『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』:2017、アメリカ

ヘンリー・ターナー少年は地図を手に取り、ボートに乗って夜の海を進む。目的地へ辿り着いた彼は海へ潜り、フライング・ダッチマン号の甲板に着地した。すると船は海面へ浮上し、父である船長のウィルが姿を見せた。「会いに来たんだ」とヘンリーが言うと、船の呪いに掛けられているウィルは「お前はこの船にいられない。お母さんの所へ帰れ」と告げる。「早く帰れ、手遅れになる」とウィルが急かすと、彼は「呪いを解く方法が分かった。ポセイドンの槍だ。ジャック・スパロウなら見つけ出してくれる」と話す。ウィルは「ジャックには近付くな。父さんの呪いは解けない。諦めろ」と諭してお守りを渡し、フライング・ダッチマン号は再び海へ沈んだ。
9年後。ヘンリーは英国軍のモナーク号に乗船していたが、海賊船を追跡する途中で魔の三角地域に入ろうとしていることに気付く。彼は立場を無視して艦長に危険を訴えるが、相手にされず牢屋に閉じ込められる。牢屋の先客である老人は、ヘンリーが持っていたジャックの手配書を見て「彼は死んだ。セント・マーティン島に埋められた」と述べた。船は魔の三角地域に侵入し、サイレント・メアリー号に攻撃される。艦長のアルマンド・サラザールと乗員は全員が悪霊であり、モナーク号の面々を殺害する。サラザールは牢屋に近付いて老人を始末し、ジャックの手配書を見つけて「こいつを捜しているのか」とヘンリーに問い掛ける。ヘンリーが「そうだ」と答えると、「魔の三角地域の呪いから脱出する鍵を握るのは、ジャックと奴のコンパスだ。彼を見つけて伝言を伝えろ。私は必ず日の光を浴びる。その時、必ず死を迎えると」と述べた。
カリブ海、セント・マーティン島。天文学者のカリーナ・スミスは魔女の嫌疑を掛けられて牢屋に閉じ込められ、処刑の時が迫っていた。ずっと孤独に生きて来た彼女は、何の記憶も無い父から貰った古い日記を持っていた。カリーナは手錠の鍵を外して、牢屋から脱出した。それはセント・マーティン・ロイヤル銀行が開設される日で、人々が集まっていた。銀行の金庫が開けられると、中ではジャックが眠り込んでいた。目を覚ました彼は、自分の目的を忘れていた。
ようやく銀行強盗が狙いだと思い出したジャックは、兵隊の一斉射撃に慌てて身を伏せる。銀行の裏で待機していた手下のジョシャミー、スクラム、マーティーはロープに繋いだ金庫を馬で引っ張った。すると金庫だけでなく銀行の建物ごと引きずられ、硬貨は次々に地面へ散らばった。カリーナは学者の家に忍び込み、天体望遠鏡を調整する。そこへ学者が現れたので、彼女は「もうすぐブラッド・ムーンです。これを買いたいんですが」と部屋に置いてあったクロノメーターを手に取った。
学者は「魔女だ」と言って拳銃を向けるが、そこへ酒を飲んだジャックが迷い込む。銀行が引きずられて学者の家を破壊し、それに便乗してカリーナはジャックと共に逃亡する。ジャックは兵隊に追われるとカリーナを荷車に突き落とし、自分は屋根の上を逃げた。ジャックは兵隊を撒いて住処のボロ船に戻るが、金庫に残っていたのは硬貨1枚だけだった。彼はブラックパール号を小瓶に入れて持ち歩いているが使える状態ではなく、おまけに今回の収穫も無いので手下たちに愛想を尽かされた。
モナーク号の生き残りであるヘンリーはセント・マーティン島へ泳ぎ着いたが、反逆者として病院で鎖に拘束されていた。看護婦に化けたカリーナは彼に接触し、「噂を確かめたくて会いに来た。どうしてポセイドンの槍を探してるの?」と問い掛ける。「呪いを解きたい」とヘンリーが話すと、「正気じゃないわね。来るんじゃなかった」と彼女は言う。「目的は何だ?」というヘンリーの問い掛けに、彼女は「この島を出て謎を解きたいの。誰にも読めない地図の謎を」と話した。
ヘンリーが「ポセイドンが残した地図だ」と口にすると、カリーナは「父から貰ったガリレオ・ガリレイの日記を見せる。日記を読んだ彼女は誰にも読めない地図は星空にあると知っており、「ブラッド・ムーンの日だけ地図を読み取れる」と語る。カリーナは「お父さんを助けたかったら力を貸して」と告げ、兵隊の目を引き付けてヘンリーを脱出させた。酒場に入ったジャックは、自分の懸賞金が大幅に減額されていることを知った。酒代が無いジャックは、コンパスを店主に差し出した。するとサイレント・メアリー号は呪いから解放され、サラザールはジャックへの復讐に向かった。
酒場を出たジャックが兵隊に捕まる様子を、ヘンリーは目撃した。彼は兵隊に化けて牢屋へ侵入し、ジャックと会って両親のことを話す。ヘンリーは「ポセイドンの槍で父の呪いを解きたい。地図を持っている女の子がいる。アンタは海を支配して元の自分に戻れる」と語るが、ジャックは全く興味を示さない。ヘンリーはサラザールからのメッセージを伝えて「彼は復讐に来る。ポセイドンの槍だけが命綱だ」と話し、行動を促した。
同じ頃、優雅な暮らしを手に入れたバルボッサは手下のマロイとマートッグから、船がサラザールに攻撃されていることを知らされる。彼は旧知の仲である魔女のジャンサに会い、サラザールの狙いが自分ではなくジャックだと教えてもらう。さらにジャンサは、ジャックがポセイドンの槍を探しに行くこと、亡霊が陸には上がれないことを語る。「どうすれば俺の宝を守れる?」とバルボッサが訊くと、彼女は「ジャックのコンパスは最も欲しい物のありかを授ける。持ち主に裏切られると、最大の恐怖を与える」と告げてジャックのコンパスを渡した。彼女はバルボッサに、サラザールをジャックの元へ案内して取引するよう指示した。
次の朝、ジャックとカリーナは処刑されそうになるが、ヘンリーが買収したジョシャミーたちを率いて救出に駆け付けた。ジャックと手下たちはヘンリーとカリーナを柱に縛り付け、ボロ船で海へ出た。バルボッサはサラザールに接触し、「ジャック・スパロウはポセイドンの槍を探してる。ジャックの所まで案内できるのは俺だけだ。翌朝の日の出には奴を始末できる。出来なきゃ俺を殺せ」と言い、取り引きを承諾させた。
ヘンリーはカリーナに「時間が無い。亡霊が襲って来る」と言うが、まるで信じてもらえない。しかし彼が「手掛かりを教えろ」と言うと、カリーナは「海の力解き放て。全て打ち崩し」と日記に書かれていたことを教えた。ジャックはカリーナに「地図を寄越せ」と要求し、ヘンリーを殺すと脅す。カリーナは星空が地図になることを明かし、「今夜、地図を探す」と告げた。英国海軍のスカーフィールド大尉はジャンサを呼び出し、カリーナが牢屋の壁に残した図面を解読して行方を教えるよう命じた。
翌朝、サラザールは「時間切れだ」と言い、バルボッサを殺そうとする。バルボッサは「取り決めは日の出が終わるまで有効のはずだ」と言い、「ジャックに出し抜かれる気持ちは分かる。共通の敵だ」と告げる。彼はサラザールの正体も、ジャックを憎む理由も知っていた。かつてスペイン船の艦長だったサラザールは、多くの海賊船を沈めていた。結託した生き残りも次々に殺害し、サイレントメアリー号は無敵を誇っていた。
一介の船員だった頃のジャックは瀕死の船長からコンパスを託され、「それは最も欲しい物を示す。そいつを裏切るな」と告げられた。彼はサラザールを馬鹿にして挑発し、海賊の生き残りを乗せた船を魔の三角地域に向かわせた。ジャックは追跡するサラザールを罠に陥れ、魔の三角地域でサイレントメアリー号は炎上した。サラザールと船員たちはサイレントメアリー号はと共に海へと沈み、呪いによって外へ出られなくなった。一方、その功績が海賊たちに認められ、ジャックは船長となった。
バルボッサはジャックのボロ船を発見し、サラザールに教えた。サイレントメアリー号を目にしたジャックは、ヘンリー&カリーナと共に小舟へ乗り移った。カリーナは海へ飛び込み、孤島へ向かう。サラザールは亡霊鮫の群れを放ち、小舟を襲わせる。ジャックとヘンリーは何とか追い払おうとするが、サラザールと手下たちは海を走って追い掛けて来た。ジャックたちは島に辿り着くが、すぐにサラザールたちがやって来た。しかし彼らは陸地に上がれず、ジャックたちは密林へ逃亡した。
バルボッサはサラザールに殺されそうになり、「手下を連れてジャックを連れてきてやろう」と提案する。ジャックはヘンリー&カリーナと共に、ピッグ・ケリーが率いる海賊一味に捕まる。ピッグはジャックに金を巻き上げられており、返済する代わりに妹のベアトリスと結婚するよう要求した。醜い容姿のベアトリスを見たジャックは嫌がるが、強引に結婚式が催される。そこへバルボッサたちが現れ、挙式を妨害されたジャックは喜んだ。バルボッサは手下たちに「俺はポセイドンの槍を手に入れ、亡霊から海を取り返す」と言い、サラザールから奪った剣を使ってブラック・パール号を瓶から解放する。バルボッサはジャックを脅してブラック・パール号の船長となり、カリーナにポセイドンの槍が眠る場所まで案内させる…。

監督はヨアヒム・ローニング&エスペン・サンドベリ、キャラクター創作はテッド・エリオット&テリー・ロッシオ&スチュアート・ビーティー&ジェイ・ウォルパート、原案はジェフ・ナサンソン&テリー・ロッシオ、脚本はジェフ・ナサンソン、製作はジェリー・ブラッカイマー、製作総指揮はマイク・ステンソン&チャド・オマン&ジョー・カラッシオロJr.&テリー・ロッシオ&ブリガム・テイラー、製作協力はメリット・リード、撮影はポール・キャメロン、美術はナイジェル・フェルプス、編集はロジャー・バートン&リー・フォルソム・ボイド、衣装はペニー・ローズ、視覚効果監修はゲイリー・ブロゼニッチ、音楽はジェフ・ザネリ。
主演はジョニー・デップ、共演はハヴィエル・バルデム、ジェフリー・ラッシュ、ブレントン・スウェイツ、カヤ・スコデラーリオ、ケヴィン・R・マクナリー、ゴルシフテ・ファラハニ、デヴィッド・ウェナム、スティーヴン・グレアム、アンガス・バーネット、マーティン・クレバ、アダム・ブラウン、ジャイルス・ニュー、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、ポール・マッカートニー、デルロイ・アトキンソン、ダニー・キレイン、ホアン・カルロス・ヴェリド、ロドニー・アフィフ、ルパート・ライネリ、スティーヴン・ロペス、ニコ・コルテス、マヘシュ・ジャドゥー、ブルース・スペンス、ジャスティン・スミス他。


ディズニーランドのアトラクション『カリブの海賊』をモチーフにしたシリーズ第5作。
監督は『コン・ティキ』のヨアヒム・ローニング&エスペン・サンドベリ。脚本は『ラッシュアワー3』『ペントハウス』のジェフ・ナサンソン。
ジャック役のジョニー・デップとギブス役のケヴィン・R・マクナリーは、シリーズ全作に出演。バルボッサ役のジェフリー・ラッシュは、2作目以外に出演。マロイ役のアンガス・バーネットとマートッグ役のジャイルス・ニューは、1&3作目に続いての登場。スクラム役のスティーヴン・グレアムは、前作に続いての出演。ウィル役のオーランド・ブルーム、エリザベス役のキーラ・ナイトレイ、マーティー役のマーティン・クレバは、最初の3部作からの復帰。
他に、サラザールをハヴィエル・バルデム、ヘンリーをブレントン・スウェイツ、カリーナをカヤ・スコデラーリオ、シャンサをゴルシフテ・ファラハニ、スカーフィールドをデヴィッド・ウェナム、クレンブルをアダム・ブラウンが演じている。
3作目と4作目ではザ・ローリング・ストーンズのキース・リチャーズが出演していたが、今回はジャック伯父役でポール・マッカートニーが登場する。

このシリーズは当初、3部作で完結するはずだった。
しかし第3作が大ヒットしたことを受けて「まだまだ稼げる」と考えたウォルト・ディズニー・ピクチャーズは、シリーズの続行を決定した。3部作の主要キャラクターだったオーランド・ブルームとキーラ・ナイトレイには出演オファーを断われたが、「ジャック・スパロウさえいれば何の問題も無い」ということで4作目を製作した。
だが、いざ公開してみると、すこぶる評判が悪かった。「これはマズい」と思ったらしく、この5作目ではオーランド・ブルームとキーラ・ナイトレイを復帰させた。
一方、4作目からの続投はスティーヴン・グレアムだけで、「ほぼ無かったこと」にしてしまった。

4作目の批評でも触れたが、このシリーズは「ジャック・スパロウさえいれば何の問題も無い」という作りではない。彼は典型的な主人公キャラではなく、「真っ当な言動を取る常識人」を隣に配置することによって「風変わりな男」としての魅力を放つのだ。
それを考えると、実は「3部作の主要キャラであるウィルとエリザベスを復活させれば映画の人気や評価も復活する」というモノではない。
何しろウィルは呪いを引き継いだため、最初の3部作のような役割を担うことが出来ないからだ。
そもそも、序盤とラストシーンしか出て来ないしね。ではエリザベスが似たようなポジションを担うのかと言うと、こっちも最後にチラッと登場するだけだし(ただし皮肉なことに、この映画でダントツに高揚感があるのは、ウィルとエリザベスが再会するシーンなんだけどね)。

そこで今回は、ウィルの息子であるヘンリーを登場させ、「真っ当な言動で物語を先に進めようとするキャラ」としての役目を担当させている。
他の面々がストーリーを進めてくれれば、ジャックは「自由気ままにフラフラする」というトリック・スターの仕事に専念することが出来るからだ。
ヘンリーだけでなく、後に彼と恋仲になるカリーナも配置しており、何となく「1作目に戻ろう」という意識が透けて見える。
3作目で酷い着地を用意したウィルとエリザベスに今さら同じ仕事は担当させられないので、若い男女に似たような役割を任せて「あの頃の輝きをもう一度」と狙っているわけだ。

派手でケレン味溢れるアクションシーンによって観客を引き付けよう、気持ちを高揚させようとしているのは、とても良く分かる。
例えばジャックの手下たちによる銀行強盗のシーンなんて、描写の方法は色んなアイデアが思い付きそうだ。そんな中で「馬で建物ごと引っ張り、だんじりの如く町の中を走り回る」という形を選んだのは、派手で見栄えがするからだ。
でも、それって本筋とは何の関係も無いシーンなのよね。
そんなトコに御馴染みのテーマ曲を流して盛り上げられても、「なんか違うんじゃないか、ポイントが大きくズレてないか」と言いたくなる。

サラザールは「海で最も恐れられている男」という設定であり、バルボッサも畏怖を示している。しかし映画を見ていても、そこまでの圧倒的な恐ろしさは感じ取れない。
亡霊グループの親分であることや、今回のラスボスであることは充分に伝わる。なので、これが1作目であれば、そこまで引っ掛かることも無かっただろう。
しかし、このシリーズは既にデイヴィー・ジョーンズという不死身の怪物を登場させており、それに比べるとインパクトは格段に落ちると言わざるを得ないのだ。
キャラに厚みか無いのは「そういうシリーズだから」ってことで一向に構わないが、見た目のケレン味も全く足りないし。

中盤辺りから、英国軍までもがポセイドンの槍を求めて行動するようになる。
「ポセイドンの槍が海を支配する力を持っているから手に入れたい」ってのが理由であり、筋は通っている。でも、それは英国軍を動かす動機として薄弱に感じるし、こいつらが邪魔でしかない。
それでも、ポセイドンの槍をマクガフィンみたいな扱いにして、「1つの物を巡る争奪戦」を面白おかしく描くということなら、それはそれで有りだろう。
しかし、そういう方向で徹底されているわけでもないのだ。

途中で感じるのが、「この話って、ジャック・スパロウの存在意義が薄くないか」ってことだ。「父の呪いを解きたいヘンリーと、父の遺志を引き継ぐカリーナが、同じ目的のために協力する冒険活劇」ってことで成立するんじゃないかと。
前述したようにジャックは典型的な主人公キャラじゃないので、「そんな2人に手を貸したり厄介事を持ち込んだり」という形で使えば、ちゃんと存在意義は生じるはずだ。
ところが困ったことに、今回のジャックは「酔っ払いのクネクネ男」という色が強くなりすぎている。
もはやトリック・スターとしては、ほぼ役立たずに近いのよね。

もう1つの問題として、「カリーナの行動目的に乗りにくい」ってことが挙げられる。彼女がポセイドンの槍を探していることは最初の段階で明示されているが、「その槍を見つける目的は何なのか」ってのが分からない。
ポセイドンの槍ってのは、あくまでも「何かを成すための手段」に過ぎないわけで。それを手に入れても、「そこで終了」じゃないわけで。
ヘンリーの場合は「槍で父の呪いを解く」という目的があるけど、カリーナの方は「自分が何者なのかを知るため」なので、ものすごくボンヤリしている。つまり、ここに物語を牽引する力が欠けているってことになる。
これが「目的を秘密にしたまま話を進め。後半で明らかにされる」という構成なら、それは理解できる。ただ、そういうわけじゃないのよね。
そもそも、誰も彼女に「なぜ槍を見つけたいのか」と問い掛けないから、「カリーナが目的を秘密にしている」という形で興味を引っ張ることも出来ていないし。

後半に入ると、サラザールが呪いに落ちた経緯やジャックとの因縁が明かされる。
そこは当然のことながら、事情を説明した方がいいに決まっている。
「何だか良く分からんけどジャックを恨んでいる」「何だか良く分からんけどジャックのせいで呪われたらしい」というフワフワした状態では、ストーリーに入り込むことも難しいからね。
しかし困ったことに、ジャックとサラザールの因縁が明かされても、ものすごく凡庸な理由だし、それで映画が盛り上がるとか面白くなるってことが無いのよね。

終盤、「カリーナは孤児院の前に捨てた娘だとバルボッサが気付く」という展開があるが、取って付けたような印象しか受けない。
その設定に附随して「バルボッサが自らを犠牲にしてサラザールを撃退する」という展開が終盤に用意されているが、バルボッサを善人キャラに変貌させて安易に退場させるのも賛同しかねる。
そういう展開のために、強引にバルボッサのキャラを曲げているようにしか思えない。
っていうか彼が身を投げてサラザールたちを道連れにするシーンにしても、あらかじめ定められていた段取りを消化するため、無理のある行動を取らせているように感じるし。

今回は「ウィルが父の呪いを解くためポセイドンの槍を探す」という話と、「ジャックが復讐に燃えるサラザールに命を狙われる」という話が含まれている。この2つが、上手く融合していない。
それ以外にも、難点は幾つもある。今までのシリーズと整合性の取れない設定や、あまりにも都合が良すぎる展開で陳腐になっているシーンもある。
だが、この映画を観賞する上で大切なのは、「適当な作品だから、あまり構えちゃダメ」ってことだ。
ボーッとしていれば気付かない程度に、何となく話が繋がっていればOKという細かいことは気にせず、その場その場で話が盛り上がって楽しくなれれば、それでいいのだ。

そもそも、これがアトラクションから着想を得たシリーズってことを忘れてはいけない。
ディズニーランドで『カリブの海賊』に乗る時、細かいことなんて考えないでしょ。
だから、それと同じ感覚で楽しめばいいのよ。
ヘンリーが青年に成長しちゃうので「いやいや、呪いに掛けられているウィルはともかく、ジャックやエリザベスは何歳の設定なんだよ」とツッコミを入れたくなるが、そういうのも華麗にスルーしておけばいい。

(観賞日:2018年8月6日)


第38回ゴールデン・ラズベリー賞(2017年)

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低主演男優賞[ジョニー・デップ]
ノミネート:最低助演男優賞[ハヴィエル・バルデム]
<*『マザー!』『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低スクリーン・コンボ賞[ジョニー・デップ&使い古された酔いどれ芝居]

 

*ポンコツ映画愛護協会