『ポルターガイスト2』:1986、アメリカ

1年前、クエスタ・ヴェルデに住む父スティーヴ、母ダイアン、息子ロビー、娘キャロル・アンのフリーリング一家はポルターガイスト現象に襲われた。霊能者タンジーナの協力で、悪霊がキャロル・アンを狙っていることが判明し、一家は何とか家から脱出した。
現在、フリーリング一家はアリゾナ州フェニックスに移り、祖母ジェスの家に同居していた。ある時、ジェスは自分に特殊な能力があることを告げる。彼女は、その血を受け継いでいるキャロル・アンにも能力を伸ばすよう勧め、やがて死亡する。
フェニックスの家でも、再びポルターガイスト現象が発生した。家を出ようとするフリーリング一家の前に、ネイティヴ・アメリカンのテイラーが現れる。タンジーナの指示を受けてやって来た彼は、そこから逃げ出しても、すぐに悪霊に見つかるだろうと告げる。
悪霊の親玉ケインは、牧師の姿でフリーリング一家の前に現れる。1年前に一家を襲ったのも、ケインと彼の仲間だった。やがて一家の元を訪れたタンジーナは、19世紀の狂信者ケインと彼の信者達がキャロル・アンを狙っていることを告げる…。
監督はブライアン・ギブソン、脚本&製作はマーク・ヴィクター&マイケル・グレイス、製作協力はリン・アロスト、製作総指揮はフレディ・フィールズ、撮影はアンドリュー・ラズロ、編集はトム・ノーブル、美術はテッド・ハワース、視覚効果監修はリチャード・エドランド、コンセプチュアル・アーティストはH・R・ギーガー、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
出演はジョベス・ウィリアムズ、クレイグ・T・ネルソン、ヘザー・オルーク、オリヴァー・ロビンス、ウィル・サンプソン、ジュリアン・ベック、ゼルダ・ルビンスタイン、ジェラルディン・フィッツジェラルド、ジョン・P・ホワイトクラウド、ノーブル・クレイグ、スーザン・ペレッツ、ヘレン・ボール、ケリー・ジーン・ピータース、ジャクリン・バーンスタイン他。


ホラー映画の続編というのは、なかなか難しいものがあると思うのだ。「何か(この映画の場合は悪霊)が人間に襲い掛かるのを見せて観客を怖がらせる」という形を変えるわけにはいかないから、どうしても話が同じようなパターンに陥りがちだ。
それに、1作目はファースト・インパクト、つまり未知の恐怖で勝負できるが、2作目以降は、既に敵の正体が判明している中で怖がらせなければいけない。だから、後ろから急にワッと叫ぶような、いわゆるショッカー型の恐怖に頼ることも多くなる。

さて、これはトビー・フーバー監督がメガホンを執り、スティーヴン・スピルバーグが製作して(演出にも口を出したらしいが)ヒットした『ポルターガイスト』の続編だが、前述したような問題を回避するために、色々と手を考えている。
まず、それほどショッカー演出には頼っていない。それよりも、特殊効果で御機嫌を伺おうとしているようだ。
また、「敵の正体が分からない」という恐怖演出が使えないため、開き直ったのか、前回は謎のままで終わった悪霊の正体を具体的に分かりやすく説明してくれる。
前作から話を続けるとすれば、そういう方向に進むのは当然と言えるのかもしれない。
ただ、その親切心が、得体の知れない恐怖を消し去っていることも確かである。

驚くべきことに、この2作目で新たに登場する主要キャラクターは3名いるが、3人とも存在価値がほとんど無い。
まず、ジェスにはキャロル・アンの霊感能力を観客に知らせるという役目が与えられているが、それは説明しなくても見れば分かることだ。ついでに言えば、霊感があるからといって、悪霊退治に役立つわけではない。
あと、ジェスには、彼女の死後に他人の口を使ってダイアンにメッセージを伝えるという役目も与えられているが、それも大した意味は無い。ただし、一家に新しい住み処を提供する人間は必要だろうから、そういう意味では、わずかに存在価値があるか。

もっと要らないのは、テイラーだ。最初に儀式を行う様子が描かれ、後半にも描かれるが、その儀式には何の意味も無い。ちょっとした手品も見せるが、これまた、ほとんど意味が無い。悪霊退治の強力な助っ人になるわけでもない(というか、まるで役に立たないんだよな)。正直、何のために登場したのやら、サッパリ分からない。
「要らない」を通り越して、登場させるべきではなかったと思えるのがケインだ。最初に牧師の姿で登場した時点で他人の体をすり抜け、彼を見たキャロル・アンが異常に怯えるのだから、彼が人間ではなくて悪霊の親玉だということはバレバレだ。
そんなに分かりやすく、人間の姿で悪霊を出してしまってどうするのかと思ってしまう。それに、彼が家の外にも現れるということは、悪霊は家の外にも簡単に出られるということだから、「屋敷」という限定された空間にこだわる意味が無くなってしまう。

この映画で最も恐ろしいのは、1作目にいたはずの長女が登場しておらず、しかも何の説明も無く、まるで最初からいなかったかのような扱いになっていることだろう。普通、前作から家族が減った場合、何か説明があって然るべきだと思うのだが。
で、どうして長女が出ていないのかというと、それは出演できない理由があるからだ。
彼女は、長女役だったドミニク・ダンは、第1作の公開された1982年に死亡しているのだ。
なお、この2作目でケインを演じたジュリアン・ベックも、映画の公開前に死亡している。
そして、このシリーズの呪いは、パート3へと続いていくのである。


第7回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低助演女優賞[ゼルダ・ルビンスタイン]

 

*ポンコツ映画愛護協会