもバカバカしいでしょ。
なので、この作品は「おバカなノリ」で描く以外に手が無いと断言できる。ところが困ったことに、過去の3部作に比べてシリアス度数は上がっている。
そして前述した「タートルズの設定が荒唐無稽」という部分に関しても、それらしい説明を用意している。
ただ、エリックが真面目に「かつて沖縄の米軍基地で生まれ、父はベトナム戦争で死亡して云々」などと喋っても、バカバカしさが払拭されることは無い。
しかもシリアス度数を高めているくせに、タートルズは相変わらず能天気でボンクラな連中になっているので、そこのズレが厄介な問題になってしまう。「真剣に対応しなきゃいけないニューヨークの危機が迫っているのに、タートルズは陽気なノリ」ってのが、どうにも困ったモノに感じられる。今回の映画版では日本との関連性を極端に薄めているのだが、たぶん「そこの設定を踏襲するとバカバカしくなっちゃうから」ってのが大きな理由ではないかと推測される。
しかし皮肉なことに、そのことが余計に「設定の不自然さ」を感じさせる結果となっている。
作品によって設定は異なるが、スプリンターは日本のニンジャであるハマト・ヨシのペットだとか、ヨシがフット団アメリカ支部のオロク・サキ(シュレッダー)に殺されたとか、そういった要素が全く使われていない。
そのため、「タートルズがニンジャ」「スプリンターは日本かぶれ」「シュレッダーは日本語を話す凄腕の武術家」といった設定の不自然さが助長されてしまうのだ。(観賞日:2017年4月17日)
第35回ゴールデン・ラズベリー賞(2014年)
受賞:最低助演女優賞[ミーガン・フォックス]
ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ジョナサン・リーベスマン]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低リメイク&盗作&続編賞