『ニューイヤーズ・イブ』:2011、アメリカ
大晦日のニューヨークでは、夜になるとタイムズ・スクエアに人々が集まり、年越しイベントが開かれる。ボール・ドロップが行われ、 新年を迎えると花火が打ち上げられるのだ。その準備が進む昼間のタイムズ・スクエアに、タイムズ・スクエア協会の新しい副会長クレア がやって来た。クレアは意気込んでいるが、ラジオのインタビューをテレビだと間違えてしまうぐらい緊張している。
イングリッドは街を歩いていてイエローキャブにぶつかりそうになり、ゴミ袋の中に転倒してしまう。自転車便の配達員ポールは向こう から歩いて来た女性に軽く「ハッピーニューイヤー」と声を掛け、エイハーン・レコーズのビルへ入って行く。産婦人科病棟を訪れていた 妊婦のテスと夫のグリフィンは、別の妊婦グレースと夫ジェームズが「賞金を貰いたい」と話しているのを耳にした。その病院で新年最初 に生まれた赤ん坊には、2万5千ドルの賞金が贈られるのだという。テスとグリフィンは、賞金獲得に意欲を燃やす。
アパートの住人ランディーは、他の住人たちが廊下を飾り付けているのを見て不愉快そうな表情を浮かべる。彼は友人のポールから電話で 「今夜は出て来い。新年を祝おう」と誘われるが、「今日は仕事も無いし、一人で家に籠もって過ごすんだ」と断る。浮かれた騒ぎを嫌う 彼は、飾り付けを乱暴に取り外した。サムはコネティカット州の教会で、友人ローリーとトリッシュ結婚式に参列していた。参列者はサム だけだ。会社主催のパーティーでスピーチする予定のある彼は、式が終わると急いで車に乗り込み、ニューヨークへ向かう。
ケータリングで有名になったシェフのローラは、エイハーン・レコーズが主催するパーティーの料理を任されて気合いが入っている。だが 、部下のエヴァやサニルは、人気歌手のジェンセンがツアーバスで来ていることに興奮を隠せない様子だ。ローラはサニルに指示を出し、 厨房へ行く。すると、そこにジェンセンがやって来た。彼が「久しぶりだね」と笑顔を向けると、ローラは平手打ちを浴びせた。
エイハーン・レコーズのオフィスに戻った秘書のイングリッドは、今年の「年頭の誓い」のリストを確認した。そこへポールが現れ、彼女 に話し掛けた。イングリッドの冷たい対応に、彼は「貴方の元に荷物を届けて1年ほどになるけど、目を合わせてくれたのは初めてじゃ ないかな」と言う。ポールが届けた荷物をイングリッドが開けると、それはエイハーン・レコーズ主催の仮面パーティーの招待状だった。 ポールは「プラチナチケットだ」と高揚するが、饒舌に語る彼に対し、イングリッドは不快そうな態度を示した。
15歳のヘイリーは、同級生のセスからタイムズ・スクエアでのカウントダウンを一緒に見ようと誘われていた。セスが「俺らは54丁目を 下見してから、また夜に出直すよ」と去った後、ヘイリーの親友たちは「今夜は彼とキスするんでしょ」などと盛り上がる。ヘイリーは 「お母さんはどうするの」と言われ、不安げな顔になる。彼女の母であるキムは、ラジオシティー・ミュージックホールで衣装係をして いる。彼女は女優に、「去年は父親と過ごしたから、今年は私と。私とヘイリーは仲良しなの」と語る。
サムは雪道を急ぐ途中で、車をぶつけてしまった。クレアはピリピリした態度で、部下に「ジェンセンのスケジュールを確認して。他の パーティーにも出るらしいけど、こっちが優先よ」と指示している。ニューヨーク市警察の警官である友人のブレンダンが警備責任者だと 知った彼女は、嬉しそうに歩み寄る。「家族と過ごすはずじゃ?」と訊くと、ブレンダンは「そのつもりだったが、俺がいないと君は乗り 切れないだろ」と言う。不安そうにクレアに、ブレンダンは「君は大丈夫だ。そして大事な再会にも間に合う」と言う。するとクレアは 「その話はやめましょう。貴方には話すんじゃなかったわ」と口にした。
ローラはジェンセンから「怒ってるのは分かるけど、あれから1年だ」と言われ、「話すことは無いわ」と拒絶姿勢を見せる。彼女は自分 を捨てて去ったジェンセンに怒っており、「貴方は出て行った。それで終わりでしょ。あのアパートで食事すらしなかった」と述べた。 イングリッドは上司のコックスに、遠慮がちな態度で「今日も働くよう仰いましたが、大晦日なのでボーナスでもくれるのかと」と言う。 コックスは小切手を渡すが、微々たる金額だった。イングリッドが2週間の休みを人事部に申請してあることを言うとコックスは「困るよ 、私を通さなきゃ。1週間にしたまえ」と怒る。イングリッドは、会社を辞めることを決めた。
末期癌患者のスタンは、病院のベッドにいる。彼は死期が近いことを知っており、延命治療を拒んでいる。彼は主治医に、「頼みがある。 この病院を選んだのは、屋上からタイムズスクエアのボール・ドロップが見られるからだ」と話す。しかし主治医は「許可したいところ ですが、規則で屋上は立ち入り禁止になっているんです」と告げる。看護婦のエイミーは、スタンと主治医の会話を聞いていた。
ランディーはゴミ袋を捨てるため、エレベーターに乗り込んだ。住人のエリーズが「待って、私も」と走って来るが、彼は「下だから」と 自分だけで降りようとする。しかしエリーズは「私もよ」と乗って来る住人。ランディーは「アンタの飾りは外した。目障りだし、規約で 廊下の飾りは禁止されている」と冷たく言う。エレベーターが故障し、2人は閉じ込められた。「大事な用があるのに」とエリーズは焦る が、エレベーターの電話は壊れており、携帯も圏外だ。ランディーは「僕は用事が無いから」と涼しい表情を浮かべる。
テスとグリフィンは産婦人科医のモリセットに診察してもらい、自然分娩希望だったのを帝王切開にしてもらえないかと持ち掛けた。2人 は「いっそ今夜に出産したい」と言うが、モリセットは「大晦日の夜中に出勤して帝王切開しろと?貴方たちの賞金のために、そんなこと をするつもりはありません」と拒否した。ヘイリーはキムに、「今夜はボール・ドロップを見に行きたいの」と切り出し、セスに誘われた ことを明かす。しかしキムは「貴方が心配なの。許可できないわ」と却下した。
ブレンダンは部下のローラン巡査に命じ、高所恐怖症のクレアをビルの屋上まで運ばせる。クレアは集まったマスコミの前で、ボールの 照明を点灯させた。サムはレッカー車の運転手ハーレーに連絡し、現場に来てもらう。しかし車の修理は無理だし、どこの修理工場も休み だと言われる。イングリッドはポールを呼び、「貴方を一日買ったの。誓いの一番目は達成した」とリストを見せる。一番目の誓いは、 仕事を辞めることだった。
イングリッドは「今日中に叶えるのを手伝ってくれたら、このチケットをあげる」と言い、仮面パーティーのチケットを見せる。ポールは 喜んでOKするが、リストには「バリ島へ行く」「ティファニーで朝食を」「命を救う」など、無理そうな内容ばかりが書いてあった。 ポールが「どうやれっての?」と困惑すると、イングリッドは「想像力を使うのよ」と言う。2人はスクーターで移動を開始した。
ジェンセンはエヴァに、「俺の力になってくれないか。ローラに、去年の大晦日の俺は間違ってたと伝えてくれ」と頼む。彼は、ローラに プロポーズしたが、自信が無くなって逃げたことを明かす。エヴァに「それって最低」と責められ、ジェンセンは「あの時は心の準備が 出来てなくて。それにツアーが入っていて混乱したんだ」と釈明する。2人が話していると、ローラがやって来た。彼女はエヴァをその場 から立ち去らせた後、「休戦する?」とジェンセンに微笑で告げた。
イングリッドとポールはティファニーの店舗前で軽食を取り、「ティファニーで朝食を」の誓いを達成する。続いてウォーター・タクシー を使って川を移動し、「タクシーで渋滞に巻き込まれずに移動」の誓いを達成した。ローラが「仕事でピリピリしてたから、叩いたのは 謝るわ」と言うと、ジェンセンは「あの時はごめん」と詫びる。ローラは「すごい逃げ足だったわね」と軽く笑う。ジェンセンが「明日 にはツアーに戻るんだ。一緒に来られないか」と言うと、彼女は「私にも人生がある。貴方とはやり直せない」と断った。
ランディーはエリーズi「今日、出掛ける用事が無いって、どうして?」と問われ、「大晦日に外へ出て騒ぐなんて馬鹿げてる」と答える 。「大晦日には人を興奮させるものがある。私もワクワクしてる」とエリーズが言うと、彼は呆れて「新年のキスが楽しみだったか? そりゃ残念だろうな。それが問題なんだよ。大晦日は人の気持ちを盛り上げておいて、最後はガッカリさせる」と語る。エリーズが首から 下げている仮面パーティーの通行証を見たランディーは、「ああ、アンタ、グルーピーなのか」と見下したように告げた。その態度に、 エリーズは腹を立てた。
ヘイリーはキムと歩いている途中でセスと遭遇し、イベントには行けないことを話す。セスはキムに、「保護者の付き添いって本当に必要 ですか」と告げる。するとキムは、彼の母に電話を掛けようとする。焦ったセスは「母は携帯を家に置いてってますし」と言い訳し、キム の説得を諦める。ポールはイングリッドを、バリ風のスパへ案内する。テスとグリフィンが病院で陣痛を早めようと頑張っていると、 グレースとグリフィンが入院手続きに来る。グリフィンは「後から知ったのに、俺の賞金を横取りできると思ったのか」と嘲笑うが、 看護婦に「まだ入院の必要は無いわ。出直して」と言われる。テスとグリフィンは、敵対心を剥き出しにした。
帰宅したヘイリーは、キムに「ママは私にベッタリしすぎ。私に干渉するのは、彼氏がいなくて女を捨ててるからよ。いい人を探しなよ。 大晦日にも、ママにもウンザリ」と告げる。サムはハーレーのレッカー車に乗せられ、教会へ戻った。ハーレーは「乗せてもらいな」と 言い、従兄弟であるエドウィン牧師に紹介する。エドウィンは「これから家族でラジオシティーのショーに行く。毎年の恒例だ。相乗りは 歓迎だよ」と言う。サムはエドウィンの一家と共に、RVでニューヨークへ向かう。
ヘイリーは窓から逃げ出し、駅へ向かった。気付いたキムは急いで追い掛けるが、彼女の目の前でヘイリーの乗った列車は出発した。 イングリッドはポールに連れられて犬の保護施設を訪れ、一匹の犬を購入して「命を救う」の誓いを達成する。タイムズ・スクエアは夜の 6時を迎え、ライアン・シークレストが登場して観客が喝采を送る。クレアがボールのスイッチを押すが、トラブルが起きて途中で停止 してしまう。クレアは慌てて修理を指示する。
ポールはイングリッドをクイーンズ美術館へ連れて行き、ニューヨークのミニチュアを見せる。ポールは「ここなら一日でニューヨークを 回れる。また一つ達成した」と告げる。彼は席を外し、ランディーの留守電に「エイハーンのチケット4枚持ってる女を確保したんだ。 その女、残念なタイプだけど、まあ可愛いんだ。だから連絡くれよ」とメッセージを吹き込む。それを聞いていたイングリッドは不機嫌に なり、ポールに「もう、いいわ」と告げた。
クレアが「何としても0時にボールを落とすのよ」と言うと、技師たちは「コミンスキーが必要です」と告げる。帰宅したテスが破水し、 グリフィンは激しく狼狽した。テスは冷静に指示を出し、グリフィンは外に出てタクシーを停めるが、目を離している間に通り掛かった人 が乗り込んだ。仕方なくテスとグリフィンは、自転車タクシーに乗り込む。スタンが目を覚ますと、エイミーが付き添っている。スタンが 「帰らなくていいのか。予定は無いのか」と言うと、彼女は「無いわ。今は貴方が相手」と口にした。
エリーズは嫌味っぽい態度で、ランディーの人間分析を語る。ランディーが余裕の微笑で自己紹介すると、エリーズの分析は全て外れて いた。ランディーはコミックブックのイラストレーターだった。サムはパーティーでスピーチする内容についてエドウィンの妻モードに 訊かれ、「去年のパーティーはスピーチばかりで息が詰まったから、外に出てピザを食べた」と話す。「その時に何かあった?」という 質問に、彼は「まあね。ある人と出会った。彼女は素晴らしい人だった」と答えた。
エイハーン・レコーズのパーティー会場では社長のローズが挨拶し、ステージにジェンセンを呼び込んだ。エリーズはランディーに、自分 がバックコーラスの歌手だと自己紹介する。「今夜は大きな仕事があったの。頑張ってツアーに呼んでもらおうと思ってたんだけど」と 彼女は話す。クレアは到着した電気技師のコミンスキーを丁重に迎える。クレアは以前、彼を解雇していた。コミンスキーは「原因は配線 のショートだ。あのボールには3千本以上の配線がある」と難しい仕事であることを説明した。
クレアは記者たちの前に出て、会見を開いた。彼女は「ボールは途中で止まったままです。私には、これがメッセージのように思えます。 シャンパンを開けて新年を祝う前に、立ち止まって、過ぎた年を振り返ってみようというメッセージです。この1年、成功も失敗も、 どちらもあったことでしょう。それから、果たした約束に、破った約束。勇気を出して成し遂げた挑戦もあれば、傷付くことを恐れて 閉じ篭もったこともあったでしょう」と語る。
クレアは言葉を続け、「しかし新しい年が来ます。新たなチャンスの時です。過ちを許し、より努力し、より与え、より愛するチャンス です。皆さん、未来を憂うことなく、期待と共に迎えましょう。0時ちょうどにボールが落ちる時、周囲の人への思いやりと優しさを心に 抱いて下さい。出来れば今夜だけでなく、1年ずっと」と述べた。タイムズ・スクエアに集まった人々は、拍手喝采を送った…。監督はゲイリー・マーシャル、脚本はキャサリン・ファゲイト、製作はマイク・カーツ&ウェイン・ライス&ゲイリー・マーシャル、 共同製作はヘザー・ホール、製作総指揮はトビー・エメリッヒ&サミュエル・J・ブラウン&マイケル・ディスコ&ダイアナ・ポコーニイ&ジョシー・ ローゼン、撮影はチャールズ・ミンスキー、編集はマイケル・トロニック、美術はマーク・フリードバーグ、衣装はゲイリー・ジョーンズ 、音楽はジョン・デブニー、音楽監修はジュリアンヌ・ジョーダン。
ハル・ベリー、ジェシカ・ビール、ジョン・ボン・ジョヴィー、アビゲイル・ブレスリン、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、 ロバート・デ・ニーロ、ジョシュ・デュアメル、ザック・エフロン、ヘクター・エリゾンド、キャサリン・ハイグル、アシュトン・ カッチャー、セス・マイヤーズ、リア・ミシェル、サラ・ジェシカ・パーカー、ミシェル・ファイファー、ティル・シュヴァイガー、 ヒラリー・スワンク、ソフィア・べルガラ、カーラ・グギーノ、ジェイク・T・オースティン、サラ・ポールソン、ケイリー・エルウィズ 、アリッサ・ミラノ、ラリー・ミラー、ラッセル・ピータース、 チェリー・ジョーンズ、ライアン・シークレスト、ベス・ケネディー、コモン、ショーン・オブライアン、ロブ・ネイグル、マット・ ウォーカー、ヤードリー・スミス、リリアン・リフランダー他。
2010年の映画『バレンタインデー』のスタッフが再集結して製作した映画。
監督、脚本、製作の2人、製作総指揮の5人、撮影、衣装、音楽、音楽監修が『バレンタインデー』と同じだ。
続編ということになるんだろうが、登場人物や物語に関連性は無い。
ジェシカ・ビールとアシュトン・カッチャーは『バレンタインデー』と本作品の両方に出演しているが、演じているキャラクターは異なる。エイミーをハル・ベリー、テスをジェシカ・ビール、ジェンセンをジョン・ボン・ジョヴィー、ヘイリーをアビゲイル・ブレスリン、 ブレンダンをクリス・“リュダクリス”・ブリッジス、スタンをロバート・デ・ニーロ、サムをジョシュ・デュアメル、ポールをザック・ エフロン、コミンスキーをヘクター・エリゾンド、ローラをキャサリン・ハイグル、ランディーをアシュトン・カッチャー、グリフィンを セス・マイヤーズ、エリーズをリア・ミシェル、キムをサラ・ジェシカ・パーカーが演じている。
さらに、イングリッドをミシェル・ファイファー、ジェームズをティル・シュヴァイガー、クレアをヒラリー・スワンク、エヴァを ソフィア・べルガラ、モリセットをカーラ・グギーノ、セスをジェイク・T・オースティン、グレースをサラ・ポールソン、スタンの 主治医をケイリー・エルウィズ、エイミーの同僚ミンディーをアリッサ・ミラノ、ハーレーをラリー・ミラー、サニルをラッセル・ ピータースが演じている。
アンクレジットだが、タイムズ・スクエア協会のビューラートン会長役でマシュー・ブロデリック、コックス役でジョン・リスゴウが出演 している。作品は「誓いのツアー」「病院」「産婦人科病棟」「ジェンセンとローラ」「エレベーター」「母と娘」「エイハーン・パーティー」 「タイムズ・スクエア」の8つのエピソードが並行して進行する構成の群像劇になっている。
後半に入ると、それぞれのエピソードの人物の内、数名は他のエピソードの人物と関連していることが明らかにされる。
ネタバレだが、例えばサムはローズの息子で、サムが1年前に再会を約束した相手はキムで、ポールはキムの弟。クレアはスタンの 娘だ。
ただ、もう少し相関関係があるのかと思ったが、意外に控えめだった。もっと絡めても良かったんじゃないかと思ったりするんだけどね。これと同じようなタイプの映画として、『ラブ・アクチュアリー』という作品がある。
っていうか、たぶん『バレンタインデー』にしろ、本作品にしろ、『ラブ・アクチュアリー』を意識して作られたんじゃないかと推測する 。
ただ、少し違うのは、『ラブ・アクチュアリー』は恋愛劇に絞っていたが(『バレンタインデー』もそうだ)、これは恋愛に限らず「愛」 をテーマにしているってことだ。
だから、キムとヘイリー、スタンとクレアという親子愛もあるし、妊婦と夫のエピソードに関しては、夫婦愛だけでなく、2組の夫婦の 友情のようなモノも描かれている。『ラブ・アクチュアリー』も本作品のように、1つ1つのエピソードは薄くて、まるで粗筋を映像化した仕上がりだった。
だが、あの映画は不満な点もあったものの、クリスマス・ムービーとしては優れた作品だった。
この映画は、あれとは比べ物にならない。
物語の時期を大晦日に設定していることも、その要因の一つかもしれない。
特に欧米人からすると、クリスマスの方が大きなイベントで、新年を迎えるってのは、それに比べると、やや高揚感で劣るんじゃないかと 思うんだが。ただ、それよりも大きな問題は、「この映画がロマンティックの魔法にかけられていない」ということなんだよな。
恋愛劇だけじゃないから、「ロマンティック」という要素に限定するのは間違っているのかもしれないが、だったら「チャーミングの魔法 」と言い換えてもいい。
同じようにエピソードが薄くても、甘くて安易な展開でも、『ラブ・アクチュアリー』にはロマンティックの魔法がかかっていた。
この映画には、それが無い。たぶん、魔法がかからなかった要因ってのは、小さなことの積み重ねだと思うんだよね。
ベタな物語を組み合わせた映画であっても、編集や構成を上手くやって、小粋な雰囲気を作り出すための演出を上手くやれば、もっと 魅力的になったんじゃないかと。
例えば構成にしても、一つ一つのシーンをもう少し長めに取ってもいいんじゃないかと思える箇所がある。
また、例えば短いスパンでローラ&ジェンセンの話からイングリッド&ポールの話に移り、すぐにローラ&ジェンセンに戻るという箇所が あったりするが、そこはイングリッドを挟まず、ローラの短いシーンを2つ繋げて構成したらいいんじゃないかと思ったりする。場所は 同じなんだし。クレアが記者会見で「ボールは途中で止まったままです。私には、これがメッセージのように思えます。シャンパンを開けて新年を祝う前 に、立ち止まって、過ぎた年を振り返ってみようというメッセージです。この1年、成功も失敗も、どちらもあったことでしょう。それ から、果たした約束に、破った約束。勇気を出して成し遂げた挑戦もあれば、傷付くことを恐れて閉じ篭もったこともあったでしょう。 しかし新しい年が来ます。新たなチャンスの時です」と語るシーンは、BGMも含めて、観客を感動させるシーンとして設定されている ように感じられる。
ただ、そこまでの人間ドラマは薄いので、何も心に響かないし、無理に感動させようとして上滑りしてるなあとしか 感じない。
っていうか、そんなに無理してまで、感動させる必要があったのかなあと。終盤、クレアはタイムズ・スクエアをコミンスキーに任せて走り出し、サムはパーティーを抜け出して走り出す。
どちらも、ある人に会うために走り出したことが示されている。
2人は同じ場所で、同時に立ち止まる。だが、そこから別方向へ走り出す。
それは、たぶん「2人が恋人と思ったでしょうが、違います」という捻りのつもりなんだろう。
でも、それは要らないなあ。
まあクレアの相手がサムじゃないというのは、ほぼ見えていたけどね。そこで「要らないなあ」と感じた一番の理由は、クレアがスタンの娘ってのも伏線が足りないから感動や驚きは無いんだけど、それよりも 「サムの意中の相手がキムってのは無いわ」と思ったからなのよ。
正直、まるで似合ってないんだよね。
そりゃあ世の中には、そんな風に「お似合い」とは見えないようなカップルもたくさんいるだろうけど、この映画の企画や内容からすると 、そこはスウィートなところへ着地すべきでしょ。
だから、ローズに「女性は見た目より中身」みたいなことを言っていたジョシュ・デュアメルの相手が、ケバケバの化粧で若作りしている サラ・ジェシカ・パーカーってのは、そりゃ違うんじゃないかと。
ちなみに、娘役のアビゲイル・ブレスリンも化粧がケバいんだよなあ。ミシェル・ファイファーとザック・エフロンのカップルなんて、随分と年の差があるのに、それほど違和感を抱かせない。
それなのに、ジョシュ・デュアメルとサラ・ジェシカ・パーカーには大きな違和感があるんだから、よっぽどだぜ。
その直前、ジェームズの赤ん坊が0時4分に生まれたことを聞いたグリフィンが、3人の子持ちである彼とグレースのことを考えて「ウチ は0時5分」と嘘をついて賞金を譲ってやるシーンがちょっぴり感動的になっていたのに、すぐ後にジョシュ・デュアメルがサラ・ ジェシカ・パーカーと会ってキスをするシーンが到来して、それによって全てを台無しにしてしまうぐらい、サラ・ジェシカ・パーカーが 負のパワーを放っている。(観賞日:2013年1月3日)
第32回ゴールデン・ラズベリー賞
ノミネート:最低主演女優賞[サラ・ジェシカ・パーカー]
<*『ケイト・レディが完璧(パーフェクト)な理由(ワケ)』『ニューイヤーズ・イブ』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低スクリーン・アンサンブル賞[『ニューイヤーズ・イブ』の全キャスト]
ノミネート:最低監督賞[ゲイリー・マーシャル]
ノミネート:最低脚本賞