『ヘブンズ・プリズナー』:1996、アメリカ&イギリス
デイヴ・ロビショーは元ニューオリンズ殺人課の刑事。今は妻アニーと貸しボート屋を経営している。ある日、クルージングを楽しむ2人の目の前で小型飛行機が海に墜落した。デイヴは浸水した飛行機の中で奇跡的に生き残ったエルサルバドルの少女アラフェアを救い出した。
数日後、アラフェアを引き取って暮らしていたデイヴとアニーの前に、麻薬課の刑事マイノスが現れた。デイブが飛行機の中で見た、胸に蛇の刺青のある男のことを忘れるように警告するマイノス。だがデイヴは勝手に調査を開始する。
遺留品の中から「スマイリング・ジャックス」というストリップバーの名前を発見したデイブ。店では旧知の女ロビンが働いていた。ロビンから情報を得て、刺青の男がジョニー・ドルテスという潜入捜査官だったことを知るデイヴ。
聞き込みを進める中で、デイヴは殺し屋に襲われ、調査を止めるよう脅される。それでも幼馴染みで麻薬組織のボスになっているババ・ロックに会うなど、調査活動を続行するデイヴ。だが、ある日の深夜、3人組の男達にアニーが殺されてしまう…。監督はフィル・ジョアノー、原作はジェームズ・リー・バーク、脚本はハーレイ・ペイトン&スコット・フランク、製作はアルバート・S・ラディ&アンドレ・E・モーガン&レスリー・グリーフ、共同製作はグレイ・フレデリクソン、製作協力はマイケル・アラン・カーン、製作総指揮はアレック・ボールドウィン&ヒルディ・ゴットリーブ、撮影はハリス・サヴィデス、編集はウィリアム・ステインカンプ、美術はジョン・ストッダート、衣装はオード・ブロンソン=ハワード、音楽はジョージ・フェントン。
主演はアレック・ボールドウィン、共演はケリー・リンチ、メアリー・スチュアート・マスターソン、エリック・ロバーツ、テリー・ハッチャー、バジャ・ジョーラ、ボンディ・カーティス・ホール、サマンサ・ラグペイコン、ジョー・ヴィテレッリ、タック・ミリガン、ホーソーン・ジェームズ、ドン・スターク、カール・A・マッギー、ポール・ギルフォイル、クリス・クリシー、ソウル・ステイン他。
ジェームズ・リー・バークのベストセラー小説『天国の囚人』を映画化。
原作ではケイジャン(カナダ出身でルイジアナに住みついたフランス人の子孫)の文化が深く描かれているらしいのだが、映画ではそれほど大きなウェイトは占めていない。ハードボイルド・アクション映画だが、アクションは華々しさが無く、デイヴを演じるアレック・ボールドウィンの動きも鋭さに欠けている。
デイヴがあまり頭のよろしくない行動を取り、そのために周囲が犠牲になるというのは、あまりにもマヌケでカッコ悪すぎると思うのだが。デイヴが脅迫された時点で、その妻にも危険が迫ることは予想できるはず。
情報を喋ったロビンも負傷させられてるしね。
しかしながら、デイヴには日本の政府と同じぐらい危機感が無かったようで、楽々と侵入できる場所でも、なぜかスリーピング状態になってるのよね。アニーがヒロインの役かと思ったら、途中で死んでしまう。
で、その役目はロビンが引き受ける。
だが、少し前までデイブの近くには妻がいたわけで、それなのにロビンがヒロインとしてデイヴの隣に鎮座するのは、どうにも形が悪い。
2人とも立てようとして、どちらも立たずという結果になっている。デイヴが調査を始める理由がアラフェアのためというのは、理由として弱い。むしろ刑事としての仕事に未練があることが大きいのだろうが、それが上手く表現できていない。後半は、妻を殺されて復讐するという大きな行動理由があるので大丈夫だが。
アニーが殺されてからはスピードアップして矢継ぎ早の展開が待ち受けていると思いきや、犯人の内の1人を殺した時点で一旦スローダウン。
しかも、殺し屋達がデイヴを襲ってくることも無くなる。
殺し屋の目的はアニーじゃなくて、デイヴだろうに。悪玉のポジションが、なかなか決まらないのもマイナス。
途中でババの妻クローデットが麻薬取り引きの実権を握り、デカい悪玉になるわけだが、それなら後半で大きな存在になるという伏線を序盤からもっと出しておくべき。
前半では、ただの色っぽい女なんだよなあ。悪玉のポジショニングがなかなか決まらないから、デイヴが突き進んでいく方向もなかなか決まらない。妻を殺した犯人と親玉との関係もなかなか見せないから、妻殺しの犯人を殺した時点でカタルシスが完了してしまう。
シリーズ化の予定もあったらしいが、やはり消滅したようだ。
第17回ゴールデン・ラズベリー賞
ノミネート:最低助演女優賞[テリー・ハッチャー]
<*『ヘブンズ・プリズナー』『トゥー・デイズ』の2作でのノミネート>