『ベガスの恋に勝つルール』:2008、アメリカ

ニューヨーク。ジョイ・マクナリーは恋人のメイソンに、今夜の誕生日パーティーの確認をする。ジャック・フラーはセックスフレンドの ケリーとセックスした後、「ここの合鍵が欲しいの。そうすれば荷物を置いておけるでしょ。貴方は恋人でも結婚相手でもないけど」と 言われる。株式仲買人のジョイは証券取引場へ行き、同僚のチョンと仕事をする。ジャックは家具製造会社を営む父の工場で勤務している が、仕事をサボって同僚とギャンブルに興じる。父が来たので、彼は慌てて仕事を始める。しかし父はクビを通告し、パーティー好きな ジャックを批判して「人生の厳しさを味わって来い。根性を鍛え直せ」と告げる。
夜、ジョイは親友のティッパーを始めとして、大勢の仲間たちをサプライズで呼んでいた。彼女はメイソンのために、ベガス行きの チケットも用意していた。明かりを消して全員が身を隠し、ジョイはメイソンを出迎える。しかしメイソンは「僕は仕事が終わったら、 ゆっくりしたい。だけど、君と一緒だとリラックスできない。君はスケジュールを立てすぎる。君とは結婚したくない。別れよう。僕が ここで暮らすから、君は出て行ってくれ」と告げる。
ジャックはバーで親友の弁護士ヘイターに愚痴り、飲みまくる。ジョイはティッパーに付き合ってもらって飲むず、まだメイソンへの未練 タラタラだ。ジャックとジョイは、それぞれ親友に誘われてベガス行きを決める。ジャックとヘイターがホテルの部屋に入ると、そこには ジョイとティッパーの姿があった。ホテル側のミスで、ダブル・ブッキングが起きていたのだ。ジョイはフロント係のカーティスに苦情を 言い、最上階のペントハウスを用意してもらう。ジャックはカーティスと話し、VIPチケットを入手した。
4人はリムジンに乗り、カジノへ向かう。ジャックは「一緒に楽しもうよ」と陽気に誘うが、ヘイターが文句ばかり言うので、ジョイと ティッパーは腹を立てて車を降りる。しかしジャックに「一杯だけ飲もうよ」と誘われて、ジョイは付いて行くことにした。ジョイは恋人 にフラれたこと、ジャックは父親に解雇されたことを語り、酒を飲みまくる。2人は大いに騒ぎ、その勢いでセックスした。
翌朝、目を覚ましたジョイは、左手の薬指に指輪を見つけて驚いた。ハッキリとは覚えていないが、昨夜の内に婚約してしまったのだ。 一方、先に起きて朝食を食べに行ったジャックは、ヘイターから「お前、酔っぱらった勢いで結婚宣言してたぞ」と言われる。ジャックは 「ベガスでは良くあることさ。それより帰るまでに何とか誤魔化さないと」と口にした。そこへジョイとティッパーがやって来た。ジョイ とジャックは、結婚についてキッチリと話を付けるため、その場から移動した。
ジョイがスロットを始める中、ジャックが話を切り出した。そして2人は、「昨夜の出来事は無かったことにする」という結論で一致した 。それで問題は解決したはずだったが、ジャックが余計なことを言ったせいでジョイがカチンと来てしまい、そこから口ゲンカになる。 ジョイが去った後、ジャックは彼女の残した25セントをスロットに入れる。すると、なんと300万ドルの大当たりが出た。ジャックは自分 が全額を受け取るつもりだったが、ジョイは「忘れたの、私たちは結婚してるのよ」と告げる。
2人はニューヨークへ戻り、裁判で決着を付けることにした。ヘイターがジャックの顧問弁護士を担当し、婚姻の無効を主張した。それに 対してジョイは、ジャックが結婚を宣言している様子を撮影した映像を証拠として提出した。ワッパー判事は結婚を軽んじる2人に腹を 立て、300万ドルの一時凍結を通達する。そして「これから半年間、結婚生活を送りなさい。そして週1回のカウンセリングを受けること 。それが出来なければ金は永遠に凍結する」と告げる。
裁判所を出たジョイとジャックは、ヘイターから「互いに半年は我慢して、150万ドルを分け合うことにしたらどうだ」と提案される。 150万ドルを手に入れるため、2人は仕方なくジャックのアパートで同居生活を始めることにした。ジョイは汚いトイレや臭いベッドに顔 をしかめ、仕返しとして早朝から大きな物音を出して嫌がらせをする。さらに彼女は、洗面所でヘアメイクに時間を掛け、ジャックに トイレを我慢させる。するとジャックは、キッチンのシンクで排尿した。
出勤したジョイは、チョンと共に上司のバンガーから呼び出しを受ける。バンガーは昇進のポストが空いたことを告げ、「2人に後を 引き継いでもらいたい。競い合ってくれ」と告げる。バンガーが去った後、ジョイはチョンに「適任は貴方よ」と告げる。するとチョンは 自信満々に、「当然よ。貴方は私の部下になるの」と言う。ジョイとジャックは、カウンセリングのために精神科医トゥイッチェルの元へ 行く。2人は愛し合っている芝居をするが、本心を出していないことを簡単に見抜かれた。
ジョイはジャックに、綺麗にトイレを使うよう要求する。ジャックは便座を外して嫌がらせをする。ジョイが洗面所に長く居座って仕返し すると、ジャックはドアを取り外して反撃した。ジャックはヘイターから、ジョイはティッパーから、それぞれ計画を持ち掛けられる。 ヘイターもティッパーも同じ計画で、それは「一緒に暮らせない証拠を手に入れれば同居しなくて済む。相手が自分を裏切る行為をする ように仕向ければいい。だから浮気するように持ち掛ける」というものだった。
ジャックは興奮剤をジョイのドリンクに混入した。会議の最中にテンションが上がりまくったジョイは、そのおかげでバンガーから「その 情熱が必要なんだ」と褒められる。ジャックがアパートに一人でいると、「鍵を無くしたので、業者が来るまで置いてほしい」と頼む美女 2人が現れる。続いて、その2人の友人と称する数名の美女がやって来た。ヘイターに電話して「ジョイの罠だ。すぐに追い払え」と 言われたジャックは、「やり返すんだ。彼女に後悔させてやる」と激怒した。
ジョイがアパートに戻った直後、ジャックの友人デイヴが仲間たちを連れて現れた。しかしイマイチな連中ばかりなので、ジャックは 新たな男を用意することにする。一方、ジョイも新たな女を呼ぶことにした。ジョイは女性たちに「ジャックのパンツを持ち帰って」と 指示し、ジャックはデイヴに彼女を口説かせようとする。しかし、大騒ぎのパーティーが盛り上がっただけで、ジョイもジャックも辟易 してしまう。静かな場所を求めてリビングから移動した2人は、互いを罵り、言い争いになった。
ジョイとジャックはトゥイッチェルの前でも、激しい口調で相手への不満を並べ立てる。しかし、「その調子よ。夫婦は互いに本心を 言い合うべきなの。貴方たちの関係は改善されてるわ」と感心されてしまう。ヘイターはジャックを殴って怪我を負わせ、ジョイがやった ように見せ掛けようとする。ジャックはトゥイッチェルの前で、ジョイに暴力を振るわれたと訴えた。しかしジョイは全く動じず、携帯で 録画した映像を見せた。そこには、ヘイターがジャックを殴り、作戦を説明する様子が写し出されていた。
ジャックはケリーにトゥイッチェルの助手を装ってもらい、ジョイに電話を掛けさせた。「先生が急用なので今回の面談は中止に」と 告げられたジョイだが、ジャックがタクシーを拾おうとする姿を発見し、彼の罠だと悟った。ジョイはジャックが見つけたタクシーを奪い 、自分が先に診療室へ行こうとする。だが、ジャックは彼女の財布を盗んでいた。運転手から「金が無いならオッパイを見せて」と要求 され、ジョイは取引を飲んだ。しかし渋滞に巻き込まれている間に、ジャックはスケボーで先行する。ジョイは果物を購入し、ジャックに 投げ付けて妨害する。その後も互いに相手を邪魔しながら、最終的には同時に診療室へ転がり込んだ。
ある夜、ジャックが帰宅すると、両親がジョイと楽しく話していた。ジョイは「貴方を驚かせるために夕食に招待したの」と言う。両親は ジョイを気に入り、ジャックの結婚を喜んでいた。ジャックはジョイを別の部屋に連れ出し、「出来れば真実は内緒にしておいてくれ」と 真剣に頼む。ジョイは「今回だけよ」と承諾し、両親の前ではジャックをけなさなかった。ジョイはジャックの両親から、土曜日に開く パーティーに招かれた。
仕返しをしようと考えたジャックは、ジョイがメイソンからプレゼントされた指輪を使う作戦を思い付く。彼はメイソンの元へ行き、指輪 を差し出して「これがゴミ箱に捨ててありました」と言う。しすしメイソンが平然と「ありがとう」と受け取るので、アテが外れた。 メイソンから「彼女はどうしてる?元気か」と問われ、ジャックは「元気ですよ」と答える。「強がってるだけじゃないのか」と言われ、 彼は「貴方と別れてから自由に暮らしていますよ」と告げて、パーティーに呼んでいることも話した。
パーティーに参加したジョイは、ジャックが姪のサミーたちに野球を教える様子を目撃した。ジョイとジャックは、インディアナ・ ジョーンズが好きということで意見が一致した。ジョイがサミーと遊んでいると、メイソンが現れた。「向こうで一杯、どう」と誘われる が、ジョイは「やめとくわ」と断る。それを目撃したジャックは、心を乱される。ヘイターから「お前を陥れる作戦だ。しっかりしろ」と 言われるが、ジャックの心は穏やかではなかった。
ジョイはバンガーから「慰労パーティーがあるんだ。チョンは夫を連れて来るらしい」と言われ、「私の夫も連れて行きます」と告げた。 ヘイターはジャックに、「みんなの前で上手く立ち回って彼女に惚れさせ、金の権利を寄与するという誓約書にサインさせろ。断ったら、 みんなに真実を暴露してやれ。裁判まであと1週間、これが最後のチャンスだぞ」と計画を授ける。パーティー会場に現れたジャックは 下ネタを口にするが、バンガーに気に入られる。ジョイは「来てくれてありがとう」と礼を言う。
ジャックのおかげで、バンガーから生真面目だと思われていたジョイの心象も良くなった。ジャックはバンガーからトロフィーを貰い、 壇上でスピーチをすることになった。携帯には、ヘイターから計画の遂行を急かすメールが届いていた。しかしジャックは真実を暴露せず 、「互いを良く知らないまま結婚したけど、最近になってようやく分かり合えるようになった」と語ってジョイをダンスに誘った…。

監督はトム・ヴォーン、脚本はデイナ・フォックス、製作はマイケル・アグィラー&ショーン・レヴィー&ジミー・ミラー、製作総指揮は アーノン・ミルチャン&ジョー・カラッシオロJr.&ディーン・ジョーガリス、撮影はマシュー・F・レオネッティー、編集はマシュー ・フリードマン、美術はスチュアート・ワーツェル、衣装はレネー・アーリック・カルファス、音楽はクリストフ・ベック、 音楽監修はデーヴァ・アンダーソン。
出演はキャメロン・ディアス、アシュトン・カッチャー、デニス・ミラー、ロブ・コードリー、レイク・ベル、トリート・ウィリアムズ、 デニス・ファリーナ、ジェイソン・サダイキス、ザック・ガリフィナーキス、ミシェル・クルージ、ディードル・オコンネル、クリステン ・リッター、クイーン・ラティファ、リッキー・ガルシア、アンドリュー・デイリー、ベニータ・ロブレド、アマンダ・セットン、トニ・バスカー、 ジェシカ・マッキー、リカルド・ウォーカー、ヴァレリー・オーリック他。


2006年の長編デビュー作『Starter for 10』が高く評価されたスコットランド出身のトム・ヴォーンが、ハリウッドに招聘されて手掛けた 長編2作目。
ジョイをキャメロン・ディアス、ジャックをアシュトン・カッチャー、ワッパーをデニス・ミラー、ヘイターをロブ・ コードリー、ティッパーをレイク・ベル、ジャックの父をトリート・ウィリアムズ、バンガーをデニス・ファリーナ、メイソンを ジェイソン・サダイキス、トゥイッチェルをクイーン・ラティファが演じている。

ジョイは証券会社のキャリアウーマン、ジャックは家具会社の職人という職業の設定があるのだが、その意味は全く感じられない。序盤 には一応、それぞれの職業に少し触れているが、ちゃんと仕事をしているシーンは皆無。
ジョイは証券取引場へ来たところでシーンが切り替わるし、ジャックも仕事をしているフリをしたところで終わる。ジャックなんて、 「仕事をサボッてばかりで不真面目だったけど、気持ちを入れ替えて真剣に家具作りに取り組むようになる」という変貌を描くべきだろう に、そういうドラマも無いし。
あと、キャメロン・ディアスもアシュトン・カッチャーも、その職業が似合わないよなあ。
まあジャックは仕事をサボってばかりというキャラ設定だからいいとしても、ジョイって上司から真面目で勤勉だと評されるような女の はずでしょ。パーティーとかギャンブルには全く興味が無いバリバリのキャリウアーマンのはずでしょ。
でも、キャメロン・ディアスって、そんな風には全く見えないよ。
似合わないことを利用した内容になっているのかというと、そういうわけではなくて、単なるミスマッチでしかない。

ただし、ジョイが「真面目で勤勉なバリバリのキャリウアーマン」というキャラに見えないのは、キャメロンだけのせいじゃない。
彼女がバリバリと働いている様子の描写が見られないんだよな。ジャックとの同居を始めてから、ようやく会社のシーンがあったり上司が 登場したりってのも、タイミングが遅いと思うし。
それと、序盤のメイソンに対する接し方などを見ている限り、彼女は「計画を立てたがる真面目な女」ではなく「口うるさい女」 なんだよな。
キャラクター描写の不足や間違いも、大きな原因になっている。

ジャックは父からクビを宣告された時、「バスケの勝負で決めてくれ。そっちが勝ったら俺がクビ。でも俺が勝ったら、チャンスをくれ」 提案するが、すぐに「お前には、もうチャンスなんて無いぞ」と言われてしまう。
で、そこで、もうオチてるよね。
それなのに、そこからバスケ対決に移ってしまう愚かしさ。
いやいや、せっかくオチてたのに。
あと、バスケ対決に移るにしても、父親が圧倒しなさいよ。もうシーンが切り替わったら父親が圧倒している形でいいのに、7対9から 父親が逆転勝利って、なんだ、そのハンパさは。

ジョイがメイソンにフラれるシーンは、普通に悲劇的なモノになっちゃってるんだよな。
そこは気まずい空気であっても、喜劇になってなきゃマズいはずでしょ。ただ単純にフラれた上に、「僕がここで生活するから君が出て 行ってくれ」とジョイが追い出されて、彼女を可哀想だと思わせてしまうようではダメでしょ。
それは可哀想ではあるけど、どこか笑えるシーンとして演出すべきじゃないの。
ホテルのダブルブッキングでジャックたちが部屋に入って来た時、ジョイとティッパーが大声を上げて殴り掛かるシーンも、上手くやれば 、ちゃんと喜劇に出来たはずなんだよな。
いや、ジャックとヘイターがゲイと誤解する手順はあるし、一応は喜劇として演出されているんだけどさ、なんかイマイチ なんだよな。ドタバタの見せ方が上手くない。
カーティスからペントハウスやVIPチケットを入手するシーンも、たぶん笑いが欲しいはずなんだけど、ジョイやジャックが巧妙な トークで非常識なプレゼントを引き出すわけでもないし、カーティスもすんなりとプレゼントしているから、「ごく当たり前の交渉シーン 」になってしまっている。

ジョイとジャックがベガスへ行くことを決める流れは、かなり強引だと感じる。
そこに限らず、この映画、展開が強引だと感じる箇所が多い。
ジャックとは別行動を取ろうとしたジョイが、「一杯だけ」と誘われると簡単に酒に付き合うのも無理を感じる。
その時点では、まだ飲んでいるわけでもないよね。ジョイは計画好きのお堅い女で、まだメイソンに未練もあるはずなのに、そんな軽い ノリで、出会ったばかりの男に付いて行くのは違和感があるぞ。

ジョイが酒を飲み、遊びまくって盛り上がるのは、「普段は完璧主義でお堅いキャリアウーマンが、酒を飲んだせいで珍しくハメを外す」 という風には見えない。普段から、そういうキャラとしか見えない。
それはキャメロンの問題じゃなくて、酒を飲む前の段階から、キャラの動かし方が間違っているってこと。
完璧主義のお堅い女には到底見えないよ。
酒を飲んだところで豹変するという形にしておくべきだったんじゃないのか。ジャックに負けず劣らず、こいつも根っからのパーティー 好きにしか見えないぞ。

カジノで言い争いを始めるのも、ちっともスムーズじゃない。
先に「そこで2人が言い争いを始める」という指令は決まっていて、そこへ上手く流れを運ぶことが出来ていないのに、強引に指令だけ は遂行している、といった感じだ。
ワッパーの判決にしても、ものすごく強引。
「判事が変わり者だから」ということで納得させようとしているけど、その「変わり者」としてのアピールも足りないし。「古臭い考え の人」というのは分かるけど、だからって、そこまでヘンテコな判決ってのは無理がある。
ただ、判決のシーンは、単純にテンポが悪いというのも関係あると思う。もっとスピーディーに畳み掛けるようにやってしまえば、勢いで 誤魔化せたんじゃないかなあと。

ジョイがトイレを掃除するようジャックに要求したり、ベッドの匂いに顔をしかめて殺菌剤を噴射したりするけど、彼女が潔癖症っていう 描写は、そこまでに全く無かったよね。
そういう展開を入れるなら、最初の内に、ジョイが潔癖症ってことを見せておくべきじゃないの。ジャックがジョイに嫌がらせをするため に、わざと異常なぐらい不潔にしているということならともかく、そうじゃないんだから。
昇進を競い合うようバンガーに言われたジョイが「適任は貴方よ」と口にすると、チョンは自信満々の態度で「当然よ。貴方は私の部下に なるの」と告げる。
これ、全く笑えないんだよな。
そこはジョイが相手を持ち上げるセリフをもう少し長めに言ってからチョンに移って、彼女の自信満々でタカビーな物言いに対してジョイ が呆気に取られるというリアクションにした方が良かったんじゃないかな。

バンガーがチョンに対して異常に冷たいのは、どういうことなんだろうか。チョンが彼に対して何か無礼な行為をしたわけでも ないのに。
チョンが普通に接しているだけなのに、彼はシカトしたりするんだよな。まるで理解できない。
何度もやるってことは、たぶんギャグとしてやっているつもりなんだよな。でも、単なる人種差別としか見えないぞ。
自分で「ジョイとチョンを平等に見て判断する」と言っていたのに、すげえ差別してるじゃねえか。

ジョイとジャックが、自分が先にトゥイッチェルの元へ行こうとして妨害合戦を繰り広げるシーンがある。
ここって、約5分も引っ張って描くようなことかなあ。
そこで「ある1つの目的に対して、妨害が幾つも連続する」という様子を見せているのが、バランスが悪いと感じるのよね。
トゥイッチェルの元へ行くシーンが何度もあって、その内の1つでそれをやるってのも、やはりバランスが悪いと感じるし。
それよりも、「連続」というのを見せるなら、様々な状況で互いに嫌がらせをする様子を、ダイジェスト的に幾つも連続して見せると いう箇所を1つ用意した方がいいんじゃないかと。

で、その「互いに相手を妨害することの連続」を経た後は、「互いに相手の良い部分に触れて、少しずつ惹かれ合うように」という展開へ 移ってほしいんだよね。
この映画だと、一応、妨害合戦の後から少し変化が生じているんだけど、それは「互いに相手を褒めたり擁護したり」という形なん だよね。
ってことは、既に「相手の良さに気付いている」ということになってしまう。
でも、そんな手順は無かったはずで、そこを飛ばして「相手を褒めたり擁護したり」という展開に行くのは、順番が違うんじゃないかと。

その後、ジョイはジャックが姪たちと楽しそうに野球をする様子を見て微笑しており、そこで「見直した」ということにしているみたい だけど、ジャックが子供たちと楽しく遊ぶのって、そんなに見直すようなことでもないでしょ。それまでのジャックの行動からすると、 遊ぶのは好きなんだから、意外性は無い。
そこは何かしら意外性のある「良さ」が欲しいのよ。
例えば優しさとか、男気とか、義侠心とか、情熱とか、そういうことよ。
しかも、ジャックがサミーたちの面倒を見ている様子をジョイが見ただけで、たったそれだけで、急に「いい雰囲気」になってしまう。
なんだよ、その急変ぶりは。

一方のジャックは、ジョイがメイソンからお茶に誘われる様子を見て心を乱しているが、ジョイのどこに、どの辺りで好意を抱くように なっていたのか、サッパリ分からないのだ。
っていうか、ジョイもジャックも、いつ、相手のどこが好きになったのかと。
そりゃあ、「実際の恋愛では、明確なきっかけやポイントは無いけど、何となく好きになることってあるだろ」と言われたら、そうかも しれんよ。
でも、この映画って、そんなトコでリアリティーを追及している作品じゃないからね。
相手に惹かれるきっかけ、惹かれた箇所を明確にすることは、必要不可欠と言い切ってもいい。

半年後の裁判で、ジャックがジョイに対して、150万ドルに追加請求をプラスした金額を請求するのは理解できない。 それを主張するのはヘイターだけど、ジャックは黙認しているからね。
その前にアンタ、「俺は降りるよ。そうすれば君が負けることは無い」と言っていたじゃねえか。
そんで彼は、ジョイが「お金は要りません」と降りたので全額を受け取って、その後で求婚しているけど、それだと感情移入 できないなあ。
ジャックが求婚して、ジョイがOKするシーンが、ドラマティックに感じられないんだよなあ。

(観賞日:2012年5月30日)


第29回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演女優賞[キャメロン・ディアス]
ノミネート:最低スクリーン・カップル賞[キャメロン・ディアス&アシュトン・カッチャー]

 

*ポンコツ映画愛護協会