『ビバリーヒルズ・コップ3』:1994、アメリカ

デトロイト警察の刑事アクセル・フォーリーは、盗難車を違法に解体する業者の工場へ、仲間と共に突入しようとしていた。その頃、解体業者と取り引きをするために、ある男達が工場へやって来ていた。彼らの目的は、解体業者が手に入れた「政府所有物」と書かれた箱の中身だ。
しかし、男達は金を払わず解体業者の連中を射殺。そこへアクセル達が突入し、激しい撃ち合いの中でアクセルの上司トッド警部が死亡。トッド警部を射殺して逃げた男を追い掛けるアクセルだが、FBIのフルブライトに邪魔される。その男はFBIがマークしている重要人物らしい。
アクセルは現場の遺留品の中に、唯一の手掛かりとなるワンダーワールドのタオルを発見。彼はワンダーワールドのあるビバリーヒルズへ向かい、旧友のビリー・ローズウッドに会う。ビリーは管轄区をまたいだ犯罪を仕切る部署の作戦指令部長代理になっていた。
ワンダーワールドに向かったアクセルは、警備主任のエリス・デウォルドがトッド警部を売った犯人だと知る。しかし、彼が犯人だと断定する証拠が無い。ビリーや部下のジョン・フリント刑事は、全米警備組合で表彰されるほどの男であるデヴォルドが、殺人など犯すはずが無いとアクセルに言う。
だが、ワンダーワールドの創設者アンクル・デイヴは、園内の異変に気付いていた。彼はアクセルに面会し、重役が異変を知らせるメモを残して失踪したことを話す。園内で働くジャニスの協力を得たアクセルは、デウォルド達が閉鎖中の施設で偽札を製造していることを突き止める…。

監督はジョン・ランディス、キャラクター創作はダニーロ・バック&ダニエル・ペトリJr.、脚本はスティーヴン・E・デ・スーザ、製作はメイス・ニューフェルド&ロバート・レーメ、共同製作はレスリー・ベルズバーグ、製作協力はレイ・マーフィーJr.、製作総指揮はマーク・リプスキー、撮影はマック・アールバーグ、編集はデイル・ベルディン、美術はマイケル・シーモア、衣装はキャサリン・アデア、音楽はナイル・ロジャース。
主演はエディ・マーフィー、共演はジャッジ・ラインホールド、ヘクター・エリゾンド、テレサ・ランドル、ブロンソン・ピンショット、ティモシー・カーハート、ジョン・サクソン、アラン・ヤング、ギル・ヒル、ハッティ・ウィンストン、ジーン・エルマン、トレイシー・レンゼイ、ジェリー・ダンフィー、ダン・マーティン他。


はみ出し刑事アクセルが活躍するエディ・マーフィー主演作のシリーズ第3弾。
前作までのレギュラーで残ったのは、アクセル役のエディ、ビリー役のジャッジ・ラインホールド、セルジュ役のブロンソン・ピンショットのみ。
その時点で、なんとなくヤバイ予感は漂っている。

冒頭、解体工場ではラジオからダイアナ・ロス&シュープリームスの曲が流れ出し、それに合わせて2人の太った整備工が踊り始める。ストーリー展開とは全く関係無いのだが、文句無しに楽しいシーンだ。
しかし、それ以降の展開で、それ以上に面白いシーンは見つからない。

冒頭のダンスが終わると、物語はいきなりシリアスに展開していく。上司トッドが目の前で射殺されたわけだから、アクセルは真剣に犯人を探すことになる。そのような状況の中で、アクセルに陽気な態度を求めるのは非常に難しいだろう。

最初に上司が目の前で殺されるというシナリオを作った時点で、この作品が失敗することは決まっていたのかもしれない。最初にアクセルが哀しみや怒りを見せるので、その後で彼が陽気な態度を見せても、どこかカラ元気に見えてしまう部分さえある。
例えばワンダーワールドに向かったアクセルが、アポが無いのならチケットを買ってほしいと、受付嬢に笑顔で言われる場面がある。
本来なら笑いが生まれるような場面だが、アクセルが真剣に犯人を追うという図式が印象付けられているため、彼がイライラしているという形にしかなっていない。

シナリオだけではなく、演出にも問題はある。前述した場面でも、アクセルがもっと大げさな対応を示したりすれば、ある程度は笑いになったかもしれない。
しかし、アクセルの反応は至って普通である。前述した場面だけでなく、全体を通してアクセルのマジな態度が目立つ。

エディ・マーフィーが主演しているのに、奇妙なテンションも、下品な笑いも、マシンガントークも無い。アクセルがデウォルドの表彰式に乱入してスピーチする場面などは、無駄トークを発揮する絶好のチャンスなのだが、普通のコメントで終わってしまう。
せっかくビリーが再登場しているのに、アクセルとビリーのコンビで笑いを生み出すようなことも無い。とにかく最大の欠点は、笑わせようとする意図が非常に薄いということだ。単なるアクション映画なら、エディ・マーフィーが主演する意味が無いのではないか。

フリントのポジションが延々と曖昧なままなのも意味が無い。フリントは最初に登場した時から、デヴォルドの友人だという設定が明らかにされている。さらに、アクセルを尾行したデウォルドの部下を制止して、「俺が殺してやる」などと言う場面さえある。
様々な描写を総合すると、デウォルドの仲間ではないかと観客は考えるのが普通だろう。しかし、実際はそのようなことは無かった。とすれば、何のためにデウォルドの仲間だと観客に誤解させる必要があったのか、それが分からない。
どう考えても無意味な演出だ。

せっかく巨大遊園地が舞台になっているのに、アクションシーンで舞台を生かさないのも不満。確かにアトラクション施設でのアクションシーンはあるのだが、「装置を生かしたアクション」としての工夫が足りない。
もっと装置の動きと人間の動きが絡み合うアクションシーンを用意してほしかった。

映画監督を始めとする数多くの有名人が、チョイ役で出演している。
まずトッド警部の葬儀に登場する牧師は、ゴスペル界の大物アル・グリーン。ワンダーワールドの観覧車で、アクセルに割り込み乗車される客が“スター・ウォーズ”シリーズのジョージ・ルーカス監督。
留置所に入れられたアクセルに、釈放されることを告げに来る男が『グレムリン』のジョー・ダンテ監督。アンクル・デイヴを病院に運んだ後、街を歩くアクセルの近くで、「アンクル・デイヴを殺したのは黒人らしい」と女性に話している男が『蜘蛛女』のピーター・メダック監督。
アクセルが電話を掛けるために入ったバーでは、『ある愛の詩』のアーサー・ヒラー監督、“シンドバッド”シリーズなどに携わった特撮の巨匠レイ・ハリー・ハウゼン、今作品にも曲を提供している作曲家ロバート・シャーマンが飲みながら話している。
アクセルにポルシェを預けて盗まれる男は、『運命の逆転』のバーベット・シュローダー監督。火事が発生した現場でヘクター・エリゾンドに話し掛ける消防夫は、『シャフト』のジョン・シングルトン監督。
それらの面々を探すのが、この映画の最大の楽しみかもしれない。


第15回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低監督賞[ジョン・ランディス]
ノミネート:リメイク・続編賞


第17回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会