『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』:2007、アメリカ&ドイツ&イギリス&カナダ
日本では駿河湾が凍結し、エジプトでは砂漠に雪が積もり、ロサンゼルスでは大停電が起きた。それらの異常現象は、ニューヨークでも 報じられた。しかし、それよりも大きく報じられたのが、ファンタスティック・フォーのメンバーであるリードとスーの結婚式の話題だ。 これまで2人の結婚は、3度も延期されていた。空港にいたスーは、そのニュースを見て辟易した。彼女は自分たちが騒がれることを快く 思っていない。その近くで、ジョニーとベンは人々との写真撮影に応じた。特にジョニーはノリノリだ。
リードはスーに内緒で、異常現象について調査していた。彼はジョニーに、「原因は宇宙放射能だ」と告げる。しかしジョニーは、そんな ことには全く興味を示さず、「独身さよならパーティーをやろう」と持ち掛ける。一度は「ガラじゃない」と断ったリードだが、結局は 行くことにした。会場のクラブに出掛けると、ジョニーはパーティー・ガールをブッキングしていた。
バクスタービルには、ヘイガー将軍が部下の女性レイを連れて現れた。スーが応対すると、リードの所へ案内するようヘイガーは要求した。 スーがヘイガーを連れてクラブヘ行くと、リードはパーティー・ガールと楽しそうに踊っていた。リードとヘイガーには因縁があった。 数年前、ヘイガーが新しい防衛システムを導入しようとした時、リードが弱点を指摘したのだ。
ヘイガーはリードに、「統合参謀本部の命令で来た。機密情報を明かすのは気が進まない」と言い、不快感を隠さなかった。彼は偵察衛星 が撮影した写真を見せた。そこには流星のような物体が写っていた。それを見たベンは、「エネルギーを発している」と口にした。異変が 起き始めてから、世界各地でクレーターが出現していた。ヘイガーは「写真の物体を捕まえねばならん」と言う。
リードは「センサーを作って、バクスタービルの衛星ネットワークに繋げば位置が特定できる」と告げる。しかし彼は「土曜日に結婚式が あるので忙しい」と、協力を断った。ジョニーはレイを口説くが、冷たく無視された。スーは、リードが私生活を優先してくれたことを 喜び、クラブでの出来事を許した。だが、リードは彼女に内緒で、センサーの製作に取り掛かった。
結婚式の当日になっても、リードはセンサーを作っていた。式の直前になって完成させた彼は、ヘイガーに連絡し、システムを稼動させた。 結婚式が行われるバクスタービルの周囲には、大勢のマスコミが集まっていた。スーはベンの恋人アリシアに、「ずっと落ち着かない生活 を送るの?」と漏らす。アリシアは「リードを愛していれば何の心配も無い」と励ました。
ビルの屋上で結婚式が始まるが、例の物体が上空を通過して停電が発生した。リードの指示を受け、ジョニーがヒューマン・トーチに変身 して物体を追った。それはサーフボードに乗った人間型の生命体で、全身が銀色に覆われていた。ジョニーは生命体に追い付くが、首を 掴まれて宇宙空間に引っ張り出された。「降参する」と言うと生命体は手を離し、ジョニーは砂漠へと墜落した。生命体は、ある星に 向かって「使者として主をお招きします。新たな星を発見。直ちに実行されよ」と告げた。
リードは生命体をシルバーサーファーと呼び、「物質やエネルギーを変える力を持っているのは確かだ」と分析した。シルバーサーファー はビルを通過する際、センサーを破壊していた。具合の悪そうなジョニーにスーが触れると、2人の特殊能力が入れ替わった。リードが 調べると、シルバーサーファーに近付いたことでジョニーの分子に影響が出ていることが分かった。試しにベンがジョニーに触れると、 やはり能力が入れ替わった。再び触ると、元に戻った。
結婚式の騒動がテレビで報じられ、スーは苛立った。リードは彼女に「この仕事が終わったら全て捨ててバクスタービルから引っ越そう」 と告げた。チームを解散して普通の生活をしようというリードの提案に、スーは喜んだ。その話を盗み聞きしたジョニーは、ベンに報告 した。アリシアはリードとスーを擁護するが、ジョニーとベンは憤懣を抑え切れない様子だった。
グリーンランドのラッセル氷河に出現したシルバーサーファーの前に、ヴィクター・ヴァン・ドゥームが現れた。ファンタスティック・ フォーによって倒されたヴィクターは、協力者の手によって復活していたのだ。ヴィクターが「手を組めば我々は無敵だ」と持ち掛けると 、シルバーサーファーは「全ての者が終末を迎える」と告げて立ち去ろうとする。「言う通りにしろ」とヴィクターは攻撃を加えるが、 シルバーサーファーの衝撃波によって吹き飛ばされた。
リードはシルバーサーファーの放射線を天文学のデータベースと照合した。その結果、シルバーサーファーが現れた星は、全て8日後に 滅びていた。クレーターを数列に変換して分析したリードは、シルバーサーファーの次の出現場所を割り出した。リードの分析は的中し、 シルバーサーファーは観覧車の近くの川から出現した。だが、ジョニーがミスを犯してリードと接触し、そのせいで観覧車の客を危険に さらしてしまう。何とか観覧車の客は救ったが、シルバーサーファーには逃げられてしまった。
ヘイガーはファンタスティック・フォーの失態を非難し、「君たちだけでは無理だ。助っ人を呼んだ」と告げた。彼が呼んだ助っ人とは、 ヴィクターだった。彼は「シルバーサーファーと接触して情報を持っている。地球の危機を救える」と言う。ヘイガーからヴィクターとの 協力を指示されたファンタスティック・フォーは激しく反発するが、結局は手を組むことにした。
ヴィクターはシルバーサーファーに吹き飛ばされた時、それを映像に記録していた。分析した結果、シルバーサーファーのエネルギーは ボードから出ていることが判明した。それを切り離せば、シルバーサーファーは無力化する。リードは磁場を発生させる装置を製作した。 ファンタスティック・フォーはヘイガーたちと共に、次にシルバーサーファーが現われるドイツの森へ向かう。
磁場を発生させる装置をセットしていると、スーの前にシルバーサーファーが現われた。リードとスーが彼と話していると、ヘイガーは ミサイルを発射した。するとシルバーサーファーは、スーを守る姿勢を示した。シルバーサーファーが逃走した後、リードたちは磁場の 発生装置を作動させた。シルバーサーファーはボードから切り離され、ヘイガーたちに捕獲された。
シルバーサーファーはロシアの研究所へ連行された。リードたちは「約束が違う」とヘイガーに抗議するが、監禁されてしまう。ヘイガー はシャーマン博士に、シルバーサーファーへの薬物投与を指示した。彼らが部屋を出た間に、スーが透明化してシルバーサーファーと接触 した。シルバーサーファーは、惑星を食べる破壊神ギャラクタスから母星を救うために下僕となったことを打ち明けた。一方、ヴィクター はヘイガーと衛兵を倒し、ボードを手に入れて暴れ始めた…。監督はティム・ストーリー、キャラクター創作はスタン・リー&ジャック・カービー、原案はジョン・ターマン&マーク・フロスト、脚本 はドン・ペイン&マーク・フロスト、製作はベルント・アイヒンガー&アヴィ・アラッド&ラルフ・ウィンター、共同製作はロス・ ファンガー&リー・クリアリー、製作協力はアリソン・カレリ&スチュワート・ベトゥーン、製作総指揮はスタン・リー&ケヴィン・フェイグ&クリス・コロンバス&マーク・ラドクリフ&マイケル ・バーナサン、撮影はラリー・ブランフォード、編集はウィリアム・ホイ&ピーター・S・エリオット、美術はカーク・M・ ペトルッチェリ、衣装はメアリー・ヴォクト、特殊メイクアップ効果はマイク・エリザルデ、音楽はジョン・オットマン。
出演はヨアン・グリフィズ、ジェシカ・アルバ、クリス・エヴァンス、マイケル・チクリス、ジュリアン・マクマホン、ケリー・ ワシントン、アンドレ・ブラウアー、ダグ・ジョーンズ、ボー・ガーレット、ブライアン・ポセーン、ザック・グルニエ、ケネス・ ウェルシュ、ドーン・チュバイ、クリス・ガイルス、ケヴィン・マクナルティー、アンディー・スタール、デビー・ティマス、モネカ・ デライン、クリスタル・ロウ、クリス・カレリ、ベン・エイアーズ他。
声の出演はローレンス・フィッシュバーン。
マーベル・コミックの人気タイトルの1つを基にした映画『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』の続編。
リード役のヨアン・グリフィズ、スー役のジェシカ・アルバ、ジョニー役のクリス・エヴァンス、ベン役のマイケル・チクリス、 ヴィクター役のジュリアン・マクマホン、アリシア役のケリー・ワシントンは、前作から引き続いての出演。冒頭、空港にいるファンタスティック・フォーは、オーバー・ブッキングで飛行機の席がエコノミーに変更される。
ジョニーはエコノミーを嫌がって、ヒューマン・トーチに変身して空を飛ぶ。
で、そこでトラブルが発生するとか、謎の物体を目撃するとか、何かあるのかと思ったら、何も無い。
リードが腕を伸ばして荷物を収納するとか、ベンが他の客に変な目で見られるとか、そういうコメディーとしてのネタを見せただけで 終了する。その時点で、観客は本作品の本質に気付かねばならない。
「アメコミ映画」と聞いて、例えば『バットマン』のような作品を想像してはいけない。
この映画は、それとは真逆のベクトルを向いている。
100パーセン混じりっ気無しに、完全に「陽」のベクトルを向いている。
「アメコミ映画」というよりも、「アクション・コメディー映画」として捉えた方が分かりやすいかもしれない。MPAAによるレーティングシステムでは、この映画はPG指定(保護者の承諾があれば観賞OK。ほぼ制限無しに近い)で済んでいるが 、これはマーベル・コミックの映画としては『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』以来のことだという。
ようするに、オコチャマが見ても大丈夫なぐらい刺激の少ない、健全で心に優しい作品ってことだ。
『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』以来という書き方をすると、同じぐらいの駄作だと受け取る人もいるかもしれないが、 あながち間違いとも言えないので、それでもいい。
まあ『ハワード』ほどヒドくはないけれど。ファンタスティック・フォーがシルバー・サーファーとファースト・コンタクトするまでは、スーが騒がれる生活にウンザリするとか、 リードがパーティーでノリノリになるとか、コメディーとしての時間帯が延々と続く。
その緊張感の無いおバカな話を「要らないモノ」と感じてしまったら、この映画は、ものすごく薄っぺらい中身ってことに なってしまう。
そういう私生活の呑気な話と地球の危機が同列で扱われるというノリを受け入れないと、この映画はキツい。お気楽でアッパラパーな作品 なので、あっけらかんとして軽いノリに付いて行けないとキツい。
なんせファンタスティック・フォーは、地球の危機だというのにギャグをカマしたりジョークを飛ばしたりしていて、ちっとも緊張感が 無いのである。
このままでは地球が滅びることが判明しても、内輪揉めをやらかしたりしている始末だ。だが、この映画を「能天気だから」という理由で批判するのは間違いだ。
それは東映の明るく楽しい時代劇映画、例えば『快傑黒頭巾』を見ているのに、「なぜ市川雷蔵の『眠狂四郎』シリーズみたいにシリアス じゃないんだ」と文句を言うようなモノで、完全に見当違いの批判だ。
批判するなら、「アクション・コメディーとしてポンコツだ」という方向で批判すべきだ。例えば、
「相変わらずスーは透明化よりもエネルギーシールドの方が有効活用されている」
「リードは4人の中で特殊能力に関しては最も役立たずになっている」
「終盤、ジョニーがリードとベンに触れたら、自分の能力は保持したままでリードとベンの能力も手に入れるというのはデタラメじ ゃないのか」
「そうなるとヴィクターを倒す時に活躍するのはジョニーじゃねえか」
「ギャラクタスを倒す時なんて、全てシルバーサーファーがやってしまうから、ファンタスティック・フォーは何もしてねえじゃねえか」
「っていうか、その気になればギャラクタスを倒す力を持っていたシルバーサーファーは、なぜ下僕になっていたんだよ」
など、そういったポイントで本作品を低く評価するということであれば、何の問題も無い。(観賞日:2010年3月1日)
第28回ゴールデン・ラズベリー賞
ノミネート:最低主演女優賞[ジェシカ・アルバ]
<*『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』『噂のアゲメンに恋をした!』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低スクリーン・カップル賞[ジェシカ・アルバ&ヘイデン・クリステンセンかデイン・クックかヨアン・グリフィズの誰か]
<*『アウェイク』『噂のアゲメンに恋をした!』『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』の3作でのノミネート>