『メガフォース』:1982、アメリカ&香港

英国の最高司令官であるバーン・ホワイト陸軍大将と副官のザラ・ベンドゥー少佐は、テキサス州ダラス国際空港に降り立った。2人は 約束の相手と会うための場所へ車で移動するが、そこは砂漠の真ん中だった。しばらく待っていると、ダラスと名乗る男が現れた。彼は 仲間のザッカリー・テイラーが運転する車に2人を乗せ、緊急機動軍団“メガフォース”の基地へ向かう。メガフォースの司令官である エース・ハンターがバイクで訓練を行っていたので、ダラスはザラとホワイトを紹介した。
ハンターとダラスは、ザラたちを広大な基地へ案内した。そこには世界中から集められた最新鋭の戦闘機やヘリコプターなどが揃っている 。自由主義諸国が人材と設備を寄付した超国家的組織“SCUFF”により、兵器や武器が用意されるのだ。基地には各国の兵器だけでなく、 メガフォースの博士であるエッグが開発した特別な乗り物もある。メガフォースは世界各地で起きる紛争を秘密裏に解決するための特殊な 軍隊であり、メンバーは軍歴が改ざんされて全員が脱走か戦死の扱いになっている。メンバー全員が志願兵だ。
基地ではホワイトが驚愕するほど高性能の自動盗聴システムも使われており、世界中の重要人物の情報が揃っている。ザラとホワイトが 基地を訪れた目的は、アメリカの新興国を次々に攻撃している東側の傭兵、ゲレーラの戦車軍団を壊滅してもらうためだった。ハンターは 「奴は金のためなら何でもする」とゲレーラのことを言う。ハンターとゲレーラは旧知の間柄で、戦地で共に戦ったこともあった。
ハンターはゲレーラを捕まえて引き渡す計画を立案し、ザラとホワイトに説明した。ゲレーラの陣営へ突入し、わずか4分間で攻撃を終了 させて撤退する作戦だ。ザラが作戦への参加を要望すると、ハンターは「自分たちと同等の能力があるとは思えない」と却下した。ザラは 「だったら試して」と余裕の態度で持ち掛ける。ハンターが輸送機からのパラシュート降下訓練をやらせると、ザラは平然と飛び降り、 無事に着地した。シミュレーターによる攻撃テストも満点で、ザラは有能な戦士であることを証明した。
ハンターはザラの能力を認めるが、それでも「連れて行くことは出来ない」と告げる。その理由を問われた彼は、「60人の部下たちは家族 も同然で、互いを理解している。部外者が入ると作戦に支障が生じる」と説明した。ザラはハンターの考えを受け入れることにした。彼女 は輸送機で飛び立つハンターにキスをして見送った。アフリカの小国ガンビアに入ったメガフォースはゲレーラの陣営を攻撃し、甚大な 被害を与えて撤退した。
翌朝、メガフォースの陣営に非武装の救急ヘリが降り立ち、ゲレーラが現れた。ハンターはゲレーラを歓迎し、2人は笑顔で抱き合った。 直後、ザラとホワイトがヘリで降下した。ホワイトがハンターと2人になって話そうとすると、ゲレーラは高笑いし、これから話そうと している内容を知っていると明かす。ホワイトはハンターに、政治的な判断が働いたため、メガフォースが越境すれば攻撃を受けることを 済まなそうに話した。そこでハンターは、ゲレーラの戦車部隊が待ち受ける地域を突破し、輸送機で脱出しようと考える…。

監督はハル・ニーダム、原案はロバート・S・カチラー、脚本はジェームズ・ウィテカー&アルバート・S・ラディー&ハル・ニーダム& アンドレ・モーガン、製作はアルバート・S・ラディー、製作協力はデヴィッド・シャムロイ・ハンバーガー、製作総指揮はレイモンド・ チョウ、撮影はマイケル・バトラー、編集はパトリック・T・ローク&S・スキップ・スクールニック、美術はジョエル・シラー、音楽は ジェロルド・インメル。
出演はバリー・ボストウィック、マイケル・ベック、パーシス・カンバッタ、ヘンリー・シルヴァ、エドワード・マルヘア、ジョージ・ ファース、マイケル・クルチャー、ラルフ・ウィルコックス、エヴァン・キム、アンソニー・ペーニャ、J・ヴィクトル・ロペス、 マイケル・カーヴェン、ボビー・バス、サミル・カムーン、ユセフ・メルヒ、ロジャー・ロウ、ロバート・フラー、レイ・ヒルJr.他。


監督のハル・ニーダム、製作のアルバート・S・ラディー、製作総指揮のレイモンド・チョウという『キャノンボール』のトリオが再結集 したアクション映画。
ハンターをバリー・ボストウィック、ダラスをマイケル・ベック、ザラをパーシス・カンバッタ、ゲレーラを ヘンリー・シルヴァ、ホワイトをエドワード・マルヘア、エッグをジョージ・ファースが 演じている。
なお、日本公開当時の表記だとザラは「ツアラ」、ゲレーラは「グエラ」なのだが、実際に英語の台詞を聞いた限りは「ザラ」「ゲレーラ 」だし、役名の表記を確認してもそちらの方が合っていると思うので、そのように書かせてもらう。

冒頭、「自由主義諸国の首脳たちは存在を否定しているが、メガフォースの存在は明らかとなった」といったテロップが表示される。 その表示から、勝手に「これからハードな近未来アクションが開始される」という雰囲気を感じ取ってしまったが、そんなことは全く 無い。
オープニング・クレジットで流れて来るチープなテクノ・サウンドのBGMからして、既にヤバそうな雰囲気は漂っているのだが、映像も 含め、たとえ陳腐であっても、一応はハードなアクションじゃないかと思わせる雰囲気がある。
でも、そんなことは全く無い。

本編が始まると、ゲレーラの腹心が部下たちを前に本を読みながら長々と演説をする。
それにウンザリしたグエーラは本を取り上げて演説を遮り、コンビナートへの攻撃を命じる。
この冒頭シーン、コンビナートの爆発に唖然としている腹心の表情も含め、全てが喜劇チックに見える。
そこは本来、ゲリラ軍団の恐ろしさ、悪辣ぶりを見せ付けておくべきシーンのはずにも関わらず、そういう脅威としての存在感が全く 伝わらないし、緊迫感も全く無い。

シーンが切り替わると、戦車軍団をキャッチしたホワイトが攻撃を許可するが、ザラが「深追いすべきではない」と中止を促す。
このシーンも、かなりノンビリした雰囲気に包まれている。2人がアメリカへ飛ぶシーンも、砂漠へ移動するシーンも、同様にノンビリ している。
そこで流れて来るBGMも、マーチではあるが、そこに勇ましさは感じない。明朗快活で、能天気な印象が強い。例えるなら、『ポリス・ アカデミー』とか、ああいう映画と同じようなテイストを感じる。
メガフォースとコンタクトするために、わざわざザラがドレスアップしているのも、砂漠でホワイトがブチブチと愚痴っているのも、 なんかバカっぽい。

序盤から、アクション・コメディーの雰囲気がプンプンと漂っている。ザラとホワイトを迎えに来るダラスも、すげえ能天気なノリだ。
まあ『キャノンボール』のトリオであることを考えれば、それと似たようなテイストでアクション・コメディーを続けるのは、そんなに 間違った考えではないのかもしれない。
ただ、この映画を喜劇テイストで作るってのは、やっぱり間違いじゃないかと。
明るさや軽快さを持ち込むにしても、もう少し控えめにしておいた方が良かったんじゃないかと。

ハンターは部下2人と共に、風船をバイクでジャンプして割るという曲芸をやって登場する。その後、ウイリーしながらザラたちの車に 接近する。
それで「見せびらかしているわけじゃない。さっきのは訓練だ」と言われても、「いや、どこが訓練なのか」とツッコミを入れたくなる。
ちなみに、メガフォースの制服の肩には各国の国旗が縫い付けられており、隊員の出身国が分かるようになっている。
そんな細かいところまで、おバカで陳腐なテイストに満ち溢れている。

ザラとホワイトは急を要する目的があたからこそ、わざわざメガフォースを訪れたはずなのに、ものすごくノンビリしている。
この2人もメガフォースと同様、緊張感や切迫した様子は皆無。
パラシュート降下訓練も、ハンターとザラが2人で楽しく空の時間を満喫しているだけだ。しかも、なぜかヌルい恋愛劇のテイストに なっている。
で、その訓練で優秀な戦士であることを証明したザラだが、作戦には参加しないので、後半は全くと言っていいほど存在意義を失って いる。
じゃあ何のために訓練させたのかと。

ハンターが登場する時の曲芸シーンもそうだが、ザラの訓練シーンは、ひょっとすると「前半はメガフォースが敵と戦うシーンが無いから 、とりあえず訓練するということでアクションシーンを用意しよう」という考えだったのかもしれない。
ただし、「だったら分かる」とはならないけどね。
「だったら序盤からメガフォースが敵と戦うシーンがあるようなシナリオを用意すりゃいいじゃねえか」と思うけどね。
勿体ぶって後半に入るまでメガフォースの戦闘シーンを描かないメリットなんて、何も無いし。

メガフォースの戦闘シーンを後半まで見せずに引っ張ったことでワクワク感が盛り上がるとか、そんなことは無い。
そこまでの物語が充実していて面白ければ違っていただろうけど、戦闘シーンまでの時間で得られるのは、お腹一杯の脱力感だからね。
まあ、ある意味では、戦闘シーン以降に待っているガッカリの連続に対して、それを覚悟させ、受け入れさせる時間を与えてくれたとも 言えるけどね。

メガフォースが出動すると、ダラスが作戦の説明を始めるが、ハンターはザラのことが気になって上の空という有り様。他の隊員たちの 様子も写るが、ノンビリしているだけ。
一方、ゲレーラは何をやっているかというと、腹心とチェスをやっている。こちらもノンビリしており、しかも腹心が目を離した隙に駒を 動かすイカサマをやらかすという喜劇ノリの描写まである。
どんだけ空気を緩和させれば気が済むのか。既に緊張感なんて皆無で弛み切っているのに、さらにダルダルじゃねえか。
これがパンツだったら、とっくの昔に足元までズリ下がっているだろう。

隊員が明るいのは別に悪くないんだけど、あまりにも能天気でご陽気すぎて、なんか不真面目でおちゃらけている印象に見えちゃう。
普段はふざけているけど、いざという時はマジにやる、という感じでもない。
さすがに戦闘シーンに入ると、それなりに真面目に戦っているが、でもユルさやバカバカしさとは縁を切ることが出来ていない。
子供向け特撮映画を、徹底的に陳腐に仕上げたようなノリがある。

乗り物や基地が安っぽいとか、そういうことにツッコミを入れる以前でダメダメ度数が高すぎて、どうしようもない。
乗り物関係に軽く触れておくと、最新鋭の兵器やエッグが開発した近未来兵器も色々とあるのに輸送機は1956年から運用されている C-130ハーキュリーズだったり、指令車のタック・コムがごく普通のサイズだったり、相手が戦車部隊なのにメガフォースは改造バイクが 主力だったり、バイクから放射される煙幕が無駄にカラフルだったり、その煙幕で他の全員が輸送機まで辿り着いたのにハンターだけが 爆撃で転倒して逃げ遅れたり、彼のバイクがバレバレの合成で空を飛んだりする。
とにかく、最初から最後まで、緊張感も高揚感も無くて、ただ脱力感だけを味わえる作品である。

(観賞日:2013年5月1日)


第3回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ハル・ニーダム]
ノミネート:最低助演男優賞[マイケル・ベック]

 

*ポンコツ映画愛護協会