『ミッション・インポッシブル』:1996、アメリカ

秘密諜報員イーサン・ハントは、フェルプスをリーダーとするIMFという組織に所属している。今回、当局からIMFに出された指令は、米国大使館員が重要機密“NOC”のデータを盗み出す証拠写真を撮影し、買い手を逮捕するという内容だ。
イーサンは仲間のサラ・デイヴィスと共に米国大使館のパーティに潜入し、大使館員がデータをコピーする現場の撮影に成功する。しかし、この計画は全て筒抜けになっていた。作戦に関わったIMFのメンバーは、イーサンを除いて全員が死亡してしまう。
今回の計画は、全てCIAが仕組んだものだった。2年程前からIMFの情報が外部に漏れており、CIAは“マックス”という人物が工作員を買収してNOCのデータを盗ませたことを突き止めていた。つまり、今回の作戦は裏切り者を探し出すための罠だったのだ。
1人だけ生き残ったイーサンは二重スパイの疑いを掛けられ、CIAエージェントのキトリッジ達に追われる身となった。そんな彼の前に、クレアが姿を現す。イーサンはクレアが生きていたことに疑いを持つが、夫フェルプスの敵討ちがしたいという彼女の言葉を信じることにした。
イーサンとクレアはCIAを解雇された工作員クリーガーとルーサーを仲間に引き入れ、ヨブと呼ばれている本当の裏切り者を探し始めた。そんな中、イーサンの前に死んだはずのフェルプスが姿を現す。イーサンはフェルプスから、裏切り者はキトリッジだと知らされるのだが…。

監督はブライアン・デ・パルマ、テレビシリーズ創作はブルース・ゲラー、原案はデヴィッド・コープ&スティーヴン・ザイリアン、脚本はデヴィッド・コープ&ロバート・タウン、製作はトム・クルーズ&ポーラ・ワグナー、製作総指揮はポール・ヒッチコック、撮影はスティーヴン・H・ブラム、編集はポール・ハーシュ、美術はノーマン・レイノズル、衣装はペニー・ローズ、視覚効果監修はジョン・クノール、特殊メイクアップ効果はロブ・ボッティン、音楽はダニー・エルフマン。
主演はトム・クルーズ、共演はジョン・ヴォイト、エマニュエル・ベアール、ヘンリー・ツァーニー、ジャン・レノ、ヴィング・レイムス、クリスティン・スコット=トーマス、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、デイル・ダイ、マルセル・イウレス、イオン・カラミトル、インゲボルガ・ダプクナイテ、ヴァレンティナ・ヤクニナ、マレク・ヴァセット、ネイサン・オズグッド、ジョン・マクラフリン、ロルフ・サクストン、カレル・ドブリー他。


アメリカの人気テレビシリーズで日本でも放送されていた『スパイ大作戦』をリメイクした作品。「おはようフェルプス君」というフレーズや、テーマ曲が有名な作品だ。
トム・クルーズがポーラ・ワグナーと共に設立した、クルーズ=ワグナー・プロダクションズの第一回作品である。

主役のイーサンを演じるのは、もちろんトム・クルーズ。フェルプスをジョン・ヴォイト、クレアをエマニュエル・ベアール、クリーガーをジャン・レノが演じている。アンクレジットだが、最初に殺されるイーサンの仲間の中にはエミリオ・エステベスがいる。

まず、これをオリジナル作品と考えても、それほど優れた作品とは思えない。
そして、この作品が往年のテレビシリーズ『スパイ大作戦』のリメイクとして作られている以上、その評価はさらに下がると言わざるを得ない。

どこかで見たようなアクションやテクニックが多い。
しかし、そのことは、それほど強く批判する気にはならない。
ただ、その見せ方にあまり面白味を感じないのは難点だ。
また、ストーリーは複雑なのだが、そこから生まれる緊張感は薄い。
スパイらしい“騙し”のテクニックが少ないのもマイナスポイントだ。

前述のように、この作品はリメイクであるという事実によって評価を下げている。
例のテレビシリーズの有名なテーマ曲を作ったのはラロ・シフリンだが、この映画の音楽を担当しているのはダニー・エルフマン。
その時点で、引き算が始まってしまう。

序盤でチームの大半のメンバーが死亡するというのは、かなり意表を突く展開だ。
だが、それは今作品がチームプレーの面白さを完全に無視していることの表れだ。
実際、イーサンには中盤以降に新しい仲間が加わるのだが、やはりチームプレーの面白さは見せてくれない。「チームって、何かね?」とでも言わんばかりの勢いだ。

イーサンの得意分野は変装のはずだ。
しかし、彼はそれだけではなく、他にも様々な能力を発揮している。
彼が1人でスーパーマン的な活躍を見せるわけだ。
よって、他のメンバーの能力設定はほとんど意味が無い。
本人がどう思っていたか知らないが、形としてはトム・クルーズが「俺さえ目立てばOK。他の奴らは引っ込んでいろ」というワガママぶりを発揮している形になっている。

テレビシリーズのキャラクターが、フェルプス以外に登場しないことは許そう。
しかし、代わりに登場するメンバーの扱いはどうだ。
エマニュエル・ベアールやジャン・レノは、わざわざヨーロッパの俳優を使った意味を全く感じさせないデクノボーぶり。エミリオ・エステベスなんて、すぐに死亡する。

奇想天外ぶりは薄く、トム・クルーズばかりが目立つ。
チームとしての活躍が全く見られない。
もっと最悪なのは、(完全にネタバレになってしまうが)テレビシリーズでは主人公だったフェルプスを、脇役どころか悪党にしてしまっていることだ。
どう考えたって、テレビシリーズに対するリスペクトが無さすぎる。

この内容なら、『スパイ大作戦』のリメイクである必要性が全く無いじゃないか。
オリジナルのスパイ映画として作ればいいじゃないか。
トム・クルーズは、例の有名なテーマ曲を使いたかっただけなんじゃないのか。
そんなことを疑ってしまった。


第17回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:ジョー・エスターハス最低脚本賞


第19回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門
ノミネート:【最悪なTV番組の映画化】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会