『ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記』:2007、アメリカ

1865年4月1日、南北戦争終結から5日後のワシントンD.C.。ある酒場で息子チャールズと一緒にいたトーマス・ゲイツは、ブースと オラフレンという男たちから日記を見せられ、そこに書かれた暗号の解読を依頼された。トーマスが解読している間に、ブースは近くの 劇場へ行き、観劇中のリンカーン大統領を殺害した。トーマスは暗号が宝の在り処を示していると気付くが、直後、オラフレンたちが 南軍寄りの過激派集団「ゴールデン・サークル騎士団」だと察知した。銃弾を浴びたトーマスは、暗号のページを暖炉に捨てて燃やそうと する。オラフレンは急いで燃え残った切れ端を拾い上げ、酒場から逃走した。
現在。探検家のベン・ゲイツは、トーマスに関する講義を行った。ベンの父パトリックは、チャールズの孫だ。講義を終えたベンに、客席 にいたミッチ・ウィルキンソンという男が、「私の4代前の祖先サイラスは同世代だ。彼は、トーマスがリンカーン暗殺のための集会に ブースを呼んだと言っている」と告げた。そして彼は、炎の中から取り出されたページの切れ端を見せた。そこにはトーマスの名前が 記されており、ウィルキンソンは「彼は暗殺の共犯者の一人だ」と述べた。
ベンは先祖の汚名を晴らすため、相棒のライリーに協力を依頼した。ブースの日記を読むためには、恋人である国立公文書館の管理責任者 アビゲイルの身分証が必要だ。しかしベンはアビゲイルと険悪な状態で、家を追い出されていた。ベンはライリーの協力で家に侵入し、 身分証を盗んだ。しかし、そこへアビゲイルがホワイトハウスの学芸員コナーとのデートを終えて戻ってきた。
ベンはアビゲイルに取引を持ち掛け、日記を解析してもらった。日記のページを裏返すと、そこには暗号が隠されていた。その暗号を解く ためには、5文字のアルファベットが必要だった。一方、FBI捜査官セダスキーは、部下のスペルマンとヘンドリックスから、ベンの 祖先がリンカーン暗殺の首謀者として疑われているという新聞記事を見せられた。セダスキーは、140年前から受け継がれてきた切れ端を 今になって公表したウィルキンソンに疑念を抱き、彼を調査するよう指示した。
ベンはパトリックに、「先祖の潔白を証明する唯一の方法は、宝を見つけることだ」と告げた。パトリックは、トーマスが死に際に「誰も が払うべき代償」と言い残したことを、チャールズが話していたと告げた。それを聞いたベンは、5文字のアルファベットが死を意味する 「DEATH」だと読み解いた。暗号を解くと、自由の女神像の発案者エドワード・ラブレーの名前になった。
アビゲイルはウィルキンソンと会い、日記に暗号が隠されていたことを語った。ベンがアビゲイルに電話を掛けたので、暗号の解読で ラブレーの名前が出て来たことをウィルキンソンも知った。自由の女神像はニューヨークにあるとライリーは思っていたが、パトリックは 「ニューヨークだけじゃなく、3つある」と言う。ベンとライリーはフランスへ行き、パリの女神像を調べることにした。
小型ヘリを飛ばして女神像を調べると、「レゾリュートな双子」という文字が記されていた。ベンは、19世紀に北極で行方不明になった イギリス船レゾリュート号に思い当たった。船はアメリカの捕鯨船に引き上げられ、イギリスへ送られた。エリザベス女王は船が役目を 終えた後、船板で2つのテーブルを作らせている。そのテーブルがレゾリュートな双子だと、ベンは確信した。
ウィルキンソンは手下のダニエルとセスを使ってパトリックを襲い、昏倒させている間にクローン携帯を作った。ベンがパトリックとの 電話でバッキンガム宮殿へ行くことを話したため、その情報をウィルキンソンも知った。ベンとライリーがバッキンガム宮殿へ行くと、 パトリックから話を聞いたアビゲイルが現れた。計画が狂ったベンは、ライリーから小型通信機で指示を受け、わざと大声で喚いて騒ぎを 起こした。ベンとアビゲイルは警備員に連行され、地下室に監禁された。
ベンとアビゲイルは地下室を脱出し、女王の執務室に侵入した。机の底には、マルコム・ギルヴァリーという中国の仕掛け箱の作者の名が 記されていた。引き出しを開くと、それは鍵になっていた。ベンが引き出しの数字を合わせると、机から古代文字の書かれた木片が出現 した。アビゲイルと共に宮殿を出たベンは、ウィルキンソンたちの尾行に気付いた。一味が銃撃してきたため、2人は車に乗り込んだ。 ウィルキンソンたちは近くの車を奪い、追跡してきた。
ベンは監視カメラに板を向け、わざとスピードを出してシャッターを切らせた。ベンは木片を川に投げ捨て、ミッチたちから逃亡した。彼 はワシントンへ戻り、ライリーにロンドン警視庁のデータベースから写真を取り出してもらった。その写真を見たパトリックは、書かれて いるのはアメリカ先住民の象形文字だと告げた。しかし彼には黄金の都市を示す文字しか解読できなかった。
ベンは、象形文字を解読できる人物を知っていた。言語学者である母エミリーだ。パトリックはエミリーと険悪な関係で、32年もエミリー とは会っていなかった。ベンは渋るパトリックを説得し、エミリーが教えているメリーランド州立大学へ赴いた。エミリーに写真を見せる と、絵文字が半分しか揃っていないことが判明した。ベンは、残りの半分がホワイトハウスの執務室にあると知っていた。
イースターにホワイトハウスで卵運びのイベントがあると知り、ベンはアビゲイルと共に出向いた。アビゲイルはコナーに頼み、執務室を 見せてもらった。彼女がコナーの目を引き付けている間に、ベンは机の引き出しを動かした。しかし木片は消えており、その部分には何か のマークがあった。ライリーは、それが歴代の大統領だけが読める本に押されているマークだと告げた。ベンはセダスキーと会い、その本 が実在すること、隠し場所は現職の大統領が決めていることを教えられた。
ベンは大統領と2人きりになって話をするため、彼を誘拐する計画を立てた。ヴァージニア州マウント・ヴァーノンで行われた大統領の 誕生パーティーに、ベンは赴いた。彼は大統領に、初代大統領ジョージ・ワシントンが書いたマウント・ヴァーノンの地図を見せ、建物に 地下通路があることを告げた。すると大統領は関心を抱き、「確かめに行こうか」と言い出した。
地下通路の捜索にはシークレット・サーヴィスのクレイグたちも同行するが、部屋に入る際、大統領は「こんなところまで敵は襲って いないさ」と告げた。クレイグたちは廊下で待機し、ベンと大統領が部屋の奥へ進んだ。ベンは隠し部屋に入ると、ドアを閉じて2人きり になった。そして事情を簡単に説明し、本を見せてほしいと頼んだ。大統領は、本が議会図書館にあることを明かし、分類コードや暗号を 教えた。そして「47ページも見てくれ」と告げ、ベンを行かせた。
ベンはライルやアビゲイルと合流し、議会図書館で本を発見した。そこにはホワイトハウスから消えた木片の写真が貼ってあり、文書を 読むとラシュモア山が関係していることも分かった。ウィルキンソンはエミリーを脅し、パトリックが暗号解読の依頼に来たら嘘を教える よう要求した。エミリーはウィルキンソンにバレないよう、ベンに伝えるための暗号をパトリックに告げた。
ウィルキンソン一味はエミリーを引き連れ、ラシュモア山へ向かった。すると、そこにはベンたちが待ち受けていた。ベンは「先祖の潔白 が証明されたら宝はやる」と言い、ウィルキンソンに手下を残して同行するよう持ち掛けた。ウィルキンソンは同意し、拳銃を手下に 渡した。ウィルキンソンは先祖が残した手紙の言葉を語り、それを読み解いたベンたちは隠された洞窟を発見する…。

監督はジョン・タートルトーブ、キャラクター創作はジム・カウフ&オーレン・アヴィヴ&チャールズ・シーガース、原案はグレゴリー・ ポワリエ&ザ・ウィバーリーズ&テッド・エリオット&テリー・ロッシオ、脚本はザ・ウィバーリーズ、製作はジェリー・ブラッカイマー &ジョン・タートルトーブ、製作総指揮はオーレン・アヴィヴ&チャド・オマン&チャールズ・シーガース&マイク・ステンソン&バリー ・ウォルドマン、撮影はジョン・シュワルツマン&アミール・モクリ、編集はウィリアム・ゴールデンバーグ&デヴィッド・レニー、美術 はドミニク・ワトキンス、衣装はジュディアナ・マコフスキー、音楽はトレヴァー・ラビン。
出演はニコラス・ケイジ、ジャスティン・バーサ、ダイアン・クルーガー、ジョン・ヴォイト、ヘレン・ミレン、エド・ハリス、 ハーヴェイ・カイテル、ブルース・グリーンウッド、タイ・バーレル、マイケル・メイズ、ティモシー・V・マーフィー、アリシア・ コッポラ、アーマンド・リエスコ、アルバート・ホール、ジョエル・グレッチ、クリスチャン・カマルゴ、ブレント・ブリスコー、ビリー ・アンガー、マイケル・マヌエル、ブラッド・ロウ他。


2004年の映画『ナショナル・トレジャー』の続編。
ビデオでは『ナショナル・トレジャー2/リンカーン暗殺者の日記』というタイトル。
ベン役のニコラス・ケイジ、ライリー役のジャスティン・バーサ、アビゲイル役のダイアン・クルーガー、パトリック役のジョン・ ヴォイト、セダスキー役のハーヴェイ・カイテル、ヘンドリックス役のアーマンド・リエスコは、前作からの続投。
他に、エミリーをヘレン・ミレン、ウィルキンソンをエド・ハリス、大統領をブルース・グリーンウッド、コナーをタイ・バーレル、 ダニエルをマイケル・メイズ、セスをティモシー・V・マーフィー、スペルマンをアリシア・コッポラが演じている。また、大統領の誕生 パーティーで歌っているゲストは、カントリー・ミュージック界のスーパー・スター、ランディー・トラヴィスだ。

ベンはパトリックに「先祖の潔白を証明する唯一の方法は、宝を見つけることだ」と言うが、ワケが分からない。
トーマスがリンカーンの暗殺に関与していないことを証明するために、なぜ日記に書かれた宝を見つける必要があるのか。
なぜ、それが唯一の方法だと言えるのか。
他に幾らだって方法はありそうだぞ。
それは先祖の無実を晴らすためではなく、単にベンが宝を見つけたいだけ、トレジャー・ハントがしたいだけとしか思えない。

トーマスは「誰もが払うべき代償」という言葉を息子に言い残し、それが日記の暗号を解くための謎掛けになっているのだが、なぜ死に際 なのに、しかも現場には息子しかいないのに、暗号解読の5文字をそのまま言わず、ヒントで済ませてしまうのか。
っていうか、死にそうになっている時に、息子への遺言が宝に関するヒントってのも、違和感があるぞ。
他に伝えるべきことは無かったのか。
トーマスにとって、宝を見つけることは、そんなに重要なことではなかったはずだろうに。

「自由の女神像は3つある」とパトリックが言った後、なぜベンとライリーは真っ先にフランスの像を調べることにしたのか。
アメリカにいるんだから、とりあえずアメリカの像から調べればいいんじゃないのか。
その後、ベンたちはバッキンガム宮殿で執務室に潜入し、外に出てからはウィルキンソン一味と派手なカーチェイスを繰り広げる。
しかし、それだけ大きな騒ぎをイギリスで起こしておいて、簡単にアメリカへ出国できている。
何のお咎めも無かったのかね。

大統領だけが読める本を見せてもらうため、ベンが大統領を誘拐しようと考えるのは、あまりにも突飛なアイデアだ。
バッキンガム宮殿やホワイトハウス執務室へ侵入した時の手口を考えると、大統領と2人きりになるという目的を果たすには、誘拐以外に何か御都合主義で お気楽な方法がありそうなものだ。
ベンが警察やSSに追われるという展開を、無理に作っているような気がしてならない。
あと、なぜ大統領は、自分しか読めない本を議会図書館に隠したのだろうか。

ウィルキンソンが今になって切れ端を公表したのは、ベンが先祖の汚名を晴らすために行動を開始し 、宝を見つけ出すだろうと考えたからじゃないのか。
それなのに、途中でベンを妨害し、それどころか発砲までしている。
自分たちに暗号を解読する能力は無いのだから、ベンが黄金の都市の場所を発見するまでは、泳がせておいた方がいいんじゃないのか。
なぜ邪魔をするのか。

ウィルキンソンは前述のように、木片を奪うために銃を乱射しており、「ベンが死んでも仕方が無い」という非情なキャラだったはずだ。
ところが終盤、洞窟に入ると、ベンやアビゲイル、ライリーたちを積極的に助けている。急に、いい人に宗旨替えする。
かと思ったら、脱出する時にはアビゲイルにナイフを突き付け、ベンたちを脅している。また悪い人になるのだ。
ところが、最後は自分が犠牲になってベンを助けている。
もうキャラがブレまくっている。メチャクチャだ。

前作と同様、観客に何も考える余裕を与えず、どんどん話を先へと進めていく。
謎解きの面白さは皆無だ。その謎がどういうものなのかがボンヤリしている内に、ベンがヒントを発見し、超推理で解読してしまう。
ヒントを見つけたら、ほとんど悩まず、その場でさっさと解読を終わらせる。
だから、与えられたヒントを頼りにして、観客が謎解きを味わうようなことは出来ないのだ。
ベン・ゲイツというキャラクターは取り立ててタフなわけでもなく、取り立てて口が達者なわけでもなく、取り立てて格闘や射撃のセンス があるわけでもない。だから「頭脳明晰で謎解きの名人」という部分の描写が淡白だと、ホントに魅力の無い男になっちゃうんだよな。
それでもイケメンだったら見た目だけでセクシーなオーラを出して観客を惹き付けられるかもしれんが、落ち武者もどきのニコラス・ ケイジだからね。

ディズニーは、このシリーズをミステリーとしては作っていないようだ。
たぶん、これは子供向けのアクション・アドベンチャー映画だ。
幾つも用意されている謎はオマケみたいなモンで、基本的には「インディー・ジョーンズ」と同系列の映画だ。
あるいは、ベンが動き回る舞台が近代の建築物ばかりなので、ジェームズ・ボンドのトレジャー・ハンター版という解釈がふさわしいかもしれない。
ただし、アドベンチャーに付き物であるはずのハラハラドキドキは、全くと言っていいほど味わえない。


第28回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[ニコラス・ケイジ]
<*『ゴーストライダー』『ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記』『NEXT -ネクスト-』の3作でのノミネート>
ノミネート:最低助演男優賞[ジョン・ヴォイト]
<*『Bratz』『ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記』『September Dawn』『トランスフォーマー』の4作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会