『バウンティー・ハンター』:2010、アメリカ

バウンティー・ハンターのマイロは、パレードに参加している標的のサムを見つけた。しかし捕まえに行こうとしたところにノミ屋の子分 ドワイトが現れ、負債の返済を要求した。マイロはドワイトを殴り倒し、逃げるサムを追い掛けた。マイロはサムを捕まえるが、騒ぎを 起こしたせいで自分も警官に拘束された。一方、デイリーニュースの記者ニコールは、ある飛び降り自殺について記事を書こうとしていた 。彼女は泥酔して一度だけ寝たことのある同僚スチュワートから執拗に言い寄らせているが、相手にしていない。
ニコールは情報屋であるバーテンのサムに電話を掛け、自殺したウォルター・リリーに関する情報収集を依頼した。マイロは親友である 刑事ボビーに頼んで、保釈してもらった。事件を起こして保釈中のニコールは、出廷するため裁判所へ赴く。だが、ジミーから電話が 入り、「重大な情報だ。時間が無い。30分後にサンセットパークのドーナツ店に来てくれ。無理なら他の奴に情報を売る」と告げられる。 ニコールは出廷せず、ドーナツ店へ向かう。判事はニコールの保釈を取消し、逮捕状を出した。
ドーナツ店の駐車場で待機していたジミーは、謎の男アールに車で拉致された。それと入れ違いで、ニコールは店にやって来た。マイロは エージェントであるシドの事務所を訪れ、ニコールを捕まえる仕事が入ったことを知らされる。「あいつをブタ箱に入れれば、報奨金の 5000ドルが手に入るのか」と、マイロは大喜びした。シドが「別れた妻だから、情もあるだろ」と言うと、即座に「あるわけねえだろ」と 言葉を返した。
マイロはニコールの家へ行くが鍵が掛かっていたため、窓から侵入した。しばらく待っていると、スチュワートが現れた。彼がニコールと 寝たと知り、マイロは「幸運を祈るよ」と笑う。一方、ニコールはジミーの家に侵入し、「倉庫から証拠品が盗まれた」と記されている コースターを発見した。マイロはスチュワートから「君がマイロか。彼女が言ってたよ、嫌いだって」と言われ、苛立った口調で「俺も 彼女が嫌いだ」と言い放った。
ニコールはボビーに電話を掛けて、ジミー捜索の協力を求めた。マイロはニコールが母キティーの元へ行ったのではないかと睨み、彼女と 会った。キティーの話から、マイロはニコールが競馬場にいると確信した。競馬場でニコールを見つけたマイロは、わざと時間を与えて 逃走させ、余裕で先回りした。マイロはニコールを車のトランクに押し込んで出発した。その様子を見ていたスチュワートは、自分の車で 後を追い掛けた。
ジミーはアールに脅され、ニコールの依頼で情報を集めていたことを白状した。アールはジミーに指示してニコールに電話を掛けさせ、 彼女がコースターを入手したことを知った。ニコールはマイロを騙して逃げ出すが、すぐに捕まった。ドワイトはノミ屋の親分アイリーン の元へ行き、「マイロに殴られました」と告げる。マイロが誰なのか分からなかったアイリーンは、子分のレイを呼んだ。
レイはアイリーンに、マイロが職務怠慢で1年前にクビになった元刑事であり、ギャンブルの負債が1万1千ドル以上もあるのに2ヶ月も 回収できていないことを説明した。アイリーンはドワイトに、マイロを連れて来るよう命じた。ニコールはマイロに500ドルを差し出し、 「これでカジノに行けば1万ドルは稼げるわ」と持ち掛けた。マイロは誘惑にかられ、カジノの「タージ・マハール」へ赴いた。
ニコールはマイロに、ジミーが飛び降り自殺について調べている最中に失踪したことを話す。「ウォルターは頭から飛び降りた」という 言葉を聞いたマイロは、「飛び降り自殺は足からと決まってる。頭からじゃない」と軽く笑った。「なぜ警察は自殺と断定したの?」と ニコールが疑問を口にすると、彼は「担当刑事にでも訊けよ」と告げた。スチュワートはカジノの駐車場でマイロの車を見つけ、トランク を開けたが、もちろん空っぽだった。そこに現れたレイは、彼がマイロだと思い込み、殴って失神させた。
マイロはカジノで勝ち続け、8千ドルまで所持金を増やした。ニコールは立ち去ろうとするが、マイロは「自由になるのは1万ドルに到達 してからだ」と彼女を捕まえてゲームを続ける。しかし、そこからは負けが続き、8千ドルを全て失った。マイロはニコールを連れて、 ホテルの部屋に行く。マイロはニコールをベッドに手錠で拘束し、またカジノに戻るが、さらに負けてしまった。レイはスチュワートを アジトへ連れ帰るが、ドワイトが来て「こいつはマイロじゃない」と言う。
翌朝、ニコールはマイロの入浴中にやって来たメイドに頼み、自分のバッグを取ってもらう。ニコールはスタンガンを取り出し、それを 隠した。マイロが手錠を外すと、ニコールはスタンガンで彼を失神させて逃げ出した。ホテルに来ていたアールは、エレベーターで降りて いくニコールを目撃した。ニコールは同僚のジェリーに電話を掛け、飛び降り自殺と断定した担当刑事がボビーだと知った。
意識を取り戻したマイロは車を走らせ、ニコールを発見した。マイロはニコールをからかうが、泣き出したので困惑の表情になった。 マイロは彼女を車に乗せ、出発する。しばらくして、ニコールは追い掛けて来る黒のSUVに気付いた。彼女はマイロに、ジミーに会う 予定だった店にあったのと同じ車だと教える。「もし刑事が事件に関与しているなら辻褄が合うわ」とニコールは言うが、マイロは全く 相手にしなかった。その時、SUVで近付いたアールが発砲してきた。
マイロはカーチェイスしながら反撃し、アールの車を道路から弾き飛ばした。彼は車を停め、アールの様子を見に行く。だが、アールは 通り掛かった車を奪って逃走した。マイロが「何がどうなってるんだ」と声を荒げると、ニコールは「聞いてなかったの?」と言い返す。 「お前は飛び降り自殺について言っただけだ」と言うマイロに、ニコールは「死んだ人はニューヨーク市警の証拠品倉庫で働いてた。それ に高所恐怖症だから飛び降りは不自然でしょ」と告げる。
ニコールが「自殺と断定した担当刑事はボビーよ」と言うと、マイロは「ボビーが関係しているわけないだろ」と怒った。「可能性の問題 を言ってるのよ」と口にしたニコールに、彼は「無実の証拠を見つけてやる」と言う。車を調べた彼は、キュッスル・ヒルカントリー クラブのタグが付いたゴルフクラブを発見した。ニコールとマイロはゴルフ場へ行き、そこにいた面々にアールのことを質問した。1人の キャディーが逃げ出したため、2人は彼を捕まえた。
キャディーはニコールとマイロに追及され、「ここ数ヶ月、アールが大物とプレーしていることしか知らない」と言う。彼が「クイーンズ のブルーインクという店でタトゥーを彫る時に送ってもらった。そこのオーナーかもしれない」と言ったので、マイロは電話を掛けてみた 。店員のダーラに「アールはいる?」と問い掛けると、「今は外出中です」という返事だった。マイロは「ウォルター・リリーから電話が あったと伝えてくれ」と告げ、電話を切った。
マイロはニコールを連れて、結婚した時に利用したキューピッド・キャビンへ赴いた。経営者夫婦のエドモンドとドーンが「貴方たちの ことは特に印象的だった」と嬉しそうに歓迎するので、2人は結婚生活が続いているように装った。その夜、2人は互いに素直な気持ちで 語り合い、自分の過ちを認めて詫びる。マイロは「お前のことが好きだ」と告げ、ニコールを連れてハネムーンスイートへ行く…。

監督はアンディー・テナント、脚本はサラ・ソープ、製作はニール・H・モリッツ、製作総指揮はウィンク・モードーント&ロビン・ マイシンガー&ライアン・カヴァナー&ドナルド・J・リーJr.&オリ・マーマー、撮影はオリヴァー・ボーケルバーグ、編集はトロイ ・タカキ、美術はジェーン・マスキー、衣装はソフィー・デ・ラコフ、音楽はジョージ・フェントン。
出演はジェニファー・アニストン、ジェラルド・バトラー、クリスティーン・バランスキー、ジェイソン・サダイキス、ジェフ・ガーリン 、リッチー・コスター、キャシー・モリアーティー、ピーター・グリーン、ジョエル・マーシュ・ガーランド、ドリアン・ミシック、 シオバン・ファロン・ホーガン、キャロル・ケイン、アダム・ローズ、 マット・マロイ、アダム・ルフェーヴル、ジェイソン・コロトゥーロス、アマンダ・ダットン、トレイシー・ソーン、ジオ・ペレス、ルー ・サムラル、デヴィッド・コスタビル、クリスチャン・ボール、エリック・ザッカーマン、ブルック・アリソン・ストローベル他。


『メラニーは行く!』『最後の恋のはじめ方』のアンディー・テナントが監督した作品。
ニコールをジェニファー・アニストン、マイロを ジェラルド・バトラー、キティーをクリスティーン・バランスキー、スチュワートをジェイソン・サダイキス、シドをジェフ・ガーリン、 レイをリッチー・コスター、アイリーンをキャシー・モリアーティー、アールをピーター・グリーン、ドワイトをジョエル・マーシュ・ ガーランド、ボビーをドリアン・ミシックが演じている。

冒頭、ニコールが煙で騙してトランクを開けさせ、逃亡するがマイロに追い付かれるという中盤のシーンが描かれる。
そこでは、それぞれの名前や元夫婦であることがテロップで示される。
だが、中盤のシーンを冒頭に持って来る構成が、効果を発揮していない。そこに観客を惹き付ける力が無い。
むしろ、別れた夫婦ってことは、最初は明かさずに進めても良かったのではないか。
まあ、どうせ宣伝でバレバレになった状態で、大半の観客は見に来るだろうから、あまり意味は無いかもしれないが。
ただ、どちらにせよ、冒頭シーンに面白味が全く無いので、効果が無いことは確かだ。

ニコールの行動は全く理解できない。
無知な人間ならともかく、新聞記者なんだから、裁判をドタキャンしたら逮捕されることぐらい分かっているはずでしょ。
それでも取材のためにドタキャンするってのは、キャラの動かし方として分からないではないけど、それをスンナリと受け入れられるほど の地均しは出来ていない。
っていうか、どうやったところで、それを受け入れさせるのは難しいと思うよ。
そりゃあ取材は大事だろうけど、少なくともその時点では、自分が逮捕されるリスクを冒してまでネタを掴みに行かなきゃならないぐらい の、大きな特ダネのようには感じられないし。

そこは例えば「出廷は1時間後だったから間に合うつもりで取材に行ったら、予想以上に時間が掛かったので遅刻してしまう」とか、 「出廷の日時をすっかり忘れていた、もしくは間違えていた」とか、そのぐらいで留めておかないとキツい。
4分後に出廷しなきゃダメだという状況で、もう裁判所まで来ているのに、何のためらいも無く平然とすっぽかすって、それはアホすぎる 行動でしょ。
どうやら、そこは「勝ち気なニコールは自分が悪いことをしていないと考えているから平気ですっぽかし、それによって逮捕されることに 対しても全く心配しておらず、平然と仕事を続けている。自分が正しいと信じているから、捕まえに来ても強気な態度を取っている」と いうことのようだ。
だけど、そのキャラに全く付いていけない。
何より問題なのは、そういうキャラ造形のヒロインを、これっぽっちも魅力的に思えないってことだ。

ニコールが魅力的に見えないのは、キャラ設定に大きな問題があるのだが、しかし演じ方次第では何とかなったんじゃないかという気も する。
ただのツンケンしていて身勝手な女でしかないんだよな。
表情や口調が「勝ち気だけどキュート」に見えるべきなのに、ただキツいだけになっている。
っていうか、もっと言っちゃうと、ジェニファー・アニストンじゃなくて、例えばリース・ウィザースプーン辺りだったら、愛らしく 見えたかもしれないなあ。

本来なら、ニコールとマイロのやり取りってのは「いがみ合って言い争っているけど可笑しい」という風に感じられなきゃダメなのに、 これっぽっちも笑えないのよね。
マイロの方はニヤケっぷりが微妙に気持ち悪いし、ニコールの方は無闇にヒステリックでキュートに見えない。
時代が全く違うけどさ、例えばオードリー・ヘップバーンがこういう役をやったらどうなるのかと想像した時に、そこまでヒステリック にはやらないと思うのよ。腹を立てたり文句を言ったりしても、可愛らしさが前面に出ていると思うのよ。
まあ年齢的な問題もあるとは思うけどね。
ぶっちゃけ、ジェニファー・アニストンだと、この役をやるには年を取り過ぎているよな。実年齢より若く見えるならともかく、年相応に 老けているし。

夫婦が別れた理由や関係性、どういう経緯で別れたのか、どういう気持ちなのかということに関しては、マイロがシドに「情なんてある わけねえだろ」という辺りで、回想シーンを入れるなり、セリフで語らせるなりして、分かりやすく見せちゃった方がいいんじゃ ないの。
どうせ最初に元夫婦って示しているぐらいだし、「情なんてあるわけねえだろ」のシーンより前に、それぞれの登場シーンで相手に対する 不快感を喋らせておいてもいい。
マイロがニコール逮捕の仕事に浮かれている理由が、その段階では分かりにくいんだよな。
これが「浮かれているのは元妻に会えるから」というミスリードを狙っているならともかく、その可能性はすぐに消しているんだし、 だったら、その前に分かりやすくしちゃった方がいい。

前半の間は、ニコールが追い掛けている事件に関する情報が薄い。そこでミステリーを用意するのは得策ではない。
これって、たぶんスクリューボール・コメディーを狙っているんでしょ。だったら、そんなトコで謎を用意しても、物語に対して無駄に 取っつきにくくしているだけだ。
あと、序盤から謎の男アールが登場しており、彼が出て来るとサスペンス調が強まるのだが、これがマイナスにしか作用して いない。もっと別れた夫婦のドタバタ追いかけっこに絞り込んで物語を構築すべきではなかったか。
そこにサスペンス・アクションも盛り込もうとした結果、典型的な「二兎を追う者は一兎をも得ず」になっている。

マイロがギャンブル狂ってのは、もっと明確に示しておくべきじゃないのか。
彼はカジノに行くまで、ちっともギャンブル狂という面が見えないんだよな。
例えば「何でもかんでも賭けの対象にしちゃう」とか、そういう描写を入れてもいいのでは。最初にドワイトが来るけど、その時点で既に 「多額の借金を背負っており、返済に迫られている」という印象が薄いし。
マイロが電話で何度も返済を迫られるとか、取り立て屋に付きまとわれるとか、そういう様子を、ちょくちょく挟んでおいた方がいいん じゃないか。

冒頭でドワイトを殴った後、なかなか取り立ての連中が絡んで来ないってのはダメでしょ。アールという謎の男を登場させてシリアスな サスペンスをやるよりも、借金取り立ての方で、笑える程度のスリルを作った方がいい。
で、マイロがギャンブル狂であるならば、競馬場へ行った時、ニコールの逮捕そっちのけで競馬に夢中になってしまうとか、そういう展開 があってもいいんじゃないか。
ギャンブル好きなら競馬なんて大好きなはずなのに、ちっとも関心を示さないんだよな。
競馬は門外漢とか、そういうことなのか。

あと、これって筋書きとしては「ニコールとマイロは言い争っているけど、心の中には互いへの気持ちが今も残っていて、また恋愛感情が 復活する」という流れになっているべきだろうに、ホントに心からいがみ合っているのよね。
中盤、車で追い付かれたニコールが嫌がらせされて泣き出しても、唐突にしか感じない。そこまでに「2人の恋愛劇」へ持って行くための 流れが全く無かったから、思い出したように慌てて取り繕っているようにしか感じない。
それに、そこからも全くロマンスの描写は無くて、キューピッド・キャビンに来て急に「昔の恋愛感情を思い出す」という感じなんだよな 。それじゃあ遅すぎる。それまでにお互いの良い所が見えるというのもあって良さそうなものだが、全く良いトコは見えない。
ニコールが気遣いを見せるとか、マイロが彼女を守ってあげるとか、そういうのは全く無いから、どこに惚れたのか、どういう部分を見て 昔の気持ちが蘇ったのか、サッパリだ。
実はニコールもマイロとのツーショット写真をずっと財布に入れていたわけだから、まだ未練はあったんでしょ。でも、そこまでに、そう いう雰囲気はゼロだったぞ。
あと、そこで急激に恋愛劇を盛り上げようとしているせいで、飛び降り自殺に関する調査とか、アールに命を狙われたとか、そういう 筋書きの方が、しばらくの間、完全にストップしてしまう。それも構成として上手くないなあ。

後半に入ってからアールがニコールとマイロを攻撃してくるが、そういう筋書きを作りたいのなら、その展開になるのが 遅すぎるのよ。
あと20分ぐらい早いタイミングで、2人が命を狙われるシーンを用意すべきだ。
で、あと10分ぐらいは短く収めるべきだ。
テンポも悪くて、無駄にノロノロしてるんだよな。
まあ、飛び降り自殺に関する描写が薄っぺらいので、そこでのサスペンス・アクションで後半の話を構築していこうとしても、無理がある ように思うけど。
それと、後半に入るとスチュワートが完全に消えているってのは、キャラの扱いとしてマズいでしょ。
っていうか、そもそも前半の時点で、要らないキャラなんだけどね。

(観賞日:2012年3月1日)


第31回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低主演男優賞[ジェラルド・バトラー]
ノミネート:最低主演女優賞[ジェニファー・アニストン]
<*『バウンティー・ハンター』『アラフォー女子のベイビー・プラン』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低スクリーン・カップル&スクリーン・アンサンブル賞[ジェニファー・アニストン&ジェラルド・バトラー]

 

*ポンコツ映画愛護協会