『ブラッドレイン』:2005、アメリカ&ドイツ

18世紀、ルーマニア。「業火の会」のメンバーであるウラジミール、セバスチャン、キャタリンは、ある町にやって来た。酒場に入った 3人は、「何か情報はあるか」と店主に尋ねる。店主は「1つ面白そうなネタを見つけました」と言い、カーニバルのチラシを見せる。 そこには見世物の女が描かれている。「呪われた女だって言っている者もいます」と店主は説明するが、セバスチャンとキャタリンは 「見世物小屋の女なんて、時間の無駄だ」と失笑した。
酒場に男性客が来た時、セバスチャンは彼が鏡に写らないと気付き、剣で突き刺した。すると男は吸血鬼に変貌して死んだ。ウラジミール は真剣な表情で、見世物小屋の女について店主に質問した。店主は「普通の人間には無い能力を持っているという噂があります」と語る。 その女はレインという名前だった。彼女は芸人一座のメンバーとして、ある村に来ていた。団員のアマンダが剣を使った芸を披露した後、 団長は怪力男にレインを連れて来させた。
団長は見物客に「この女は水に弱くて、濡れると肌が焼ける」と説明し、彼女の右腕を水の入った桶に突っ込ませる。するとレインは苦悶 し、その腕は火傷に覆われた。怪力男は団長の指示を受け、レインの左腕に複数の切り傷を負わせて出血させる。彼が羊を殺してコップに 血を注ぐと、レインは喉の渇きを示した。レインが羊の血を飲むと、火傷も傷も瞬時に消えた。出番が終わると、レインは怪力男によって 小屋に連れ戻され、監禁された。
アマンダはレインの小屋を訪れ、「一緒に逃げましょう。叔父が迎えに来てくれる」と告げる。彼女は十字架の首飾りをお守りとして レインに渡した。同じ頃、吸血鬼の頭領ケイガンは、手下のダマスティアから「芸人一座にいる若い女が噂になっています。ダムフィア です」と報告を受けていた。ケイガンは「逃げた私の娘が生きているんだな。捜し出せ。計画の妨げになる」と彼に命じた。
怪力男にレイプされそうになったレインは反撃し、噛み付いて殺害した。彼女は小屋を脱出し、襲ってくる団員数名と団長を殺して逃亡 した。翌朝、ウラジミールたちは、馬で村へ向かっていた。セバスチャンが「ケイガンが軍隊を組織しているのに、芸人の女を捜したり していていいのか」と疑問を口にすると、ウラジミールは「軍隊とマトモに戦って勝てると思うのか。そんな力は無いぞ。芸人一座の女は 、奴の娘かもしれん」と述べた。
村に到着したウラジミールは、団員たちの死体が転がっている現場を目撃した。ウラジミールとセバスチャンは、死体の首を撥ねて焼こう とする。その時、レインに噛まれながらも生き延びていたアマンダが目を覚ました。彼女は逃げ出したレインに声を掛けた途端、いきなり 噛み付かれていた。しかしウラジミールたちの質問に対し、アマンダは「何も覚えていません」とレインのことを隠そうとする。そこで キャタリンは、彼女を容赦なく刺殺した。キャタリンは、来る途中にあった小さな村へ捜索に向かった。
エルリック子爵は家来を呼び、娘であるキャタリンへの手紙を書かせる。「人々のために私への怒りを鎮めてほしい。もはや我々の会に ケイガンを倒す力は無い。だが、ベリアーの遺物は絶対に奴の手に渡してはならん。だからこそ娘の力を借りて、この国の民を守りたい。 お前と私だけが、遺物の価値を知っている。それを私の元に持って来てほしい」という文面を、彼は私欲を隠して家来に語った。 夜、レインは吸血鬼の一味が荷馬車を襲撃する様子を目撃した。レインは現場に飛び出して吸血鬼を始末し、その血を吸った。怯えている 主婦に、彼女は「人間に手は出さない。私が殺すのは吸血鬼だけよ」と告げる。レインは荷馬車に乗せてもらい、ある村に辿り着いた。 すぐにレインは、何人かの吸血鬼がいることに気付いた。レインは女吸血鬼を見つけて誘いを掛け、血を吸って殺害した。
レインは占い師に「ダムフィア、付いて来て」と言われ、彼女に付いて行く。占い師は「貴方が来るのは分かっていたわ。ダムフィアは 半分が人間で半分が吸血鬼。大抵は子供の頃に殺される」と語る。レインの脳裏を、母が男に殺された時の様子がよぎった。「男がいた」 とレインが言うと、占い師は「ケイガンは吸血鬼で貴方の父親」と口にした。「私の母を殺した。あいつを殺してやる」とレインが怒りを 燃やすと、占い師は「ケイガンは今や最強の吸血鬼よ」と忠告した。
レインが「奴はどこにいる?」と尋ねると、占い師は「山の向こうの城にいるけど、警備が厳重よ。でも大昔の遺物の目玉を彼は探して いる。それを見つけれは会うことが出来る」と語る。「遺物の目は、南にあるソランブリア修道院に保管されている。それがケイガンの手 に渡るのを防げば世界は救われる」と彼女は語るが、レインは「世界を救うとか、そんなことに興味は無い」と冷徹に言い放った。
ケイガンはダマスティアから「ダムフィアは占い師に会い、目を探しに行きました」と知らされ、「見つけ出したら目を奪え。そして ダムフィアを殺せ」と命じた。レインは修道院に到着し、院長に「3日3晩何も食べずに旅をしているので、泊めてほしい」と頼む。院長 は食事を出し、「食べたら休むといい」と穏やかに告げる。深夜、レインが修道院の別館に入ると、警備役の怪物が眠り込んでいた。その 怪物は、扉の鍵となる十字架を首から下げていた。レインは十字架を取ろうとするが、怪物を起こしてしまう。レインは怪物を始末し、扉 を開けて奥の部屋へと進んだ。
レインは部屋に仕掛けられた罠を突破し、目の入った箱に辿り着く。箱を持ち上げた途端、新たな罠が作動した。レインは罠を回避し、箱 から目を取り出した。見つめていると、その遺物はレイン自身の目になった。その途端、レインは水に触れても火傷を負わなくなった。 そんなレインの前に院長が現れ、「我々は何世紀も目を守って来た。あの目には偉大な力がある。水に触れても火傷しなくなっただろう。 遺物は他に2つある。肋骨と心臓だ」と語った。
院長はレインに、3つの遺物が死んだ吸血鬼ベリアーの肉体の一部であることを話す。ベリアーは吸血鬼の弱点を克服する術を見つけた。 その弱点とは、水と太陽の光、そして十字架だ。彼が倒された時、その体はバラバラにされ、別々に隠された。院長は「それらが1つに なれば、世界を支配する吸血鬼が生まれる」と述べる。さらに彼は、ケイガンが人間を軍隊を組織していることもレインに語る。
そこへ、ケイガンの軍隊が攻めて来たという知らせが届いた。修道院の敷地に軍隊が乗り込み、修道士たちを次々に殺してた。そこへ ウラジミールたちも駆け付け、軍隊と戦う。レインも院長に「目を渡してはならん」と言われ、戦闘に参加した。ダマスティアは院長を 捕まえ、抹殺した。レインは隙を見せたところでダマスティアに昏倒させられ、拉致される。ウラジミールはキャタリンに「業火の会へ 戻って報告しろ」と指示し、セバスチャンと一緒にダマスティアを追い掛けた。2人が去った後、キャタリンはローマから来た業火の会の 使者が殺されているのに気付く。彼女は、使者が持っていた手紙を手に取った。
ダマスティアは太陽の光を避けるため、吸血鬼レオニドの館にレインを連れ込んだ。レインを気に入ったレオニドは「俺の女にする」と 言い、手下たちにダマスティアを連行させようとする。そこへウラジミールとセバスチャンが乗り込み、レオニドの手下たちと戦う。その 間にダマスティアは逃亡した。ウラジミールたちはレオニド一味を始末し、レインを救い出した。ダマスティアはケイガンの元へ戻り、 遺物がレインの目になっていることを報告した。ケイガンは「では生きたまま連れて来い」と命じた。
ウラジミールたちは業火の会の砦へ戻り、レインは檻に監禁される。ケイガンは手下から、肋骨が手に入ったという知らせを受ける。 キャタリンはウラジミールとセバスチャンに、「ローマからの使者が死んでいたわ。ローマにある業火の会は襲われて全滅した」と述べた 。レインはウラジミールたちに、「ケイガンを殺したい目的は同じよ。ケイガンは私の母をレイプして殺した」と話した。ウラジミールは レインの手錠を外し、「ケイガンを倒すために、ここで訓練するといい」と告げた。しかしキャタリンは「あんな女を仲間にするなんて」 と批判的な態度を取った。
レインはセバスチャンが優しく接しても打ち解けようとせず、「貴方に何が分かる。父はケイガンだし、母は目の前で殺された」と鋭く 言う。するとセバスチャンは「僕は両親をウラジミールに殺された。2人とも吸血鬼に変身したからだ。ウラジミールが来なければ、僕は 両親に殺されていた」と語った。夜中に悪夢で目を覚ましたレインは、いきなりセバスチャンに抱き付き、肉体関係を求めた。
翌日、レインは初めて食堂へ行き、みんなと一緒に食事を取った。キャタリンは「やはりお父様の言う通り、業火の会はもう終わりです」 という父への手紙を書き、それを使者に託した。ケイガンは軍隊を集め、「残された業火の会を滅ぼし、娘を連れて来い」と命令した。 キャタリンはレインと2人きりになり、剣の訓練で腕前を馬鹿にする。「私は業火の会と共に戦い、姿を消した私の父に戦いを学んだ。 襲われて吸血鬼になったけど、私は業火の会に忠実よ。私は吸血鬼を殺すために生きている」とキャタリンは語った。
ダマスティアはエルリックの元を訪れ、「砦の場所を教えろ。さもないと後悔することになるぞ」と告げる。エルリックは「私と組む方が いいぞ。未来を担うべきは人間である君と、この私だ。ケイガンを殺して、国を治めるのだ」と持ち掛けるが、ダマスティアは懐柔されず 、「砦はどこだ」と剣で脅した。するとエルリックは「私は宿命に従う」と不敵に笑った。レインはウラジミール、セバスチャンと共に砦 を出発し、業火の会の味方であるイアンクという肉屋を訪ねた。そこでレインたちは、吸血鬼と戦うための道具を入手した。
レインたちが出掛けている間に、ダマスティア率いる軍隊が砦を襲撃した。砦へ戻ろうとしていたレインたちの前に、脱出してきた業火の 会の男が倒れ込んだ。彼は瀕死の状態で、「砦が襲われて皆殺しにされた。砦へ戻るな。敵が大勢いる」と警告した。ウラジミールと セバスチャンが離れた間に、男はレインに「キャタリンが仲間たちに、取り引きするか戦うか、どちらかを選ぶよう持ち掛けた。彼女が 仲間を裏切って軍隊を手引きした」と告げて息を引き取った…。

監督はウーヴェ・ボル、脚本はグィネヴィア・ターナー、製作はウーヴェ・ ボル&ダニエル・クラーク&ショーン・ウィリアムソン、製作総指揮はウォルフガング・ヘロルド、共同製作総指揮はジョナサン・ショア &モーリス・サットン&ジェシー・サットン、撮影はマティアス・ニューマン、編集はデヴィッド・M・リチャードソン、 美術はジェームズ・スチュアート、衣装はカーラ・ベアー、特殊メイクアップ効果はオラフ・イッテンバッハ&トミー・オパッツ、 視覚効果監修はダグ・オッデイ、視覚効果製作はクリストファー・エルク、音楽はヘニング・ローナー。
出演はクリスタナ・ローケン、ベン・キングズレー、ミシェル・ロドリゲス、ビリー・ゼイン、マイケル・マドセン、マシュー・ デイヴィス、ウィル・サンダーソン、ジェラルディン・チャップリン、ウド・キア、ミート・ローフ・アデイ、マイケル・パレ、 ダーレン・シャラヴィ、エステバン・クエト、マダリナ・コンスタンティン、ダニエラ・ナーネ、T.J.ストーム、コンスタンティン・ バーブレスク、テオナ・ガルゴチュー、ラズヴァン・ポーパ、ラウラ・バーラルダ、イングリッド・ビジュ他。


同名のゲームソフトを基にした作品。
監督はドイツが生んだポンコツ王、ウーヴェ・ボル。
シナリオはTVシリーズ『Lの世界』の脚本家で女優でもあるグィネヴィア・ターナーが手掛けている。
レインをクリスタナ・ローケン、ケイガンをベン・キングズレー、キャタリンを ミシェル・ロドリゲス、エルリックをビリー・ゼイン、ウラジミールをマイケル・マドセン、セバスチャンをマシュー・デイヴィス、 ダマスティアをウィル・サンダーソン、占い師をジェラルディン・チャップリン、院長をウド・キア、レオニドをミート・ローフ・アデイ 、イアンクをマイケル・パレが演じている。

ミシェル・ロドリゲスにビリー・ゼイン、マイケル・マドセン、ジェラルディン・チャップリン、ウド・キア、ミート・ローフ、マイケル ・パレと、B級映画(ウーヴェ・ボル作品だからB級と呼ぶのも持ち上げ過ぎかな)としては、なかなかのメンツである。。
ただ、なんでベン・キングズレーは、こんな映画に出ちゃうのかなあ。。
「サー」の称号を持つ人が、ウーヴェ・ボルの映画に出ちゃイカンだろ。。
でもベン・キングズレーって、ポンコツ映画でも平気で出ちゃうような人なんだよなあ。
まあ、そういう俳優、嫌いじゃないけどさ。

とにかく、いちいちシーンの見せ方や繋ぎ方が下手。
例えば、レインが見世物にされているシーンを描いた後、ウラジミールが酒場の店主に礼金を渡しているシーンに戻るが、そんな必要は 全く無い。ウラジミールが店主からレインの情報を聞き、礼金を渡して「その村の場所は分かるか」と尋ねるところまで描いて、それから レインのいる村の様子へ移ればいい。
あるいは、逆の順番でもいいし。
ケイガンがダマスティアと話しているシーンの後、草地へ逃げて来たレインの姿が写り、そこから「怪力男にレイプされそうになったので 反撃して殺害し、他の団員たちも殺した」という様子が回想として描かれる。でも、そこを回想として見せる意味も全く無い。
時系列通り、レインがレイプされそうになるシーンから始めて、団員を相手に大暴れして、村から逃走するところまで進めればいい。

アマンダがレインに噛まれたことを、彼女が回想するまで描かないでおくのも意味が無い。
レインが暴れたシーンで、それも一緒に描いておくべきだ。そして、親友を噛んだことでレインが後悔したり苦悩したりするという流れに した方が、彼女の心情が良く伝わるでしょうに。
っていうか、レインって親友に襲い掛かって噛み付いたのに、それに対して全く苦悩する様子が無いんだよね。
それって、もっと引きずるべきだろうに。

荷馬車の家族を襲撃している吸血鬼一味を殺したレインは、怯える婦人に「人間に手は出さない。私が殺すのは吸血鬼だけよ」と言うけど 、いやいや、アンタ、前日の夜に芸人一座の人間を何人も殺していたじゃねえか。
っていうか、大勢を殺したことに困惑したり苦悩したりしていたはずなのに、すげえ簡単に割り切れちゃってるのね。
自分がハーフ吸血鬼であることを昔から把握していたわけでもなくて、急に暴力性に目覚めたのに、困惑や苦悩は数時間で消えるのね。

いきなり登場した占い師は、「ケイガンは吸血鬼でレインの父親」「ケイガンは今や最強の吸血鬼」「山の向こうの城にいるけど、警備が 厳重。でも大昔の遺物の目玉を彼は探している。それを見つけれは会うことが出来る」「目は南にあるソランブリア修道院に保管されて いる。これがケイガンの手に渡るのを防げば世界は救われる」と、色々なことを教えてくれる。
とても都合のいいキャラだ。
ただ、彼女は遺物がケイガンの手に渡ることを防ぎたいはずなのに、「それがあれば彼に会える」って、それは余計なアドバイス だろ。
そんな情報を教えたら、レインは異物をケイガンの元へ持って行くってことになるじゃねえか。

序盤、母が殺された時の出来事をレインが回想する様子が挿入されるが、それはフラッシュバックのような形で、短くて断片的だ。
だから、後から詳しい回想が用意されているのかと思ったら、その後も断片的なモノとして何度か挿入される。
レインが「母は殺された」と占い師に語るところで詳しく見せるのかと思ったら、そうでもなかった。
そこは、母が殺されたのを目撃する幼少時代のレインを描くべきでしょ。で、そこから、どうやってレインが芸人一座に拾われ、見世物 状態になったのかという経緯を説明すべきでしょ。

レインが業火の会の砦で檻に入れられ、ウラジミールたちに「ケイガンを殺したい目的は同じよ。ケイガンは私の母をレイプして殺した」 と話すシーンになって初めて、母がケイガンに殺された時の様子が詳しく回想されている。
だけど、その前に「ケイガンに母を殺された」というのは示されているんだから、その時点で詳しい回想を入れるべきであって、そこは タイミングとして遅すぎるでしょ。
っていうか、幼いレインが見たのは母が殺されたシーンだけであって、レイプされたシーンは見ていないはずなのに、なぜ「レイプして 殺した」と言っているのか。
終盤、彼女はケイガンに「私の目の前でレイプされた母に代わって復讐してやる」と言っているけど、それは不可解だ。だってさ、母が レイプされて産まれたのがレインのはずでしょうに。だから半分が人間で、半分が吸血鬼なんでしょ。レイプされたトコを目撃している ってのは、辻褄が合わないぞ。

レインは占い師から「貴方は半分が人間で半分が吸血鬼」と教えられても、そこでの動揺は全く無いのね。あっさりと受け入れているのね 。
自分が化け物だってことは、以前から自覚していたということなのか。
その辺りも、人間描写(人間じゃないけど)が皆無に等しいので、まるで分からない。
レインがどういう心境だったのか、それがどのように変化したのか、そういうことは全く伝わって来ない。
まさにビデオ・ゲームの如く、ただキャラクターの位置をシナリオに応じて動かしているだけ。

レインが修道院でモンスターを倒し、罠を突破するという辺りは、「アクション・アドベンチャー・ゲームを、そのまんま忠実に実写化 しました」という感じ。なんで修道院にそんな仕掛けがあるのかというところは、すっかりスルーしちゃっている。レインも、まるで疑問 を抱いていないし。
まあ疑問も何も、ほとんどレインの感情表現が無いしね。
っていうかさ、占い師が何でもかんでもベラベラ喋るのなら、修道院にモンスターや罠があることも説明すればいいんじゃないの。
ベラベラと喋るのは、占い師だけではない。修道院の院長も、「我々は何世紀も目を守って来た。目には偉大な力がある。水に触れても 火傷しなくなっただろう。遺物は他に2つある。肋骨と心臓だ。過去に死んだ吸血鬼ベリアーの肉体の一部だ。ベリアーは吸血鬼の弱点を 克服する術を見つけた。彼が倒された時、体はバラバラにされ、別々に隠された。1つになれば、世界を支配する吸血鬼が生まれる」と 、訊いてもいないのに詳しい情報をレインに教えている。
だけど、相手は目を盗んだ泥棒であり、自分たちの味方とは言えないのに、なぜ秘密をベラベラと喋るのか。余計な情報を教えない方が いいでしょうに。

ケイガンは修道院に目があることまで知っているのに、なぜ今まで、それを奪おうとはしなかったのか。あれだけの軍隊を組織する力が あれば、そんなことは簡単だったんじゃないのか。
実際、いざ襲撃したら圧倒的だし。
それと、彼は「レインが目を手に入れたら奪え」と言っていたのに、ダマスティアは院長に「目はどこにある?」と訊いているけど、 ってことは、レインが目を手に入れたかどうか分かっていない状態で襲撃しているってことなのか。行動がメチャクチャだ。
しかも、本当に目のありかを聞き出したいのなら、あっさり院長を殺しちゃダメでしょ。
その後、ダマスティアがレインを失神させて拉致するのもワケ分からん。レオニドの館へ連れ込んで「この女はケイガンに渡す」と 言ってるけど、ケイガンは「目を奪ったら殺せ」と言っていたはず。連れて来いとは命令していないぞ。
遺物がレインの目になっていると分かっているのなら、抉り出せばいいじゃねえか。そこでは抉り取れない理由があるのなら、それは説明 する必要があるし。

ローマにある業火の会が全滅したことは、セリフで語られるだけ。そもそも、キャタリンが全滅について語るシーンで初めて、ローマにも 業火の会があることが分かる始末。
っていうか、各地にあったみたいだけど、それも前半で分かるようにしておくべきでしょ。そしてローマに関しては、激しいバトルは 見せなくてもいいけど、せめて存在は描いておこうよ。
そうじゃないなら、わざわざローマにある業火の会が全滅したことをセリフで示す意味が無い。映画が始まった時点で、ローマの組織も 滅びている設定にすればいい。
あと、肋骨が簡単にケイガンの元へ運ばれており、そこの経緯は飛ばされているが、だったら既に肋骨は入手している設定にしておけば いい。

キャタリンはレインと訓練で剣を交え、「私は業火の会と共に戦い、姿を消した私の父に戦いを学んだ。襲われて吸血鬼になったけど、 私は業火の会に忠実よ。私は吸血鬼を殺すために生きている」と言うが、そんなこと、いちいち自分から話す必要性は全く無い でしょ。
その設定を観客に説明するための手口が下手すぎるぞ。
っていうか、そもそも野心家の吸血鬼エルリックというキャラクターそのものが、欲張り過ぎて処理しきれなくなっているんだし、そこは バッサリと削り落とした方がいい。

レインは心臓を手に入れてケイガンの館へ行くが、何かケイガンを襲う計画でも用意しているのかと思ったら、何も考えていない。
まだ「襲撃しようとして失敗した」ということならともかく、最初から何の策も用意せずに乗り込んでいるのだ。
だから、あっさり連行されて檻に監禁され、儀式の生贄として縛り付けられる。
そりゃ当然だろ。
ウラジミールとセバスチャンが助けに来てくれなかったら、そのまま殺されていたぞ。
アホすぎるだろ。

この手の映画(ビデオゲームの実写化)では、「映像的な部分では凝りまくっているけど、キャラや物語がスッカスカ」という失敗が1つ のパターンになっている印象がある。
しかし本作品の場合、映像的な面白味も全く感じられない。
そこへのこだわりは、あまり感じない。
あと、本来はセールス・ポイントにならなきゃいけないはずのアクション・シーンは、ものすごくモッチャリしていて、迫力もスピード感 も重厚さも皆無。
まさに、非の打ちどころの無いポンコツ映画である。

(観賞日:2012年4月18日)


第27回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低主演女優賞[クリスタナ・ローケン]
ノミネート:最低助演男優賞[ベン・キングズレー]
ノミネート:最低助演女優賞[ミシェル・ロドリゲス]
ノミネート:最低監督賞[ウーヴェ・ボル]
ノミネート:最低脚本賞


第29回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の作品】部門
受賞:【最悪の演出センス】部門[ウーヴェ・ボル]
受賞:【最悪の集団】部門
受賞:【チンケな“特別の”特殊効果】部門

ノミネート:【最悪の助演男優】部門[ミートローフ・アデイ]
ノミネート:【最悪の助演女優】部門[ミシェル・ロドリゲス]
ノミネート:【最悪の脚本】部門
ノミネート:【最も腹立たしい言葉づかい(女性)】部門[ミシェル・ロドリゲス]
ノミネート:【ちっとも怖くないホラー映画】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会