『ボディ・ダブル』:1984、アメリカ

ジェイク・スカリーは売れない三流役者。主演するB級の吸血鬼映画を撮影中、急に閉所恐怖症になった。撮影が中断になったので自宅に戻ってみると、妻のキャロルが不倫相手に抱かれてベッドで悶えていた。ショックを受けたジェイクは家を飛び出した。
友人の家を転々としながら幾つものオーディションを受けるジェイクだが、ことごとく落ちてしまう。早く落ち着ける住まいを探そうとするジェイクに、役者仲間のサムが声を掛けてくる。ドサ回りに出る間、自分が借りている家の管理を頼みたいというのだ。
喜んで申し出を受けたジェイクは、まるで近未来の空中基地のような家を見て驚いた。サムはジェイクに、望遠鏡で隣の家を見るよう勧める。ジェイクが望遠鏡を覗き込むと、隣の家で女性がストリップショーをしているのが見えた。サムによれば、その人妻は毎晩同じ時間に、そういう行為をするらしい。
数日後、ジェイクは隣の家をじっと見ている怪しげな男の存在に気付く。翌日、ジェイクは、その男が隣に住む人妻を見張っている姿を目撃する。ジェイクは人妻を延々と尾行し、ついに声を掛ける。彼女のバッグを奪い去った男を追い掛けたジェイクだが、閉所恐怖症だったために、トンネルで男に逃げられてしまった。
隣に住む人妻に強烈に惹かれたジェイクは、彼女がグロリア・レヴェルという名前だと知る。その夜、望遠鏡を覗き込んでいたジェイクは、隣の家に侵入した男がグロリアに襲い掛かるのを目撃する。慌てて隣の家に駆け付けるが、彼女は殺された後だった。
警察の尋問を終えたジェイクは、何となく見ていたテレビの画面に目が釘付けになる。そこに出ていたホリー・ボディというポルノ女優の動きが、自分が望遠鏡で見たストリップショーと同じだったのだ。ジェイクは、自分の覗いた女性が人妻のグロリアではなく、ホリーだったことに気付く。そしてジェイクは、ホリーに近付いた…。

監督&原案&製作はブライアン・デ・パルマ、脚本はロバート・J・アヴレッチ&ブライアン・デ・パルマ、製作総指揮はハワード・ゴットフリード、撮影はスティーヴン・H・ブラム、編集はジェリー・グリーンバーグ&ビル・パンコウ、美術はアイダ・ランドム、衣装はグロリア・グレシャム、音楽はピノ・ドナジオ。
出演はクレイグ・ワッソン、メラニー・グリフィス、グレッグ・ヘンリー、デボラ・シェルトン、ガイ・ボイド、デヴィッド・ハスケル、デニス・フランツ、アル・イズラエル、レベッカ・スタンリー、ダグラス・ワーヒット、B・J・ジョーンズ、ラス・マリン、レーン・デイヴィース、バーバラ・クランプトン、ラリー・“フラッシュ”・ジェンキンズ、モンテ・ランディス、リンダ・ショウ他。


大監督にオマージュを捧げるのが好きでたまらないブライアン・デ・パルマが、アルフレッド・ヒッチコックの『めまい』と『裏窓』の要素を織り込んだサスペンス。短命の音楽集団フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの曲『リラックス』が、劇中で使用されてヒットした。

ジェイクの行動は、ハッキリ言ってメチャクチャだ。
まず彼は、グロリアに対して完全なストーカー行為をやらかしている。彼女を尾行する男に気付いたジェイクだが、その男よりもグロリアを追うことに夢中になってしまう。男がグロリアを狙っていることを警察に知らせるようなことも無く、延々と彼女を尾行する。
ヤバイよ、アンタ。

そしてジェイクは、彼女が洋服店で着替える姿を、ジッと覗いていたりする。
そりゃあ、店員も怪しんで警備員に連絡するわな。
さらに恐ろしいことに、彼はグロリアが一度履いた後にゴミ箱に捨ててしまったパンティを、拾ってポケットに入れてしまうのである。
完全にド変態である。

で、何の前触れも無く、いきなりジェイクとグロリアは強く抱き合って唇を重ね合う。
なかなか強引で無意味な展開である。
その場面では、2人の周囲をカメラがグルグルと回る。
そんなテクニックを、そんな安っぽい場面で使う必要があったのだろうか。

ホリーに近付くために、なぜかジェイクはポルノ男優のオーディションを受ける。
しかし、果たしてそんなことをする必要があるのかと疑問に思ってしまう。
そもそも、ジェイクは警察から、犯人だと疑われているわけではない。だから、彼が追い詰められていく感じは非常に薄いし、事件を解明するために奔走する必然性も薄い。

ジェイクの閉所恐怖症は、『めまい』でいうところの高所恐怖症に当たるポイントだ。その症状は物語のキーポイントになるはずだが、閉所恐怖症になったきっかけが弱いし、その理由もイマイチ良く分からかったりする。
模倣することは一向に構わないと思うが、表面をなぞるだけで終わるなら、やらない方が賢明だったかもしれない。

グロリアの家にジェイクが駆け付けた時、飼い犬は犯人ではなく、ジェイクに襲い掛かってくる。その時点で、犯人の正体はバレてしまっていると言ってもいいのかもしれない。
しかし、事件の黒幕が最後まで一度も姿を見せないのは、反則のような気もするのだが。そこは曖昧に終わらせてはいけない部分だと思うのだが。

後半、ジェイクが刑事に対して、彼が考える事件の真相をベラベラと喋る。回想する映像まで付けて説明してくれる。ほとんど土曜ワイド劇場のノリだ。次第に謎が解き明かされていくとか、張り巡らせた伏線が1つに集約するとか、そういう面白さは無い。

筋書きは、かなり乱暴だ。
緻密な計算があるように見せ掛けておいて、実は無い。
例えば、交通規制をしている警官が逃げ出した車を追わずにジェイクを捕まえようとするなど、全ては安っぽい御都合主義のオンパレード。ひょっとすると、官能が先走りすぎて、サスペンスの部分がおろそかになってしまったのかもしれないが。


第8回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低監督賞[ブライアン・デ・パルマ]

 

*ポンコツ映画愛護協会