『ポリーmy love』:2004、アメリカ

保険会社“インダースキー&サンズ事務所”でリスク査定アナリストをしているルーベン・フェファーは、恋人のリサと結婚することに なった。結婚式には友人サンディーもやって来た。サンディーは俳優で、若い頃に1本のヒット映画に出演したが、それ以降はパッと しない。式場の料理人からは「死んだと思っていた」と言われるぐらいだ。サンディーは「俺のバイオグラフィーが放送される。密着取材 が入っている」と口にした。結婚パーティーでは、ルーベンの上司スタンがスピーチをした。
ハネムーンで南の島へ出掛けたルーベンは、新居を購入したことをリサに告げた。ビーチで寛いでいると、フランス人ダイバーのクロード という男がダイビングに誘ってきた。リサは行きたがるが、ルーベンは遠慮した。リサだけがクロードの船に乗り、ダイビングに出掛けた。 ルーベンはシャンパンを用意し、戻って来た船へ出向いた。だが、船室に行くと、ベッドでリサとクロードが抱き合っていた。リサが島に 留まると言うので、ルーベンは激怒した。
ルーベンは一人で島を去った。出社すると、みんなが島での出来事を知っていた。ルーベンはスタンから「オーストラリア出身の実業家 リーランド・ヴァン・リューと契約したい」と言われ、調査することを申し出た。彼はサンディーに誘われ、画家のパーティーに出掛けた。 その会場で、ルーベンはウェイトレスから声を掛けられた。そのウェイトレスは、中学時代の同級生ポリーだった。中学の途中で転校し、 それ以来、全く会っていなかった。数ヶ月前、ニューヨークへ戻ってきたのだという。
翌日、3オン3のコートでサンディーと遊んでいたルーベンは、「ポリーをデートに誘おうと思う」と口にした。サンディーから「お前 には合わない」と言われても、ルーベンは「これは運命だ」と言う。しかし、いざ電話を掛けてポリーが出ると、何も言わずに切って しまった。折り返しの電話が掛かってきたので、慌てて電話機を投げ付けた。ルーベンは彼女を尾行し、アパートの前で偶然を装って声を 掛けた。ルーベンはポリーを食事に誘い、名刺を渡して去った。
ルーベンがオフィスで仕事をしている最中、ポリーから電話が入り、「明日の夜なら空いている」と言ってきた。しかし「店の予約は しないで。行けるかどうか分からないから」と、妙なことを告げた。ルーベンは、コミュニティー・センターでアマチュアに混じって芝居 の稽古をしているサンディーの元を訪れた。稽古の後、2人はダイナーに赴いた。ルーベンがポリーの決めた店へ行くと聞いたサンディー は、「胃腸が弱いのに大丈夫か。エスニック料理だったらトイレに何度も行くハメになるぞ」と告げた。
ポリーが用意したのはエスニック料理の店だった。ルーベンは作り笑いで食事をするが、腹の具合が悪くなってトイレへ行く。しかし個室 に客が入っていたため、用を足すことが出来ない。我慢して店を出たルーベンはポリーを部屋まで送り、トイレを貸してもらう。しかし紙 が無いので、タオルで尻を拭いた。それを流そうとして便器を詰まらせ、水が溢れ出してしまった。
ルーベンはロサンゼルスへ行き、リーランドと面会した。リーランドは危険なチャレンジが大好きで、サメと一緒に泳いだりする男だ。 その日はルーベンをビルの屋上へ連れて行き、パラシュートを付けてジャンプすると告げた。慌てるルーベンの元に、ポリーから電話が 掛かった。ルーベンが彼女と話している間に、リーランドはビルからジャンプした。
ルーベンがインド料理店でポリーと食事をしていると、母ヴィヴィアンと父アーヴィングが現れた。ヴィヴィアンはリサのことを無遠慮に 話した。ポリーはルーベンをサルサクラブへ連れて行った。しかしルーベンはサルサが苦手で、ポリーはキューバ人のハビエルと踊った。 ルーベンが「自分はこういうクラブへ来るタイプではない」と言うと、ポリーは「どういうタイプが正直に言って」と求めた。ルーベンは 「辛い物は嫌いだし、リスクは避けて、事前に計画を立てて行動するタイプだ」と説明した。
ルーベンとポリーはキスを交わし、肉体関係を持った。ルーベンはゲイだと知ったハビエルから、サルサを教わり始めた。彼はリーランド の激しいラケットボールに付き合い、「今のライフスタイルでは契約を受けられない」と述べた。するとリーランドは「どれだけ安全な 生活か見てもらいたい。月末に船でセーリングをするから一緒に行こう」と誘った。
ルーベンがセーリングのことをポリーに話すと、彼女も行きたがった。そこでポリーも連れて行くことに決めた。ルーベンはポリーを サルサクラブへ連れて行き、練習したダンスを披露した。彼女を連れて自宅へ戻ると、そこにはリサの姿があった。クロードと別れて 戻ってきたのだ。ヨリを戻そうと持ち掛けられたルーベンは、その場では拒否するが、心には迷いが生じた。
ルーベンはリサとポリーのどちらと一緒になるべきか、コンピュータでリスクを計算した。その結果、ポリーの方がリスクが低いと出た ため、ルーベンは彼女と結婚しようと考える。しかし、そのことを知ったポリーは腹を立て、「私は結婚する気なんか無い」と告げる。 その日以来、ルーベンはポリーに電話しても出てもらえず、連絡も付かなくなった。サンディーの芝居を見に行ったルーベンは、ハビエル と遭遇した。ルーベンはハビエルから、ポリーが街を出て行くことを知らされた…。

監督&脚本はジョン・ハンバーグ、製作はダニー・デヴィート&マイケル・シャンバーグ&ステイシー・シェア、製作総指揮はジェーン・ バーテルミ&ダン・レヴィン、撮影はシーマス・マッガーヴェイ、編集はウィリアム・カー&ニック・ムーア、美術はアンドリュー・ ラース、衣装はシンディー・エヴァンス、音楽はセオドア・シャピロ、音楽監修はランダル・ポスター。
出演はベン・スティラー、ジェニファー・アニストン、フィリップ・シーモア・ホフマン、アレック・ボールドウィン、デブラ・ メッシング、ハンク・アザリア、ブライアン・ブラウン、ミシェル・リー、ボブ・ディッシー、ミッシー・パイル、ジュー・ガルシア、 ジュダ・フリードランダー、ケヴィン・ハート、マシ・オカ、キム・E・ウィットリー、エイミー・ホーン、ネイサン・ディーン、 シェリル・ハインズ、キャラロイン・アーロン、クリスティーナ・カーク、トッド・スタッシュウィック、ロブ・スカイラー他。


『ミート・ザ・ペアレンツ』や『ズーランダー』のシナリオを手掛けたジョン・ハンバーグが脚本と監督を担当した作品。これが2本目の 監督作になる。
ルーベンをベン・スティラー、ポリーをジェニファー・アニストン、サンディーをフィリップ・シーモア・ホフマン、 スタンをアレック・ボールドウィン、リサをデブラ・メッシング、クロードをハンク・アザリア、リーランドをブライアン・ブラウン、 ヴィヴィアンをミシェル・リー、アーヴィングをボブ・ディッシーが演じている。

画家のパーティーが終わるまでに限っても、笑える箇所が一つも無い。ギャグが全く用意されていないわけではなく、むしろ豊富に 散りばめられているのだが、どれも不発。
例えばサンディーが密着取材のクルー2人を連れて傷心のルーベン宅を訪れるシーンにしても、 そのクルーにデリカシーの無い発言をさせたり、無遠慮な行動を取らせたりと、あと1つ2つは笑いを狙いに行けるんじゃないかと 思ってしまう。
1つ1つのネタに対して、もっと弾けられるし、そして弾けるべきだと感じる。
パーティーのシーンで、サンディーはルーベンに「クソを漏らしたから帰ろう」と言ってくる。
これだけでは、「サンディーは下品な奴」ということを示しているだけだ。
例えば「何かの弾みで漏らしてしまう」という場面を見せればギャグになるのに、そういうことは描写
しない。「クソを漏らしたから帰ろう」と言いに来てから何かが起きればギャグになるが、それも無い。ポリーの腰にタトゥーがあるのを 目撃して、それで次のシーンに移ってしまう。
もっとクソを使って笑いを取りに行けよ。

ルーベンは島から戻ったばかりだし、まだリサのことを引きずっていたはずなのに、パーティーの翌日にはサンディーに「昨日はワクワク した。一歩踏み出す気になれた。ポリーをデートに誘おうと思う」と言う。
えらく急な心変わりだこと。
違和感たっぷりだ。
そこは、もう少し時間を掛けるか、あるいは傷の癒えないルーベンを強引にデートさせる第三者を用意すべきだろう。
で、その気になったのなら、さっさとデートに誘う展開へと移ればいい。
ところが、毛深い男から試合を持ち掛けられ、3オン3をやるシーンが描かれる。そこではサンディーが雄叫びを上げてシュートを打つけど全く入らないとか、上半身裸になった男の体にルーベンの顔 が密着して汗でベトベトになるとか、そういうネタが描かれる。汗ベトベトに関しては、スロー映像まで使う。
だけど、話の流れの中でギャグをやってほしい。
そんなにギクシャクしたやり方で、ギャグのための脱線をやられると萎える。

サンディーから「お前には合わない」と言われても「これは運命だ」とまで言っていたのに、ルーベンが電話をしても何も言えずに切って しまったり、尾行したりというシャイなアプローチになるのは違和感を覚える。
仕事の最中にポリーからの電話があるので、そこで何かトラブルでも起きるのか、笑いを取りに行くのかと思ったら、何も無い。
で、ポリーが「明日の夜なら空いている。でも行けるかどうか分からない」と意味不明なことを言うので、何かあるのかと思ったら、普通 に店に現われる。
何なのかと。
そんでエスニック料理店で腹を壊したルーベンだが、トイレを使えなかったところで次のシーンに移ってしまう。
そこは何か1つぐらい笑いを取りに行くべきでしょ。
ポリーの家でトイレを詰まらせて、ようやく下痢症状がギャグに繋がるが、もっと弾けてほしい。

ダイナーで話すシーンで、サンディーは油を気にするルーベンのピザを絞り、その油を自分のピザに垂らしてから食べる。 でも、そこで終わってしまう。
ホントは、その先に笑いがあるんだよ。
この映画は、サンディーが下品な振る舞いをして「ああ下品だなあ」と思わせるところで止まっている。ギャグのつもりなのかもしれないが、ギャグとしての体を成していないケースが大半なのだ。
ポリーのタトゥーを見せたり、エスニック料理店で「90年代に世界を放浪していた」「結婚願望は無い。真剣に男と付き合う気が無い」と 語らせたりはしているが、それだけでは「ポリーがルーベンと全く合わないタイプ」というアピールは全く足りていない。もっともっと、 マイペースで自由気ままな性格を描くべきだ。ポリーの「ズレ」が全く伝わってこない。

ルーベンがリーランドと屋上にいる時にポリーから電話が入るが、そのことに何の意味も無い。電話が入ったせいでリーランドのジャンプ を失敗させてしまうとか、そういった絡ませ方は全く無い。電話があろうとなかろうと、リーランドはジャンプして失敗する。「仕事中に ポリーが電話を掛けてくる」というのを天丼ギャグのつもりでやっているのかもしれんが、何のギャグにもなっていない。
ルーベンが自由奔放なポリーに翻弄されたり、振り回されたりする感じは薄い。ルーベンは「どんなタイプか正直に言って」と要求されて 「リスクは避けて、計画を立てて行動するタイプ」と説明するが、まず、そういう性格だというアピールが不足している。
後半に入って、ルーベンが「バーのナッツがいかに不衛生か」を確率を挙げながらポリーに説明する場面があるが、そういう「数値を提示しながらリスク 回避について説明する」という箇所を、もっと前半から見せておくべきだ。
そして2人のコントラストも弱い。対照的な性格設定にしてあるはずなのに、それが鮮明に見えてこない。

サルサの練習を積んだルーベンがヘタクソだけど元気一杯の踊りを披露し、それをポリーが嬉しそうに見ているシーンだけは魅力的。
ただ、最後に「地面に落ちたナッツを食べることで、ルーベンがポリーへの愛を示す」という展開を用意しているのなら、サルサを踊るシーンは 無い方がいいんじゃないか。クライマックスにおけるルーベンの行動を活かすためには、そこに至るまでは保守的なライフスタイルを 守ろうとして、ポリーに合わせるための努力はしない方がいいように思えるが。
リサからヨリを戻そうと誘われたルーベンには迷いが生じるが、「なんで?」と思ってしまう。
リサには怒り心頭だったし、ポリーと出会ってからはリサのことなんか全く頭に無かったはず。
そこで迷いを生じさせるなら、「ポリーを愛しているけど苦労も多い」という形にしておいた方がいいんじゃないの。
とにかく最初から最後まで冴えないコメディーだった。


第25回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[ベン・スティラー]
<*『ポリーmy love』『俺たちニュースキャスター』『ドッジボール』『隣のリッチマン』『スタスキー&ハッチ』 の5作でのノミネート>


第27回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演男優】部門[ベン・スティラー]
<*『ポリーmy love』『俺たちニュースキャスター』『ドッジボール』『隣のリッチマン』『スタスキー&ハッチ』 の5作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会