『バトルシップ』:2012、アメリカ

2005年、科学者たちは地球に良く似た環境の星を発見した。2006年、NASAは今までより強力な通信装置を作り、その星との交信計画を スタートさせた。それは国際ビーコン・プロジェクトと呼ばれた。ヒマラヤに設置されたビーコン・プロジェクトの施設で、計画の代表者 であるノグラディー博士は集まった記者たちに「プラネットGと名付けた星にいる地球外生命体に、ハワイのオアフ島にある施設から ビーコン信号を送信開始する」と述べた。
オアフ島のバーにあるテレビでは、NASAが立ち上げた新しいミッションについて報じるニュースが流れている。店で飲んでいたアレックス ・ホッパーに兄のストーンが近付き、26歳の誕生日を祝福する。その上でストーンは、仕事の斡旋を持ち掛ける。「仕事に就く気は無い」 とアレックスが言うので、ストーンは「だったら俺のように海軍に入れ」と誘う。しかし、アレックスは「嫌だね」と即答した。
アレックスは兄との会話よりも、バーに入って来たブロンド美女のサムに意識が向いていた。そのサムはチキンブリトーを注文するが、 バーテンダーから「もう終わりなんだ」と断られていた。アレックスはサムをナンパし、「5分くれたら、チキンブリトーを食べさせる」 と言う。彼はコンビニへ行くが、ちょうど閉店したところだった。アレックスは店員に開けるよう頼むが、断られてしまった。
アレックスはコンビニの天井を破壊し、料金をレジに置いてブリトーを持ち出した。しかし店を壊す様子が防犯カメラに写っており、彼は 駆け付けた警官に追われる。アレックスはサムにブリトーを渡すが、警官に取り押さえられる。翌日、ストーンはアレックスを激しく叱責 し、「お前がナンパしたのはシェーン提督の娘だぞ。ヘタすりゃ俺の将来まで真っ暗だ。これまで目をつぶって来た。いつかは成長して くれると期待したからだ。もう我慢できん。ここからは俺の指示に従ってもらう。俺と同じ海軍に入れ」と述べた。
5年後、ハワイで多国籍海軍合同演習(リムパック)で行われるため、14ヶ国から海軍が集結した。陸上でもスポーツによる交流が行われ 、サッカーの決勝戦が開催された。対戦国は日本とアメリカだ。ストーンはキーパーとして奮闘するが、2点取られて負けている。 アレックスが1点を返し、恋人のサムも応援に熱が入る。アレックスは日本チームのナガタからキックを顔面に受け、PKが与えられた。 アレックスが頭を打っているので、ストーンは別の人間にPKを蹴らそうとする。しかしアレックスは、自分が蹴ると主張した。ナガタの 挑発的な言葉を浴びても勝気な態度を崩さなかったアレックスだが、PKを外して敗戦した。
夕方、アレックスはビーチでサムと抱き合い、シェーンに結婚の許可を貰うために挨拶へ行く意思を示す。翌日、戦艦ミズーリで記念式典 が開かれ、ストーンや自衛隊の護衛艦みょうこうの艦長であるナガタたちが参列してシェーンの挨拶を聞いている。老齢の退役軍人たちも 招待されている。アレックスは遅刻してしまい、慌ててミズーリへ出向いた。駆逐艦サンプソンの艦長であるストーンは前回のリムパック で活躍し、代表として挨拶した。
式典の後、サムはシェーンに「ホッパーが挨拶があるらしいの」と言う。シェーンは「3分だけだ」と仕方なく承諾するが、アレックスは 怖気付いてトイレへ駆け込んだ。そこへナガタが現れると、アレックスは彼に挑発的な言葉を浴びせて喧嘩を始める。この騒ぎを受けて シェーンに呼び出されたアレックスは厳しく注意され、「この演習を楽しむがいい。これが最後になるだろう」と告げられた。
翌日、リムパックの演習が開始された。シェーンは空母ロナルド・レーガンから、指示を出す。アレックスは戦術行動士官として、駆逐艦 ジョン・ポール・ジョーンズ(JPJ)に乗り込んでいる。彼はクルーのレイクスやビースト、オーディーたちに、「よその国に負けるような ことがあれば、ただじゃおかないぞ」と語る。そこへ、ヘリでサンプソンまで来るようにとの指示が届いた。アレックスが出向くと、 ストーンは「法務部から電話があった。演習が終わり次第、お前は海軍から放り出される」と告げる。アレックスが狼狽して「兄貴なら コネがあるだろう」と頼むと、ストーンは「そんなコネなど無い」と声を荒げた。
理学療法士として軍の施設で働くサムは、陸軍退役中佐ミック・キャナルズの担当になった。ミックは両脚を失ってから投げやりになって おり、「俺は軍しか知らないのに、兵隊にもなれない半端者だ」と漏らす。そんな彼を、サムは登山に連れ出した。そこへアレックスから 電話が入る。アレックスはクビになったことを明かさず、「基地に戻ったら、今度こそシェーン提督に話すよ」とサムに話した。
ヒマラヤの研究施設にいるノグラディーは、宇宙から地球へ飛来する5つの巨大物体を観測した。ハワイのサドル・リッジにある施設で 働く研究員のキャル・ザパタは、ノグラディーからの連絡で未確認飛行物体のことを知る。5つの物体は、編隊を組んで地球に迫っている 。既にノグラディーは、NASAとも連絡を取っていた。編隊は衛星に激突し、その内の一つが散らばった。未確認物体の4つはハワイの海に 突っ込み、散らばった多数の破片は香港や日本に墜落した。建物が破壊され、大勢の死傷者が出た。
アメリカ合衆国では国防会議が開かれ、NASAの代表者は未確認飛行物体がプラネットGから来たことを報告した。連絡を受けたシェーンは 、サンプソンを出すよう指示を出した。サンプソンはJPJとみょうこうを引き連れて、飛行物体の捜索に向かった。一方、香港に落ちた 破片を改修した中国の科学チームは、それが通信ユニットのような幾つものハネルで構成されていることを分析していた。
ストーンは海上に一部分だけが突き出した謎の物体を視認するが、レーダーには写らない。ストーンはJPJのブロウリー艦長に、臨検部隊 を派遣して調査に行かせるよう指示する。アレックスはレイクス、ビーストと共にボートで接近し、交信を求める。何の返事も無かった ため、アレックスは物体に飛び乗った。レイクスとビーストは「戻って下さい」と言うが、アレックスは無視して物体に触れる。その途端 、その物体から強力な電気が発せられ、アレックスは弾き飛ばされた。
その物体は巨大なエネルギーフィールドのドームを張り、捜索艦隊は閉じ込められてしまう。アレックスたちの眼前で、謎の物体は変形 して機動戦艦となり、激しく飛び跳ねた。その物体が音波を発すると、衝撃でサンプソンのガラスが割れ、通信システムがダウンする。 ストーンの指示を受けたJPJは、威嚇射撃を行う。すると機動戦艦は大きくジャンプして移動し、ミサイルでJPJを攻撃した。JPJは爆発に よって大きなダメージを受け、艦長と副長は死亡した。
機動戦艦は圧倒的な破壊力を見せ付け、サンプソンを撃沈する。JPJに戻ったアレックスは、副長の次に階級が高かったため、臨時指揮官 となった。指示を求められた彼は、「奴に接近しろ。全力でやっつける」と告げる。JPJの動きを見たナガタは「あいつ、アホだな」と アレックスに呆れながらも、「援護するぞ」と部下に指示を出す。しかし、みょうこうは機動戦艦の攻撃を受けて撃沈された。
JPJは攻撃するための弾丸が切れるが、アレックスは敵艦に突っ込むよう命令を出す。みょうこうの乗組員が海に逃げ出していたが、救助 すべきではないかという部下の意見にも耳を貸さず、アレックスは特攻を命じる。しかしビーストが「救助が先だ」と怒鳴り付けたため、 仕方なくアレックスは進路を変更した。すると機動戦艦は準備していたミサイルを引っ込め、巨大な歯車のような武器を発射した。その 巨大歯車はオアフの海兵隊基地へ飛来して軍用ヘリを次々に破壊し、そのまま市街へと暴走した。
シェーンはサンプソンと連絡を取ろうとするが、ドーム型エネルギーフィールドの内部とは通信が途絶えており、その中に入ることも 出来ない。3隻の消息も分からない状態だ。宇宙人の遺体がJPJに回収され、アレックスやナガタたちはヘルメットを外して肉体を調べる。 すると宇宙人は死んでおらず、怪力で暴れ出す。そこへ数名の仲間が突入し、その宇宙人を連れて逃走した。まだ中に一人が残っており、 アレックスは部下に白兵戦の指示を出した。アレックスはレイクスと協力し、その宇宙人を退治した。
サムとミックは、保安官3名を始末した宇宙人の一団を目撃する。宇宙人が去った後、サムは車の無線で助けを呼ぼうとするが、通じない 。そこへキャルが現れ、「こうなるって警告してたんだ。奴らは助手を殺した」と言う。ノグラディーは国防会議の面々と通信し、「彼ら は母船との通信ラインの確立を最優先しています。ハワイのビーコン基地なら、宇宙までメッセージを送ることが出来ます」と述べた。 ミックは宇宙船がビーコン基地の近くを飛来しているのを見て、通信手段を確保して増援を呼ぶつもりだと確信した。
その夜、サム、キャル、ミックはビーコン基地の様子を観察する。ミックが「もう送信してるかな」と口にすると、キャルは「たぶんね。 でも効果は怪しい。電波を中継する衛星が無いからね。ランドサット7だよ」と言う。ランドサット7は新宇宙探査衛星で、24時間に1回 しか受信軌道に入らないのだという。「今度やって来るのはいつだ」というミックの質問に、彼は「約5時間後だ」と答えた。
アレックスやナガタたちは、作戦会議を開いていた。アレックスが「レーダーが無いから敵が見えない。距離があるから動きようがない」 と漏らすと、ナガタは「しかし向こうからも見えない。見えていれば、とっくにやられてる。一つ手がある。米軍相手の訓練で20年前から 使ってる」と言う。彼は潮位データを送っている津波ブイを使い、無線周波だけで敵の位置を割り出す作戦を提案した。するとアレックス は作戦を認め、ナガタに艦長の座を譲った。
キャルはサムとミックに、JPJと通信を可能にする装置があることを明かす。それは宇宙人に占拠された施設内にあるのだが、サムたちは 取って来るよう要求した。ナガタたちは津波ブイのチャートを見て、敵の位置を割り出した。ナガタの指示でミサイルが発射され、敵の 機動戦艦1隻に命中した。キャルは通信装置を持ち出そうとするが、宇宙人に発見される。しかしキャルが武器を持たず、戦闘の意思を 示していなかったため、宇宙人は彼の存在を無視した。サムはアレックスと交信し、「奴らがサドル・リッジのビーコン基地を占拠した。 そこから通信を確立しようとしてる。施設を破壊してほしい。あと4時間しか無い」と話す。アレックスが「分かった。そこから逃げろ」 と言ったところで、通信は切れてしまった…。

監督はピーター・バーグ、脚本はジョン・ホーバー&エリック・ホーバー、製作はブライアン・ゴールドナー&スコット・ステューバー& ピーター・バーグ&サラ・オーブリー&ダンカン・ヘンダーソン&ベネット・シュナイアー、共同製作はトッド・アーナウ&エリック・ヘフロン、製作総指揮はジョナサン・モーン& ブレイデン・アフターグッド、撮影はトビアス・シュリッスラー、編集はコルビー・パーカーJr.&ビリー・リッチ&ポール・ルベル、 美術はニール・スピサック、衣装はルイーズ・ミンゲンバック&キム・ティルマン、視覚効果監修はグラディー・コファー&パブロ・ ヘルマン、音楽はスティーヴ・ジャブロンスキー、音楽製作総指揮はリック・ルービン。
出演はテイラー・キッチュ、アレキサンダー・スカルスガルド、リアーナ、ブルックリン・デッカー、浅野忠信、ハミッシュ・ リンクレイター、リーアム・ニーソン、ピーター・マクニコル、ジョン・ツイ、ジェシー・プレモンス、グレゴリー・D・ガドソン、 ジェリー・フェラーラ、アダム・ゴドリー、リコ・マックリントン、ジョージ・ヨシダ、ルイス・ロンバルディー、ノーマン・ヴィンセント・マクラファーティー、スティーヴン・C ・ビショップ、ダンテ・ヒメネス他。


ユニバーサル・ピクチャーズ100周年記念作品。ハズブロの同名ボードゲームを原案としている。
監督は『キングダム/見えざる敵』『ハンコック』のピーター・バーグ。
アレックスを演じたのは、この映画と同年に公開されたウォルト・ディズニー生誕110周年記念作『ジョン・カーター』でも主演している テイラー・キッチュ。
ディズニーとユニバーサルという2つの大会社の記念作品で主演に抜擢されたのだから、彼にとって2012年は飛躍の年になるはずだったが 、どちらも莫大な赤字を出してコケてしまった。
他に、ストーンをアレキサンダー・スカルスガルド、レイクスをリアーナ、サムをブルックリン・デッカー、ナガタを浅野忠信、キャルを ハミッシュ・リンクレイター、シェーンをリーアム・ニーソン、国防長官をピーター・マクニコル、ビーストをジョン・ツイ、オーディー をジェシー・プレモンス、ミックをグレゴリー・D・ガドソン、ノグラディーをアダム・ゴドリーが演じている。

冒頭、NASAはプラネットGと名付けた星にいる地球外生命体に向けて、ビーコン信号の送信を開始する。それは友好的なメッセージとして 送信しているつもりなんだろう。
だけど良く考えると、その意味については、地球外生命体には伝わらないよね。言葉も通じないんだし。
例えば、異星人から地球に信号が送られてきたとしよう。それがどういう意味を持つのか、誰も分からないよね。だって、異星人は異星人 の言葉や意味で発信してくるわけで、ご丁寧に英語や日本語でメッセージを伝えて来るようなことは無い。
だから、ひょっとしたら信号をキャッチした相手は、「うるせえ音をずっと送り続けやがって、どういうつもりだ」と怒っているかも しれないんだよな。

そんな冒頭シーンの後、まだ海軍に入る前のアレックスがコンビニを破壊して警官に捕まる様子が描かれる。なぜ海軍になる前のシーン、 しかも主人公のアホなところをアピールするシーンを用意したのか。
そこに主人公と兄、恋人を紹介し、その関係を描写するという役目はあるけど、そんなのは海軍に入ったところから物語を始めたとしても 、やれる作業だ。
それに、そこでの主人公を見ても、まるで魅力的に思えないんだぜ。ただのアホじゃん。
ちっとも「愛すべきアホ」じゃねえし。

これがコメディーならまだしも、そうじゃないんだよ。こいつは後に、地球の危機を救う壮大なミッションの指揮官として戦うことになる 奴なんだぜ。そいつが女をナンパするためにブリトーをコンビニから盗んで店を破壊して、警官に捕まるオープニングって、どういう つもりなのよ。ユニバーサル・ピクチャーズ100周年記念作品の主人公を、なんでそんなチャラい奴にしちゃったのか。
しかも、それで男に惚れちゃう女も尻軽のアホ女にしか見えないし。
ここで分かるのは、メインのカップルがオツム弱すぎのクズたちってことなのよ。
あと、なんでボンクラの弟を海軍に入れちゃうんだよ、ストーンは。
そして、なんでアレックスは軽く海軍に入っちゃうんだよ。前日の夜は「嫌だね」と即答していたじゃねえか。

5年が経過して、アレックスは海軍で艦長と副長の次に偉いポジションに昇格している。
心を入れ替えて以前とは別人のようになったのか、すっかり成長したのかと思いきや、相変わらずのクズだ。遅刻はするし、身勝手だし、 キレやすいし。
そんなクズなのに、なんで普通に昇進しちゃってるんだろう。むしろ、幾つもヘマをやらかして、クビになっていてもおかしくなさそう なのに。
あと、シェーンに結婚の許可を貰おうとしているけど、そんなの普通に言い出せるほど彼に認められているとも思えないし。むしろ「結婚 に反対されているので、何とか認めてもらおうとしている」とかさ。
っていうか、認めてもらいたいのなら、まずは軍人としてキッチリと仕事をしろよ。

それと、その5年後のシーンから物語を始めたとして、何か問題があるのか。
相変わらず生意気で身勝手だし、兄を困らせているし、だったら、それだけあれば充分でしょ。なんでチキンブリトーを巡るアホな犯罪を 見せる必要性があるのかと。
しかも、5年後になっても、まだしばらくは、ダラダラと「平穏な日常」の描写が続いていくんだぜ。だったら、そこから始めればいい じゃねえか。
どれだけ考えても、最初にブリトーを巡るアホな犯罪シーンを見せることの必要性が分からない。

シェーンはアレックスに「能力がありながら、貴様ほど無駄にしている奴を見たことが無い」と言うけど、そこまでのシーンでアレックス に能力の片鱗も見えないんだけどね。
そういうことを言わせたいのなら、そこまでに能力の片鱗を見せておこうよ。
それなら、さんざんバカやっていても、未だにクビになっていたのも、まだ分からないではない。才能があるから、しばらく様子を見よう っていうことならね。
でも、そうじゃなくて、ただの身勝手でキレやすいバカにしか見えないから、そんな奴をなぜいつまでもクビにせずに置いておくのか 解せないのよ。

ストーンが「法務部から電話があり、海軍から放り出される。これが終わり次第」と言うと、アレックスは激しく狼狽し、「兄貴ならコネ があるだろう」と口にするが、テメエの撒いた種でしょ。
てっきり、もうクビになっても構わないという気持ちがあるからテキトーにやっているのかと思ったら、そうじゃなかったのかよ。海軍に 残りたかったのなら、なんで真面目にやって来なかったのか。
っていうかさ、なんで主人公を、そんなに好感の全く持てないキャラにしちゃったのかなあ。
例えばさ、「本人は頑張っているけど空回りしてしまう」とか、「能力はあるけど考えが突飛すぎるから上官から認めてもらえず 落ちこぼれ扱いされている」とか、そういうことなら、感情移入もしやすかっただろうに。
「真面目に頑張らずテキトーにやっている短気なクズ」って、どうしようもないじゃねえか。

そんなチンタラしたシーンがあって、開始から30分ほど経過して、飛行物体が確認される。で、そいつはバリアーを張り、外からは誰も 入れない状態を作る。
そんな強力なバリアーがあるのなら、なんで機動戦艦の周囲に張らなかったのか。バリアーの中に米軍と自衛隊の軍艦を入れてしまったら 、そのバリアーの意味が無いでしょうに。「その3隻だけに用事があったから邪魔されたくなかった」ということなら分からんでもないが 、そうじゃないんだし。
飛行物体が絡んで来る辺りで、アレックスがシェーンの言っていた「能力」をようやく発揮するのかと思いきや、部下の意見を無視して 機動戦艦に触れることでバリアーを張られてしまい、無闇に攻撃を仕掛けることでサンプソンが援護せざるを得なくなり、そのサンプソン が撃沈される。みょうこうの乗組員が海にいるのに救助せず、駆逐艦を敵艦に突っ込ませようとする。
相変わらずアホなのだった。
っていうか、考えてみれば、彼の不用意な行動で敵が動き出し、彼の不要な行動で戦闘を拡大し、それをやっつけるんだから、アレックス って単なるマッチポンプじゃねえか。

あと、宇宙人は問答無用で攻撃してくるわけじゃなくて、「攻撃の意思を見せる奴を撃滅する」という専守防衛のルールに基づいて行動 するんだよね。
そうなると、「そんなに悪い宇宙人でもないんじゃないか」ということにもなってしまう。
ただし、歯車が暴れまくって車や道路を破壊すれば、巻き込まれての犠牲者は必ず出るわけだから、「専守防衛だから、攻撃の意思が無い 人間は被害を受けずに済む」というわけでもないのよ。歯車が市街を暴走するシーンでは、明らかに大勢の死傷者が出ているはず だし。
そういうことになるんだし、半端に専守防衛のルールを用意せず、無差別殺戮宇宙人にしておけばいいのに。
そこをヌルい設定にしているのは、「そういう設定にでもしないと、アレックスたちを勝利させる方法が思い付かなかった」ってことなん だろうか。
ただ、登場した時には圧倒的に見えた宇宙人だけど、機動戦艦は歯車しか遠距離攻撃の武器を持っていないし、やたら飛び跳ねてるのも 艦体を痛めるだけにしか思えんし、宇宙人はステゴロの戦いしか出来ないし、実は大して強くないんだよな。
しかも「攻撃の意思を持たない」と判断した相手を無視するので、それが分かれば簡単に攻略できちゃうよな。

せっかくバリアーを張って舞台を限定したはずなのに、そこから敵の歯車が飛び出してオアフ島を攻撃しちゃうんだよなあ。
そんなことをしたら、そのバリアーの意味が薄くなっちゃうだろうに。
「中の様子が分からない」という外側から見ての不安や恐怖ってのも、そういうのを描くことによって無くなってしまうし。
外でも宇宙人が暴れてるから、中のことを心配している場合じゃなくなっちゃうしね。

最初は機動戦艦だけが登場し、宇宙人は姿を見せないので、そのまま「正体不明、得体の知れない敵」ということで恐怖を醸し出せばいい ものを、あっさりと宇宙人を登場させてしまう。
白兵戦を盛り込んで話に変化を付けようということだったのかもしれんが、いかがなものかと。
それと、「約5時間後には増援が呼ばれてしまう」というところで新たにサスペンスを作ろうとしているけど、それも要らないなあ。
なんでバリアー内の戦いにこだわらないのかなあ。

そもそもバリアーの張り方が変だというのは置いておくとして、それによって戦闘の場所を限定したはずなんだから、そこを活かす話に しようよ。
バリアーの外でも何か起こさないと、サムを話にあまり絡ませられないという裏事情はあるんだろうが、じゃあ彼女を主要なキャラから 外してもいいし。
アレックスとサムの恋愛関係って、戦いが始まったら何の意味も無いんだから。
もしくは、アレックスの恋人を、一緒にリムパックに参加している軍人にしちゃえばいいんだよな。

アレックスは機動戦艦を倒すのと引き換えにJPJを失うが、ミズーリを復活させ、退役した老人たちに戦闘を手伝ってもらう。
その展開は、きっと観客を高揚させることを期待して用意されているはずなんだけど、まるでテンションが上がらん。
そこまで来たら、もうアレックスとナガタの2人を中心にして、JPJに残った連中だけで頑張れよ。
なんで重要なラストバトルに来て、急に退役した老人たちの力を借りているのか。
その老人たちって、序盤にチョロッと出て来ただけで、そこまでの展開の中で、ほとんど絡んでないでしょうに。

(観賞日:2013年1月13日)


第28回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低助演男優賞[リーアム・ニーソン]
<*『バトルシップ』『タイタンの逆襲』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低助演女優賞[ブルックリン・デッカー]
<*『バトルシップ』『恋愛だけじゃダメかしら?』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低スクリーン・アンサンブル賞[『バトルシップ』の全キャスト]
ノミネート:最低監督賞[ピーター・バーグ]
ノミネート:最低脚本賞

 

*ポンコツ映画愛護協会