『ハプニング』:2008、アメリカ&インド&フランス

ニューヨークのセントラルパーク、午前8時33分。大勢の人々が来園する中、ベンチに座っていた女性は突然の悲鳴を耳にした。彼女が 視線を向けると、異常な行動を取る人がいた。別の方向でも、また異常な行動を取る人がいた。彼女が隣に座っている友人クレアを見ると 、呆然とした様子だった。彼女は本の何ページを読んでいたか分からなくなり、ヘアピンで自分の首を突き刺して死亡した。そこから 3ブロック先に工事現場では、作業員たちが次々にビルの屋上から落ちて死亡するという事件が発生した。
フィラデルフィアの高校教師エリオットは、ミツバチが突如として消失した異変について生徒たちに話し、意見を求める。生徒の一人 ジェイクが「自然界に起きたことなんて完璧には分からない」と言うと、エリオットは「いい意見だ」と告げた。直後、全ての教師が 集められた。校長はエリオットたちに、セントラルパークがテロリストの攻撃を受けたという情報を知らせた。化学毒素を含む気体が 撒かれたというのだ。教育委員会からの通達で生徒たちを帰らせることが決定し、教師も自宅待機となった。
エリオットは同僚教師のジュリアンから、「母が心配して、避難して来いと言っている。一緒にどうだ」と持ち掛けられた。エリオットは 妻のアルマに電話を掛けるが、態度がよそよそしかった。エリオットから話を聞いたジュリアンは、「結婚式の日に見たんだ。アルマが 泣いてた。心の準備が出来ていなかったんだ」と語る。アルマの携帯にはジョーイという男から着信が入るが、彼女は無視した。そこへ エリオットが帰宅し、荷造りを始める。テレビでは、人間が毒素にさらされると自殺するようになると報じられている。
エリオットとアルマは駅へ行き、ジュリアンと8歳の娘ジェスに合流した。テレビのニュースでは、「毒物は天然化合物だと判明した。 攻撃はニューヨーク市内に限られている」と報じられている。ジュリアンはエリオットたちに、妻イベットが渋滞に巻き込まれたため、先 に行くよう言われたことを話す。彼はアルマに対して、皮肉っぽい言葉を投げ掛けた。エリオットが自分たちのことを話したと察知した アルマは、「私生活のことを他人に喋らないで」と夫を責めた。
フィラデルフィアのハッテンハウス公園では、人々が次々に動きを止めていた。そんな中、交通整理をしていた警官が銃で自殺した。車 から降りてきた男は、その銃を拾って自殺した。さらに近くの女も、その銃で自殺した。列車でエリオットたちと離れた席になったアルマ は、ジョーイに電話を掛けて「もう電話しないで。確かに一緒にティラミスを食べたけど、それだけよ。頭を冷やして」と言う。
エリオットやジュリアンたちは、フィラデルフィアも攻撃されたことを他の乗客から知らされた。ジュリアンは慌ててイベットに電話を 掛けるが、良く聞こえないのでメールをくれるよう頼んだ。彼女がニュージャージー行きのバスに乗ってプリンストンへ向かっていると 知り、ジュリアンは安堵した。エリオットはアルマから、「ボストンも攻撃された。職場の友達に聞いたわ」と聞かされた。
エリオットたちが乗った電車は停止し、乗客はペンシルヴァニアの小さな町フィルバートで下車することになった。エリオットが車掌に 事情説明を求めると、「誰とも連絡が取れない」と告げられた。レストランに入ったエリオットたちは、隣の婦人から携帯に送られてきた 映像を見せられる。そこには、1時間前にフィラデルフィア動物園で発生した出来事が撮影されていた。一人の飼育員が、自分の体を ライオンに食わせていた。
レストランのテレビを見ると、テロリストではない可能性を専門家が示唆していることが報じられている。異常現象は、北東部から小さな 町へ移っているらしい。店にいた一人の男が「ここにいたら、みんな死んでしまう。ここから150キロ先では何も起きていない」と言うと 、人々は慌てて町を出て行った。しかしエリオットは車に乗せてもらおうとするが、声を掛けても無視される。しかし近くに住む種苗場の 夫婦が、親切に声を掛けてくれた。
ジュリアンは連絡の取れないイベットが心配になり、プリンストンへ向かう車に同乗させてもらうことにした。エリオットにジェスを 預けることにした彼は、アルマに「軽い気持ちで娘の手を握るなよ」と冷たく言う。種苗場の主人は自宅に到着すると、エリオットたちに 「あの異変だが、原因なら想像が付く。植物だよ。化学物質を出してる」と言う。だが、エリオットもアルマも、彼の頭がおかしいのだと 感じる。種苗場の妻が、ホットドッグを作って持って来た。
ジュリアンの乗った車がプリンストンへ到着すると、複数の首吊り死体が並んでいた。車の幌に切れ目があり、そこから風が吹き込んだ。 運転手は木に車を激突させ、ジュリアンは車から降りて来て、割れたガラスを使って自殺した。エリオットたちは車に乗り、州境へ行く ハイウェイを目指した。だが、その途中で何かの死骸らしき物体を発見する。双眼鏡で覗くと、それは人間の死体だった。
エリォットたちは引き返し、別の道を進むことにした。するとオースター二等兵が別の道からやって来て、「陸軍基地と連絡が取れなく なり、戻ると兵士たちの死体が有刺鉄線に引っ掛かっていた。こっちは行かない方がいい」と語る。それとは別の道から来た運転手も、 「誰とも連絡が取れなくなった」と言う。エリオットはジュリアンと連絡が取れず、不安になった。掛けはアルマに、「種苗場の主人の 言う通りかもしれない。異変は公園から始まった」と告げる。
そこに集まって来た人々の情報によれば、他の場所でも異変が起きているという。オースターはエリオットに、「しばらく、この場で じっとしていましょう」と呼び掛けた。ある主婦がプリンストンにいる娘ステイシーと電話で話し始め、人々が周囲に集まった。会話を 聞いていたエリオットは、「傍に植木のある窓に近付くなと言うんだ」と指示した。ステイシーは「外にいる人はみんな死んでいる」と 告げた後、様子がおかしくなり、ガラス窓を突き破る音が電話の向こうから聞こえてきた。
ラジオを聴いたオースターは、異変が大都市から小さな町、そして道路へ移って来たことを知り、「やはり道路は危険だ」と言う。彼は 集まった人々に、「敵は集団を襲っています」と言う。そして彼は不動産業をしているコリンズを紹介し、「アランデル郡という場所が あります。人が住める場所ではないし、住民もほとんどいないので、そこへ移動しましょう」と促した。すぐに出発するグループと、 荷造りが必要なグループに分かれることになった。
エリオットたちは、すぐに出発するグループへ入った。彼はアルマから「同じ職場のジョーイと甘い物を食べに行った。残業と言ったのは 嘘だった」と告白され、ショックを受けた。後ろのグループを先導していたオースターは精神をやられ、携帯していた銃で自殺した。その 銃を使って、次々に自殺が起きた。連続で鳴り響く銃声を耳にしたエリオットは、アルマに急かされながら必死で対策を考えようとする。 彼は「植物が原因なら、第2班は人数が多い。人間が刺激してるのかも」と口にした。
エリオットは「大勢の人間が固まっていると、植物が化学物質を出すのかもしれない。風から逃げよう」と人々に告げた。その時、近くで 風が吹いた。エリオットは「少人数に別れよう」と呼び掛けた。彼はアルマ、ジェス、ジョシュとジャレッドという青年2人組の5人で 、風の吹く草原を必死で走った。しばらくすると風が止み、エリオットは「何も起きなかった。人の数に反応するんだ」と言う。
エリオットたちは近くにあった住宅展示場へ入り、地図を発見する。エリオットはアルマに「人口の少ない場所へ行けば助かる可能性が ある」と告げた。住宅展示場を離れた直後、エリオットは2つのグループが集まる様子をもく家議した。様子を観察していると、1人の男 が芝刈り機で自殺した。エリオットたちはラジオを発見し、周波数を合わせる。「北東部の危険地域の人々に避難命令が出た」という内容 の緊急放送があったが、ノイズが酷くて電波は途絶えてしまった。
エリオットたちは楓の木がある家に辿り着く。窓は塞がれていたが、隙間から覗くと中には人がいた。しかし「食べ物を貰えますか」と 呼び掛けると、住人の男は「あっちへ行ってくれ。ウチに毒ガスを運び込むな」と鋭く言い放つ。「僕らは毒ガスなんて持っていません。 声を聞けば正常だと分かるでしょう」とエリオットが穏やかに説明しても、「よそものだろ、出ていけ」と彼は冷たく拒絶した。
ジョシュは「小さい子に食べ物ぐらいくれてもいいだろ」と怒鳴り、ジャレッドも「ドアを開けろ」と腹を立てた。すると住人は窓の隙間 から発砲し、ジョシュとジャレッドが殺された。そこから逃げ出したエリオットたちは、ジョーンズという老女のいる家に辿り着いた。 ジョーンズ夫人は「頼むから夕食を食べさせてくれ、そう言いたいんでしょ」と告げ、3人を招き入れる。彼女は穏やかに話していたかと 思うと、パンを取ろうとしたジェスの手をピシャリと叩いて「他人の物に触ってはいけません」と厳しく注意した。
ジョーンズ夫人は周囲との付き合いが無く、テレビやラジオも所持していなかった。アルマが外の異変を知らせようとすると、彼女は冷淡 な表情で「貴方が重要だと思っても、私には言わなくて結構よ。世の中が何をしてくれる?私とは無縁」と告げた。翌朝、目を覚ました エリオットが下の部屋に行くと、ベッドには少女の人形が寝かされていた。彼が思わず「頭がおかしい」と呟くと、後ろから現れた ジョーンズ夫人は「私の物を盗む気ね。さっさと出ておいき」と憎しみに満ちた目で怒鳴った…。

脚本&製作&監督はM・ナイト・シャマラン、製作はサム・マーサー&バリー・メンデル、共同製作はホセ・L・ ロドリゲス&デヴェン・コーテ、製作総指揮はロニー・スクリューワーラー&ザリーナ・スクリューワーラー&ロジャー・バーンバウム& ゲイリー・バーバー、撮影はタク・フジモト、編集はコンラッド・バフ、美術はジェニーン・オッペウォール、衣装はベッツィー・ ハイマン、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。
主演はマーク・ウォールバーグ、共演はゾーイ・デシャネル、ジョン・レグイザモ、ベティー・バックリー、フランク・コリソン、 アシュリン・サンチェス、スペンサー・ブレスリン、ロバート・ベイリーJr.、 ジェレミー・ストロング、アラン・ラック、ヴィクトリア・クラーク、アリソン・フォランド、クリステン・コノリー、コーネル・ ウーマック、カーティス・マックラリン、ケリー・オマリー、シャイナ・デバク、シリル・トーヴナン、バビータ・ハリアニ他。


『シックス・センス』『ヴィレッジ』のM・ナイト・シャマランが監督・脚本・製作を務めた作品。
エリオットをマーク・ウォールバーグ、 アルマをゾーイ・デシャネル、ジュリアンをジョン・レグイザモ、ジョーンズをベティー・バックリー、種苗場の主人をフランク・ コリソン、ジェスをアシュリン・サンチェス、ジョシュをスペンサー・ブレスリン、ジャレッドをロバート・ベイリーJr.、オースター をジェレミー・ストロングが演じている。

最初の2つの事件が発生した時点で、既に「化学毒素を含む気体が撒かれた」という説が発表されている。それなのに、防護服を着用した 専門チームが出動するとか、人々がマスクで鼻と口を塞ぐとか、そういう様子は全く見られない。人々は、ごく普通の姿で移動し、避難 している。
そりゃあ避難することは必要だろうけど、それと同時に、毒素を吸い込まないような対策を取るべきでしょ。
政府にしても、テレビやラジオを通じて、毒素を吸い込まないような勧告を出すべきじゃないのか。
プリンストンに到着したジュリアンたちは首吊り死体を見つけるが、ってことは毒素が撒かれたことになるんだから、鼻と口を何かで防護 しなさいよ。車の窓の隙間を衣服で塞いでいる奴はいるけど、風が吹き込む音がした時点で、なぜ自分の口や鼻を塞がないのか。
一方、道路で人間の死体を見つけたエリオットたちも、なぜ口や鼻を塞ごうとしないのか。それと、なぜ車の外に出て双眼鏡を覗いたのか 。死体を確認するなら、車の中から確認しろよ。

ジュリアンがジェスをエリオットに預けるのは、ちょっと無理があるなあ。どっちへ行くにしろ、そこが安全かどうかは分からないんだし 。まあ確率を考えて、託したんだろうけどさ。
ただ、ジェスが全く有効に機能していないんだよね。わざわざ他人の娘を預かるぐらいだから、もっと意味のある存在として活用され なきゃダメだろうに。
っていうか、そこは自分たちの娘でいいでしょ。他人の娘にしている意味が良く分からない。
終盤、離れた場所にいるエリオットとアルマが会話を交わし、ギクシャクしていた夫婦関係を修復するドラマが描かれるのだが、ジェスは 部外者なので、完全に「要らない人」になってしまう。
っていうか、そこに限らず、ジェスの必要性って、ほとんど感じられない。

「植物が原因」と種苗場の主人が言い出した時点では、エリオットは頭がイカれていると思って相手にしていない。やがて彼は、その説を 信じるようになるのだが、そこには根拠が無いので、説得力はゼロだ。種苗場の主人が理論立てて根拠を説明しているわけじゃないし、 エリオットが自分で調査して確信を持つわけでもない。
種苗場の主人の言葉と、「公園で異変が始まったから」という事実と、その2つしか、「植物が原因」とするための材料は無いのだ。
しかも、「植物が原因」と言い出した種苗場の主人は、樹木が茂っている場所で平然とホットドッグを食べている。
その後も、エリオットにしろ種苗場の主人にしろ、植物は危険だと感じているはずなのに、平気な顔で草地を進む。
みんな、あまりにも無防備すぎるんだよな。
「原因を探る」→「それが本当の原因ではないと判明する」とか、「対策を取る」→「それでも人が死んでいく」という手順を踏んで くれないと、ものすごく粗さが目立つのよ。
とにかく、毒素を吸い込まないための対策を取ってくれと。後半、ガスマスクで防備しているピーターズ・バーグの夫婦がチラッと写る けど、そういう風に、ちゃんと分かって対策を取っている人もいるんじゃねえか。でも、その2人だけなんだよな。
あと、「当局によって防衛線が張られました」という報道があるが、どういう防衛線なのかサッパリ分からないぞ。何が原因かさえ政府は 良く分かっていないはずなのに、防衛線なんて張れないでしょ。

「大勢でいると危険」という推測に辿り着くのは、ちょっと無理を感じるなあ。それを最初に言い出すのはオースターなんだけど、そう 考えた根拠は良く分からないし。
それに、最初に死んだヘアピン女は、ベンチに2人で座っていたんだから、「大勢」じゃないでしょ。それをエリオットは知らないけど、 こっちは知っているので、その理論に基づいて行動されても「いや、間違ってるから」とクールに見てしまう。
ところが、それは事実らしいと判明する。
セントラル・パークには大勢の人々がいたけど、あの距離だと「大勢のグループ」という扱いになるってことなのか。
そこは引っ掛かるなあ。

楓の木がある家に行く直前、エリオットが「君に言っておかないと。この前、薬局で美人の薬剤師に会った。僕は咳なんて必要なのに、 咳止めシロップの場所を尋ねた」という話をして、アルマが「笑わせたいの?」と尋ねるシーンがある。
エリオットがうなずき、彼女は「ありがとう」と告げる。
ワシは思わず「うそーん」と言ってしまったよ。
てっきり、エリオットはアルマの浮気を遠まわしに非難するため、、こっちも浮気しそうになったことを喋ったのかと思ったよ。
そこの会話、意味合いが分かりにくいわ。

楓の木がある家では、住人の発砲でジョシュとジャレッドが殺されるという事件が起きる。
そりゃあ、「何よりも人間が怖い」ということを示すシーンを用意するのは、ホラー映画だと珍しくない。
だけど、この映画でそれをやるのは、得策とは思えない。ただ単に、恐怖の対象をズラしちゃったとしか思えない。
しかも、そこだけじゃなくて、その次には、イカれちゃった老女が登場する。
恐怖の対象が、また毒素からズレてしまうのだ。

終盤に至って、もう「風と植物は危険」と分かっているはずなのに、それでも窓とドアを開けたままで小屋にいるノホホンとしたアルマの アホっぷりには呆れてしまう。
あと、エリオットが「一緒に死にたい。そっちに行く」と言い出した時、アルマがジェスの手を取って一緒に連れて来るのも、「他人の娘 を心中に巻き込むなよ」と呆れてしまう。
その時点で、エリオットもアルマも「2人とも死んだら、この子はどうなるんだろう」ということは全く考えていないし、すげえ無責任 だよな。

(観賞日:2012年2月22日)


第29回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低主演男優賞[マーク・ウォールバーグ]
<*『ハプニング』『マックス・ペイン』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低監督賞[M・ナイト・シャマラン]
ノミネート:最低脚本賞

 

*ポンコツ映画愛護協会