『ピンクパンサー2』:2009、アメリカ

英図書館のマグナカルタ、トリノ教会のキリストの聖骸布、京都の宝刀が次々にヌスマレ、現場には「ザ・トルネード」と称する犯人のカードが残されていた。フランス警察のドレフュスはジュベール長官に呼ばれ、トルネードを逮捕するドリームチーム結成を聞かされた。ドレフュスはフランスから自分が選ばれたと思い込んで喜ぶが、ジュベールは上層部がクルーゾーを希望していることを話す。ドレフュスは「クルーゾーには重要な任務を与えた」と言うが、実際に担当しているのは駐車違反の取り締まりだった。
ドレフュスはクルーゾーを呼び出し、ドリームチームに選ばれたことを伝える。クルーゾーはピンクパンサーの警備を優先したい考えを口にするが、ドレフュスは京都へ行くよう命じた。クルーゾーは秘書のニコルに別れを告げ、助手のポントンを車に同乗させて空港へ向かう。クルーゾーはボントンに、大泥棒のトルネードが10年も沈黙していたのに活動を再開したことへの疑問を話す。クルーゾーがボントンに見送られて搭乗手続きを終えた直後、ピンクパンサーがトルネードに盗まれたというニュースがテレビで報じられた。
ドリームチームの結成場所はパリに変更され、クルーゾーとボントンは盗難現場であるグラン・パレに急行した。クルーゾーがグラン・パレに入るとニコルが待ち受けており、イタリアのヴィチェンゾ、日本のケンジ、英国のペパリッジというドリームチームの所へ案内した。クルーゾーとペパリッジは現場検証を放り出し、互いの推理力を競い合った。ドリームチームの一員であるジャーナリストのソニアが遅れて現れ、トルネードの血液が証拠として保管されていることをクルーゾーたちに説明した。
バハマで過ごしていたトルネードは、クルーゾーがカメラに向かって挑発する映像をニュースで見て憤慨した。クルーゾーが警察署へ戻ると、言動に問題が多い彼の教育係としてミセス・ベレンジャーが赴任していた。すぐにベレンジャーは指導を始めるが、クルーゾーは全く変わらなかった。クルーゾーはヴィチェンゾがニコルを口説いている様子を目撃し、それとなく止めようとする。しかしヴィチェンゾは意に介さず、ニコルに子供を産ませる考えを語った。
ボントンはクルーゾーの家を訪れ、妻と喧嘩したので居候させてほしいと頼む。クルーゾーが困惑しながらも承知すると、ボントンは息子のルイス&アントワーヌと愛犬のジャックも連れて来ていた。トルネードがローマの美術館を狙っていることが判明し、ソニアは闇商人のアヴェラネダと関係があるのではないかと口にする。ヴィチェンゾはプライベート・ジェットを用意し、ドリームチームを搭乗させる。彼はニコルを操縦室に招いて口説き、クルーゾーが陰口を言っていたと吹き込んだ。
一行はイタリアに着き、アヴェラネダの屋敷を訪れた。クルーゾーはチームから離れ、単独行動を取った。防犯カメラにクルーゾーの姿が写ったので、ペパリッジたちは慌ててアヴェラネダを尋問し、注意を逸らそうとする。ソニアはトルネードと同一人物かどうか確かめるため、銃弾痕があるかどうか調べたいとアヴェラネダに持ち掛けた。アヴェラネダはシャツを脱ぎ、右肩に銃弾痕が無いことを証明した。屋根の上にいたクルーゾーは煙突に転落し、暖炉から飛び出してアヴェラネダたちの前に現れた。
屋敷を去る時、他の面々がアヴェラネダは潔白だと考える中、クルーゾーだけが「あの家にトルネードがいる」と主張した。彼らは発見できなかったが、アヴェラネダの屋敷には男が隠れていた。ボントンはシュレッダーで裁断されたメモを屋敷で発見しており、そのことをクルーゾーに話す。そのメモには、レストランが再オープンしたので夕食を取る予定が記されていた。その程度の内容をシュレッダーに掛けるのは不自然だと、ボントンはクルーゾーに話した。
クルーゾーはトルネードと会食すると確信し、レストランへ向かう。するとアヴェラネダがトルネードと会食しており、クルーゾーは事前に盗聴器を仕掛けたボントンと店外から観察する。そこへニコルとヴィチェンゾが来たのでクルーゾーは驚き、「盗聴器を移動させる」という名目で店に入ろうとする。しかし彼は以前に店を破壊していたため、すぐに追い出された。クルーゾーはフラメンコダンサーに化けて店に潜入し、ニコルとヴィチェンゾのデートを妨害した。彼はロウソクに火の付いている誕生日ケーキを誤って落としてしまい、店は火事になった。全焼した店の外でクルーゾーに気付いたニコルは、ヴィチェンゾと共に去った。
トルネードはバチカン市国に侵入し、就寝中のローマ法王から指輪を盗んでカードを残した。ドリームチームはバチカンへ出向き、法王と対面した。クルーゾーは法王を犯人扱いし、無礼な態度で尋問した。ヴィチェンゾは床に落ちている鍵を見つけ、クルーゾー以外の面々に見せた。クルーゾーは法王の衣装で何度もバルコニーに出た上、転落しそうになった。その出来事は新聞で大きく報じられ、クルーゾーはドリームチームの恥部だと酷評された。
帰宅したクルーゾーは、ルイスとアントワーヌから空手で奇襲を受けた。クルーゾーは反撃し、2人を捕まえてバルコニーから逆さ吊りにする。そこをマスコミに見られて新聞沙汰になり、児童虐待として糾弾された。ドリームチームの面々はクルーゾーの処遇について採決を取り、ソニア以外の賛成で捜査から外すことを決定した。ヴィチェンゾたちは入手した鍵を手掛かりにして捜査を進め、アパートを探り当てた。彼らがアパートへ行くと宝石専門家のミリケンが死んでおり、部屋からはピンクパンサーを除くトルネードの盗難品が見つかった。ミリケンは「盗みへの興味を失った。ピンクパンサーは誰にも渡したくないから破壊した」という遺書を残しており、トルネードであることを認めていた。右肩にはトルネードを示す傷もあり、DNAも一致した。ヴィチェンゾたちは事件解決を発表するが、クルーゾーだけは納得していなかった…。

監督はハラルド・ズワルト、原案はスコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバー、脚本はスコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバー&スティーヴ・マーティン、製作はロバート・シモンズ、製作総指揮はアイラ・シューマン&ショーン・レヴィー、撮影はデニス・クロッサン、美術はラスティー・スミス、編集はジュリア・ウォン、衣装はジョセフ・G・オーリシ、音楽はクリストフ・ベック、テーマ曲はヘンリー・マンシーニ。
主演はスティーヴ・マーティン、共演はジャン・レノ、ジョン・クリース、リリー・トムリン、アンディー・ガルシア、アルフレッド・モリーナ、エミリー・モーティマー、アイシュワリヤー・ラーイ、松崎悠希、ジェフリー・パーマー、ジェレミー・アイアンズ、ジョニー・ハリデイ、フィリップ・グッドウィン、アーメル・ベレック、ジャック・メッツガー、エフゲニー・ラザレフ、ルイス・D・ウィーラー、リチャード・ラフランス、サイモン・グリーン、フェデリコ・カステルッチオ、アベ・リー・ツネノリ、ジミー・メイ、ハリー・ヴァン・ゴーカム、マイケル・アロッソ、ゾフィア・モレノ他。


1963年の映画『ピンクの豹』を第1作とする映画シリーズのリメイク版第2弾。
監督は『ジュエルに気をつけろ!』『エージェント・コーディ』のハラルド・ズワルト。
脚本は『(500)日のサマー』のスコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバーと、前作からの続投となるスティーヴ・マーティンによる共同。
クルーゾー役のスティーヴ・マーティン、ポントン役のジャン・レノ、ニコル役のエミリー・モーティマー、ルナール役のフィリップ・グッドウィンは、前作からの続投。ドレフュス役が前作のケヴィン・クラインからジョン・クリースに交代している。
ベレンジャーをリリー・トムリン、ヴィチェンゾをアンディー・ガルシア、ペパリッジをアルフレッド・モリーナ、ソニアをアイシュワリヤー・ラーイ、ケンジを松崎悠希、ジュベールをジェフリー・パーマーが演じている。

クルーゾーは京都へ向かう直前、惚れ合っているニコルと「あの夜のことは忘れない」「私も」と会話を交わして見つめ合う。ロマンスの高まりを感じさせてから回想に突入し、2人がローマのレストランでディナーを取る様子が描かれる。
ワインを選ぼうとしたクルーゾーだが、ワインセラーが倒れそうになる。ワインが次々ら落下するのでクルーゾーはキャッチし、持ち切れないので投げ飛ばして店内の面々が慌てて受け取る。クルーゾーは落ちているボトルで転倒し、飛んだボトルから引火して店が火事になる。
回想シーンだけを抜き出せば、ドタバタ喜劇としては何も間違っていない。
しかし、そこで回想を入れていること自体が不細工だ。

笑いを取るためだけに回想を入れているのだが、そのせいで話のリズムや流れが悪くなっている。
わざわざ回想を入れなくても、「クルーゾーとニコルが愛を確かめ合う」というトコからギャグに持って行くことなんて幾らでも出来る。
実際、「抱き合おうとしたトコへボントンが来るので誤魔化す」という形で場面を終わらせているし。
だから回想に頼るのではなく、現在進行形の中で喜劇を膨らませれば良かっただけなのよ。

空港へ向かうシーンでは、クルーゾーが話に夢中でハンドルから手を放してしまい、慌ててボントンが運転するというネタがある。話を終えて再びハンドルを握ったクルーゾーは、安堵したボントンに「落ち着け」と声を掛ける。
ここは天丼をやってもいいようなトコだが、1回で終わる。
クルーゾーが搭乗手続きを終え、線を踏み越えた途端にピンクパンサーが盗まれたというニュースが入る。線を踏み越える時に「これでフランスを出た」という形になっているので、「クルーゾーは現場に急行したいのに出来ない」というネタになっているのかと思いきや、普通に現場へ向かっている。
なので、線を越える行動が無意味なモノになっている。

クルーゾーがグラン・パレに着くと大勢の取材陣が待ち受けており、ボントンから時代に合わせるよう促される。
そこで彼はコメントを求められると、カメラに向かって「トルネード、お前を捕まえてやる」と宣戦布告する。「もう一度」とボントンに言われ、「トルネード、お前を捕まえる。待ってろよ」と告げる。
でも、同じような言葉を繰り返しているだけで何の笑いにも繋がっていないので、わざわざ2度言わせた意味が全く無い。
そもそも、1度目の段階でズレたことを発言すべきじゃないかと思うし。

ベレンジャーという教育係が登場すると、クルーゾーのセクハラ発言を注意する。しかしクルーゾーは全く変わらず、ベレンジャーが集中 して冷静さを保つよう指示した上で性欲を喚起するような言葉を語ると、簡単に興奮する。
これが面白いか否かっていうと全く面白くはないのだが、それよりも問題なのは「変なタイミングで2度目の指導が入る」という構成。
そのまま幾つかのテストを重ねるのではなく、そこは1度で簡単に終わらせておいて、クルーゾーがケンジに対して人種差別のような言葉を吐くとシーンが切り替わり、ベレンジャーの指導が入る。でも、それが何度も重なるならともかく、2度で終了なので中途半端(後で3度目があるけど、それを含めても半端)。
あと、2度目は「クルーゾーが廊下にいるセクシーな女性に気を取られる」というネタで終わらせているんだけど、だったら指導される原因もセクハラ関係で統一した方がいい。

この作品には、「クルーゾーとニコルは恋仲だけど、ヴィチェンゾがニコルを口説き、クルーゾーはソニアに好意を寄せられて」という四角関係の恋愛劇が用意されている。
しかし、ここが邪魔でしかない。
何の笑いも無いとまでは言わないけど、喜劇としてスウィングしているとは言い難い。恋愛劇の扱いは、もっと小さくてもいい。
っていうか、クルーゾーのキャラクターや「ドリームチームでトルネードの逮捕を目指す」という話の内容を考えると、恋愛劇なんてバッサリとカットしてもいいぐらいだ。

この映画を見て感じたのは、「主人公のキャラや笑いの作り方が、何となく『Mr.ビーン』に似ている」ってことだ。
ほとんど喋らないビーンと違ってクルーゾーは饒舌だけど、それ以外の部分は似てると感じるのよね。
ひょっとすると『Mr.ビーン』は、本家の『ピンク・パンサー』シリーズから影響を受けているのかもしれない。だけどリメイク版に関しては、後発になっちゃうわけで。
まあ、そこを似てると感じる人は、そんなに多くないのかもしれないけどさ。

これは『Mr.ビーン』にも感じたことなんだけど、1人のキャラクターを使って多くの笑いを取ろうとした結果として、ブレが生じているように感じる。
例えば、犯人の指紋が付着したガラス片を発見した時、クルーゾーは他のガラス片を素手でベタベタと触り、「他にも指紋がある」と回収し、肝心なガラス片は破棄してしまう。この時、ヴィチェンゾたちは困惑した様子で見ている。アヴェラネダの屋敷ではクルーゾーが防犯カメラに映り、ヴィチェンゾたちは慌てて誤魔化そうとする。
この2つのシーンは、「マイペースで天然なクルーゾーのせいで、周囲の面々が戸惑ったり翻弄されたりする」という形になっている。
一方、クルーゾーがルイスとアントワーヌに空手を教えるためソファーで寝ているボントンに奇襲に仕掛けると、反撃を受けて吹っ飛ぶ。
このシーンでは、「クルーゾーが調子に乗ったせいで酷い目に遭う」という形で笑いを取りに行っている。彼のリアクションがあってこそ成立するシーンであり、いわば「受け手」と言ってもいい。
前述したシーンでは周囲の面々が「受け手」だったわけで、このように笑いの取り方が異なり、それに伴ってクルーゾーというキャラの動かし方ににブレが生じているように感じる。

別の例も挙げよう。
クルーゾーがガラス片を素手で触って指紋をベタベタと付けてしまうシーンは、「本人は至って真面目に行動しているけど、結果としてボンクラになっている」という笑いの取り方だ。
アヴェラネダの屋敷で単独行動を取って防犯カメラに映り込むのも、そういう意味では同様だ。
ただし後者に関しては、「クルーゾーがバカな行動を取っています」ってのが強調されている。それは演出も、スティーヴ・マーティンの芝居もだ。
その辺りも、ちょっとブレてるんじゃないかと。

終盤、クルーゾーは真犯人を突き止め、活躍して逮捕する。一方、ヴィチェンゾたちは無様な姿を露呈し、一気に評価を下げる。
この展開には、爽快感も高揚感も全く無い。クルーゾーを活躍させるのが悪いとは思わないが、犯人を突き止める謎解きが安易で雑。
また、最後の最後で彼に汚名返上のシーンを用意するのはいいとして、ヴィチェンゾたちを貶める必要も無い。それまでの彼らが「ホントは無様で無能なのに、それを棚に上げてクルーゾーを批判している」ってことならともかく、そうじゃないからね。
クルーゾーが無能で邪魔ばかりしていたのは紛れも無い事実だし、ヴィチェンゾたちは決して無能ではなかったし。

最後に完全ネタバレを書いておくが、真犯人はソニアだ。ただし彼女がトルネードってことじゃなくて、トルネードの正体はミリケンだ。
ソニアはミリケンの元恋人で、振られた腹いせで彼に容疑が掛かるように仕向けて犯罪を重ねたという設定だ。
ただ、それが説明されると「なんじゃ、そのバカバカしい動機は」と呆れてしまう。
しかも、それはクルーゾーが解き明かすのではなく、ペパリッジやケンジたちが「もしかして、こういうことでは」と話したのか正解だったという形なのよね。
それも含めて「なんじゃ、そりゃ」だわ。

(観賞日:2020年12月22日)


第30回ゴールデン・ラズベリー賞(2009年)

ノミネート:最低主演男優賞[スティーヴ・マーティン]
ノミネート:最低リメイク&盗作&続編賞

 

*ポンコツ映画愛護協会