『バレット』:2012、アメリカ

殺し屋のジミー・ボノモは、命を狙われた刑事のテイラーを救った。いつもなら刑事を助けることなど有り得ないが、彼には信念を曲げる理由があった。時間を遡る。彼は相棒のルイスと共に刑事を装ってホテルの一室へ行き、標的のハンク・グリーリーを射殺した。ホテルを後にしたジミーは、ルイスに「仲介人のロニー・アールから金を受け取ったら、しばらく休め」と告げる。何があったのか尋ねるルイスに、彼はシャワーを浴びていた娼婦を殺さずに見逃したことを打ち明けた。
顔を見られたことを不安視するルイスに、ジミーは「口は割らない。刑事より俺たちの方が怖いからだ」と告げる。2人はロニーと会うため、待ち合わせ場所のカントリーバーに赴いた。時間になってもロニーが来ないので、ジミーはトイレに行く。2人を監視していた大男のキーガンがルイスに近付き、ナイフで刺殺した。大キーガンはトイレへ行き、ジミーも殺そうとする。しかしジミーの反撃を受けたため、店から逃走した。ジミーはルイスの死体を発見した後、キーガンを追い掛けた。
ワシントン警察のテイラー・クウォンはニューオーリンズへ飛び、地元警察のレブレトン警部補と会った。極秘情報を掴んで殺されたと思われる、グリーリーの死体を見せてもらうためだ。警察署では、タウン刑事が現場にいた娼婦のローラから話を聞いていた。ローラはジミーの顔をハッキリと見ていたが、「顔は良く見えなかった」と証言した。グリーリーはテイラーの元相棒で、酒とギャンブルに溺れて担当事件の証拠品を盗んだために解雇されていた。
テイラーは同僚のマッケイから電話を受け、グリーリーの周辺から地元の裏社会を仕切るベイビー・ジャック・ルモインという人物が浮上したことを知らされる。グリーリーの死体確認に赴いたテイラーは、ルイスの死体も目にする。テイラーはマッケイにルイスのことを調査してもらい、ジミーが相棒であることを知った。2人がグリーリーを殺した可能性があると睨んだテイラーは、ジミーを追いたいと考える。だが、レブレトンは「ウチで対処できる」と言い、市の許可を取っていないテイラーの拳銃を回収した。
テイラーはジミーに電話を掛け、留守電に「グリーリーは俺の相棒だった。ルイス殺害と関係があるはずだ。もっと話が聞きたければ、3時間後にセント・チャールズ・バーまで来い」とメッセージを吹き込んだ。ジミーがバーへ行くと、テイラーは「昨夜、アンタとルイスはグリーリーを殺した後で裏切りに遭った」と指摘した。「アンタを裏切った依頼主を知りたい。報酬も受け取ってないだろ。俺と手を組めば、お互いに損は無いぞ」と彼は持ち掛けるが、ジミーは「刑事と組む気は無い」と拒否した。
ジミーに連絡先のメモを渡してバーを出たテイラーは、尾行する男たちの存在に気付いた。駐車場に逃げ込んだ彼は、1人を待ち伏せて射殺する。所持品を調べたテイラーは、警察バッジを発見した。その直後、もう1人に撃たれたテイラーは、弾が切れて危機に陥る。そこへジミーが車で駆け付け、刑事をひき殺した。ジミーが「車に乗れ」と言うと、テイラーは「殺したのは刑事だ。すぐに警察が来て逮捕されるぞ」と告げる。ジミーが「もう1人の死体も転がってる。撃った銃にはお前の指紋がベッタリだ。傷の手当てに行くか、降りて逮捕されるのを待つか、2つに1つだぞ」と言うと、テイラーは傷の手当てを選んだ。
キーガンはボスのマーカスとモレルに呼び出され、「昨夜はヘマをしたらしいな」と指摘される。キーガンが「仕事を残したが、すぐに終わる」と言うと、マーカスは「グリーリーは俺たちを脅迫するネタとして、保険を掛けてた。ベイビー・ジャックを見つけ出して、ウチが政府発注の契約を取れるように議員たちを買収した証拠書類を預けてた。ベイビー・ジャック側に内通者を潜ませて書類のありかは突き止めてある」と説明する。モレルは「お前が奪って処分しろ」とキーガンに命じた。
ジミーはタトゥー・ショップを営む娘のリサを訪ね、テイラーを手当てするよう頼んだ。テイラーはジミーに内緒でレブレトンに電話を掛け、「グリーリー殺しの依頼主を知る人物と接触しました」と報告した。キーガンはベイビー・ジャックが営む会員制バーに乗り込み、オフィスにいた手下たちを始末した。キーガンはベイビー・ジャックに金庫を開けさせてから殺害し、書類を手に入れた。キーガンはバーにいた連中も殺害し、書類をモレルに渡した。
テイラーはジミーに、リサの背中のタトゥーがローラのタトゥーと良く似ていたことを話す。「タトゥーが似ていたから殺さなかったんじゃないのか。娘と重なってセンチになったんだろ」と、彼は指摘した。依頼主が誰なのか尋ねる彼に、ジミーは「仕事は仲介人を通して受けている。今回はロニー・アールだ」と告げた。ジミーは連絡を取っても捕まらないことを話した、テイラーはマッケイに電話を掛けてロニーを調べるよう指示した。すると、ロニーがクレジット・カードを使ったトルコ式浴場が判明した。
ジミーは車で待つようテイラーに要求し、浴場へ乗り込んだ。ロニーに依頼主のこと尋ねると、「知らない。間に大勢の仲介人が入っている。俺の取り分だって、まだ貰ってない」と答える。「俺はルイスを殺してない。一緒に依頼主を見つけよう」とロニーは言うが、隙を見て拳銃を取り出す。だが、ジミーは事前に弾丸を抜き取っていた。ロニーは依頼主が弁護士のマーカスだと白状した。テイラーが密かに撃針を外していたため、ジミーは発砲できずに焦る。しかし彼はロニーと格闘してプールに突き落とし、銃弾を浴びせた。
ジミーとテイラーは、マーカスが仮面パーティーを開いている屋敷に潜入した。マーカスに近付こうとしたジミーは、キーガンを発見した。ジミーはトイレに入ったマーカスを昏倒させ、テイラーに手伝わせて屋敷から連れ出した。モレルはマーカスが連れ去られる様子を撮影した監視カメラの映像を見て、キーガンの失態を責めた。モレルの子飼いであるタウンは、マーカスの携帯のGPS信号を追跡していることを告げる。モレルはキーガンに、マーカスと拉致した男たちを一緒に消すよう命じた。
ジミーはマーカスを拘束して隠れ家のボートハウスへ連行し、尋問しようとする。テイラーが「俺に任せろ。俺の仕事だ」と自信満々に言うので、ジミーはマーカスを脅した上で彼に委ねる。しかしマーカスが全く口を割らないので、ジミーは暴力を使う。途端にマーカスは、キーガンがフランス外人部隊出身であること、今はモレルに雇われていること、モレルが議員たちに賄賂を贈っていた書類をグリーリーが手に入れて脅そうとしていたことを白状した。
さらにジミーが脅しを掛けると、マーカスはモレルが西アフリカから莫大な金を騙し取っていること、街の安い不動産を他人名義で購入していること、政治家を買収して再開発計画を一手に引き受けていることを暴露する。そして彼は、首から下げたロケットに、賄賂の証拠が入っていることを明かした。ロケットを開けると、賄賂の証拠をコピーしたUSBメモリが入っていた。マーカスが「お前らはキーガンに殺される」と挑発的な態度で言い放つと、ジミーはライフルで射殺した。
キーガンと手下たちがボートハウスに到着し、一斉に発砲した。ジミーはテイラーと水に飛び込んで逃亡し、仕掛けておいた爆弾を起動させてボートハウスを爆破した。手下たちは全滅するが、キーガンだけは生き延びた。ジミーはリサの住む家へ行き、テイラーと共にUSBメモリの中身を確認した。テイラーはレブレトンに電話を掛け、モレルが事件の黒幕であること、賄賂の証拠を手に入れたことを報告した。テイラーはモレルを逮捕して裁判に掛けようと考えていたが、ジミーは「俺は奴をルイスと同じ目に遭わせなきゃ気が済まない。お前はお前の仕事をすればいい。俺は俺のやり方でやる」と告げる…。

監督はウォルター・ヒル、原作はマッツ&コリン・ウィルソン、脚本はアレサンドロ・キャモン、製作はアレクサンドラ・ミルチャン&アルフレッド・ガフ&マイルズ・ミラー&ケヴィン・キング=テンプルトン、共同製作はアーロン・アウチ&ジェシカ・アラン&ロバート・J・ドーマン、製作総指揮はスチュアート・フォード&ブライアン・カヴァナー=ジョーンズ&ディーパック・ナヤール&スティーヴン・スクイランテ&ジョエル・シルヴァー&コートニー・ソロモン&アラン・ゼマン&スティーヴ・リチャーズ&スチュアート・ベッサー、撮影はロイド・エイハーン、編集はティム・アルヴァーソン、美術はトビー・コーベット、衣装はハ・ニューエン、音楽はスティーヴ・マッツァーロ。
主演はシルヴェスター・スタローン、サン・カン、ジェイソン・モモア、サラ・シャヒ、アドウェール・アキノエ=アグバエ、クリスチャン・スレイター、ジョン・セダ、ヴェロニカ・ロサティー、ホルト・マッキャラニー、ブライアン・ヴァン・ホルト、デイン・ローデス、マーカス・ライル・ブラウン、アンドリュー・オースティン=ピーターソン、ポール・エサレッジ、ロバート・カヴァン・カルース、ルイス・ミショー、アンドレ・ミショー、レイシー・ミンチュー、ドミニク・デュヴェルネイ他。


フランスのグラフィック・ノベル『Du Plomb Dans La Tete』を基にした作品。
『サンキュー・スモーキング』や『ウォール・ストリート』の製作総指揮を務め、『メッセンジャー』でベルリン国際映画祭の銀熊賞(脚本賞)を受賞した映画プロデューサーのアレサンドロ・キャモンが脚本を担当している。
監督は『48時間』『ストリート・オブ・ファイヤー』のウォルター・ヒル。劇場用映画を撮るのは、2002年の『デッドロック』以来のことだ。
ジミーをシルヴェスター・スタローン、テイラーをサン・カン、キーガンをジェイソン・モモア、リサをサラ・シャヒ、モレルをアドウェール・アキノエ=アグバエ、マーカスをクリスチャン・スレイター、ルイスをジョン・セダ、ローラをヴェロニカ・ロサティーが演じている。

この映画を製作したのは、ロバート・ゼメキスとジョエル・シルヴァーが共同で設立したダーク・キャッスル・エンターテインメント。
だけど、ダーク・キャッスル・エンターテインメントってホラー映画専門の製作会社として設立されたはずでしょ。いつの間に、ホラー以外のジャンルにも手を伸ばしたのか。
そこは会社のアイデンティティーに関わる問題だろ。わざわざジョエル・シルヴァーがダーク・キャッスル・エンターテインメントでアクション映画を製作している意味が良く分からんぞ。
ホラー以外の映画も作りたいのなら、彼はシルヴァー・ピクチャーズという会社も持っているんだから、そっちで作ればいいでしょ。

ウォルター・ヒルは1980年代には前述した『48時間』や『ストリート・オブ・ファイヤー』といったヒット作を手掛けたが、1990年代に入ると低迷期を迎えた。
2000年代に入ると『スーパーノヴァ』を途中降板し、劇場用映画は『デッドロック』を撮っただけ。
映画業界から声が掛からなくなったので、その後はテレビの世界に活動の場を移さざるを得なくなっていた。
つまり、今さらウォルター・ヒルを使うのは、完全に「昔の名前で出ています」状態だという印象が強い。

とは言え、実は「ひょっとすると」という期待も、全く抱いていなかったわけでは無い。そのクラシカルなセンスも、脚本次第では上手く転がるんじゃないかという期待があったのだ。
しかし残念なことに、「やっぱりね」という仕上がりになっている。
一言で表現するならば、これは「古臭いB級アクション映画」である。それ以上でも、それ以下でもない。
あえてレトロな雰囲気を出しているとか、そういうことではない。
ウォルター・ヒルには、それしか出来ないのだ。

古臭い演出が意図的であろうとなかろうと、前述したように脚本次第では上手く転がる可能性もある。「新鮮味のある脚本とクラシカルな演出の組み合わせ」が、面白い効果を生む可能性もあるってことだ。
しかし、この映画はシナリオまで古臭いのである。
そっちに関しては、ひょっとすると意図的に「1980年代のアクション映画風」を狙ったのかもしれない。
しかし、そうだとすれば、監督に「1980年代の人」を使うのは完全に間違いで、それだと「1980年代の映画」しか仕上がらない。
この脚本からすると、目指すべきは「1980年代のアクション映画風だけど、演出は新鮮味のある作品」か、もしくは「レトロが一周回って新しく思える作品」だろう。

これは「シルヴェスター・スタローンの男節を堪能しましょう」、もしくは「ウォルター・ヒルの作風に浸りましょう」という作品だ。
音楽担当者はスティーヴ・マッツァーロなのに、なぜかライ・クーダーのように聞こえる辺りまでウォルター・ヒルっぽさが溢れている。
しかし現実問題として、それだけで満足してくれる観客は、どれぐらい存在するんだろうか。
もちろん、スライのファンもウォルター・ヒルのファンも、決して少数ではないだろう。
とは言え、「一部のファンにしか楽しめない」という中身で勝負するのは、ちょっと無茶が過ぎるんじゃないか、もしくは手抜きじゃないかと思ってしまう。

冒頭、ジミーはホテルの一室へ行き、標的の男を始末する。シャワーを浴びていた娼婦を見つけ、ためらいつつも引き金に手を掛ける。
銃声はするが娼婦の死体は写らず、カットが切り替わる。
その段階で彼が娼婦を撃っていないことはバレバレで、ルイスに打ち明けた時には「そんなの分かってたよ」という感想になる。
そんな中途半端に引っ張る意味を全く感じないが、それよりも問題なのは、冒頭の仕事から、いきなりジミーの甘さを露呈させていることだ。
ジミーは「長年に渡って裏社会で仕事をしてきた殺し屋」という設定のはずで、それなのに目撃者を始末せず見逃すってのは、甘すぎるでしょ。

これが例えば、「かつては冷酷非情な殺し屋だったが、何かがきっかけで考え方が変化した」とか、「引退を考えるようになって、気持ちが柔和になった」ということなら、まだ分からないでもない。
しかし、そういう設定は盛り込まれていない。
また、「今までは目撃者が絶対にいないような状況でしか仕事を遂行しなかったが、今回はルイスの失態か情報の伝達ミスで、娼婦が部屋にいるという予想外のことが起きた」ということなら、まだ何とかなる。
しかし、そういうことでもなさそうだ。

バーでの殺人が起きた後、「女子供は殺さない。それが俺のルールだ」と言うので、娼婦を殺さなかった理由は明確になる。
だけど、それで腑に落ちるモンでもないんだよな。「女子供は殺さない」というルールで、長きに渡って殺し屋課業を続けられるとは思えないのよ。
これまでも現場に他の人間がいる状況は経験してきたはずで、時には女子供が目撃者だったこともあるだろう。そいつらは全員、ジミーのことを警察に言わなかったのか。
ジミーは「誰も信用しない。そうやって生き延びてきた」と言ってるけど、女子供は信用してるってことになっちゃうぞ。
「誰も信用しない」という非情なキャラにしておきながら、のっけから「女子供は殺さない」という優しさライセンスをアピールしちゃったらキャラがブレるわ。

いや、別にさ、ジミーを「女子供も容赦なく始末する冷酷な男」というキャラクター設定にしておけと言いたいわけじゃないのよ。
女子供を殺さない優しさを持っているのは、主人公としては構わない。
ただ、登場シーンは「非情な殺し屋」ってのをアピールすべきでしょ。
しかも本人が「誰も信用しない。そうやって生き延びてきた」とモノローグを語るんだから、「誰も信用しないはずの男が、目撃者の娼婦を見逃す」という甘さを冒頭から露呈しちゃうのはマズいんじゃないかと思うわけよ。

後になって「タトゥーが娘と似ていたからセンチになって殺さなかった」というテイラーが指摘しており、それが正解だと思わせる描写もある(ジミーはローラに拳銃を向けた際、タトゥーに目を留めている)。
しかし、それが理由だとしても、「だから特別扱いした」ということではないからね。
本人が「女子供は殺さない」と言っているので、仮に娼婦のタトゥーがローラと似ていなくても、彼は殺さなかったはずだ。
そうなると、「タトゥーが似ていて娘を思い出した」というセンチな設定は、何の意味も無いでしょ。

ジミーは「ルイスはプロだった。6年の付き合いだが、奴がしくじったことは一度も無い」と言っている。
でも、バーでキーガンに襲撃されて簡単に殺される様子は、あまり「有能なプロフェッシッョナル」には見えないぞ。
そりゃあ不意打ちだから仕方のない部分はあるだろう。
だけど、わざわざジミーに「ルイスはプロ。しくじったことは一度も無い」などと有能アピールをさせるのは完全に逆効果だ。

ジミーに狙いを付けたテイラーは、彼に電話を掛ける。
裏社会の殺し屋なのに、堂々と本名を使っているだけでなく、電話番号がバレバレになってんのかよ。危機管理がユルユルだな。
相手が何者かも分からないのに、ノコノコと会いに出掛けるジミーも軽率にしか思えない。テイラーがその気になったら、逮捕されても仕方が無いんだぞ。
で、テイラーはジミーに「俺と手を組まないか」と持ち掛けるのだが、殺し屋と手を組むことに何のためらいも無いキャラってことに違和感を覚える。
そりゃあ刑事にも清濁併せ持つタイプはいるだろうけど、テイラーが「相手が殺し屋でも別に」というタイプには見えなかったんだよなあ。

あと、テイラーが自分から殺し屋に「手を組もう」と持ち掛けておきながら、ジミーの殺しを阻止しようとしたり、「いずれ逮捕しなきゃならん」と言い出したりするのは違うだろ。
そもそも最初は「殺し屋なんかに興味は無い」と言ってたくせに、なんで後半になるとリサに「いずれ逮捕しなきゃ。彼は多くの犯罪を重ねている」と言い出すのかと。
その場その場の状況に合わせてキャラを動かしているから、一貫性が無くなってるんじゃないのか。

それと、そもそもテイラーが何の目的で捜査しているのかも良く分からないんだよな。
「元相棒が殺されたから捜査に来た」というだけでは、ちょっと無理がある。
元相棒であってもグリーリーは既に警察を解雇されているし、完全に管轄外だしね。
他の事件との関連でグリーリーを調べていて、その流れで死体の確認に来たというのが分かりやすい形ではあるけど、そうじゃなさそうなんだよな。

冒頭、車に乗り込んだテイラーが運転席の男に拳銃を突き付けられ、そこにジミーが現れて男を射殺する。ここでジミーの「俺が助けた男は刑事だ」というナレーションが入る。
そこから時間を遡るのだから、「ジミーがテイラーを救うシーン」として、再び冒頭の映像が描写される流れになるのが当然だ。
ところが、そのシーンの前に、ジミーは駐車場で刑事をひき殺し、テイラーを救っている。
それは構成として「間違っている」と断言できる。
最初にジミーがテイラーを助けるシーンは、冒頭で描かれたシーンであるべきなのだ。

ジミーが車に乗るよう言うと、テイラーは乗った途端に拳銃を構えるが、ジミーも同時に構える。そして「殺したのは刑事だ。すぐに警察が来て逮捕されるぞ」「もう1人の死体も転がってる」「奴らは悪党だ。マトモな刑事もいる」「撃った銃にはお前の指紋がベッタリだ」といった会話が行われる。
やりたいことは良く分かる。ハードボイルドな雰囲気で「殺し屋と刑事の微妙な関係性」を描きたいのも分かる。
でも、そこでテイラーがジミーに拳銃を向けるのは、かなり不自然。
自分を救ってくれた相手なんだし、そこで自分を殺すとは思わないはず。
そうなると、拳銃を向ける意味も必要性も無いのだ。ついさっき、自分の方から手を組まないかと持ち掛けた相手だし。
だから、ただの段取り芝居にしか思えない。

テイラーはジミーに内緒でレブレトンと連絡を取り、グリーリー殺しの依頼主を知る相手と会ったことを報告する。
しかし、自分を殺そうとした相手が刑事だと分かったのに、なぜ簡単にレブレトンを信用するのかサッパリ分からない。
襲って来た刑事がレブレトンの仲間だという可能性を、なぜ全く疑わないのか。
知らない土地ってことも含めて、もっと警戒心を持って行動すべきじゃないのか。
裏社会の人間を主人公とする映画で、刑事がボンクラに描写されることは良くあるけど、テイラーはボンクラ仕様じゃマズいキャラでしょ。

ジミーはルイス殺しの黒幕を見つけるためにテイラーと手を組むのだが、「なぜ刑事と手を組まなきゃならないのか」という理由が全く見えて来ない。
仕事の仲介人を知っているのだから、そのルートから探って行けばいいんじゃないかと思うのだ。
後で「ジミーに連絡したが捕まらない」と言っているので、だからテイラーと組むことにしたのかもしれない。
でも、それなら「ジミーと連絡が取れず、黒幕捜しの手掛かりはゼロ」という状況になっていることを先に示すべきだ。

そういう方面の行動を全く取らない内に、一度は手を組むことを拒否したテイラーと一緒に動き始めるってのは不可解だ。
それなら、なぜ一度は拒否したのかと思っちゃうし。
これが「一度は拒否したが状況が変わった」ってことならともかく、状況は変化していないんだし。
それと、テイラーと手を組んだおかげでジミーはロニーの居場所を突き止め、依頼主の名前を聞き出すことが出来るんだけど、そこで終わりだよね。もうテイラーと手を組む必要性が無くなっちゃうんだよね。

その後も「ルイスを殺した奴を見つけたかったら俺と組むしかないんだよ」とテイラーは言ってるけど、そんなことないでしょ。依頼主がマーカスだと分かったんだから、もう充分でしょ。
マーカスの事務所がダウンタウンにあることも分かっているんだし。
っていうか、「ロニーの居場所」という程度の情報を得るのに「警察と手を組まざるを得ない」という展開になっているのは、かなり無理のある脚本だと感じるぞ。
ジミーは裏社会の生活が長いんだし、それなりに情報を持っている連中も知っているはずでしょうに。

浴場へ乗り込んだジミーは、わざと隙を見せてロニーに拳銃を構えさせる。
で、弾丸を抜いておいたことを指摘し、依頼主の名前を白状させてから自分の拳銃で始末しようとするんだけど、テイラーに撃針を外されていたので弾が出ず、格闘になる。
そのタイミングで、なぜジミーのカッコ悪い失態を見せちゃうのよ。
そこはハードボイルドにカッコ良く決めていたんだから、すんなりと「自分を騙して殺そうとしたロニーを容赦なく始末しました」ってことでいいだろ。

一応は「殺し屋と刑事のバディー・ムービー」という体裁を取っているんだけど、実際はジミーばかりが目立ちまくり、活躍しまくる。
テイラーは基本的に、ジミーが着目した人物について調べてもらうために本署へ電話を掛け、分かった情報を伝える役目を担当するだけ。
ロニーの元へ行く時も、仮面パーティーでマーカスを見つけた後も、ジミーはテイラーを待機させ、単独行動を取るのだ。
だから、コンビを組んでいるという印象が乏しい。

極端に言っちゃうと、テイラーの存在を排除し、「ジミーはマッケイと知り合いで、密かに情報を流してもらう」という形でも成立してしまうんだよね。
それ以外でジミーとテイラーのやり取りや会話シーンもあるにはあるけど、コンビの面白さを見せるには至っていない。
「携帯電話を持っていないジミーと、携帯電話の優秀な機能を語るテイラー」という対比なんかも盛り込まれているけど、「昔気質」というジミーのキャラ設定のアピールが不細工すぎるのよ。
だから、見ていて何となく恥ずかしい気持ちになってしまう。

「昔気質の殺し屋と現代的な刑事」の比較対象として携帯電話を小道具に使っていること自体、2012年公開作品ということを考えると、ちょっと古いと感じる。
携帯電話は既に「大半の人間が当たり前のように所持している道具」であって、ジミーと対照的なキャラとしてテイラーを見せたいのなら、もっと最先端の電子機器を持たせるべきだろう。
他にも「センスが古い」と感じる箇所があって、それはモレルがUSBメモリを手に入れるために必死になるってこと。
コピーされていたら、それを手に入れても無駄でしょ。

黒幕はモレルなのだが、スケールのデカさや奥行きの深さは皆無。それどころか、終盤になって存在が矮小化される始末。
何がダメかって、キーガンを邪魔者扱いして始末しようと目論み、逆にあっさりと撃ち殺されてしまうこと。ってことは、ジミーはルイスを殺した黒幕であるモレルを始末できないってことだ。
なんだよ、その計算能力ゼロみたいな展開は。
ジミーとキーガンとの対決をラストに配置するのは別にいいけど、キーガンはモレルに雇われていた殺し屋に過ぎないんだから、その後ろにいたモレルも退治しないと「仇討ちを果たした」とは言えんだろうに。
変なトコで愚かしい仲間割れをさせてんじゃねえよ。

(観賞日:2014年11月11日)


第34回ゴールデン・ラズベリー賞(2013年)

ノミネート:最低主演男優賞[シルヴェスター・スタローン]
<*『バレット』『大脱出』『リベンジ・マッチ』の3作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会