『ナインハーフ』:1986、アメリカ

ニューヨークのギャラリーに勤めるエリザベスは、夫ブルースと離婚したばかりだった。友人モリーと出掛けたチャイナタウンで、謎めいた男ジョンと出会った。翌日、ノミの市でジョンと再会したエリザベスは、彼の巧みな誘惑に心も体も惹き付けられていく。
ジョンと急接近したエリザベスは、彼の与える性的遊戯の中で快楽に溺れるようになる。ジョンは時に甘く優しい言葉をささやき、時に激しく乱暴な態度を見せる。ジョンが何者かさえ全く知らないエリザベスだが、次第に彼の虜になっていく。
エリザベスは老画家ファーンズワースの個展を開催しようとしており、彼に会いに行くことにした。郊外でひっそりと素朴な生活を送るファーンズワースに出会い、彼女の心の中に変化が現れ始める。それはやがて、ジョンとの別れへと繋がっていくことになるのだった…。

監督はエイドリアン・ライン、原作はエリザベス・マクニール、脚本はパトリシア・ルイジアナ・ノップ&ザルマン・キング&サラ・ケルノチャン、製作はアントニー・ルーファス・アイザックス&ザルマン・キング、製作総指揮はキース・バリッシュ&フランク・コニグスバーグ、撮影はピーター・ビジウ、編集はキャロリン・ビガースタッフ&トム・ロルフ、美術はケン・デイヴィス、衣装はボビー・リード、音楽はジャック・ニッチェ、音楽監修はベッキー・マンクーゾ。
出演はミッキー・ローク、キム・ベイシンガー、マーガレット・ウィットン、デヴィッド・マーグリーズ、クリスティン・バランスキー、カレン・ヤング、ウィリアム・デ・アクティス、ドワイト・ウェイスト、ロドリック・クック、ヴィクター・トルーノ、ジャスティン・ジョンストン、シンティア・クルス、キム・チャン、リー・ライ・シン、ルドルフ・ウィルリッチ、ヘレン・ハンフト、マイケル・P・モラン、レイナー・スキーン、オレク・クルーパ他。


女が変態男と出会って別れるまでの9週間半を描いた映画。“オシャレ”というキーワードによって、まるで優れた官能芸術であるかのように持ち上げられてしまった作品。
実際のところ、延々と男女がエロティックな遊びをするだけの、内容スカスカの映画。

ジョンを演じたミッキー・ロークにとっては、これが最初にして唯一の代表作と言えるかもしれない。他の作品では猫パンチ程度のヘボっぷりを見せてばかりのロークだが、彼の特徴であるヨレヨレ姿とニヤニヤ笑いが、この映画にはピッタリとハマっている。

この作品は「アダルトビデオを借りるのは恥ずかしいけど、オシャレというレッテルがあるから見ても恥ずかしくない」というシロモノとして存在している。
「女性用ポルノ」というインチキな売り文句によって、巧みにヒットを呼び込んだ、『エマニエル夫人』に似たようなシロモノと言えばいいだろうか。

肝心(?)のミッキー・ロークとキム・ベイシンガーによるエロ遊びでは、目隠しプレイとか、氷やフルーツを使ったプレイなどを見せている(この映画から“エロ”という要素を除外すると、ホントに何も無くなってしまう)。
だが、日本のアダルトビデオの方が、遥かに想像力豊かな遊びを見せてくれているようにも思う。まあ、比較すること自体が失礼だと言われれば、そうなのかもしれないが(果たして、どっちに対して失礼に当たるのかは、ともかくとして)。

繊細な心理描写とか、巧みなストーリー展開とか、そういうモノは無い。
エロ映画としても弱いし、本質的には「オカズにならないポルノ映画」ということだ。
中身が無いのを巧みに誤魔化している映像美には感心するが、それでも隠し切れないぐらい、内容は無いよう(あ〜あ、やっちまった)。


第8回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演女優賞[キム・ベイシンガー]
ノミネート:最低オリジナル歌曲賞「I Do What I Do」

 

*ポンコツ映画愛護協会