『マジック・マイク ラストダンス』:2023、アメリカ

マイアミ。マイク・レーンはパンデミックで家具会社が潰れたため、バーテンダーとして生計を立てている。彼はマックス・メンドーザという富豪夫人が主催する慈善のパーティー会場で、バーテンダーの仕事をする。マックスの夫であるロジャー・ラティガンは、ロンドンで暮らしている。ロジャーは未練があるが、マックスは完全に冷めている。マイクはマックスの離婚弁護士であるキムから、声を掛けられた。キムは大学生だった頃、ストリッパーのマイクを学生寮に呼んだことがあった。
キムからマイクの話を聞いたマックスは、自分にもストリップをやってほしいと依頼する。マイクは引退したと言って断るが、マックスは「もう一度だけやるとしたら幾ら?」と問い掛ける。彼女はキムから「頭か真っ白になる」と聞かされており、それが本当なら6千ドルを支払うと約束した。マイクがラップ・ダンスを披露するとマックスは興奮し、そのままベッドに雪崩れ込んで肉体関係を持った。彼女はマイクに、クリエイティブな仕事を用意するので一緒にロンドンへ行かないかと持ち掛けた。「1ヶ月、私とロンドンで過ごして。報酬は6万ドル」と言われたマイクは躊躇するものの、結局は承諾した。
ロンドンに着いたマイクは、マックスの執事であるヴィクターの車に乗り込んだ。ヴィクターはマックスのアパートに案内し、マイクが使う部屋に通した。マックスはマイクに、「ヴィクターのおかげで、今から行く場所を夫から勝ち取れた。強欲な義母への腹いせが、今や私の人生の目的になった」と語る。彼女はマイクの身なりを整えさせ、劇場の「ザ・ラティガン」へ連れて行った。『翔べ イザベル』という芝居の公演を控えて、劇場では準備が進められていた。
マックスはマイクに、2004年に『翔べ イザベル』が上演された時に自分が端役で出演していたこと、その時に劇場支配人だったロジャーと恋に落ちたことを話した。彼女は舞台監督のウッディーにマイクを紹介し、劇場の中に入った。『翔べ イザベル』という演目について、彼女は「結婚は愛か金かという月並みな古典劇。イザベルが選ぶのは、どっちでもいい。問題は選ばなきゃいけないと思い込んでいることよ」とマイクに語った。
マックスは主演女優のハンナや演出家のマシューたちに、稽古の中止を通告した。彼女は「4週間で軌道修正する。マシューはクビにして、マイアミで見つけた新進気鋭の振付師に演出してもらう。1ヶ月後、私が感じたエクスタシーを、劇場に来た全ての女性が体感する」と語った。振付師として紹介されたマイクは、困惑を隠せなかった。マックスに連れられてレストランに移動した彼は、「役者が辞める」と漏らした。するとマックスは平然とした様子で、「構わない。必要なのはダンサー」と言い放った。
マイクが「ロジャーへの仕返しなら、もっと楽な方法がある」と言うと、マックスは「私は痛い女じゃない。ロンドンに津波を起こす」と自信満々に告げる。「演出なんか知らない」とマイクが口にすると、彼女は「だから私がいる」と述べた。娘のゼイディーが店に来たので、マックスはマイクを紹介して「しばらく家に泊まる」と説明した。マイクはストリッパー時代の仲間であるケン&ティト&ターザン&リッチーに連絡し、ロンドンでの仕事について語った。
マックスはイタリア人のアントニオというダンサーをスカウトし、マイクに「必要なのはストリッパーじゃなくて、訓練されたダンサー」と話す。マイクが同意すると、彼女は助手のレナータに指示して10名のトップダンサーを呼んであることを明かした。ダンサーの面接を終えたマイクとマックスの元に、ハンナが現れた。まだ出演に前向きな彼女の様子を見たマイクは、マックスに「冒頭を元の芝居と同じにすれば、サプライズになる」と述べた。マックスの承諾を得た上で、彼はハンナを起用することにした。
マックスは友人たちとの会食の場に、マイクを同伴した。酔っ払った彼女は帰りの車で、「ペラペラの偽善者」と友人たちを扱き下ろした。翌朝、マイクはマックスを「マクサンドラ」と呼ぶゼイディーに、他人行儀ではないかと告げる。するとゼイディーは、自分が孤児でマックスが実の母親ではないことを明かした。そこへロジャーが来ると、ゼイディーはマイクを紹介した。マイクは舞台の振付師だと自己紹介し、良い舞台になる自信を見せた。
舞台の稽古が始まる中、ウエストミンスター市歴史建造物高等委員会の委員たちが劇場に来てマックスに書類を渡した。そこには「施設の変更は書面での認可が必要」「認可や特免無しの変更は所有者が原状回復し、新たに承認申請すること」などと書かれており、マックスはロジャーの差し金だと悟って激怒した。従わない場合、1日1万ポンドの罰金を支払うか、建物の差し押さえという処分が下される。仮に罰金を支払っても、ロジャーは裏から手を回して建物を奪おうとするはずだマックスは確信した。
ゼイディーはマイクとマックスに、特免の権限を持つ委員長のエドナ・イーグルバウアーを味方にするよう提案した。マイクたちはエドナについて調べ、バスでパフォーマンスを披露して認可を取り付けた。マイクは演出方針を巡ってマックスと口論になるが、ヴィクターの助言を受けて仲直りした。エドナが劇場に来て、ステージが2センチ高いと指摘があったことを話した。彼女は高さ制限に引っ掛かるので公演は中止になると説明し、「下院議員の通達よ。私も法律には逆らえない」と告げた。
マックスはロジャーの元へ乗り込み、激しい怒りをぶつけた。するとロジャーはストリッパーのマイクを家に連れ込んでいることを咎め、本気で愛しているのだとマックスが主張しても聞く耳を貸さなかった。ロジャーは「和解規約を読んだか。上演したら母の弁護士に有り金を残らず取られるぞ」と言い、ゼイディーの将来を考えて利口な判断をするよう説いた。マックスは仕方なく公演を諦めようと考えるが、納得できないマイクはハンナやダンサーたちと共に準備を進める…。

監督はスティーヴン・ソダーバーグ、脚本はリード・カロリン、製作はニック・ウェクスラー&グレゴリー・ジェイコブズ&チャニング・テイタム&リード・カロリン&ピーター・キーナン、製作総指揮はジュリー・M・アンダーソン、共同製作はコーリー・ベイズ&アリソン・フォーク、撮影はピーター・アンドリュース(スティーヴン・ソダーバーグ)、美術はパット・キャンベル、編集はメアリー・アン・バーナード(スティーヴン・ソダーバーグ)、衣装はクリストファー・ピーターソン、振付はアリソン・フォーク&ルーク・ブロードリック、音楽監修はシーズン・ケント。
出演はチャニング・テイタム、サルマ・ハエック・ピノー、アユーブ・カーン・ディン、ジェメリア・ジョージ、ジュリエット・モタメド、イーサン・ローレンス、ヴィッキー・ペッパーダイン、カイリー・シェイ、テオフィロス・O・ベイリー、ライアン・マイケル・カールソン、ハリー・カーター、ジョエル・エクペリギン、アントン・ランゼロット・エンゲル、ジャック・マンリー、セバスチャン・ゴンザレス・モリーナ、パトリック・パッキング、JD・ライリー、セバスチャン・メロ・タヴェイラ、ジャクソン・ウィリアムズ他。


『マジック・マイク』シリーズの第3作にして最終作。
監督のスティーヴン・ソダーバーグは、シリーズ1作目からの復帰。今回も変名で撮影と編集を兼任している。
脚本は3作連続でリード・カロリンが担当。
マイク役のチャニング・テイタムは、シリーズ全作に出演している。ケン役のマット・ボマー、ターザン役のケヴィン・ナッシュ、ティト役のアダム・ロドリゲス、リッチー役のジョー・マンガニエロも、全作に出演。キム役のケイトリン・ジェラードは、1作目からの復帰。
他に、マックスをサルマ・ハエック・ピノー、ヴィクターをアユーブ・カーン・ディン、ゼイディーをジェメリア・ジョージ、ハンナをジュリエット・モタメド、ウッディーをイーサン・ローレンスが演じている。

「マックスはマイクのラップ・ダンスを見て頭が真っ白になった」ってことを表現するのは、至難の業だろう。だから、そこが伝わらない状態になっているのは別に構わない。
ただ、マックスは我慢できずにマイクを押し倒し、そこからカットが切り替わると2人はベッドで裸なんだよね。
つまり、ただのストリップ見物では終わらず、セックスに及んでいるわけだ。
そうなると、果たしてマックスはストリップで頭が真っ白になったのか、セックスでエクスタシーに達したのか、そこが曖昧になってしまうぞ。

さらに言うと、セックスに及んだことによって、マックスがマイクのダンス能力を評価して雇ったんじゃなくて、別の感情が働いているんじゃないかと邪推したくなる。
そもそも、ストリップが素晴らしかったとしても、「だから舞台演出家として雇う」ってのはメチャクチャでしょ。
それは決してストリップをバカにしているわけじゃなくて、全く別物だからね。
ストリップじゃなくて他のダンスだったとしても、「ダンサーとしての才能」と「振付師としての能力」は違うんだし。

マイクが「演出なんか知らない」と言った時、マックスは「だから私がいると」自信満々に告げる。
だけどマックスだって、舞台演出の経験なんか全く無いでしょうに。ズブの素人がタッグを組んで、一から舞台を作り上げて、しかも4週間で完成させるとか、正気の沙汰としは思えないぞ。
既存の芝居を少しだけ変えるとか、ダンスのシーンだけ振付を変更するとか、そういうレベルじゃないからね。役者を全て解雇して新たにダンサーを雇い、完全に別の芝居を作ろうとしているからね。
あとマイクとマックスがどういう芝居を作ろうとしているのか、それが全く見えないんだよね。世界中のトップダンサーを集めているけど、それは金持ちの道楽にしか見えないのよ。

マイクは第1作で「ストリッパー人生に終止符を打つ」という強い決意で引退し、家具職人の道を選んだはずだ。しかし今回の彼は振付師の仕事にノリノリで、「また家具職人に戻る」という意識は全く見えない。
これが例えば「仲間のためにストリッパーに一時復帰する」みたいなことなら、それは分からんでもない。だけど、「やっぱり自分の天職はストリッパーだ」みたいな感じになってんのよね。
それは第1作におけるマイクの決断を否定する形になってないか。
第2作では第1作を自己否定し、第3作でも改めて第1作を自己否定するって、どんなシリーズだよ。

マックスは序盤でマイクを劇場に案内する時、「強欲な義母への腹いせが、今や私の人生の目的になった」と語っている。その後、彼女はロジャーの嫌がらせに激怒し、乗り込んだりする。
だけど、マックスが本気で本当に憎んで戦うべき相手は、ロジャーではなく彼の母親だろうに。
ロジャーも「上演したら母の弁護士に有り金を残らず取られるぞ」と語っており、自分は何も出来ないと漏らしているからね。
それなのに、ギャフンと言わせるべき義母が一度も姿を見せないままで終わっているのは、物足りなさを感じるぞ。

アルは当初、レブロンのキャラクターを様々なアニメ映画に出演させる計画を立てている。
ところが、それを断られた途端、今度はバスケの試合に出場することを要求する。
いやいや、なんでだよ。ドムを人質に取ったのなら、「返してほしければ映画の話を引き受けろ」と要求すればいいはずだろ。
それなのに「アニメのキャラを集めてチームを編成し、バスケの試合に出ろ」という要求になっているのは、なんて適当なシナリオなのかと。

マックスとゼイディーの親子ドラマは、皆無に等しい。ゼイディーは孤児でマックスを「マクサンドラ」と呼んでいるが、じゃあ「最初は他人行儀で遠慮していたが、その関係が少しずつ変化して」みたいなドラマがあるわけではない。
そもそも最初からゼイディーはマックスと仲良くやっているし、そこに壁があるようには感じないからね。
わざわざ「血が繋がっていない」という設定を用意しているのに、それを丁寧に活用しているとは到底言い難い。
せっかくゼイディーが面白そうな存在なのに、とても勿体無いわ。ぶっちゃけ、マックスよりゼイディーの方が、もっと見たくなるキャラなんだよね。

ロジャーが妨害工作を始める前から、マイクとマックスは演出方針を巡って対立している。しかし、どっちの肩を持つ気にもならない。
何しろ、どっちも舞台演出の素人だからね。それに、どういう舞台を作りたいのかというコンセプトや全体像も、まるで見えていないし。
なので、それぞれに演出のアイデアを出されても、それが良いのか悪いのかという判断が出来ないのよ。
先に「こういう舞台を作りたい、こういう方向性で進めたい」という大枠を観客に示しておかないことのメリットなんて、何も無いはずだし。

あと、マックスはマイクのストリップで「私の人生を変えた」と言うぐらい撃ち抜かれ、それで彼を振付師に抜擢したんでしょ。
だったらトップダンサーを集めるよりも、超一流のストリッパーを集めて出演してもらった方が良くないか。そっちの方が、マックスが考えているコンセプトにも、この映画のコンセプトにも合致するはずだ。
トップダンサーを集めてラップ・ダンスを練習させたら、それは「やっぱりトップダンサーは凄いよね」ってことでしかないでしょ。
「ストリッパーのダンスは素晴らしい」ってことにならないでしょ。

映画のラスト25分ぐらいを、舞台の本番を描くために使っている。そこまでに「どういう舞台なのか」ってのを全く教えてくれないので、まっさらな状態で観劇することになる。
しかし大丈夫、それで何の問題も無い。なぜなら、そこで演じられるのは、ほとんど「お芝居」が無いダンスショーだからだ。
冒頭でハンナがイザベルとして登場し、少しだけ芝居をするが、すぐに『翔べ イザベル』から完全に外れる。
そしてハンナは司会者となり、ステージにダンサーを呼び込んだりダンスのテーマを説明したりする役回りを担当する。

「とにかくダンスを見せたいのだ」ってことだろうから、それは別に構わない。ただ、見せ方が上手くないんだよね。
やたらとカットを割ったり、観客席の様子を挿入したりする。そこで生じたマイナスを帳消しにするような力を、カメラワークが持っているわけでもない。
マックスは感動しているが、こっちは冷めた気持ちのままで見終えることになる。
結局、わざわざハンナを舞台に復帰させておきながら、「男だけじゃなくて彼女がいなけりゃ成立しない」というぐらいの役目を与えているわけではないし。

(観賞日:2025年4月29日)


第44回ゴールデン・ラズベリー賞(2023年)

ノミネート:主演女優賞[サルマ・ハエック]
ノミネート:最低スクリーン・コンボ賞[サルマ・ハエック&チャニング・テイタム]

 

*ポンコツ映画愛護協会