『パール・ハーバー』:2001、アメリカ

レイフととダニーは幼い頃からテネシーの農業地帯で共に育ち、米国陸軍航空隊のパイロットとなった。1941年1月、レイフはイギリス空軍イーグル飛行隊への参加を志願する。だが、ダニーに対しては、ドゥーリトル中佐の命令だとウソをついた。
視力検査でピンチを迎えたレイフは、看護婦のイヴリンに自分の熱意を語り、合格にしてもらう。それをきっかけに、レイフ&ダニーは仲間の兵士達と共に、看護婦達と集団デートに出掛けた。レイフとイヴリンは、惹かれ合うようになった。
レイフはヨーロッパへ旅立ち、ダニーとイブリンはハワイのオアフ島に転属となった。そこは戦争とは無縁にさえ思えるような、南の楽園だった。やがてダニーとイヴリンの元に、レイフの飛行機が海中に墜落したことという知らせが入った。
数ヶ月が経った頃、ダニーとイブリンは互いに愛し合う関係になっていた。一方、米国海軍情報部のサーマン大尉は日本軍によるパール・ハーバー攻撃を予測する。だが、太平洋艦隊司令官キンメル大将は、その予測を聞き入れなかった。
12月6日、イヴリンの前に、死んだはずのレイフが現れる。レイフは、漁船に救出された後、占領下のフランスにいたために連絡が取れなかったことを語る。レイフはイヴリンとの再会を喜ぶが、彼女はダニーの子供を妊娠していた。
12月7日、日本軍がパール・ハーバーに奇襲作戦を仕掛けた。戦艦でコックをしていた黒人ドリーは、対空砲を撃ってゼロ戦を撃墜した。ルーズベルト大統領は、日本への報復を宣言した。レイフとダニーは、東京大空襲に参加することになる…。

監督はマイケル・ベイ、脚本はランダル・ウォレス、製作はジェリー・ブラッカイマー&マイケル・ベイ、製作総指揮はスコット・ガーデンアワー&マイク・ステンソン&バリー・ウォルドマン&ランダル・ウォレス&チャド・オーメン&ブルース・ヘンドリックス、撮影はジョン・シュワルツマン、編集はロジャー・バートン&マーク・ゴールドブラット&クリス・レベンゾン&スティーヴ・ローゼンブラム、美術はナイジェル・フェルプス、衣装はマイケル・キャプラン、音楽はハンス・ジマー。
出演はベン・アフレック、ジョシュ・ハートネット、ケイト・ベッキンセイル、アレック・ボールドウィン、キューバ・グッディングJr.、ジョン・ヴォイト、トム・サイズモア、ウィリアム・リー・スコット、グレッグ・ゾーラ、ユエン・ブレムナー、ジェームズ・キング、キャサリン・ケルナー、ジェニファー・ガーナー、サラ・ルー、マイケル・シャノン、ダン・エイクロイド、コルム・フィオール、ジョン・フジオカ、マコ、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、マット・デイヴィス他。


史実を舞台にした大作映画。
レイフをベン・アフレック、ダニーをジョシュ・ハートネット、イヴリンをケイト・ベッキンセイル、ドゥーリトルをアレック・ボールドウィン、ドリーをキューバ・グッディングJr.、ルーズベルトをジョン・ヴォイトが演じている。

タイトルは『パール・ハーバー』だが、真珠湾攻撃じゃなくて東京大空襲がクライマックスになっている。
なぜなら、真珠湾攻撃で終わると、アメリカが負けたままになってしまうからだ。
アメリカが勝利して終わらないと、アメリカでは受けないという考えだろう。

マイケル・ベイとジェリー・ブラッカイマーという『アルマゲドン』のコンビに、ベン・アフレックまで付いてくる。
この段階で、どういう映画になってしまうか、およその予想が出来る。
その予想は、裏切られることは無かった。
期待通りのポンコツ映画である。

マイケル・ベイとジェリー・ブラッカイマー&ランダル・ウォレスは、男女が呑気に浮かれポンチな恋愛を楽しんでいるシーンを入れたり、実在した人物ドリーのエピソードを挿入して話のまとまりを失わせたり、色々な策を講じて、約3時間という無駄に長い上映時間の大作映画に仕立て上げた。

極端に言ってしまえば、この映画は別名『アルマゲドン2』である。
『アルマゲドン』の舞台を『パール・ハーバー』に変えました、という映画である。
あるいは、『タイタニック・戦争篇』としてもいいだろう。
ああいう大ヒット映画が作りたかったわけだ。

マイケル・ベイもジェリー・ブラッカイマーも利口な人間なので、「どんな映画を作れば売れるのか」を分かっている。
歴史上の大きな事件を背景にした恋愛映画『タイタニック』が大ヒットを記録したことは、ちゃんと頭に入っている。
だから彼らは『タイタニック』と同じような作品を作り、そういう映画だと宣伝することで、ヒットさせようと試みた。
とにかく、大ヒットしなければ困るのだ。
何しろ、莫大な製作費と宣伝費が掛かっているのだから、大ヒットしなければ元が取れないのだ。
しかし結局のところ、興行的には『タイタニック』に全く及ばなかったわけだが。

この映画、まずは友情物語で始まり、それから恋愛劇があって、そんでもって戦争アクション映画に変わる。
上手く絡み合っているのかというと、そうじゃない。
順番に見せているだけ。
しかしアピールしたいのは、もちろん恋愛劇の部分である。

戦争ってのは、単なる恋愛劇の舞台に過ぎない。
「戦争があったから」という条件は、その恋愛劇に大きな影響を与えない。
もし戦争が無かったとしても、ここで描かれる三角関係の恋愛劇に、大して変化は起きなかったと断言できる。
というのも、商売女のようにケバケバしい派手な化粧をした看護婦が、恋人が死んだと聞いたので彼の友人とセックスして妊娠し、やがて元サヤに戻るのだが、彼女が尻軽だったことが、その安っぽい三角関係を生んでしまった原因なのだ。
「戦争のせいで云々」というのは、下手な言い訳の材料に利用されているだけなのだ。

日本兵がアメリカの子供達に「逃げろ」と叫ぶシーンがあるが、それは日本公開版だけに用意されたセリフである。そういうセリフを入れることで、「反日的な米国礼賛映画、日本兵を一方的に残忍に描いた映画ではない」と見せ掛けようとしたのだ。
アメリカ公開版では“ジャップ”に対する攻撃的なセリフや場面が多くあるが、日本版ではカットされている。
日本の観客は、マイケル・ベイ監督らが創作したドゥーリトル中佐の「出来るだけ多くの日本人野郎どもを殺してやる」というセリフを知らずに観賞するのである。
さすがはディズニー映画、そういう所は抜かりが無い。

日本に関する描写は、デタラメだらけだ。
極秘の作戦会議が、鳥居のある屋外で開かれ、近くでは子供が凧揚げをしている。
軍需工場には、目立つように「兵器工場」という大看板が立ててある。
爆撃機が飛んで来ても、市民は平然と歩いている。
しかし、だからって怒るのは止めた方が賢明だ。
描写がデタラメなのは、日本に関する部分だけではないのだ。
全体的に、デタラメだらけなのだ。
だから、熱く批判することは無い。
バカに対してマジに怒っても、エナジーの無駄遣いになってしまう。

まだ当時は無かったはずの武器を使っていたり、戦闘機と爆撃機の扱いがゴチャ混ぜになっていたり、他にも兵器マニアには噴飯物の描写が多いようだ。他にも、戦後に誕生したはずのビキニ水着が登場したり、真珠湾攻撃の前にアリゾナ記念碑が建っていたりと、この映画では「歴史考証」という言葉が何の価値も持っていない。
それだけではない。
東に太陽が沈むという、元祖天才バカボンみたいな状況が終盤には待ち受けている。
他にも探せば、おかしな点が幾つも見つかるだろ。
監督や脚本家が間違えていたとしても、誰か指摘する奴はいなかったのかと思ってしまう。

多くの人が様々な場所で指摘しているように、歴史考証はメチャクチャで、その描写はデタラメだらけだ。
しかし、この映画にとって重要なのは、恋愛劇を描くことだけだ。
歴史考証や戦争&日本の描写なんて、「どうだっていいこと」なのだ。
ただし、肝心の恋愛劇ですら、まるで「どうだっていいこと」のように薄っぺらいのだが。


第22回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低リメイク・続編賞
ノミネート:最低監督賞[マイケル・ベイ]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演男優賞[ベン・アフレック]
ノミネート:最低スクリーンカップル賞[ベン・アフレック&ケイト・ベッキンセールかジョシュ・ハートネットのどちらか]


第24回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門

ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最悪の演出センス】部門[マイケル・ベイ]

 

*ポンコツ映画愛護協会